閑話~微風の取引
膨大な『神話』の集合体である『ギリシャ神話』と『北欧神話』。
その中で最も『綺麗な宝飾品』をあげるとしたら、何を連想するでしょう?私は『首飾り』だと愚考します。
『美神フレイヤ』が求めた首飾りは“不貞の契約”を結んで、製作されたとのこと。そのため“女神のくせに淫らだ”と、『フレイヤ』は批判の対象になっていますが。〔ちょっと待て〕と、言いたい。
『美神フレイヤ』は双子神の『農耕神?フレイ』と同様に、巨人族からやって来た外来の『神』であり。いわば『外様』の神格です。
その権能・司る物の重要性から、信仰されてはいますが。同時に敵も多く。
“信用できない外様大名を取り潰すことが、徳川家に仕える譜代・親藩の役目だ!”と、いう“危険思想”をふりかざし。大勢の武士・その家来を失業させ、塗炭の苦しみを味あわせた。
〔それと同レベルの排他的な連中が『フレイ・フレイヤ』の双子神に何もしなかった〕と、いうのはものすごく不自然であり。『異常なファンタジー』と、言っても過言ではないと愚考します。
『天属性』というものがある。『地水火風』の四大を統合して行使する、『究極魔術』の一極であり。この世界の『災禍×豊穣の天秤』を定める、『境界』に干渉できる『鍵』の一つだ。
〔そのため『天属性』は、最大限の敬意をはらうべき『至宝』の一つよ〕
〔異議無し〕〔当然ね〕〔何を今さら〕
そんな中で『眷属C.V.』にすぎないシャドウ一族の長ごときが、『旋天属性』を名乗るなど、おこがましいにもほどがある。
よって7級『虹焔属性』のC.V.ルトリア・アーシェラトとしては、『相応の処置』をすべき案件だと考え。『ハーレム』に不満を持つC.V.をまとめたのだが。
『争い、連なる双方の竜よ 牙より弱く、角より短い、細やかな刃よ
蒼龍に伏し、その地を回り 屍山を崩す、静謐の血風をつかめ!
さすれば悪鬼は、叫喚を唄い 破滅の刻限を、嵐の影と私は削る
双竜爪影!!!』
「・・-・・・」
凶悪な『風刃の嵐』が吹き荒れる。地形を破壊せず、草木をゆらすだけの、優しそうな『小風刃の群れ』が低空で飛び交い。
「「「「「/*:*/-~\」」」」」
「「「*・;`--ッ~」」」「「「-~;*//:+//-」」」
“オーク”の肥満体を支える、『片足』を無慈悲に切り裂く。
それは機動力を奪うためというより。転倒させて、生きた障害物にする。悪意をもって、オークの『陣形』を崩す、“殺意”をルトリアに否応なく感じさせ。
そしてC.V.ルトリアの懸念は、間をおかず具現化した。
「ヒューー:*;`ヒィ!:?~~+/」
瞬く間に無力化させられた、『タイラントオーク』だった肉塊が地面に転がる。
ルトリアのC.V.パーティーが束になっても、苦戦は免れない。暴力と指揮能力を兼ね備えた特異種を、侍女頭のアヤメは一蹴し。
『ーー:+>~<・:・』
再発動した『双竜爪影』に、『静音詠唱』が追加される。ソレは配下に命令を下し、狂乱させ、士気を高める『暴君の権能』を『侵蝕』していき。
士気を削り、生存本能を刺激して、兵隊の位置情報を奪い。
『タイラントオーク』の軍団を烏合の衆へと堕としてから、無慈悲に殲滅を開始した。
転倒させられた障害物が、機動力を奪われた仲間の逃走を封じ。『|小風刃の群れ』が、足下から確実に“オーク”たちを屠っていく。何とか指示を出そうとする者は、アヤメの『旋風閃影』によって狩られてしまい。
深山の森は、またたく間にブタの『屠殺場』と化していった。
「申し訳ございませんC.V.サマ。お目汚しをしました」
「「「・・-・;・っ!?」」」
そしてアヤメ様が、ルトリアたちに話しかけてきた。
明確に『格付け』は完了し、ルトリアは敗戦の責任を取らなければならない。
相手の実力を見誤り、不満をいだくC.V.リーダーを集めた責任者は、強者に対し賠償の責を負う。
幸いまだ敬称をつけているから、最悪な賠償にはならないはずだが。
「私の『双竜爪影』では、“暴行豚人”の汚らわしい血肉を散乱せざるをえませんでした。人間の『魔術能力』を少しばかり披露したかったのですが・・・」
〔人間・・・??〕〔『魔導能力』の間違いでは・:・?〕
〔イヤっ、いやァあアー-ーッ〕
「・・・けっこうよ。
その『力』は混成都市ウァーテルを守るために、使われるべき刃でしょう」
アヤメが圧力をかけ要求を述べる前に、ルトリアは『譲歩案』を『魔術紋様』で伝える。口約束ではあるが、それを破ればどうなるか。
顔面・頭蓋まで切られた、地面に転がる“肉塊”を見れば、明らかだった。
「とりあえず、この“肉塊”を除去しましょう。
『フリント・・・フレイム:ー・・コーリング<・・フレアレインボー!!』」
C.V.リーダーのルトリア様が『魔術能力』を発動する。
元来、『虹属性』は複数属性を『認識・操作』できても、『魔力量』に劣るとのことですけど。
「お見事な『魔術能力』でございますね」
「・・謙遜など不要よ。貴女の『双竜爪影』を見せてもらった、返礼をしているにすぎないわ」
そう告げてルトリア様は、地面を黒く染める『オークの血河』にまで、『火属性の浄化』を行っていく。
それはアヤメにはできないことであり。シャドウ一族の常識を超えた『大魔術・魔導』であった。
同時に〔C.V.様の「魔力が少ない」は謙遜もいいところね〕と、いう結論をアヤメに出させ。
〔まともな衛兵がいなければ、治安を守れず〕
〔一定の軍勢がいなければ、平和な外交もできない〕
そういう殺伐とした世界で生きる、侍女頭のアヤメにとって、C.V.様に『双竜爪影』をアピールすることは必要なことだったが。
〔間違っても、シャドウ一族が戦争していい、相手ではないわ〕
そう分析したアヤメは、予定通り『次の外交』へと移ることにした。
「ところでルトリア様に、少しばかり相談したいことがあるのですけど」
「ルトリアでいいわ。相談というのは、何かしら?」
「ではルトリア・・『一夫多妻』の営みを安らかにするため、お互い協力しませんか?」
「・・・既に行っているでしょう。シャドウ一族は殿方を提供し、私達C.V.は『身体』を預ける」
そんなものは単に『ハーレム』を構築しているだけにすぎず。心の安寧を得て、身体を休める『後宮・家庭』にはならない。
完全に『種馬』と割り切り、『一夜妻』に終始するならともかく。『生殖行動』のみにまい進する、獣になりきれないなら、最低限の『環境』を整える必要があるわけで。
「私たち侍女シャドウは、ハーレムに平穏をもたらすために『潜伏密偵』を狩り、『術式の目印』を刻みます。その対価としてC.V.パーティーには女性シャドウへの『教導』を依頼したい」
「・・・『潜伏密偵』を見つけ、討伐すると言うの?
そんなことが・・・いえ、貴女なら可能でしょうね」
「まさかっ・・」「それなら外で買い物も・・・」
「そんなことより、陽の光をあびれる・・子供たちを普通に育てられる!」
“常在戦場”などという、“闇討ち屋・ハリネズミ”が活躍する場など、愛を交わす『後宮』にふさわしくない。まして次代の子供たちを育てる、愛の巣にとって論外もいいところだ。
しかし『潜伏密偵』たちは、その忌まわしい“常在戦場”の場を作ってしまう。連中は『魔術能力』『C.V.の個性』を調べ上げ、“闇討ち屋”を誘導する。
そのため人間の世界を訪れたC.V.たちは、心の休まるときがなく。パーティーで警戒しながら『一夜をすごす』ことを強いられる・・・という認めたくない裏事情があり。
「混成都市ウァーテルは比較的、安全だけど・・・それでも完全に(長期間、潜伏する)『密偵』を狩るのは難しいのでは?」
「いいえ、しっかり『情報』をまけば可能です」
長期間の諜報を『任務』として、一般人に化けて溶け込む、『潜伏密偵』は厄介な存在ではある。
しかし密偵である以上、目当ての『情報』を収集しなければならず。
その情報収集を行う瞬間の『心音・血流・呼気・眼球運動』は、どうしても密偵と一般人では差異が出る。
そしてアヤメは他者の『体内電流』を読み、『耳の鼓膜』を解析してしまう。
「『血流』を聴けば、『潜伏密偵』の目星はほぼつけられます。そしてシャドウの『魔術能力』に関する『情報』をちらつかせれば、密偵を逃がしはしません」
「そして私達C.V.パーティーは、そのリスクに見合った技術交流を行う。『魔術・異文化』の教育を、対価として貴女たちシャドウ一族に行えば・・・次代のC.V.たちを育成することに集中できる」
無論、〔プライベートをのぞき見しない〕と、いう『契約』の詳細を詰めなければならず。状況の変化による、定期的な『取引内容』の見直しは必要だけど。
『密偵狩り』が専門でない7人C.V.パーティーが、不毛な『全方位警戒』を行う、必要性が大幅に減るわけであり。
「7級『虹焔属性』ルトリア・アーシェラトの名にかけて、『契約』を結ばせてもらいます」
「ありがとうございます。『旋虹属性』アヤメ・姫紗薙の名にかけて、ご期待に応えてみせましょう」
こうして『取引』を行い、余裕ができたC.V.パーティーはシャドウ一族に対し『配慮』を行うようになり。ハーレムに伴うトラブルは、激減することになる。
「何者だっ!ここをどこだと知って/+*ギ*ッ/ー/」
「無論、知っているわ。“闇討ち”を誘導し、平穏を乱す“騒音”でしょう?」
その影で、いくつかの組織がこの世から消滅したが。記録に残ることは、一切なかった。
とはいえ“陰謀論”をふりかざし、“誹謗中傷”を行うのは本意ではありません。(“忠臣蔵”のように、“明らかに冤罪”をなすりつけられたら、やり返しますけど)そのため“○○神の謀だ”と、いう“推理ゴッコ”はしません。
ただし“首飾りを造る対価に、フレイヤ女神が小人職人たちと一夜を共にした”と、いう説にはもの申したい。
本来、『宝飾品』というのは、装着する者を美しくするため製作される。『指輪』が指のサイズにあわせて造られ・調整されるように。
『フレイヤ女神』専用の『宝飾品』ともなれば、なおさら彼女の首回り・胸部のサイズを把握する。指輪より衆目にさらされ続ける『首飾り』なら、全身のバランスを考慮する必要があるでしょう。まして『美神』ともなれば、『神秘のサイズ合わせ』が必須であり。
『単に高価な宝石・精緻な細工が施された首飾り』では、『美神フレイア』の求める水準すら突破できない。『神すら魅了する宝飾品』は完成しないと愚考します
しかし“略奪上等”なバイキングに信仰された『北欧の神々』にとって、衣服・武具はともかく『宝飾品』のサイズ合わせを行う文化がどれほどあったでしょう?〔女性の苦労を、オトコはわかってない〕と、いう程度ならマシであり。
私の知るかぎりの日本産ファンタジーでは・・・
1)指輪だけを指のサイズにあわせる。
2)オート魔法で装備品のサイズをあわせる。
3)衣服と違い、アクセサリーのオーダーメイドはゼロに近い
・・・と、いうイメージであり。『北欧神話』も似たようなレベルだった。例外は『雷神トール』の妻がつけた『かつら』ぐらいでしょうか。
そういう〔アクセサリーは選んで買う物。小柄勇者『○イの剣』のように、オーダーメイドなどしない〕という固定観念が、以下の伝言ゲームを行わせた。
『未知で神秘のサイズ合わせを、女神が身分の低い小人と長時間行った』
↓
『女神ともあろう者が、身分の低い小人たちと長時間すごした』
↓
『女神が首飾りの対価に、職人の小人たちと一夜を共にした』
こんな感じに、ロクでもない伝言ゲームが行われ。外来の神への中傷、美しい女神への嫉みがからみ、“物欲まみれの売女な女神の神話”が作られたと愚考します。




