閑話~落鷹の横槍:旋矢笙 1
『神話・おとぎ話』には様々な『鳥』が、登場しますけど。『鷹』はわりと出番が少ないような気がします。
エジプト神話の『太陽神ホルス』は、それなりにメジャーですけど。『鷹の顔を持つ神』として、日本にどれほど『太陽神ホルス』は伝わっているでしょう?『ホルス』の名前はともかく、『スフィンクス』『猫の顔を持つバステト神』のほうが、イメージしやすいのが現状であり。
何より『大きい猛禽類→ワシ』という連想をするため。『ホルス→人間大の猛禽→ワシ?』というイメージを、私はしてしまいます。
加えて『人間をさらって飛ぶ逸話がある、鳥の王』というイメージがある。〔『鷲』のほうがファンタジーに取り入れられている〕と、愚考します。
そんな中で『北欧神話』における上位神格の『女神フレイヤ』が、『鷹の現れる衣』を所有している。『美貌の女神』にとって、『宝飾品』と同等か、それ以上に重要な『衣』が『鷹』に関連する。
あげくにその『衣』を『怪神ロキ』に貸し出している、神話があるとなれば。色々と『ネタ』を連想したくなるというものです。
『階級』とは便利なモノだ。“暴力”をふるう『軍勢』を効率よく動かす。いわば生物の『骨・神経』に等しく。
雑兵は、上級の命令に従う必要があり。時として、その理不尽にさらされ、“捨て駒”にされるリスクも伴うが。幸いタクマの上司に、そういう“下劣”な行為をする必要がある、弱者はおらず。
「そこまでよ!!!」
〔この状況は・・ヤバイっ!?どうすればっ・・チィ〕
タクマとしては、元侍女シャドウである羽矢弥さんのような、特殊な人物が乱入してきたら。
『階級』をふりかざして、白黒を即座にはっきりつけたい。たとえ下級シャドウであるタクマが、譲り退くのが確定するとしても。
『旋風閃鷹!』
『旋風閃っ!』
こんな風に同族で、不毛な争いをするより、まともな状況に変えられる。
『階級』の力で争いを止める方が〔はるかにマシ!〕と、タクマは言いたい。
とりあえず『使い魔鷹』と羽矢弥さんの連係攻撃をさばきつつ、タクマは『術式の符丁』を送る。
『まず話し合おう。なんで同族で争うヒ`-:』
『ピィ->~ー』「はっ!」
「:~っどわぁ!?」
『術式の符丁』は、羽矢弥さんたちの連係によって、かき消される。
高速で飛翔する『使い魔鷹』は、弓矢の狙撃に集中しても、射抜くのは困難であり。
そもそも羽矢弥さんの『旋風閃鷹』が、タクマに立ち止まって、弓を構えることを許してくれない。
『旋風閃鷹』は、上下左右から挟撃する、主従の連係も厄介だが。
「・・~<-・・」「そこでっ・・!」
『旋風閃っ!』
もう一つ厄介なのが『感知妨害』だ。
ヒーロー様ではないタクマの『旋風閃』は、『転倒=戦闘不能』であり。地形・敵の動作を『風術の感知』で把握し続け、転倒・衝突を何としても避ける。避けられる『機動』を取らなければならない。
「ー>:^:<ー」『烈風!』
「・・・*`っ」
しかし『旋風閃鷹』は、その重要な『風術の感知』を妨げる、『風術』を放ってくる。
地面を覆い、『感知の風』を断つように、羽矢弥たちの機動を偽る『偽装の風術』をも投じてきて。
『旋矢*オ`・/ー」
『旋風閃鷹!』
隠し持った『吹き矢筒』が、弾き飛ばされ宙を舞う。最後のあがきと仕掛けた『旋矢笙』も切り裂かれ。
「まいった!:・降参するっ!!」
「・・・いいでしょう。降参を受け入れるわ」
タクマは羽矢弥さんの軍門にくだった。
数日前・・・・・
『都市』の拡張とともに、『貧民街』も広がる。それを“世の定め・どうしようもないこと”と、考える連中は“カモ”である。
ケモノのように、人の命が軽く。はした金で『手駒』を動かせる『スラム』は、『都市防衛・防諜』にとっての隙・急所であり。
メズルたち潜入密偵にとって、いい潜伏場所だったのだが。
『*ー・~』
〔クソが・・またっ!?〕
最近、そのスラムで厄介事が発生している。
『治療院』を開いた“偽善者の魔女”が、『妖術』をかけまくり。
〔肌が粟立つ。『索敵』を行っているのか?
ならば地に潜り、やり過ごすまでだ・・・・・〕
そんな甘い判断をしていた、過去の自分を張り倒してやりたい、事件が発生し続けて。
「「「羽矢弥さま^~^」」」「この家を壊せば、いいんですか?」
「今日は、何をしましょう」「「何でも、言ってください!」」
“妖術”によって、活性化したスラム住民たちに仕事がもたらされ。スラムの区画整理が、有り得ない早さ+速さで行われたあげく。『準市民権・集合住宅』を、働いた者の家族にまで与えられ。
〔これはマズイ。早急に対策を取らねば・・〕
メズルがそう思ったときには、既に事態は動き。
「ハイ、注目ーー^~ー!!これから罪人の“処罰ショー”を行うぞ~
コイツらはスラムを解体して、(まっとうな)人々が幸せになるのを妨害しようと計画して、“悪いこと”しました~」
「てめぇ、こんなことをしてタダで済むTぉォ:ー:;:ー:」
見覚えのある連中が、縛られ『アゴ』が外され、処刑台に引きずり出される。
そうして『さらし刑』に処された。
「「「「「H・^:^*-^;.y`~」」」」」
血は流れず、悲鳴・断末魔が響くこともない。
ただ不穏な痙攣をくり返し、異臭が漂う『体液』を垂れ流す。
処刑の『見世物』としては、三流の光景だが。『尋問・拷問』の心得がある者が見れば、怖気のする残酷劇場が続き。
「み、水っ;・・」「話すっ、なんdれmo`;」「はひっ・ホ;-・」
「ん~、まだまだ余裕がありそうだ」
「「「ッ*+;!ー?^M^・~;」」」
人間では絶対に耐えられない、『渇き』が再び容赦なく罪人たちに襲いかかる。加えて不穏な『けいれん』は、『神経を直接刺激する術』が元凶であり。メズルの知るかぎり、ソレから逃れるためには『自決』しかないはずだが。
「!:?ッ?」「ほ、ホッ^;`-*-!!」「んン*`!+!;っ?」
「は~い、人を“嬲り、燃やし、惨殺する”ための耳目に、安易な自害は許されませ-~-ん。
おまえらの『自決道具』は没収したから。換わりに『帽子』をくれてやろう」
「「「:.●:●-`!?」」」
そのセリフとともに、処刑人は帽子をかぶせて、連中の『視界』をも覆う。最も依存する『感覚・視覚』を封じ、『触覚』が鋭敏になるよう強制してから。
『渇き・痛覚?』の相乗効果を、連中がより深く感じ取れるよう、言の刃を刺してきた。
「そろそろ馴れて、『準備運動』は充分だろうし。
ここからはオレと『共鳴』して、本番に上げて行くぞ^ー~」
「「「「「「ーーーー・ーーー」」」」」」
辺りに沈黙が落ちる。
メズルのまともな精神が“これから始まるコト”への理解を拒絶し。
『眼球』が一時的に硬直して、近くで始まる情報を遮断すべく。真っ暗な『マボロシ』で、眼前の処刑場を塗りつぶしたものの。
『・・“雷鈴鐘”』
「そこまでよ・・ライゾウっ!!」
結局、メズルたちの『あがき』によって、事態が改善することは一切なかった。
「・・・・・それで?」
「スラム街で派手な『術式』を使うのは、やめてほしい。
貴方にも、『お役目』はあるのでしょうけど。貧民街では、私に譲ってもらいたいのよ」
「それは“潜入密偵”を狩ることより、優先することなのか?」
一応、問いかけはするものの。早矢弥さんに敗れた、タクマに拒否する資格などない。
とはいえC.V.様の勘気・お怒りを鎮め、混成都市で安らいでいただく。
〔そのために、うるさい“潜入密偵”を狩る〕と、いう目的より優先度の高い『任務』などあるのだろうか?
もしそんなものがあるなら、タクマも協力するし。間違っても妨げにならないよう、立ち回るために知っておきたいところだが。
「〔異能者が恐れられないよう、『術式』の使用に制限をかける〕と、いう定番の理由では、納得しないわよね?」
「別に〔ぜひとも聞きたい〕と、いうわけではないが・・・それならオレの任務にも、『配慮』をお願いしたいところだな」
タクマの返答を聞いて、早矢弥さんはしばらく考え。
「・・-・いいわ。『旋矢笙』を使う貴方が協力してくれるなら、私たちの計画にとって有用だし。『潜入密偵』が“有害”なのは、スラムにとっても同様だわ。
今回の分は別として、貴方にはスラムの警備をお願いしたい。
ただし!今回のように『術式』を、大っぴらに披露するのは禁止よ」
「『旋矢』の標的となって、走り回る。身軽な連中には、いい小遣い稼ぎになる『仕事』も駄目なのか・・・?」
タクマの言の葉に対し、早矢弥さん視線を鋭くして、言の『刃』をふるう。
「『旋矢』を怖がって警戒しているうちは、小遣い稼ぎで済むでしょうけど。
しばらくすれば、安易に収入を得られる『的役』に、人々が群がりかねない。
それだけならともかく・・・攻撃魔術を使うC.V.様たちが、まっとうな人間まで『八つ当たりしていい標的』などと認識したら…‥」
「さあ、何でも言ってくれっ!」
墓穴を〔埋め戻す〕ために、タクマは全面協力を申し出て。
「ありがとう、感謝するわ。
それでは早速だけど、激昂寸前の『水那』さんをなだめてくれるかしら?
単なる元侍女にとって、水の『魔竜鬼』が放つ殺気は怖すぎるのよ」
『・・ー・-^・^…ッ⁉』
この後、めちゃくちゃタクマは苦労することになり。
早矢弥さんを『様』付けで、呼ぶことが確定した。
ネタバレ説明:『旋矢笙』について
『吹き矢筒』に『風術の息』を吹きかけ、『吹き矢』を放つ。口をつけず、両の手・腕を動かさずに、『吹き矢』を射出する。それが『旋矢笙』という術式であり。
『隠し武器・暗器』の要素が強い。『毒吹き矢』を放てれば、暗殺の『術式』にもなるのですが。
『暗殺術』として使うのは、まず不可能です。少なくともシャドウ一族のタクマに関しては〔絶対にムリ〕と、断言できる。
理由はいくらでもあり。
1)『毒』の調合・管理のコストが高く。他のことができない。
2)モンスター・『身体強化』のユーザーに通用する、『毒の種類』がわからない。
3)『魔術の毒』を使うC.V.様の行動を、抑えられなくなる。
4)『風術の感知』に秀でた上級シャドウ様が、暗殺行為を事実上、禁じている。
そのため〔『弓兵』であるタクマが、敵に接近された時に、迎撃を行うため〕と、いう理由で『旋矢笙』は編み出された。実際、普通の『吹き矢』と比べれば、それなりに威力のある『吹き矢』が放てるのは、事実であり。
そういうふうに説明して、宣伝して、情報拡散が行われている。密偵・敵対組織に伝わるよう、意図的に情報漏洩が放置されています。
他にも『飛び道具・風術』の課題として、『修練』に使われています。
以上、『旋矢笙』のネタバレ説明でした。
とはいえ“ゴシップ”は苦手ですし。少し前に『職人小人と夜を共にして・・・』を否定したばかりで、『ロキとフレイヤが・・・』という邪推はしたくありません。
とりあえず〔『北欧神話』は『ロキ』がトラブルと神具を持ち込んだ『神話』だ〕という説に、私は大賛成であり。〔外来の神である『女神フレイヤ』は、それに大きく関わったのだろう〕と、いう推測をするにとどめます。
それと中世のブリテンでは『鷹狩り』が盛んだったとのこと。それなら『双子神フレイ・フレイヤ』たちの故郷候補として、イングランドがその一つだと愚考します。
『農耕神フレイ』が騎乗する『イノシシ』も、ブリテン島にいるようですし。『豊穣神』という面もある『双子神』の権能を考えると。『ドイツ』のやせた土地より、『ブリテン島』のほうが有力な候補地だと愚考します。