閑話~アルゴスの疑問
昔の人間は、現代人より万能性が求められた。相反する文武の道、両方に高いレベルで通じていることが求められ。女性は教養・奥を取り仕切る指揮能力を求められるのと同時に、“男よりバカなほうがカワイイ”などと“陰口”をたたかれ。
矛盾する要望に、振り回され。男女ともに、さぞかしストレスがたまったでしょう。
〔現代の日本人に産まれて良かった〕と、思うことの一つは『分業・適材適所』という言葉があることです。
そんな過去の時代において、『美人』にはあることが求められた。男女両方の美形には、容姿に加えて『ある体質』が求められたと愚考します。
ただし内容的に、信用できる『資料』はまず期待できず。『白粉』に関する歴史小説を読んでいて、ふと思いついたことですので悪しからず。
『神聖術』による『防御・障壁』の術を、逆用して神官兵たちを壊滅させ。イリスたちは大聖神官の一派を、神殿の最奥に追い詰める。
「キサマらっ・・・こんなことをして、ただですむと思っているのか!」
「神罰を恐れよっ!」「ひぃッ-~」「まさか神都が、ウァーテルと同様に落ちるなど・・・」
戯言をわめく神官たちを、イリスは白い目で見ながら。
〔このままこいつ等を、勢いで一刀両断にできたら、いいのにな~〕と、思っていた。
戦力的に、それは可能であり。連中のやらかしてきた罪状を考えれば、八つ裂きすら〔温情をかけている〕と、言えるものの。
ソレをやったら、全てのC.V.は“異性に非ず“あつかいされてしまい。イリスのように、人間に『化ける』術式・段取りをできるC.V.はともかく。
心身の両面で綺麗な、下位C.V.たちが苦労することになる。人間という適当・適量?な『色欲』を持つ、『男性』に逃げられかねない。
だから“大聖神官”を破滅させるには、面倒な段階を踏む必要があり。
『聖賢様・・・よろしければ私たちで・・・』
『御命令くだされば、骸をs/・・』
「・:・`・ッ」
『やめておきなさい』
剣呑な空気を放つ護衛役のシャドウたちに、大聖神官の頬がけいれんし。彼女たちを『光術信号』による指令で止めつつ、イリスは心の底から反省する。
事が露見しても〔部下が勝手にやったこと。私に責任はない〕と、ほざき、のたまう。そういう風に“生臭神官”たちの死体を処分して、知らん顔はできない。
“奴等”の戦闘力は“暴行亜人”と似たようなものだが。
陰険・残虐性では、はるかに勝っており。〔法を守れ!〕などと言いつつも、自分たちは理屈をこねて無体を行う。
いわば“二重基準”の権化であり。あげくに『蛇』より、はるかに執念深い。
そのため『陰謀』の必要性を理解していても。事実上の『魔術拳士』と言っていいシャドウたちが、“生臭神官”のサルマネをしても、遠く及ばない。
何より【妹分のC.V.】たちと縁を結ばせるため、イリスはシャドウ一族に『投資・育成』を行ったのであり。
こんなところで“汚れ仕事”の片棒を、担がせるためでは断じてなかった。
そんなことを考えつつ、イリスは『下準備』を整え。
「初めまして、大聖神官サマ。今日は、確認したいことがあって、うかがいました。
もし納得できる『お答え』をいただけたなら。謝罪して、最大限の『賠償』を行いましょう」
そう告げて、イリスは茶番の幕を上げた。
かつて“悪徳の都”と言われた都市ウァーテルを、イリスたちはわずか1日で陥落させ。
その後、当然『来るべきモノ』に備えていた。
都市を奪還すべく、“盗賊ギルド”が『刺客』を、さし向けてくる。
あるいは“悪徳の都”が存在することで、『利益』を得ていた周辺諸国が『軍勢』をさし向ける。
もしくは、その両方と『経済封鎖』が、同時に仕掛けられ。あげくに『飲み水』に、もっと『毒素』を流されるなど。手段を選ばず、都市ウァーテルを破壊することも厭わない、『攻撃』が仕掛けられ。
それらに対抗するため、『魔導能力』による迎撃を準備したり。
『戦闘特化』のC.V.パーティーメンバーを伏兵にしていたのだけど。
〔『伝令・伝書鳥』を狩り。迅速な『連絡手段』を絶った、とはいえ・・・・・〕
〔各個撃破できる程度の、反撃・・・小手調べな『攻撃のふり』しかされていない〕
〔しかも小数のシャドウで、周辺の町にちょっかいをかけても、やられるがまま〕
〔一番、問題なのは『モンスターマーチ』・・・ううん、それ以前に都市ウァーテルの地下水路を汚染していた状況だよ。
空腹の『暴食蟲』が、都合よく広大な地下水路の中におさまっている。それも“疫病”をばらまくことなく、“盗賊ギルド”の好き放題を許している〕
どう考えても異常事態だ。“蟲”を閉じ込める『広大な結界』は、それに見合った『魔力・技量』が必要であり。『魔術師』ならともかく。“盗賊の類”をいくらかき集めても、『結界』など展開できるはずが無い。
しかも連中は、よりにもよって地下水路を“屍体処理場”にしていた。
“蟲が遺体を貪り喰うから、アンデットも出現しない”などと、“狂気”なことを考えていたのか。
はっきり言って、イリスは知りたくもないけれど。『障壁タイプ』な『結界』なら、穴だらけだったということであり。
『障壁無し』の『ダンジョン』や、その他の上級『結界』ならば。人間の『魔術師』では、いくら集めても無駄であり。〔『魔術師』タイプの上位C.V.なら、何とか可能・・・?〕と、いうレベルの話だ。
「無礼なっ・・・そんなことで、この襲撃を`・:」
「各都市の地下水路に、(“蟲”を操る)『魔蟲』を仕込んだ。『蟲』がうごめく、“(奈落)結界”を設置したのは、アナタたちですか?」
〔“盗賊ギルド”が大打撃を受けたのに、“山賊”への補給が途絶えないのは、何故?〕
〔周辺諸国に(ユリネたちが)『水の浄化術式』を売ろうとしたのを、妨害したのは誰かしら?〕
〔“盗賊ギルド”の黒幕は、キサマ等なの?〕
神殿に質問したいことは、いくらでもあるものの。詳しく知らない者では〔結界をはったのは、アナタたちですか?〕と、聞こえる『質問』をイリスは行い。
『答えよう、混沌の魔女たちよ 我は示そう、光神の秩序を
セイクリッド・パニッシュ!-!:!』
大聖神官の『神聖術』による、破壊の光芒がイリスたちへと降り注ぐ。それは袋小路と化した部屋の全てを、覆い尽くし。
『雷閃Gy:`0・』
「させなっ・-|`ー』
ウルカとサキラの『干渉』を余裕ではねのけ。イリスの身を焼き尽くすべく、灼熱の『光輪』が降り注いだ。
昔の『美人』に求められたこと。それは『肌』の強さであり、『蚊』に嫌われる体質だと愚考します。
多少、容姿に優れていても。『蚊』に刺され、『肌』がはれたり。『発疹』ができれば、病気持ちとしてあつかわれ。『病にかかった』者として、身分の高い者の側で仕えることは許されない。
失業の危機どころか〔クビになれば、命・お家の危機になる〕と、いう時代において。それは“容姿を偽った詐欺”あつかいされるか。政敵に攻撃される弱点になりかねない。
さらに〔毒性の強い白粉を、身分の高い者たちが塗る。『乳母』が乳房にまで『白粉』を塗った〕と、いう小説を読み。その理由を考えていると。
〔発疹・皮膚の腫れを隠すため。それらの原因となる『蚊除け』になるため、ヤバイ『白粉』を使い続けたのかな~〕と、愚考します。
もっとも『美人』たちの名誉のため、これらを記載された資料など、まず作られないでしょう。
ただ大昔の“医療=祈祷”の迷信あふれる時代において。『皮膚病』を確実に隠せる『白粉』は、チートな『軟膏』だった可能性もある。
戦で死体があふれ、衛生状況がひどく。バカ殿・バ家老がそれに対策をせずに、“ヤバイ虫”が飛び交い。
美人が肌を維持するため〔『白粉』は特効薬だったかもしれない〕と、妄想します。
とはいえこの“妄想”は『蚊』の棲息・生態によって、地域差が大きく。何より『皮膚病・傷』を患った者を差別しなければ、発生しようもない戯言になります。
とはいえ『皮膚病』を治せない。治せないどころか“悪霊に呪われている”などと、のたまう“迷信・祈祷”が幅をきかせていたら。『毒性の強い白粉』に依存する、地獄が続いていたと推測します。