閑話~落鷹のヒール:雷鷹飛夜
目隠しをした裁きの女神『テミスorユースティティア』。『目隠し』や『剣』も大事な神具ですが、最も重要なのは『天秤』だと愚考します。
『テミスの天秤』:黄道十二星座の一つでもある『天秤』は、〔罪人の罪を計る〕とのことですが。その扱いは時代や地域によって大きく異なります。
エジプト神話の冥界なら〔心臓と罪の重さを『天秤』ではかる〕という神話があり、『天秤』は重要な神具と言えるでしょう。他にも古代文明ながら『手術』を行い、『薬品の知識』も豊富な古代エジプト文化圏なら。薬の調合を行う際に、計量を行う『天秤』を重視したと推測します。
しかし『水銀』を不老長寿の薬扱いしたり。“薬師を邪悪な魔女扱い”するような。『医術』が退化した時代・地域において、『天秤』は軽んじられた。
さらに『商人』を“卑しい職業”と見下していた連中は、商人が使う『天秤』も“卑しい道具”と侮っていた。
そうすると『天秤』を持つ『裁きの女神テミス』も、低く見られたと思うのですが・・・実際のところどなのでしょう。
“盗賊ギルド”が支配する、悪徳の都が滅ぼされ。太守イリス様によって『混成都市』の建設が宣言された、都市ウァーテルにおいて。
スラムの住民たちは、命の危機にさらされていた。
「寒い、寒いよぉ」「・・・`-`」「もっと近づけ・・身を寄せて暖まる^nだ`-:」
寒さと疲労による衰弱。豊かになった都市において、弱者はいまだに搾取され続けている。
『混成都市』ウァーテルは、商業都市となり。さらに交通の要衝として、適切に役割を果たした。
〔権力者なんだから、目先の利益に飛びつかず。長い目で利益を搾り取らないとね~〕
〔姉上の御心のままに〕
〔シャドウ一族は聖賢の御方様に、永遠の忠誠を捧げます〕
こうして“盗賊ギルド”は駆逐され。『経済』が回り、誰もが豊かになった・・・かと思われたのだけど。
〔そんな遅い『足』で、逃げられるとでも思ったか?〕
〔臭いと、気配と、挙動でわかるわ。“賊の手駒”が誰なのかね〕
〔とっとと知っていることを吐け。かばい立てするなら、容赦しないぞ!〕
“シーフ”を圧倒するシャドウたちは、スラムで行われる犯罪を見逃すほど甘くはなく。
“盗賊ギルド”が建設した、悪徳の都におけるルールで物盗りを行う。かつての付き合いで“シーフ”に協力する。C.V.勢力と“シーフ”の、どちらにつくべきか迷う住人に対し、次々と取り締まりを行っていった。
その結果、スラムの『ルール』が破壊されかけ。スラムの住民たちは、より弱い子供・新参者の住民を襲って、間接的に『糧』を得たり。
〔これが今日の“人足”だ。大事に使ってやってくれ〕
〔ああ、わかっっている。大事にツカってやるさ〕
下手な奴隷より過酷な、労働?の斡旋が行われる。
事ここに至って、シャドウ一族はスラムに介入するのを(表向きは)断念し。スラム街を束ねる顔役をたてて、スラムのルールを尊重する姿勢を取ったのだが。
混成都市が誕生した影響で、飢えと寒さに苦しむ。状況が改善される前に、儚くなる者たちは少なくなかった。
『疾風の翼は、鈴をゆらし 勇壮なる爪は、魔鐘に挑む
されど嘴に血の滴る肉はなく 目は獲物の影すら、捕らえることあたわず
ただ呪いの杯にのみ、羽根と空はそそがれる・-・-雷鷹飛夜』
「・・・・『雷輪電昇』ッ!!」
そんな“いつものスラム”に羽矢弥たちの『魔術能力』が放たれ。
「・-・:・?`?」「「「「「n,n-n・~・・・・」」」」」
「「「・~・nn,s,sw~-」」」
廃屋に身を潜める、孤児たちの寝息が穏やかになる。
すきま風が容赦なく体温を奪う、小屋の空気が暖かなものに変わり。それでいて換気が行われ、新鮮な空気が循環する。
その心地よさに、“外敵”を警戒する見張り役の子まで、瞼が下がっていき。
『Br,br-v・-vr~・・・・』
「ッ!?」「何だい、これはっ!」「身体がビリビリして・・・ナニもならない?」
続いて街娼たちの肌が粟立つ。近くで『電磁波』が放出され、その影響で『血行』が刺激されるも。
わずかな時間だけ放出された『電磁波』で、街娼たちの身体が変化したり回復するはずもなく。血の臭いがしないそれは〔お騒がせな『魔術』が放たれた〕と、いうあつかいになり。
その夜のうちに、街娼たちの記憶から忘れられていった。
「スラムの空き家を壊す。そして集合住宅を建てて、住民に職を斡旋します。
それに伴い(不当な対価で)こき使われている者は、工事関連の仕事についてもらうわ」
「それはっ・・・あまりにも急な話では?」
「無気力なスラムの住民たちが、重要な区画整理の仕事ができるとは思えません!」
「そうです!都市に寄生する、奴等に情けをかける必要などないでしょう」
都市ウァーテルで文官・役人を束ねる。事実上の『宰相』を務めるC.V.イセリナ・ルベイリーの提案に対し、文官のほとんどは難色を示す。
彼らは没落貴族や飼い殺しされた次男以下であり。他にも行商人・元冒険者や人間の魔術師などで、事務能力の才能があり。借金の減免と引き替えに、イセリナの下で働く事になった者たちだ。
誰もが〔このチャンスを活かして、出世しよう〕と、考えているのは同じだが。
女系種族であるイセリナを〔世間知らずの小娘〕と侮り、利用しようとする者も少なくない。他にも文官として行政に携わるより、C.V.の『魔術文明』を学ぶことを望んだり。イセリナというC.V.大臣を観察したり、地位を守ることを優先する者もいれば。
“盗賊ギルド”に内通する者も、少なからずまじっている。
そのため重要案件を通す際、イセリナはスピードを優先させ。強弁をふるった。
「たいていの貴族は、貧民街の存在を疎んじこそすれ。その厄介さを理解していない。
スラムは単なる治安の悪い、貧民窟などではなく。商業都市の拡大を妨げる、障害物であり、『檻』にすらなり得るわ」
人口増加・商業区に使える土地を増やすため。区画整理(スラム街の撤去)は戦争に勝利するほどの、戦術・戦略をたてる必要があり。
魔王の側室C.V.様の『デッドリーノヴァ』で城壁が吹き飛ばされ。住民が動揺している現状は、『区画整理』を強行するチャンスと言える。
「なるほど・・・」「そういうことならば・・・」「そもそも奴等は不法住居者だっ!」
〔こいつら、頭は大丈夫か?〕
「なりません!スラムで血を流せば、その恨みは忘れられず・・・」
いくつかの意見が交わされるも、会議の流れは“強制退去”へと傾き。
イセリナは作戦に異議を唱えた、将来の幹部候補の顔を記憶しつつ。彼らへ秘かに命令を下した。
ネタバレ説明:『雷鷹飛夜』について
事実上、羽矢弥とライゾウの二人で発動させる儀式魔術であり。『結界の魔術能力』です。
その内容は『電磁波を帯び、それを操る使い魔鷹』を、結界内限定で自在に操る。通常の『使い魔鷹』を『夜鷹』に変化させ、魔力消費・射程などの性能を強化して使役するというものにすぎず。『結界』の効果は、感知・空間把握というものです。
『魔術能力』の勇ましい名称とは裏腹に、戦闘にはとても使えない。
『夜鷹(夜行性で、虫を食べる。鷹とは別種の鳥)』なのに、『鷹』の速さで飛翔する。珍しいけど〔それがどうかした?〕と、言いたくなる。『使い魔の夜鷹』を操る『魔術能力』であり。
都市ウァーテル以外の場所では、役に立たない『魔術能力』になる確率が高いです。
ただし都市ウァーテルのスラムを飛び交う、『蚊』を退治する。それによってスラムの住民たちの、体調を向上させることに関してのみは有用です。
きれいな水が豊かに流れる、幸せな国にお住まいの方には想像できないでしょうけれど。血を吸われても『皮膚病』ですむ『蚊』と異なり。『伝染病』が怪物・邪教によって、ばらまかれる地域において。『蚊』は死病をもたらす“怪蟲”であり。
平時から上下水道の通っていないスラムの住民に、慢性的な疾患をもたらす。眠りを浅くして、休息の効率を悪くする。『綺麗なお姉さん』たちの、お肌を荒れさせる。
間違いなくスラム住民の死因となっている害虫であり。
加えて“悪徳の都”だった時に、地下水路に巨大昆虫・ネズミが大量に棲息するのを放置した。“死体の始末に便利だ。失敗した薬は地下水路に捨てればいい”と、いう考えによって地下水路は魔境と化してしまい。
四凶刃の藤次が、それら“蟲”を退治し、死骸を必死になって焼却しても。“蟲の体液”を完全消滅させるのは、困難なわけであり。
ソレを含んだ水で育った『ボウフラ・蚊』は、魔物に進化するのが確定した“蟲”と言えます。
『雷鷹夜飛』で操る『使い魔鷹』は、そういう『蚊』を電磁波で殺処分する。被害が少ないうちに、『蚊』を退治することを主目的としており。『蚊』が増殖するのを防ぐ、インフラが整備されるまでの『時間稼ぎ』をしていました。
ついでに屋根越しに『廃屋』の空気をコントロールして、屋内の室温を暖めたり。換気をして、悪い空気を排出しています。
以上、都市ウァーテルでしか役に立たない。『雷鷹夜飛』のネタバレ説明でした。
こんな『蚊』が棲息しているなど、大っぴらにできないため。この場での説明にさせていただきます。
『裁きの女神テミスorユースティティア』:かの女神の神話に〔人の世界に最後まで残った〕と、いうのがあり。これは〔人々の信仰も最後まで続いた〕と、いうことを表わしていると思います。
それに『天秤』は一種のチートアイテムであり。【公平感】のある商取引を行い、貿易で莫大な利益をあげる。計量によって商品・貨幣の鑑定を行い、『高額商品』をあつかうようになる。
それらを成すのには『天秤』が必須であり。“略奪上等”な山賊まがいの軍が財貨を得ても。最終的には『天秤』を使いこなす、商人が“略奪品”を買いたたいた。財務役人が利益を総取りしたと愚考します。
こうして『裁きの女神テミス』は、スキャンダラスな神話を創られることもなく。信仰が続いたと言えるかは微妙ですけど。『法の女神』のイメージは守られたと愚考します。
それと〔薬の調合に『天秤』を使う〕と、いうのは近代人の考えであり。大昔、『天秤』が主に使われたのは、売買・商取引の場で主に使われたと愚考しており。
そうすると『テミス』が裁くのは〔“横領・中抜き”などの、金銭関係の罪を裁くことだった〕と、妄想します。というのも『テミス』がおわすのは、『天界』であり。死者の魂が集まる、地底の『冥界』とは逆方向です。
そのため『冥界神ハデス』『閻魔大王』のように、全ての死者の罪を裁判するのは無理があり。
〔『財務・商業』の金銭トラブルを専門に裁く神格なのかな~〕と、いう感じに想像心を働かせています。