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閑話~シャドウのイレースノート

 日本史を楽しむ。歴史小説・コミックを読む際に、スルーして考えたくないリアル歴史がいくつかあります。

 その一つが『枕返し』について。宿泊客を襲う、山姥やまんばのような『宿屋』です・・・というか『人食い山姥』の伝承は、そういう“物騒なお宿”を妖怪あつかいしたのでは?


 江戸時代ですら、寝入った旅人の財布ふところを狙う。飲酒・入浴や疲労で、隙をみせた旅人を標的にした『枕返し』が存在し。

 戦国時代は『落ち武者狩り』をする村人が、普通にいたことを考えると。


 戦国時代に、名家の武士(ボンボン)が、使者として旅をするのは命がけだった。野宿をすれば疲労が深まり、山賊に狙われ。宿に泊まっても一服盛られかねず、安心できない。


 下手に〔全国の大名に『檄文』を届けよ!〕などと、安易に命じれば。〔送り出した『使者』たちが、誰も帰って来ない〕と、いうことになりかねず。


 〔国をまたいで『使者』を送れる戦国大名は、かなりの強国だったのでは?〕と、愚考します。

 「おのれっ、おのれ“堕天のヴァルキリー”・・ッ!」


 馬上で、聖神官ハインは怨嗟のつぶやきをもらす。

 訓練を行い、策をめぐらせ、金でヒトを雇い。多大なコストをかけ届けた手紙は、『白紙?』にすり替えられ?ており。

 使者を務めるハインたち、聖神官の『矜持』を大いにおとしめた。



 〔手紙の管理もできない、使者など無能すぎる〕

 〔こんな奴等(神官)が持ち込む『情報』など、あてにできない〕

 〔こんな神殿では、神の恩寵おんちょうも薄れるだろう〕



 こんな無音の声が、ハインの脳裏に響く。聞いたことの無い“失態”を犯し、ハインは我が身をかきむしりたくなるも。


 〔何故、本神殿の・・大聖神官様の意をくまない。

 “妖術”を使うヴァルキリーどもを成敗するため、粉骨砕身で働くのが信徒の『義務』というものだろうに・・・っ!!〕


 そうして、一通り信仰心の薄い、“世俗の者”たちを胸中で罵倒してから。


 勝利の栄光へと、ハインは意識を切り替える。


 〔書簡の『封蝋ふうろう』は間違いなく、なされていた。

  ならば「何らかの“妖術”によって、手紙のインクを消した」と、考えるべき・・・〕


 二番煎じの“妖術”ならば、対抗策をとるのも、たやすい。

 それどころか〔“妖術”によって、書物を冒涜する“魔女”が現れた〕と、各所に悪印象ネガティブキャンペーンを広める反撃も可能だろう。


 「思い知るがいい。“魔女”とソレにくみする愚かm`ぉ/*--ッ!*?」


 ハインの視界が反転する。〔馬が前のめりに倒れた〕と、思った瞬間には視界が暗くなり。


 その身体は地面へと、たたきつけられた。






 「何者だ・!^?この私を聖神官と知っての狼藉か!!」


 地面に叩きつけられた、標的ハインが甲高い誰何の声をあげる。その声は良く通っており、説法をすれば、さぞかし響く美声なのだろうけど。


 6級水属性C.V.アン・グリュールヴからすれば、『怯えの色』が透けて見えており。彼女には“狂信者”の命乞いにしか聞こえなかった。


 「こんにちは、神官殿(ブルーセイレーン)。目当ての方に『お手紙(白紙)』は、渡せましたか?」


 「キサマぁー`~“水の魔女”かっ!」


 〔違います。汐斗せきと様のつがいです〕


 標的の誰何にまじめ?に答えそうになり、アンはセリフを飲み込む。

 代わりに既に展開していた『水・氷・霧の併用術式(ブルーセイレーン)』に指向性を与え。神官ハインの捕縛に取りかかった。


 『水は光を歪め、霧は(地形の)陰影を隠し・:・針は射出される』


 「させんぞっ!『光を司る偉大なる神よ!至高の御技を持ちて、信徒にイ`;^:ーっ」


 遅い『神聖術』をアンの『魔導能力ブルーセイレーン』が蹂躙する。『術式ヒカリ』を歪め、足下を霧で覆い。複数の『水術式』で牽制しつつ、『氷の針』で麻痺の経穴を次々と突き。


 「こっKァ!;?`/*ー;+!!」


 水の冷気が神官の身体を覆っていく。『凍傷』で肉が壊死しないよう、凍死することがないように、『冷たい麻痺』を神官にかけ。


 「ご安心ください。(シャドウ一族と(汐斗様を)契約したC.V.(オモう者)として)安易に殺したりはしません」


 「・・+・;~:*・-!ー;ッ」


 アンの宣告に対し、神官ハインは限界をこえた『魔力』を絞り出す。信仰・自尊心、その他諸々の『意思ハイン』を形作るモノを燃やし。今、この時に勝利をつかみとるべく、『神聖な光』の奔流がアンに向かって放たれ。



 『霧は視覚を覆い、水は光線を屈折させ・:・氷は輝きを反らす鏡と成る』


 『ォW=Loーぉ!オ:・;+ー!!ーー~』


 『対光属性術式ブルーセイレーン』によって、『神聖術ヒカリ』の攻撃が分解・無効化されていく。

 イリス様がアンの故郷に仇成す存在だったならば、使われていたかもしれない。本来の『ブルーセイレーン』が、その効力を発して『神聖術』を呑み込んでいく。


 それは標的の神官ハインが絞り出した、『魔力・精神』をも掌握するのと同義であり。

 

 「『魔力を氷結・意思を静水に同化・:・心身の連結は雲間にたゆたい』

 

 『氷結・夢幻』の術式が、標的の心身を壊さないよう封じていく。優しく冷たい『水術』がハインを『冷たい眠り』に誘い。


 「使者を務める、神官を捕縛しました。引き続き光神教団の情報網を攻撃します」


 そうつぶやきながら、アンは標的ハインを運ばせるシャドウを呼び出し。

 『瞳』と『青色の髪』は、次の標的ターゲットを捕捉していた。






 「と、いう感じに(アンの協力で)伝令(神官)狩りは滞りなく進んでいる。

  おまえ(サヘル)が心配することは、何もない」


 「・・・・・-・(心配だらけなんだが)


 都市ウァーテルの一画、歓楽街の中でも最高級の娼館、その最奥の部屋で二人のシャドウが密談を交わしていた。


 一人は歓楽街の『顔役』などと、分不相応な肩書きを持つ錬金光術の使い手(サヘル)であり。

 そしてもう一人は、幹部シャドウである汐斗・グリュールヴ(・・・・・・)だ。


 「本当にC.V.様の力を借りて・・・6級水属性C.V.アン様に、使者を務める神官を襲わせて、大丈夫なのか?」


 「おまえもしつこいな・・・大丈夫だと言っているだろうが。

  適材適所・戦力の適切な配置は、戦争種族(C.V.)様の得意とするところだ。今の状況でアンが協力するのは、一族シャドウと彼女の『島』、双方にとって利益がある。


  だったら別件・・で忙しい、おまえが『密偵(伝令)狩り』をやっていることもないだろう」


 「それは・・・正直、助かるが・・」


 現在、聖賢の御方(イリス)様は、神殿に攻勢をかけており。

 サヘルはその影響(悪評)が、どのくらい広まっているか?都市・・ウァーテルに対し、神殿から、どのように反撃が行われるか?


 情報収集を行うと同時に、いつも以上に広報戦を仕掛けていた。

 〔シャドウ一族が神殿全体(・・)を滅ぼすべく、暗躍している〕と、いうような流言デマが広まらないよう。いつも以上に様々な『仕事』に打ち込んだのだが。



 〔“生臭な神官”たちを、灼きつくせば(フォービーコイン)、平和になると(を仕掛けます)

 〔いけませんわ、エレイラ様。きっちり“大聖神官の一派(老若男女全て)”を、生き地獄に堕とさないと〕

 〔『ワンダーヴェノム』を発動する・・・手段を選ばず・・刺し違えてでも・・:・〕


 

 関係各所・・・・から何故・・か、苦情が殺到してしまい。サヘルは〔平時の仕事をし(休みをとり)なさい〕と、命じられる。


 だがそれはシャドウ一族として、歓楽街の臨時ボスとして、何より一人の男として無責任がすぎるというもの。

 そもそもこの世にタダほど高いモノはなく。戦争種族C.V.の水属性であるアン様は、イセリナ様たち光属性C.V.とだいぶ感性が異なる。

 いくら汐斗が入り婿?・・??になって、同盟関係が成立したとはいえ。


 〔頼りすぎるのは、いかがなものだろう。シャドウの一員としては、夜に出張・・って・+:〕


 そんなことを考えていたサヘルは、汐斗に強く肩をたたかれ、心身両面から押さえつけられてしまい。


 「いいから、アンを頼れ!何なら歓楽街の運営は、マリーデ殿に(から、おまえは)任せても(休んでも)いいくらいだ」


 「何を言い出す・・そんな無責任なことを、オレがするとでも・・」


 「『イレースノート』」


 汐斗は『術式名』をつぶやき、『水の魔力』で素速く内容を机に記す。

 その『インクを消して、白紙にする』という『術式の効果』を知り、サヘルは動揺を抑えられなかった。


 「・・・っ・!・」


 「『この術式(イレースノート)』は、例の件に影(最悪、競合)響を及ぼす(しかねない)

  そして、そんなことはもが望まないだろう」


 「そうだな・・・〔もが望まない〕と、解釈していいんだな?」


 「ああ、だからアンたち(・・)も動いてくれた(それを姫長様も、認めた)」


 「了解したっ・・・ちょっと、待ってろ!」


 

 こうしてサヘルは久しぶりに『術式開発』に、集中して取りかかり。


 

 ほどなく歓楽街の顔役から、転落することが確定した。

 

 そして飛び地の『一向宗』と連絡を取り合えた。『寺』に泊まることで、安全な『宿』を確保できた『坊さん』は、かなり強大な組織だったと愚考します。


 もちろん他宗の『寺』に泊まることは、難しかった。機嫌を損ねたら大変なことになる、強い宗派の『坊さん』は、弱小宗派の寺に泊まれたり。各宗派の勢力・友好関係などによって、『寺に宿泊』するには条件があったと推測しますが。


 それでも『武士』よりは、『僧侶』のほうが安全に旅ができた。〔僧侶を殺すと、死後に地獄落ちが確定する〕と、いうような迷信があり。『寺』に泊まれるぶん〔『坊さん』のほうが安全な宿を確保できる〕と、愚考します。


 『上杉・武田』などの戦国武将が、剃髪して『僧侶』になったり。『今川・毛利』など、家臣に『坊さん武将』を召し抱えていた。『織田信長』が敵対していた本願寺の『顕如』を生かし、『本能寺』に泊まっていたことを考えると。


 『寺』を利用して、有力・・な戦国大名は外交を行っていた。『寺社』との外交ルートは、ほぼ必須事項であり。

 『一向宗・本願寺』が大勢力になれた。その理由は〔大勢の『坊さん兼使者』を、安全に低コストで送れた。武士の場合、護衛や安全なルート・宿屋探しなどで、使者を送るのは高コストだった〕と、いう事情があり。


 江戸時代に『寺社』の勢力が弱まったのは、治安が良くなり。〔武士も低コストで使者を送れるようになった。『旅費』さえあれば、僧侶に『外交』を任せる、必要性が低下した〕と、いう妄想をしています。

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