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閑話~旋天たちと不協和音

 インド~中東の『豚・イノシシ』の神秘はいまいちだと思いますが。そこから地中海を渡り、『ヨーロッパ』に目を向ければどうでしょう?


 星座にこそなっていませんが。『女狩人アタランテと戦士たちが、協力してカリュドーンの大イノシシを倒した』というギリシャ神話があり。


 北欧神話には巨人族から神族となった、『フレイ神』の騎獣が『イノシシ』だとのこと。


 個人的に『ヴィシュヌ神、ウルスラグナ』の変身する『猪』より、これらの『イノシシ』のほうが有名だと思いますが。

 それほどネームバリューに大きな差など無く。ヒンズー教・ゾロアスター教よりも、ギリシャ神話・北欧神話のほうが、日本産ファンタジーのモデルに取り入れられており。それに伴うネームバリューの差だと愚考します。

 混成都市ウァーテルの中心部。政庁の近くに建つ、新築の屋敷にC.V.3名を呼び出し。


 「よくやってくれました。貴女たち3人の献身に感謝します」


 「ドウイタシマシテ」「・・・ありがとうございます」

 「『契約』を果たしただけですわ」



 ルサーナ、マリーデとエレイラたちへ、姫長シャドウの扇奈・セティエールは感謝の言葉を送っていた。

 それは一種の『外交・権力争い』に伴う『広報』であり。シャドウ一族を束ねる扇奈が、C.V.にまで事実上の命令をくだした。いわゆる『越権行為』を行ったあげく、それを隠す気がない。


 明文化されてないものの、法的には問題行動アウトであり。軍法・法令を定める(一族を束ねる)立場にある、扇奈にとっては“悪い前例(リスク)”を作ったと言える。


 〔せめてシャドウ一族の屋敷ではなく、別の会談場所を設ければ?〕と、苦言を呈されてもいい『愚行』なのだが。

 

 しかし扇奈としては、彼女たちへの報酬を支払う、この『儀式?』を隠す気など無く。〔何なら衆目がある政庁の一室を借り、『広報アピール』をしても良い〕と、すら考えている。 


 何故か?



 「貴女たちのおかげで、大勢の一族の者(シャドウ)たちが救われる。『報酬』は望む物を与えましょう」


 「・・・-・」「・・・:ー・」「・・・ー・^・」


 景気がいい報酬の提示に対し、C.V.3人に笑顔はない。

 〔本当に無制限に望みをかなえる〕などと、扇奈が言ってるわけではないのを、彼女たちは理解しており。


 むしろ〔キサマらが旦那サヘルとよろしくヤッタせいで、現在の“危機”が発生した。

 命がけで協力するか、破滅するか?今まで『選択の自由』すらなかったけど。

 これからは『選択肢(ホウシュウ)』をあげる〕と、いうような。


 扇奈の『恫喝』を、3人組(C.V.)はよく理解していた。






 数十日前のこと


 下級シャドウ(サヘル)の妻たち(・・)である、ルサーナたちにとっては“理不尽とばっちり”な話だが。

 扇奈としては“非常手段”をとってでも、彼女たちに協力させる。脅し、圧力をかけ、多大な報酬で釣ってでも、“汚れ仕事”を命じ。


 シャドウ一族がかかえることになった、問題の解決に協力させる必要がある。そんな厄介事が発生した。



 〔イリス様との『契約』により。

  シャドウ一族の男たちを、C.V.ハーレムの『夫役(種馬)』にすることは認めたわ。


  だけどC.V.パーティーに、シャドウの男性を“売り飛ばす”ことなど認めた覚えはなく。シャドウ一族の【女】をないがしろにするなら容赦しない〕と、いう事実上の『宣戦布告』を行ってでも、C.V.勢力の“乱行らんぎょう”を、扇奈たちは制止する必要があった。


 その理由はシャドウ一族の危機を乗り切るため。

 C.V.パーティー(女性7人)夢中になった(振り回された)、男性シャドウたちが一族の女たちを放置してしまい(半ば忘れて)


 一族の空気が(刃傷沙汰)険悪に(まで、)なってしまった(待ったなし)



 無論、主君イリスも扇奈も、こんな状況が起こるなど夢にも思わず。



 〔貴族の当主みたいに、複数の妻をめとることを、シャドウのみんなに強制する気はないよ。

  『一夜妻』・・だったかな?次代のC.V.を育むために、ちょっと『ハッスル』してもらえばいいだけだから〕


 こんな風に告げたイリス様(マスター)に悪意など無く。マスターは約束を守る御方だし、シャドウ一族を気に入っている。そのくらいの信頼関係を、扇奈とマスターは確かに構築していたのだが。


 〔彼のような勇士は、私たちC.V.パーティーにこそふさわしい〕

 〔『秘宝・術式』でも、何でもあげる・・だから彼女シャドウとの婚約を破棄して!〕

 〔行かないで+;・捨てないでよぉ・・・ー・〕


 「「・・-・・・~・っ」」


 想定を遙かに超えて、C.V.パーティーが男性シャドウたちを気に入ってしまい。

 戦()種族C.V.の手練手管を駆使して、男性シャドウ結婚相手にしよう(持ち帰ろう)としてきた。

 しかも『決闘』による〔賭けを挑む〕のはマシなほうであり。“詐欺まがい”の『資金援助』から、職人まともなギルドを潰しかねない『技術提供』など。



 「“既成事実”を作る陰謀が、運良く(・・・)失敗しなければ、危ないところだったわ」


 頭痛をこらえる扇奈に対し、主君イリスは唐突に話しかけてきて。


 「・・・本来、ボクたちC.V.は実力のある冒険者と、『一夜の関係』を結んできたのだけど」


 「それで・・・?」


 「本当に実力のある冒険者は、安易に『行きずりの関係』など結ばないし。

  それより劣る勇者だと、増長したあげく“男尊女卑”の本音が露わになる。もしくは戦姫の力に依存して、堕落しかねない。


  シャドウのみんなほど、強くて、柔軟な思考で、そのうえ色欲が強い(エッチな)人間は貴重なんだよね~」


 「・・・つまり『契約』を改定しなさいと?」



 〔『種馬・男娼』あつかいだった男性シャドウが、正式にC.V.集団(パーティー)と結婚する〕


 それは外交的には『勝利』と言ってよいことであり。『政略結婚?』に伴う支度金・結納品は、莫大な利益を一族にもたらすだろう。


 〔ないわね〕


 ただしそれは女シャドウの〔尊厳を投げ捨てる〕と、同義であり。こんな案件を協議にかけたら。

 その時点で扇奈は一族の者から、“無能の烙印(女シャドウ)を押されかねない(の敵に認定される)

 

 かつてシャドウ一族が滅亡寸前で、愚弟(勇馬)を『政略の駒』にした時期ならばともかく。それなりに実力をつけた現状で、一族内部の『婚約』を破棄して、C.V.に身売りするなど。


 扇奈個人としても〔論外に決まっているわ〕と、しか言いようがなく。



 「ボクとシャドウが結んだ『契約』は、たいてい(・・・・)のことに優先する。

  だけど『初恋?』に夢中なC.V.パーティーへ正論を説いても、徒労に終わる可能性が高い(に決まっている)


  シャドウの力で解決できないなら、ボクが対応するけど・・・」


 「自分たちの身すら守れない者に、理不尽なこの世界で生きる資格は無いわけですね」


 マスターの“飼い犬”に成り下がるか、得がたい『忠臣』となって栄耀栄華を勝ち取るか?

 ここが『分岐点』と判断した、扇奈たちの選択は一つしかなく。


 「かしこまりました・・我々、シャドウの実力をご覧ください」


 あらゆる手段で、C.V.パーティーを圧倒し、やり込め、一族の尊厳を守る。


 

 そのために感情・欲望のおもむくまま、勝手にハーレムを作った。

 “盗賊ギルド”と戦っているまっ最中に、愛欲を貪った・・・ようにしか見えないサヘルたちには、たっぷり働いてもらう。


 まずは『宣戦布告』に等しい、“越権行為”をC.V.勢力(ルサーナたち)に対して行い。“邪教”を攻撃しつつ、割とマシな元盗賊(衛兵)たちで『陽動』を仕掛け・・・・・


 「いけないわね。独断では万が一もあり得る」


 そうつぶやいてから、扇奈は『切り札』を呼び出すべく、移動を開始した。 

 『手柄首を奪いあい、殺しあう』と、いう感じのバイオレンスな戦国映画を、年末に観ましたけど。あんなのを観ると『アタランテに猪退治の栄誉を、勇士が譲った』と、いう『神話』の稀少価値が、ますます高くなります。

 

 それに『飢餓・飢え死に』が、現代より近しい古代世界において。農作物を荒らす『害獣イノシシ』の被害も甚大であり。「うり坊はカワイイ」などと、言ってる場合ではないと愚考します。


 加えてイノシシを捕獲・捕殺?する『罠』も、現代より製作コストがかかり。鉄・金属製の『罠』など作れないし。そんなものを作れば、盗まれ略奪されてしまう。


 そうなると狩人さんに『イノシシ狩り』をしてもらうわけですが。『短弓』の威力では、イノシシの毛皮・筋肉を貫通するのは難しく。

 かと言って『長弓』だと『射る』以前に問題があり。山間部での移動は困難なうえに、森林では枝にひっかかる。そうして疲労したところで、突進してくる『イノシシ』を一射で仕留めなければならない。


 この状況で『弓の名手(アタランテ)』が敬意を払われるのは、当然のことであり。トドメをさせずとも致命傷を与えれば、一番手柄となるのは打倒でしょう。

 まあ手柄を譲った勇士は〔『アタランテ』に求愛するため(下心があって)、手柄を譲った〕と、いう説もありますが。

 トロイア戦争で略奪の限りを尽くしたギリシャ人より、昔の時代に『手柄』を譲る勇者が存在し。内心はともかく『カリュドーンの猪退治』に参加した、他の勇士たちもそれを認めた。


 やはり『アタランテ』は優れた英雄であり。討伐系の武名が乏しい『アタランテ』にとって、『猪退治』の名声は必要なものだと愚考します。


 もっともギリシャ英雄の中でも『走力』に優れ、『月神アルテミス』の加護を受けている『アタランテ』のこと。他人の目がない山中で、並の狩人では不可能な『怪物退治(狩り)』をしていたんじゃないかな~・・・と想像しています。

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