閑話~男女の教室
北欧神話の『フレイ神』が騎乗する『イノシシ』。そう言われてもピンとこない人は、多いでしょう。
検索すれば『フレイ神』を調べることは可能ですが。『オーディン、トール、ロキ』と比べ、日本での知名度は低く。〔名前の響きがいい、北欧の神様〕と、いう認識ではないでしょうか。
加えて『勝利の剣』という強力な武器を持っているものの。『その剣で敵を倒した、勝利した』と、いう神話がなく(もしくはマイナーか失伝した)。『雷神トール』のように、『ミニョルハンマー』一つで、知名度を上げることもできない。
これでは『フレイ神の騎獣・シンボル?』の『イノシシ』が、有名になるはずもなく。
『フレイ神はスウェーデンを建国した』と、いう神話を検索で知り、驚いているしだいです。
元マスコットC.V.で柴虹属性のルサーナ・ヴェルニ
イセリナ様の配下だった、8級C.V.で火属性のエレイラ・フォーラス
そして遙和様に仕える眷属C.V.のマリーデ・カレイドル
シャドウ一族のサヘル様に従い、ハーレムを構成する3人は、理不尽な圧力にさらされていた。
〔C.V.ハーレムによって、シャドウ一族の秩序が乱されている。速やかに解決し、問題に対処しなさい〕
要約すると、こんな感じの命令がシャドウ一族を束ねる、姫長様から下され。
他人の恋愛事情に首を突っ込む“厄介事”を押しつけられていた。
〔知りませんよ〕〔女性の魅力で、つなぎ止めればいいでしょう〕
〔私たちはシャドウ一族ではないので、貴女サマに従ういわれはございません〕
こんな本音を述べる。正論をふりかざすことを許さない、殺気を扇奈様は放っており。旦那様のお立場を考えれば、ルサーナたちに拒否する選択肢など、初めからありはしなかった。
「異種族の殿方とつきあうコツ。それは〔薄氷の上を渡る〕と、いう慎重さこそが最重要です」
「「「「「「「・・・:-・・・」」」」」」」
混成都市ウァーテルの一画にある、C.V.種族が主に居住する一画。
別名、『魔術市街』や“万魔女殿”と呼ばれるエリアに、さらに厳重に『結界』がはられ。その中でルサーナとエレイラの2人は、複数のC.V.パーティーに『教鞭』をふるっていた。
「その理由はいくつかありますが・・一番の理由は殿方の重荷にならないため。
人間のハーレムは、普通??2~3人から始まり。そこから(私たちのように)段々と人数を増やしていきます。
いきなり〔C.V.パーティー7人、全員と結婚してください〕と、いうのは殿方が人数に圧倒されてしまう。〔容量をオーバーしてしまう〕と、いうものです」
『一夜妻』として、一晩だけ褥を共にするならば。一人一夜として、約7日間だけC.V.パーティーメンバー7人と男性シャドウが過ごせばいい。
聞いただけでも、かなりの難事ですけど。『身体強化・霊薬』を併用し、『7日だけガンバレル呪法』を使えば。男性シャドウとC.V.たちは、何とか『生殖行為』を乗り切れる計算だった。
だけど全員が『魔術士』で、一人一人『異なる文化』を持つ。それぞれ思惑・願望があるC.V.パーティーメンバーたちは、『恋愛観』も千差万別であり。『かなり強い契約』で縛らないと、そもそも『一夜妻』すら成立しない。
〔次世代C.V.のため、一族の血統を守るために、この身を捧げるわ〕
〔上位C.V.だけを犠牲にするわけにはいかない!〕
〔野獣のような“色狂い”から、主君のC.V.を守ってみせる〕
こんな胸中の戦乙女たちに〔『契約』なんだから、欲望を吐き出しても問題ない〕と、割り切れるほど殿方たちは単純ではなく。
〔お互いに少しでも良い思い出になるよう、色々とガンバロウ!〕
〔そもそも『契約』なんだから、惚れた腫れたにならないだろうし〕
〔そうだよな!『魔術契約』をC.V.様たちが、破るはずないしな!〕
こうして男性シャドウとC.V.パーティー7人たちの、認識のズレは隔絶したものと化し。興味が好感に、好意から親密な関係となったあげく。
普通の『戦闘民族』ではなく、『戦争種族』のC.V.たちは恋の戦いに参戦し。
『戦争屋』らしく、自分たちに不都合な『条約・契約』をあっさり破った。
この状況下で、無策・放置を行うのは“破滅に進む”と同義であり。ルサーナたちは一応(契約を破った)先達のC.V.として、後進のC.V.たちへハーレムの教導を行うことになる。
「そもそもシャドウ一族の皆さんは、基本的に『一夫一妻』であり。何より世間一般の“色魔・男妾”の類ではございません。
C.V.パーティー7人のハーレムは、殿方の心的負担になるのです」
「ええっ!?」「そんなっ・・」「“性欲の権化”じゃないというの・・?」
ルサーナの言葉に、少なくないC.V.が驚愕する。
それに対しルサーナは、いたいけな男性諸氏の名誉を大きく傷つけつつ。
〔貴重で数の少ない男性シャドウを、大事にしましょう。そのために最初は少人数のハーレムを作り、お互いの理解を深め。
馴れてきたら残りのC.V.メンバーと女シャドウで、殿方を囲いましょう〕と、いう『恋愛戦略』の指導を行った。
それに対し、大半のC.V.パーティーは納得するも。
〔もし【慕情】を抑えられなくなった時は、どうすればいいの?〕と、いう質問が投げかけられ。
それに対しルサーナはにこやかに答える。
「そうですね・・・その時は『一夜だけ』慕情を解放する。
そうして『自分だけの』満足感を得ることを、おすすめします」
「『自分だけ』・・・の満足感ですか」
「はい。例えば私の『魔術能力』は『毒を操る、幼い多頭蛇』がモチーフですけど。
『毒』が弱い分、わずかに刺激を促すだけの『発汗剤?』を互いに塗る。
たくさんの蛇頭と舌でくすぐり、なめ、ほおずりしつつ、甘噛みする。
そうしてオリジナルヒュドラにできない、たくさんの『蛇体』でこすり、からみつてから・・・」
「「「「「「「・・-・^・」」」」」」」
「自分の根幹に等しい『モチーフ』を見せつつ、夫君の『許容範囲』を見定める。
そこまで自分を解放できれば、最大限の満足感を得られるでしょう。回数・時間など問題にならない、至福の瞬間を!」
「「「「「「「・・~・・・」」」」」」」
ルサーナの主張に対し、全てのC.V.たちが沈黙し。
それからしばしの休憩をはさみ。ほとんどのC.V.がようやく落ち着いてから。
エレイラによるハーレムの『財産・小遣い』に関する、講義が始められた。
混成都市ウァーテルの地下奥深く。かつて“穢れた”下水道と地下迷宮のあった場所で、複数人の影が走る。
人目を忍び、不在証明を偽り、『感知魔術』をすり抜け。地下の隠された空間に、彼らは集い。
「皆、よく集まってくれた!」
その中の一人が声をあげる。『火術式』で秘かに名乗りつつ、集まった野郎のシャドウたちを観察し。この場に『密偵・裏切り者』の類がいないことを、さらにしつこく警戒し。
そうしてようやく藤次は本題に入る。
「今日、集まってもらったのは他でもない。一夫多妻について、最重要の注意点を通達するためだ!!」
『ハーレム』:それは外交のため、『跡継ぎ』を産んでもらうため。わずかばかりのオトコの優越感を得られる、一夫多妻の『群れ』であり。
〔どうぞよろしく、お願いします〕
〔〔〔〔〔〔・・・・-・〕〕〕〕〕〕
C.V.パーティーと顔合わせをした時点で、砕け散った『男の夢』でもある。
半数のC.V.パーティーメンバーが男性シャドウより強く。男性シャドウのほうが戦闘力で勝る、残りのC.V.メンバーに不届きなことをすれば、制裁は免れない。
瞬時にそれらを察した野郎どもは、現実をみすえ。『種馬』の立場を理解し、C.V.たちをもてなすことに全力をつくした。弱者として媚びへつらい、C.V.様のご機嫌をとりつつ、彼女たちの情報を集め。
模擬戦を行い、『術式』の開発に協力し。遊戯を楽しみ、手料理をふるまい。
混成都市ウァーテルの観光が、最高の思い出になるよう。男性シャドウたちは最大限、励み務め。
『一夜限りの交わり』に向けて、色々たくさん励んだのだが。
〔「一夜限り」と散々言って、繰り返したのは、C.V.だよな!?〕
〔泣いて、すがって、『呪縛』をかけるの勘弁してくれ〕
〔ふざけんなっ!オレなんて暗がりに引きずり込まれたと思ったら・;+;・〕
様々な生々しい『体験』を野郎どもは味わい。
その結果、ほぼ無期限にハーレム?は継続することになる。
〔おもてなしで、ちょっとサービスしただけだ!オレたちの実態を知れば、C.V.様たちは幻滅して、すぐに飽きるに違いないさっ!!〕
〔・・・ふ~ん〕
その後、シャドウの女性陣に、こってりしぼられて、現在に至るのだが。
「『注意点』なんてものがあるなら、なんで最初に教えてくれない!;!」
「そりゃあ『男の夢』を壊したくなかったからなぁ・・」
〔C.V.ハーレムの道連れは、一人でも多い方がイイ〕と、いう本音を藤次は胸中に隠しつつ。ハーレムの『オス役』に任じられた、男性シャドウたちの追求をかわしつつ、彼らを落ち着かせ。
「とにかくこれ以上、自分の立場を悪くしたくなかったら・・『誇り』のたたき売りをしたくなければ、やるべきことは一つ!
〔『戦果・首斬り』は評価しない!〕と、いう文化を周知徹底することだ」
「「「「「「「「「「・・・`・ッ」」」」」」」」」」
C.V.様たちは様々な『文化・魔術』を持ち。イリス様、イセリナ様たちのように、かなり近しい間柄でもないかぎり、異なる『嗜好』を持つ。
それはハーレムの主??にとって、厄介な危機をもたらす。他の女性と『好み』を間違えれば、激怒させるリスクをはらむのだが。
「血の気の多い『戦争種族』として、『戦闘力』をアピールしはじめる。
〔貴男のために敵を倒し、怒り狂い、他者を否定する〕と、いう心情の変化だけは、絶対に阻止しなければならない!」
女戦士にとって、自らの戦闘力をアピールし、愛情の深さをアピールする。それ自体は珍しいことではなく。
〔苦手な家事を覚えろ〕と、言う気など、藤次たちには欠片もない。
「しかし『ハーレム』という初めての体験をして、ストレスをためる。『妊娠出産』などで気うつになるなど、様々な理由で不満を押さえつけていると。
〔貴男は強いC.V.が好きでしょう?だから(感情を爆発させて)強いワタシをたくさん見て!
貴男を踏んで、血を流させ、捕らえて離さないワタシをもっと愛して!〕と、いう感じになり。ちょっぴり怖い『死神戦姫』になる可能性がある」
「「「「「「「「「「・・;+`ッ・ー・*・」」」」」」」」」」
藤次の話を聞き。もたらされた情報を聞いて、聴衆の男たちは声にならない悲鳴をあげる。
この後に及んで〔複数の女性をはべらせる、『貴族・悪党』みたいだな~〕と、いう甘すぎる夢想が改められ。
『女魔物たちに包囲された。逃げ場はない』と、いう現状を誰もが理解した。
「こうしちゃ、いられねぇ!さっさと・・」
『月蝕暗夜』
「っ!*?・・;`*ーー,,!」
危機的状況に抗うべく、野郎が動きだそうとした瞬間に、『闇の奔流』が藤次を呑み込み。
「旦那様?遙和は、もう待ちきれません。
お戯れはこのぐらいにして、そろそろ参りましょう。今宵も楽しい“余興”を用意しておりますれば・・・」
「「「「「「「「「「・・・ー・」」」」」」」」」」
そう告げる『ナニ』かが、上級シャドウ四凶刃の藤次を引きずっていく。もちろんこれは観衆たちの当てずっぽうにすぎず。
危険なことだけは確実な『闇の魔力』の中で、ナニが行われているのか、男性シャドウたちに知る術などなく。
「帰るか・ー・・」
「「「「「「「「「・・・そうだな」」」」」」」」」
藤次が退場してから、しばらく時間が過ぎ去り。
〔明日は我が身〕と、いう【現状】を正しく理解させられた、オトコたちは家路についた。
そもそも北欧は寒い地域であり。そんなところに冬眠ができない(雪深い冬を乗り越えられない)『イノシシ』が、『北欧のフレイ神』の騎獣になるのに首をかしげます。
ただし『農耕神フレイ・美神フレイア』の双子神は、本来なら『巨人族・ヴァン神族』であり。『大神オーディン』が率いる、『アース神族』に合流した外来の『神格』です。
北欧は寒い地域ですが、『北欧神話』には灼熱の世界もあることから。
〔『イノシシ』に乗っている『農耕神フレイ』は、『イノシシ』が棲息できる『暖かい地域』から来訪した〕と、いう解釈もできるでしょう。
もしくは『暖かい地域から持ち込まれた、農作物・その種』を神格化したのか?『イノシシがむさぼれるほど、豊かな収穫物』を神としてあつかったのか?
適当な推測しかできませんが、スウェーデン建国の神話がある『神様』であり。どこかの雷神と違い『○○を破壊した、皆殺しにした』と、いう類の『残酷な神話』を耳にしない神様ですから。
〔安直に『悪神』あつかいするべきではない〕と、愚考します・・・もっとも、そうすると出番も減り。微妙な『知名度』になるかもしれませんが。