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閑話~イレースノート::

 戦国時代における、最大の軍事同盟・作戦である『織田信長、包囲網』。それを形成したのは〔足利義昭が檄文げきぶんを、各地の大名に送ったから〕と、されていますが。


 『郵便』どころか、『飛脚ひきゃく』が走る『街道』も整備されていない。あるのは『通行料』をせびるため通行を妨げる、『関所』や“山賊”であり。

 加えて中央の権力が有名無実と化したとはいえ。戦国大名たちは『官位・役職名』に、かなりうるさく。単に『檄文』を運べる『忍者』をつかわしても、勢力の存亡がかかった『信長包囲網』が形成できるかは、かなり厳しいと愚考します。


 そのため名ばかり将軍の『足利義昭』が、『檄文』を戦国大名に送り。その『檄文』で戦国大名を動かすためには、『一向宗』の助力が必要だった。『一向宗』を束ねる、本願寺『顕如けんにょ』の力が必要だったと推測します。


 僧侶から還俗げんぞくして将軍になった、『足利義昭』の派閥・配下はかなり脆弱であり。当時の常識では高齢な浪人にすぎなかった、『明智光秀』を織田信長の連絡役にしていたことをかんがみると。


 〔命がけの旅になる『檄文』を、各地の戦国大名に運び。信長包囲網への参戦を交渉する、外交ができる人材を複数・・、足利義昭が確保するのはムリ!〕と、思うのです。

 “堕天のヴァルキリー”が仕掛けた“奸計”により。

 大聖神官が発した『聖戦の布告』は、貴族たちから事実上、拒否される。それらに対し“信仰弱者・不信心者・背教者”と、罵るのは簡単なことだろう。激情を発散できれば、さぞかし気持ちいいに違いない。


 「しかしそれは『今』行うべきことではない・・・」


 “堕天のヴァルキリー”とその配下たちは、感情のままに動いて、どうにかなる弱敵ではなく。今は『怒り』を蓄えべき時だ。“不信心者”たちを制裁するのは、神殿があまねく秩序を、大陸中にもたらしてから。その時こそ“愚か者”たちの血で、『祭壇』は彩られるだろう。


 そもそも今回の『件』で、大聖神官たちは大きな収穫を得ている。


 「誰か、ある!!」


 「ここに・・」


 「真の信仰心を持つ者たちに、『布令ふれい』を出す。我が直筆で、手紙をしたためる支度をせよ!」


 「ハハァッ・・!」


 “堕天のヴァルキリー”の配下シャドウたちが、小賢しくも『伝書』を妨害し、使者を襲っていることは知っている。それに対し本神殿は充分な対策を取っており。


 〔信仰心の足りない(どうでもいい)貴族に、使者は『手紙』を届けられた。ならば本命の『手駒』に布令を出しても、問題ない。


  今度こそ愚かな“ヴァルキリー”たちに、鉄槌を下してくれる〕


 こうして大聖神官の反撃が始まった。






 「・・・・・それでっ、いったいどうせよと?」


 「・`・っ??」


 各地との連絡を務める聖神官のハインは、困惑していた。自分は確かに大聖神官様の『聖筆』で書かれた手紙を届けた。

 それなのに手紙を受け取った者は、目をこらし、『聖句』を唱え、手紙を凝視し続け。


 「・・・・・」


 「・+・っ?・・」


 眉間みけんにしわを寄せてから、ハインを観察し。そうして絞り出すような声で、ハインに問いかけてきた。


 それに対しハインとしては、こう答えるしかない。


 「おっしゃる意味が、わかりませんが・・・」


 「そうか・・っ・・・」


 使者としてよくない返答なのは、理解しているが。手紙の内容を予想できても、ハインは実際にその中身を目の当たりにしたわけではない。

 と、なれば怒らせるリスクを(おっしゃる意味が、)承知で、問い返す(わかりませんと、言う)しかないのだが。


 「残念だ・・`・・これを見るがいい」


 「・・?っ・:・?`!?」


 その言葉とともに、見せられた手紙の内容を、ハインは理解できなかった。

 そうして目をこらし、聖句を唱え、手紙を凝視してから、視覚強化の『神聖術』を発動し。


 「何故っ、ナニも記されていないのだ!+!?」


 真っ白・白紙の一文字も記されていない。神殿でも最高級の装丁が施された『紙』だけが、そこにあった。


 「そんなことは、こっちが聞きたい・・・」


 「ですがっ・・大聖神官様はっ・-・;・(確かに書を)・+・・・(したためて)


 それ以上の言葉を、ハインは吐き出しそうになって、喉に呑み込む。命じられてもいないのに、大聖神官様の意志を、使者が勝手に代弁することは許されない。


 「こんなっ・-・(グ○ーリー*ーム)シの名前はっ・;(グロー+ーゲー?)・Oのれっ魔女めが・!:?」


 そうつぶやく『ダレ』かの名前を、ハインは思い出せず。


 聖神官・・・の役目を果たすべく、“白紙?”を回収して、退出していった。






『導線を作り、駆ける光輪にして  夜に安寧と混迷をもたらす油のとばり


 死蔵されし白金を沈め  血塗られた黄金を埋めつくす  


 膨大なる砂の山海を進み  清浄なる銀を超えて、輝け!


 瞬く知識と財貨は回り  銅と銭貨(せんか)は、天秤の皿にてチャンスに並ぶ


 シャインマテリアル!:! read page   イレースノート』



 混成都市ウァーテルの勢力圏。その領境にはられた陸戦師団が集う『陣』の中で、イセリナは自らの『魔導能力コアデザイン』を発動させる。

 

 〔配下の陸戦師団を訓練するため〕と、いう建前でしかれた『陣』は、イセリナの『魔導能力シャインマテリアル』を増幅するための『魔術陣』であり。『射程不足』を補うため、勢力圏の端までイセリナはやって来たのだが。



 「まさか、私が人間シャドウに『シャインマテリアル』を中継させるとはね・・・」


 イセリナの『シャインマテリアル』は無数の『魔術能力(可能性)』が集められた、仮初めの『魔導能力(倉庫)』にすぎず。

 しかるべき才能・願望をもった光属性C.V.(同族)に、『魔術能力デザイン』を会得する機会をもたらすことこそ、本来の使用目的なのだが。


 「やむを得ない事でしょう。本来なら、『伝令』を狩るのはシャドウ様たちの御役目でございます。

  それに注文をつけ、私たちが割り込むのですから。『魔術能力イレースノート』を進呈するという、『対価』は必要でございましょう」


 「承知している。7級光属性C.V.イセリナ・ルベイリーの名にかけて、同盟者シャドウに不義理をする気はないわ」



 イセリナの言葉に、9級光属性の下位C.V.リンス・ウォーレットが答える。

 本来、彼女は姉上イリスのパーティーに属しているのだが。

 

 〔たまには軍事訓練(そんな理由で)で身体を動か(動くC.V.では)したいです(ありません)〕と、告げてイセリナたちに同行し。

 『相談役?』になって、イセリナの『シャインマテリアル(イレースノート)』をサポートしている。初めて実戦で使う、『イレースノート』による手紙の『白紙化』と、シャドウ一族を『中継役』にする。人間シャドウと協力して『術式の射程』を伸ばすのは、イセリナにとって重要な『試み』であり。


 リンスのサポートはイセリナにとって、非常にありがたい。


 本当に人畜無害な『マスコット役』だけ(・・)を、リンスが務めているなら。9級C.V.にもかかわらず、7級のイセリナがその実力を見透かせない。

 そんな諸々の懸案を無視できれば、リンスの助力は本当にありがたいのだけど。



 現在、イセリナが行っていることは、神殿の『情報・連絡網』の双方に打撃を与えることであり。本来はシャドウ一族が主体的に行っている任務なのだが。


 聖神官の使者が運ぶ『手紙』に『光術付与イレースノート』を行い、『文字』を消去する。


 〔使者なのに『手紙』の管理もできないのか・・・(とは情けない)

 〔そもそも『光神』に仕える神官が、『光魔(神聖)術』で後れを取るなど不様だ〕

 〔こんな神殿に味方して・・・今までと同様のつきあいをして大丈夫なのか(いてはマズイ)?〕


 こんな風に神殿の『力』を疑わせ、所属勢力に揺さぶりをかける。それが陸戦師団を率いる(・・・・・・・・)イセリナの狙いであり。

 シャドウ一族の機嫌を損ねないよう、『根回し』を行う必要がある。その『根回し』を姉上の側近(リンス)に行ってもらう『契約』のため、彼女が傍らにいるわけだが。



 「当分の(いつか)間は、その方針で(グローリーゲーム)まいりましょう(の使用をへらす)


  それに勉強熱心で、修練にも余念のない。シャドウの皆様方に対し、これ以上『光術』を光属性C.V.(ワタシ)たちが独占するのは、悪手でございます」


 「・・・それは、理解しているわ。

  同じ聖賢の担い手(イリス姉上)に仕える者として、いつまでも『光術信号フォトンワード』しか共有しない。そういう機密主義は、私も望むことでは無い」



 そう言いつつも、イセリナは〔問いただしたい〕と、いう衝動を胸中にしまう。


 〔『姉上の魔導能力(グローリーゲーム)の使用を減らしたい〕とは、どういう理由なのか?


 その意思をウァーテルから離れた『この場』で、リンスが伝えてきた理由に、イセリナは薄ら寒いものを感じた。


 


 


 



 ネタバレ説明:『イレースノート』について


 書物・言動による情報から知識を得て。環境・状況や他者のニーズから『光属性の魔術能力』を編みだし、収納しておくイセリナの『魔導能力シャインマテリアル


 そんな『魔術能力』の一つが『イレースノート』です。


 効果は本・書類を『白紙化』すること。この世界には『鉛筆』がなく、この地域(・・・・)には粘土板がないため。

 『インク』を消してしまう(だけ?の)『魔術能力の素材(シャインマテリアル)』と言えます。


 その手段は大まかに3種類あり。


1)『紙』の表面を『光術の膜』で覆う。『金箔きんぱく』をはるように、『紙』と同じ色の『光の膜』を貼り付け、『文字インク』を覆い隠す。


2)『インク』『紙』のどちらか、もしくは両方に『魔力付与』を行い。その『魔力』を分離・除去する際に、『インク』『紙』も一緒に分離する。

 『魔力A(アブラ)』『魔力B(ミズ)』のイメージをそれぞれ『インク』『紙』に付与して、異なる魔力『A』『B』の反発を利用する。そうして『紙』にしみこんだ『インク』を、浮かび上がらせ落とす。


3)『多大な魔力』を消費して、『インク』を消し去る。〔既に文字が記された『紙』を素材に、『錬成』して『白紙』を作る〕などのイメージができれば、『魔力消費』を抑えることも可能です。



 どの方法も一長一短であり。


 1)は難易度が低い代わり、『光の膜』を見破られる。『光の膜』を消去されるリスクが高い。


 2)は『下準備・細工』が必要だったり。『インク』『紙』への理解が必要となる。『技術的』な問題さえクリアすれば、効率よく『インク』を消せるものの。

 『文字』を消せず、『文字インク』を歪め。読解を不可能にするのと同時に、『イレースノート』による干渉の痕跡・証拠を残してしまう。


 3)はとにかく『魔力消費』が大きく。そんな事をするくらいなら、『使者』を『攻撃魔術』で闇討ちしたり。『本・手紙』を『石化・腐食』させる、『錬金術』を使ったほうが楽と言える。


 

 ちなみにイセリナたちが使っていたのは2)の方法であり。本神殿にイリスが殴り込んだ際に、お供のシャドウたちが『紙』だけに『光術付与』を行って、コーティングしていた。

 その『紙』に文字インクを書いても、『光術付与コーティング』を解除したり、『付与』の時間切れになれば。インクははじかれ、『白紙』だけになってしまう。


 理論はこんな感じです。

 実際はC.V.リンスのサポート『魔術能力』がなければ、『文字インク』を歪め溶かす程度になってしまい。『白紙』の手紙を渡す“醜態”をさらさせたのは、リンスの『透()術式(使用には許可が必要)』による、サポートの力が大きいです。


 以上、『イレースノート』のネタバレ説明でした。

 戦国時代、『一向宗』が各地・・で一向一揆を引き起こしたのは、周知のことでしょう。

 その地域は、私が知っているだけでも上杉謙信を苦しめた『加賀』。松平家康(徳川家康)を危機に陥らせた『三河』の一向一揆。そして本願寺のあった『大阪』周辺に、『顕如』は影響力があり。


 当然、それらの地域と連絡をとる、伝令役の『坊さん』がいた。周辺勢力と『外交』のできる、伝手つてがあり。実際には『大阪・加賀・三河』以外にも、本願寺に補給を行った『毛利家』など。

 日本中に『檄文』を送る外交ルートを持っていたのは、本願寺『顕如』ぐらいだと推測します。


加えて重要なのが、『檄文・手紙』を各地に届け。武将に読ませる権威を持つ『人材』です。

 普段から各地の『一向宗』と連絡を取り合っていたなら、連絡専門・伝令役の旅慣れた『僧侶』も複数人いたでしょう。そういう『僧侶』は身分が低く、外交官の役割を果たせるかは微妙ですけど。


 各地の一向宗の拠点にいる、身分の高い『僧侶』に本山の意向を伝え、外交を行ったり。寺の『檀家・信者』の武将たちに、働きかけることも可能だったと愚考します。


 それこそ〔信長包囲網に参加しなければ、一向一揆を起こす。魔王信長を倒せば、極楽に行ける〕と、いう感じに圧力をかけられる一向宗の『坊主』と。名ばかり将軍の腰巾着に等しい、側近の武将・・・単なる武士?たち。


 使者として、どちらが有能なのか。比べるべくもないと思うのです。

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