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閑話~旋天の非常手段:ネクロノーム

 恥ずかしい“知ったかぶり”をした時のハナシをあげるなら。私にとって西遊記・孫悟空に登場する、『猪八戒』は黒歴史です。


 周囲の人たちが〔猪八戒は『ブタ』の妖怪だ〕と、言う中で。私は〔猪八戒の『猪』はイノシシを意味する。つまり猪八戒は『イノシシ』の妖怪?だ〕と、いう感じに偉そうに言ったものですが。


 実際のところ中国において『猪』『豚』は、ほとんど同じ扱いであり。『猪八戒』は、その外見のとおり『豚』の妖仙だとのこと。


 〔穴があったら入りたい〕とは、まさにこの事です。

 シャドウ一族を率いる姫長の扇奈・セティエール。


 彼女は聖賢の御方様、こと7(??)級光属性C.V.のイリス・レーベロア様に仕える忠臣であり。

 『マスター』と呼ぶことをイリス様に許され。子飼いの部下であるシャドウ一族を率い、戦闘関連の荒事に対応してきた。


 その立場上、文官と陸戦師団を率いるC.V.イセリナ・ルベイリーとは政敵同士であり。貴族のような権力争い(足引っ張り)までいかなくとも。それなりに手柄争いをしても、いい関係のはずだ。


 

 〔こちら陸戦師団から贈られたお酒でございます〕

 〔いい『肉』が獲れたな・・重騎士たちにも分けてやれ〕

 〔重騎士・シャドウの皆さんたちは、数字というもの(文官の苦労)を理解なさっている〕


 

 しかし有能・有望なシャドウたちは、『派閥争い』などというものと無縁であり。そうなると下級シャドウも礼節を覚え、姫長の扇奈も配慮・・を求められる。

 そのため扇奈としても、イセリナと表立って争うわけにいかず。〔何となく同盟を結んでいる〕と、いう関係を維持している。


 

 「ヤッホー~、扇奈!今日は嬉しい『ニュース』をお届けするよ^・^」


 「・・:・`・ー・」


 時たまマスターが錯乱したり。いと尊き女王たるイリス様が、『お忍び』の建前でメイド服を着て徘徊はいかいする。

 あげくに状況を引っかき回し、“良いニュース(トラブル)の後始末”を事実上、押しつけ。扇奈とイセリナの忠誠心・忍耐力をガリガリと削ってくる。


 そんな“騒動トラブル”に対抗するために、不毛な“権力争い”を行っているヒマなどない。


 〔シャドウ一族とイセリナの配下は、一致団結して困難トラブルに当たるしかない〕


 そんな喜劇のようなコトを、扇奈はコレッポチモ考エタコトハナイ。



 「・・・それでどのような“騒乱ニュース”でしょう」


 『愛想』というものを投げ捨てた表情で、扇奈は主君イリスの『意向』を問いかけ。


 「サヘル君がボクに諫言かんげんして、“本神殿”との争い(の攻略)を止めてくれたかんだよ。

  ご褒美をあげたいんだけど、扇奈を飛び越えて『地位・財貨』を与えるわけにはいかないし」


 「・・・ソレで?」


 「だから『お嫁さん』を増やす許可を与えたよ(よう命じたよ)


  護衛()してくれる、わかりやすい戦闘力を持つ(C.V.)

  『人脈・支度金』に期待できる、貴族の血をひく御令嬢。

  

  そして、それら両方を期待できるボクの妹まで、よりどりみどり!!」


 一瞬、気が遠くなる。

 高山・天空の魔境だろうと平常を保つ、扇奈の「心」肺が“現実逃避”という誘惑に絡め取られ。


 「もちろん(今は)下級シャドウな、サヘル君のハーレムだけ(・・)を増やせば。

  〔ボクも私も『夫or奥さんハーレム』が欲しい〕と、いう者が出てくるに違いない。


  だからまずは(・・・)上級シャドウである藤次君の『正妻C.V.(パーティー)』を召喚する!」


 「絶対にお(いね~よ)やめください(、そんな愚か者)


 姫長にあるまじき言の葉(スラング)を吐きつつ、扇奈は瞬時に決断する。


 一族を守るため、姫長は決断をするべき『時』があり。

 〔大を守るため、小を切り捨てる〕と、いうがその時だろう。『錬金光術アルケミックライト』『筆者光術ライターライト』の使い手(サヘル)は、正直言ってかなり惜しいが。

 余計な欲など、かいている場合ではない。


 「聖賢の御方様のご厚情に対し、サヘルも感謝の念がたえないでしょう。

  それに他人の色恋に“妬心”を抱く、愚か者など一族シャドウにはおりません」


 『口上』を述べながら、扇奈の脳裏に“要注意人物表ブラックリスト”が浮かびあがる。それらへの警告・対抗の『作戦計画』を迅速に組み立てつつ。

 腹心アヤメに習った身体操作で、扇奈は『笑みの表情』を主君イリスに向けて作り。


 「そこまで言うなら、今回・・はサヘル君のハーレムを増やすだけ(・・)にしようか」


 「かたじけのうございます」


 頭を下げつつ、主君・・のもとから退出し。

 政敵?(イセリナ)緊急会談(相談)を行う場を設けられるよう。扇奈は〔予定を全て延期・中止する〕と、通達して、代理人を送り。


 

 「一大事よっ・・・!!・!」


 イセリナからの情報ハナシを聞き、“非常手段”を発動する決断をした。

  





 『混成都市ウァーテル』と呼ばれる、交通の要衝がある。流通を司り、莫大な富を産む商業都市であり。


 『盗賊ギルド』に関わった者たちの面子を、地の底まで堕とし滅ぼした『魔都』でもある。


 〔“弱肉強食”を唱えるなら、ボクたちに蹂躙されても文句はないよね?〕

 〔魔力が無い(に等しい)のはともかく・・・鈍足ノロマ・非力で感覚まで鈍いとは〕

 〔所詮は二枚舌ウソツキご都合主義(貴族と同じ)な“実力主義”です〕


 都市を追われ、財宝を奪われ。神殿の一部(大聖神官)と結託していたことを暴露され。

 食糧・財貨を“無駄”に食い潰した、“最悪の愚か者”という烙印をシーフたちは押されてしまい。

 

 〔降服か、モンスターのエサになるか?〕と、問われれば。大半のシーフに選択の余地など無かった。




 「キサマに重要任務を与える。身命を賭して、任務から生きのびろ!」


 「わかりましたっ・`・!」


 そして元盗賊のムントは〔わけのわからない〕ことを、時折言われる『衛兵見習い』となっていた。身分上は“奴隷兵”に等しいものの。

 それなりに安定しており。抗争・上納金やアニキ分の暴力(お山の大将)に、怯えることもない。『魔術』やそれと同レベルの『ナニか』にさえ、関わらなければ。時々、酒まで飲める待遇に、満足感すら得ていた。


 今日、この時までは・・・


 


 


 ムントに与えられた任務。それはエレイラ様、ルサーナ様とマリーデ様たち3人組のC.V.パーティーに同行し、“邪教徒”の拠点におもむくくことだった。


 しかも『肉壁』となって、敵の攻撃を受ける必要などなく。

 〔『偵察・罠の解除』など、元盗賊としての技能を使わなくていい。雑兵(捨て駒)あつかいして、危険なファーストアタックを命じたりしないと誓う〕と、いう言質げんちまでもらっている。


 ムントに求められたのは、あくまで〔C.V.パーティーに同行(を観察)すること〕であり。〔命の危険を感じれば、逃げ帰ってもかまわない〕と、まで言われた。

 ならば奴隷同然な身分のムントに、断りの『セリフ』など言えるはずも無く。


 〔せいぜい、まきぞえを食らわないよう、立ち回ろう〕と、考えていたのだが。


 『ワンダーヴェノム!』『フォービーダンス・ー・』

 『来なさい・・カレイド!』

 「「「「ギャa-;`*ーーー!」」」」


 『毒の刃』が破裂し、『怪火』が舞い踊る。

 そうして動揺した連中に、『真紅の人?影』が飛びかかり。邪教徒たちの断末魔が、絶えることなく響き続け(・・)

 


 「オノレぇー^~おのれっ、オノれ、Oのレぇらアアア~:--」



 「・;・・(コッチヲ)っ:-・-(ニラムナ)!」


 同行していたにすぎないムントまで、女魔術師(3人C.V.)パーティーの一員と見なされたあげく。狂気をはらんだ邪神官から、憎悪の視線を向けられていた。


 〔おまえら、オレが一番弱いからにらんでいるんだろう。にらむならこの惨劇を起こした、C.V.サマをにらめ!〕と、ムントは声を大にして言いたい。



 「覚悟はいいかしら?

  キサマたちに弄ばれた娼婦・奴隷の怨みを、この場で私がはらす・・」


 ただし下手な発言は『破滅の確定』と同義であり。邪神官よりヤバい『邪気』を放つ、C.V.(マリーデ)様の『眼光』にさらされるリスクを伴う。

 ならばムントとしては精いっぱい身を縮め。おっかない方々の視界に入らない努力をするしかないのだが。


 「愚か者どもがっ!・・冥府の力を思いシれぃ『ネクロバタリオン』!!」


 豪奢な法衣をまとった、邪神官の『呪文』によって、広範囲の魔術が発動する。ひび割れ隆起した床から、アンデットの軍団がわき出て。そいつらがムントを見逃す可能性はゼロであり。

 ムントとしては〔巻き込むな!〕と、怒鳴りたかった。


 命の危険を感じず。〔逃げるほうが危険だ〕と、判断したとも言う。


 「「・・・-・」」


 『マスカレイド!ブラッドリィ・・デスター・:・ネクロノーム!!』


 “・=;”“*-~”“:+^”“/-*”“ーー,ー~ー”


 「なっ!?」


 死者の軍勢が膨大な『邪気』によって、侵蝕されていく。『浄化』する気など欠片もない、おぞましい“ナニか”が、『死体の群れ』に悲鳴をあげさせ。骨・屍肉を、よりおぞましく『装飾?』していき。


 「動けっ、動かんかぁー~ーー~!バカなっ、キサマらナニをしたぁ;・+」


 「キサマ()ではなく、ワタシ(・・・)がしたのよ^。


  本来、二足歩行は不安定なものであり。邪神官キサマごときが、二本足で歩く『アンデット』の群れを、操ることなどできはしない」


 〔だからワタシは汚し、穢して、アンデットを貶めた。


  くらい『魔力』を与える代わりに、二足歩行を行う感覚に『泥土マリョク』を塗り。生者を探す眼窩がんかに『鬼火マリョク』を灯し。防御力を高める『術式マリョク』で、関節部を固め・・・〕


 マリーデ様が“ナニか”を告げているものの。ムントの心は理解することを拒み。視界の隅では、邪神官が表情をひきつらせている。


 そんなやり取りを知らぬげに、『魔力』が高められて。


 『『フォービィーヒュドラ!!』』


 本来なら気味が悪い色の『炎』が、“穢れた周囲”を焼き払っていく。


 それを目の当たりにしながら、ムントは己の意識を手放した。



 



 そうしてC.V.の『魔術(邪法)?』を目の当たりにしてから数日後・・・


 「ハ~レムッなんて、ウッソさー^~まっやかーしさ~:-」


 「妙な『薬草酒』を飲まされてから、記憶がトんで・・・

  朝になったらベットで裸の彼女が・-;-:」


 そこは心の底から、近寄りたくない場所だった。


 「これは、いったい・・:・?」




 ムントは確かに歓楽街を訪れ。その中でもひときわ大きな建物の裏口へと案内された。

 そうして〔臨時の『警備・下働き』として働かされる〕と、思いきや。

 こぎれいな服を着せられ、身だしなみを整えられ。金持ちのお大尽だいじんしか予約がとれない、二階にある豪華な宴席へ案内されると。


 綺麗な男女の給仕がしゃくを始め。夢見心地になったところで、“ソレ”は始まった。



 「これより男性シャドウの『慰労会』を開催する!

  普段、ため込んだ心理的圧迫ストレスを吐き出し。明日からの戦いに備えよう!」


 「「「「「「「「オォオオーーーーーっ!!」」」」」」」」


 「「「「・・・-・」」」」



 心理的圧迫:遠回しな言い方をしている、ソレを訳すと。〔女性たちに囲まれた、ハーレムの苦労〕と、なる。


 「ハーレムが嫌なら、自分と変われ」「モテ男が贅沢な・・・」

 「要するに男娼の苦労話グチだろう」


 ムントと同じ立場な野郎どもはつぶやき。それは宴の経過とともに、小さくなり消滅した。


 「だ・か・ら順番は守ってくれよぅ・・血が高ぶったと言われてもっ」

 「オレはハーレムの主なんだ!ヴァルキリーの“仲裁・審判役(クッション)”じゃないっ!」

 「オレは男娼ヒモじゃない、飼われる弱者ペットになんてなりたくない・;-・」

 

 「・・・・:・」


 〔いけ好かないシャドウの弱みをにぎれるチャンス〕と、いう“無謀な思考”が霧散する。


 そしてムントは〔昨日のC.V.3人を、ハーレムに加えている、(無謀な)勇士がいるかもしれない〕と、いう想像をしてしまい。


 生き残る努力をすべく、立ち上がった。 




 


 ネタバレ説明:『ネクロノーム』について


 人間の移動手段である『二足歩行』は本来、極めて不安定なものであり。『感覚器官』は繊細・精密な『臓器』に等しく。『ホムンクルス』をはじめとする『人造生命クリーチャー』に、最低限の活動させるだけでも、高度な技術を要する。


 〔それなのに『死霊魔術師ネクロマンサー』だけが、多数のアンデットを歩かせ。標的の生者を『感知』させるのは反則チートだ〕と、いう考えにより。

 眷属C.V.のマリーデが編み出した、『死霊術式』のアレンジが『ネクロノーム』です。


 そんな『ネクロノーム』の要諦は『歩かず、立ち上がることもできない。五感のない、屍体を造る』ことであり。

 『物理法則で困難なことは、魔術でも困難になる』と、いうことわりが幅をきかせる。そんなこの世界の『魔術法則』を利用して、『動く死体(アンデット)』を否定して封じる。

 『魔術(邪気)付与』を行うことで、『アンデット』を増強する代わり。『アンデット』の関節部・五感のほとんどを封印してしまう『術式』です。


 魔力量・魔術の技量でマリーデよりはるかに勝る。格上の『人間種(C.V.以外)』が使う『死霊魔術』を、『ネクロノーム』は大きく阻害し。『死霊魔術』を使う“邪教団カルト・自称神”の面子をつぶしたり。『アンデット』の浄化に失敗した、“生臭な神官”のプライドを粉々にしています。



 本来は死亡を『偽装』するための『屍人形』を造る。不憫ふびんすぎる娼婦を足抜け(脱走)させる、『身代わり人形』を製作するため、『ネクロノーム』は編み出されたのですが。


 〔何故、強欲悪党の“詐欺ルール”に怯え、逃げ隠れしなければならないのかしら?〕と、いうマリーデの意向に伴い。

 拷問官・修羅場をくぐった者すら、正視にたえない『屍人形』が造られ。交渉相手(悪党)の心をへし折るのに()使われています。


 なおルサーナ、エレイラたちサヘルのパーティー(ハーレム)も協力し、“悪辣な組織”の士気?も粉砕しています。

 『猪八戒』:『西遊記』に登場する三蔵法師の一行の中では、道化役・かませ犬という感じであり。敵妖怪の策に引っかかり、一蹴され、失敗の数は枚挙に暇がない。はっきり言って、残念なキャラクターです。


 ただしそれは〔主人公の『孫悟空』と比べて〕と、いう注釈がつき。某孫悟空とZ○士(野菜王子を除く)たちの実力差ほど、『猪八戒』と『孫悟空』の戦闘力に差はないでしょう。『雲』に乗る仙術も仕えますし、冒険者にとって死と同義な『上位オーク』など、『猪八戒』にとって敵ではないと愚考します。


 特に『猪八戒』がふるう『熊手型の武器』は、かなりレア武器であり。農耕・整地を行う、『工兵・半農兵』をイメージしていると考えれば。かなり強力な『妖仙』ではないでしょうか。

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