閑話~落鷹のその後 表
私は江戸時代のころに登場した『うわばみ』は、『大蛇』と『妖怪ムカデ』が混同された妖怪だと愚考します。
本来、『大蛇』と『大ムカデ』は敵対関係であり。『長虫』でひとくくりにされない。むしろ水と油の、相容れない存在なのですが。江戸時代からの『山』の事情が、『オロチ』と『ムカデ』を融合させ。『火』をまとったり吐いたりする、『酒好き大蛇』を登場させたと愚考します。
この説を述べるには、まず『大百足』について、考えなければなりません。かなり脱線しますが、おつきあいくだされば幸いです。
『魔術』とはイメージの力が要であり。〔術者がイメージした『事象』を、『魔力』によって再現させる術〕と、言える。
そのため元侍女シャドウの羽矢弥がイメージし難い『事象』は、『魔術能力』の構成・強制力も大幅に下がってしまう。
そのため本来、単独もしくは『つがい』で行動する『鷹』を、あり得ない『八羽?の群体』にしていた。
『術式』の開発のため会得した、『八鷹輪舞』というイメージしにくい『魔術能力』は、多岐に渡って威力・精度が低下しており。〔羽矢弥にとって負担だった〕と、今なら正直に言える。
そのためロゴニアの町での戦闘後に、『八鷹輪舞』を失ってしまった。幼馴染みによって蘇生された時に、侍女シャドウとしての『魔術能力』を使えなくなったことを、羽矢弥はすんなり受け入れ。
『旋風閃鷹!』
『・-・・・-ッ』
全身で体当たりもできず、『両翼』から『風の魔術』も放てない。『幻魔獣』の猛禽と比べ、格段に戦闘力で劣る。
本来の『鷹』に近い『使い魔鷹』を使役しながら、『身体強化』を併用する。『旋風閃鷹』という、新たな『魔術能力』を改めて会得し。
羽矢弥は侍女シャドウのお役目を辞して、普通の中級シャドウになっていた。
「「・:ーっ~-・・;・」」
それに伴い、給金も大幅に下がってしまい。
侍女シャドウの時と、同様の『収入』を求めるなら。相応の手柄・功績が必要となるわけで。
「ヒぃッ・+;/*//ー-ッ」
「いやっ、イヤァー-;―」
羽矢弥はたいていのシャドウが嫌がる、厄介事を処理していた。
「そろそろ、観念して逃げるのを諦めたら?」
「クソがっ・・」
「お願いします、シャドウ様っ!どうか、見逃してくださいぃ・・;・」
羽矢弥が処理する厄介事は、男女の二人組を追い詰めること。“美人局”を取り締まることだった。
たいていは女が男を誘惑して罠にはめる。誘惑の罠にはまった客を、女と組んでいる男が脅したり強盗を仕掛ける。
そんな“美人局”はシャドウ一族にとって、厄介な“賊”でもある。
まず“美人局”を取り締まるには、他人の『濡れ場』を監視して踏み込まねばらず。そんな苦労を乗り越えて
捕縛しても〔客の男が○●×の料金を踏み倒そうとしたため、やむを得ず用心棒の男が仕事をした〕と、いう類の様々な言い逃れが可能であり。
まっとうな『司法』の場で裁くのは、苦労ばかり大きい。
何より“美人局”の手口は、多岐に渡る。“男女二人組で美人局を仕掛ける”などというのは、文書の資料にすぎず。“スリ”のように、三人目の共犯者が奪った金を隠したり。『暗殺』や後日に脅迫するなど、まっとうな衛兵の手に余る“美人局”の手口は多い。
〔捕らえようとしたら、普通の娼婦として一夜を過ごされた〕
〔面倒な“美人局”を取り締まるより、山賊・盗賊集団を捕縛したほうがいい〕
こういう意見も出始め、羽矢弥が動くことになる。
〔面倒な捜査などやってられないわ。娼婦以上に“浮気”を誘発する、“美人局”を行う連中には破滅あるのみよ〕
そんな正論×暴論をふりかざし。
『使い魔鷹』で上空から“賊”を探しつつ、地上の羽矢弥からも『感知』を行う。その行動はよく言えば〔二つの視点から“美人局の賊”を捜索して狩る〕と、言えなくもない。
はっきり言えば“通り魔”よろしく、“美人局”の容疑者に襲いかかる。証拠固め・現行犯逮捕もしないで〔犯行現場から出てきた“美人局”の連中を制裁している〕と、言えるでしょう。
それは『点数稼ぎ』と言うには、危険な暴挙であり。
当然、来るべき者がやって来る。
「そこまでです!!」「やらせないっ・・・」
「これ以上の“通り魔”は止めてみせます」
羽矢弥と“美人局”二人の間を遮って、三人の人影が割り込んでくる。
「「・・・・・っ!?」」
「闇属性C.V.・・・」
正義を執行すべく、強い意志をこめたセリフが周囲に響きわたる。
しかし、その大音声を放ったのは、黒騎士・犬頭猟兵とフードで顔を隠した『魔女』寄りのC.V.三名という。控えめに言っても『魔物の妖気』を漂わせており。
初見の“美人局”二人を呆然とさせる、すさまじいギャップを放っていた。
〔チクショウ、畜生、ちくしょうめがっ!〕
都市ウァーテルの周辺にある町の一つロゴニア。その裏社会は現在、二重の危機に苛まれていた。
その一つはシャドウ一族の襲来であり。
かつて悪徳の都ウァーテルを支配していた『盗賊ギルド』が、ロゴニアの町を訪問した“魔女”に襲撃をかけ。
その後〔襲撃をかけた“賊”を何としても探し出す・・・^:^〕と、いう名目を振りかざして、シャドウ一族が治安維持に乗り出し。襲撃を行った“盗賊ギルド”の集団など、即日で壊滅させたにもかかわらず。
〔襲撃者にアジトを提供した者がいるに違いない〕と、いう難癖をつけて“シーフ狩り”を行い続けた。
あげくロゴニアの町を支配している領主一族は、その行為を黙認している。
下の役人にはワイロを送り。身分の高い連中には『接待』や情報を伝えていた。そうして持ちつ持たれつの関係を作ったハズの連中は沈黙している・・・一夜で沈黙させられているという有様であり。
今やロゴニアの町の裏社会は〔猟犬に必ず狩られる、哀れなキツネ狩りの獲物以下に等しい〕と、いう有様だった。
〔金がねえっ・・・客も取引相手もいねえっ・;・*!?〕
何故なら逃走資金を奪われたから。
町に遊びに来て散財する『山賊』たちが、徹底的に取り締まられ。同じ時期に〔奴隷商人たちが山賊に襲われて惨殺される〕と、いう明らかに不自然な事件が連続して発生し。
嫌な予感がして逃亡しようとした矢先、開けた『金庫』が空になっていたためだ。
〔こうなったら役人との裏取引なんぞ、守っている場合じゃねえ。商家を強盗して、金を得るぞ!〕
〔バカ野郎、罠をはられているに・・・っ〕
〔アナタたち“賊”を始末するのに、そんな手間をかけていられるほどヒマではないわねぇ〕
〔キサマ等には『死』あるのみ〕
〔〔ーー―~;・っ!?〕〕
その夜のことは思い出したくない。
はっきりしているのは、強行手段に出ようとした連中が“バラバラの肉片”と化したことであり。
どうにか逃げおおせたシーフは、息を潜めて“美人局”を行うしかなく。
『旋風閃鷹!』
その“ケチな詐欺”すら取り締まられ、スラムで息を潜めている。それがロゴニアの町に巣くう、シーフたちの現状だった。
「羽矢弥様っ!このようなことは、もうおやめください!」
「報酬ならいくらでも、出しますっ・・・」
「・・・・―・・」
「「・・:・+・・」」
正義のヒロインよろしくC.V.娘三人が登場し。その後に吐き出されたセリフを聞いて、羽矢弥は頭が痛くなってきた。
〔私の名前を呼ぶな!
多額の報酬が出る『ナニか』の存在を、“賊”の前で叫ぶな!!〕
感情のままにそう怒鳴れれば、さぞかし気持ちいいのだろうけど。
今や羽矢弥?の『魔術能力』は、シャドウ一族の重要な『手札』であり。それを隠すため中級シャドウのフリをしたり、“通り魔”よろしく“美人局”を狩っていたのだけど。
様相は異形・心は令嬢の『妖精騎士』モドキなC.V.パーティーのせいで、色々と台無しになってしまう。
こんなことならライゾウから『魔術能力』を“簒奪”した、不届きシャドウとして拘束されていたほうがマシでしょう。
〔おめでとう羽矢弥ちゃん・・・とはもう呼べないね。
ようこそ羽矢弥殿。ボクは貴女が『成った』ことを歓迎し、敬意を払うよ〕
〔・・・・・・ありがとうございます聖賢の御方様。
新たに得た『旋風閃鷹』を行使して、より一層の忠節に励みます〕
〔・・・・・まあ、しばらくはそれでいいかな。羽矢弥ちゃんの希望はかなえられるかぎり応えたいし。
とりあえず『認識変動』をかけて、『旋風閃鷹』を完成させようか〕
〔申し訳ございません、聖賢様!せっかくの『幸運』によって得た『力』です。侍女頭様には遠く及ばずとも一族のために、この『力』を使いとうございます〕
〔いいよ~。ボクの【本業】としては、君たちの望みをかなえることも、重要な御役目だからね。自力でかなえたい『望み』以外は、何でも言って〕
〔お心遣い、ありがとうございます!〕
こんなやり取りを、ほんの数日前に交わしたのだ。羽矢弥を護衛?するC.V.パーティーがいるのは当然、予想すべきことであり。
「とりあえず、まずは“美人局”を始末しましょう。酔わせた被害者に、さらに追い打ちをかけようとした連中です。
『被害者』の素性を惑わすため、同業の連中も一掃します」
「なっ・-・!?」「ヒッ、私はや;+/*・・」
〔単なる偽装のため、『美人局』を行っている連中を始末する〕と、いう理不尽な羽矢弥の宣告に、男女二人組の顔がひきつる。
しかし男女問題が、これからより一層深刻になる。『多重婚』によって、トラブルの発生が確定していることを考えれば。
〔『美人局』のもたらす、悪影響の『芽』は根絶したい〕と、いうのがシャドウ一族における女性陣の総意であり。
けっして〔幼馴染みに借りを作ろう〕とか、〔『ハニートラップ』の見せしめにしよう〕などという打算はイッサイありません。
「・・・『デュラハンフェイス』」
『黒煙は火より熱く、焦土は溶岩よりも荒れ、昏き牙は妖犬より凶猛に成る・・・アンガース!!』
『死線を嘆き、指し示す・・・バンシーヴォイス』
羽矢弥の意をくんで、C.V.三人が無力な“賊”へ連係魔術を放つ。それらは速やかに『美人局』の二人組を無力化し。
「御身に欠片の醜聞があってもなりません」
「どうか、この者たちへの『仕置き』は我々にお任せください」
「・・・お任せくださいませ」
騎士が率いる小隊以上の戦闘力を持つ、8級C.V.が三人もそろって羽矢弥に懇願してくる。それは侍女シャドウの時には、とても考えられない出来事であり。
〔失敗は許されないわね〕と、いう決意を改めて羽矢弥に抱かせた。
『山の神の使い』『鉱山の守り神』と言われ、『大百足』は信仰されていました。
そして人間が生きるのに必須の『水』を司る『大蛇・龍神』を脅かすほど、『大百足』は強力な存在であり。これほど強力な存在となると、自然現象が『神格化』した大妖怪だと愚考します。
そして『オオムカデ退治』の伝承で、メジャーなのは『琵琶湖』と『日光』の二ヶ所であり。どちらも『火山』が近くにあるとのこと。(昔の『琵琶湖』は今よりはるかに大きく。現代では『火山灰層』が残っているそうです)
そのため『オオムカデ』は『火山・溶岩流』が神格化した存在であり。
大昔の『高価な武具』が『隕鉄』という、『隕石』から金属?を抽出したものを材料としたように。
大昔の未熟な『鉱山開発』は、『火山』の地殻変動で『崩れた山』から『鉱物』を探し。『鉱山開発』を行った。それが『水神の蛇竜』を脅かした、『大百足』の有力候補だと愚考します。