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落鷹と『雷輪電昇』

 酒好き大蛇の『うわばみ』は、水神の『大蛇オロチ』と比べて大きな差異があります。


 それは『うわばみ』が『水』を操っていないこと。

 『うわばみの絵』『江戸時代の大蛇の絵』を見ると、『火炎』をまとっていたり。昔話では『うわばみ』の住まう山が乾燥している感じがする。


 例えば近所の親父の代わりに『うわばみ』が登場する。〔饅頭(or小判)怖い〕のアレンジ笑い話では〔『タバコの煙』が苦手な『人食い妖怪(うわばみ)』を人々が煙でいぶす〕というくだりがありますが。


 『沼・川』がある山なら、『うわばみ』はそこに潜って避難すればいいわけであり。そもそも水神の『大蛇』なら、雨をふらせることで煙草の葉をいぶす『火』を消せば良い。


 それらを行わない『うわばみ』は、水神と言っていいのか?私は首をかしげてしまい。


 近代以降の文化から推測すると、西洋の『火竜』・アジアの大蛇(ニシキヘビ)が『大蛇オロチ』と混ざって、『ウワバミ』になったと妄想します。

 『歪んだ魔力(呪力)』と『さかずき』の組み合わせ。それらから連想されるのは、『杯』からあふれ、滴り落ちる『呪力』であり。周辺地域どころか『世界』をも呪う、膨大な『魔力』はおぞましい“暴威”と言える。


 〔“それ”だけでいいの?〕


 恨みなどの昏い『感情』から産まれる『呪力』は、『粘着質な魔力』とシャドウ一族から認識されている。

 

 〔だけど『昏い感情』イコール“邪悪で有害”とは限らない。『毒素』も適確な調合を行えば、『妙薬』に変わる。

  同じように少しの『嫉妬』なら、『お人形』を魅力的な男女に変える。『手段』を間違えず、結果を出せれば。『嫉妬』は『向上心』に成り得る。


  だったら羽矢弥ワタシの『嫉妬』という感情も・・・・・〕


 シャドウ一族に利益をもたらすため。『雷輪電昇』をふるうライゾウは、確実に複数(C.V.)の妻を娶ることを要求される。

 それでもライゾウが幸せで、『側室・愛妾』を迎えるというなら。姫長様に仕える侍女シャドウとして、羽矢弥はやみは自らの妬心を呑み込む。飼い慣らす努力をしていたでしょう。




 〔淫魔女サキュバスタイプのC.V.が、都市ウァーテルに来訪するかもしれない〕


 〔・・*・`・・〕


 それは『種馬』のように、血統を管理されるのか。それとも巨大な家畜のように『精液』を採取される、『錬金術具』としてあつかわれるのか?


 どちらにしろ、これで羽矢弥に『ハーレム』を許容するという選択肢は消滅した。


 そして『賢者様』ではない、侍女シャドウが『サキュバス来訪』の詳細を知るよしもなく。もはや『密偵』ではなくなった羽矢弥シャドウに、探りを入れる術などない。そして『時間』は事態の悪化を招きこそすれ、羽矢弥に味方することは絶対にないわけで。


 〔私は『女』であり、『風属性』のシャドウだ。ならば「座して死を待つ」などということは、あり得ない〕


 一羽の鷹として、生きるために狩りを行う。ライゾウの婚約者候補(C.V.様)が来る前に、勝負を仕掛け。必ずや標的の獲物(ライゾウ)をつかみ取ってみせる。




 そう考えた羽矢弥は、ある『試練』に志願する。


 『試練』と言っても、命の保証はされているに等しく。

 最初に『試練』へ挑み続けていた、侍女頭アヤメ様と比べれば。温風をあびながら、背中を追っているだけで恩賞にありつける。未知のC.V.様と遭遇することに比べれば、難易度の低い任務なのだけど。


 〔アヤメ様の道標・足跡から外れれば、危険に見合った好機チャンスを得られるでしょう。

  一族・お義姉(アヤメ)に利益をもたらし、ライゾウの『幸福』を狩ることができる。


  そのためには・・・〕


 本命の『魔術能力』を得るために、まず魔力容量キャパシティを増強しなければならない。それも穢れた“邪法”、身の丈に合わない『呪法』ではなく。

 羽矢弥の情念、羽矢弥の個性を保ったまま『魔力量』を増大させる。そのためには『さかずき』からあふれ、こびりついているような『呪力』では不都合であり。


 『一のくちばしは鋭く、餌をついばみ


双眸そうぼうは標的を見据え、両の耳は秘かに警戒する


  三方をかたどる両翼は尾羽根と共に 空を舞い、陸を往き、水辺に獲物を求め


四爪は並び、相乗する


  糧をつかみ、悪罵を引き裂き、風より速く/+*:・八よo・・+』


『詠唱』が完成する寸前に、はやm;の意識に魔力が分け入ってくる。神経系が振動し、未熟な『耐魔力』が封じられ。



 『・・・雷輪電昇!!!』


全身に活力をもたらす『電流』が流され。ha矢miの心身は急速に覚醒していった。






〔至高の魔術は何か?〕と、問いかけられた場合、世の人々はなんと答えるだろう。

人によって様々だろうが、下級シャドウであるライゾウにとって『至高の術』は一つしかない。



『表皮を走査、筋肉を鑑定、神経系を魔力で把握して・・血流を透視する』



それは『治癒術』だ。『魔力』によって身体を活性化させ、傷病を癒す。口にするのは容易だが、たいていの人々はそのリスクを認識できていない。

 端的に言うと。『治癒術』で身体の回復・再生力を干渉されるイコール、『魔術』によって蹂躙されるのが確定するということだ。『吸血鬼』の養分になるか、『邪神』の生贄エサになると言ってもいい。


 〔人体の神秘(回復・再生)を『魔力』でいじられる〕とはそういうことであり。

 ライゾウにとって『魔力による医術(ヒーリング)』を行使するのに〔慎重し過ぎ〕ということはない。


 『治癒術チート』を使うのだから、治療できて当然であり。“後遺症”など論外に決まっている。

 そして『治癒術』の円滑な使用に、“デメリットをもたらす連中”は消滅一択だ。



 『治癒術』を受けた患者を、情報収集のため誘拐しようと(・・・・)する“賊”は抹殺する。

 『治癒術』の行使を妨害する。もしくは愚かな権力争いを持ち込む貴族は破滅してもらい。

 本物の『治癒術士』を狙う“邪教”の類には、この世から永久に退場してもらう。


 

 これらの『誓約』を、ライゾウは自らに課すことにより。ささやかな『魔術能力(雷鈴鐘)』は、わずかながら『治癒』の力を得る。


 『シャドウ一族の者か、一族が大恩を受けた御方(イリス様)限定で、体内電流に干渉し。眠り封じられた、身体機能を目覚めさせる』と、いう。

 

 万人を癒やす聖人・聖女様と比べ。数段劣る『治癒術(雷鈴鐘)モドキ』を、ライゾウは行使できるようになり。



 「やっぱり効かないか・・・」


 『・-・~・・・』


 幼馴染み(羽矢弥)の蘇生に失敗していた。

 

 『八鷹輪舞:終局』という、『広域結界』でロゴニアの町を羽矢弥は覆い。そのまま昏睡状態に陥った・・・と、ここまでは近くにいた重騎士たちから話を聞き。患者の身体を走査する『検査術式(雷鈴鐘)』で調べをつけているのだが。



 『雷鈴鐘』


 『・:・^~^*』


 侍女シャドウの『魔力抵抗』が、ライゾウの『雷鈴鐘』をはじく。

 正確には弱い『電磁波』を『抗魔力』ではね返し。強い『電磁波』が発されると、『抗魔力』を突然下げ。強い『電磁波』で身体の重要部位を破壊させようとする。


 〔侍女シャドウが『精神操作ヒュプノス』にかかるのを防ぐ。『対抗術式』なんだろうが・・・〕


 この『対抗術式』を考えた奴は、性根が歪みまくっている。


 そんなことを考えつつ、ライゾウはとっておきの『連動術式』の発動に取りかかる。


 『雷鈴鐘ショック』を身体に与える・・・・・と、羽矢弥にかけられた『対抗術式』に惑わしをかけ。より深く、羽矢弥の身体を『解析』していき。


 〔これが『対抗術式の核』か・-・・となると、ここらへんから『雷鈴鐘デバフ』をかけて、と〕


 試すまでも無く侍女シャドウの『対抗術式』は、ライゾウの『破呪文ディスペル』程度で解除できない。だから『術式の核』がある部位の、身体機能を低下させ。

 その余波で低下した『対抗術式』の隙をつき。


 『呼気はうなれ、血流は回れ・・・そして神の経絡は猛って昇れ   雷輪電昇!!!』


 ライゾウの切り札である『雷輪電昇』を、羽矢弥の心身にかける。

 『身体強化』の定番三種を、並列起動させ。羽矢弥の『生存本能』を徹底的に強化して、『八鷹輪舞』の『くびき』を超えさせる。


 そうしてほとんど強制的に、羽矢弥の蘇生を行い。 



 〔あとは羽矢弥の【身体情報】を知る、オレの頭を『雷術式』で灼いて、と・・・〕


 重要情報プライバシーの記憶を消せば、羽矢弥・はやm;~^ha矢mi??mmhhyy*?



 いつもの(・・・・)魔術工程に進もうとした、ライゾウの頭に何かが流れ込んでくる。

 

 ソレはライゾウを高みに押し上げる、羽矢弥の『チカラ』であり。



 下級シャドウとしてのライゾウが終わる。歪な『治癒術(雷鈴鐘)』が、終了した瞬間であった。

 もっとも鎖国状態の江戸時代に、『火竜』『ニシキヘビ』の類が知れ渡る可能性はゼロでしょうけど。そもそも『ギョロ目の(存在しない)虎』が、あちこちで描かれている。そんな時代に『ニシキヘビ』を知る日本人などいないでしょう。


 そのため私は『江戸時代の大蛇(うわばみ)』は、『大蛇オロチ』と『大百足オオムカデ』が融合した妖怪だと愚考します。

 

 そもそも『蛇』の異名に『長虫』というのがあり。昔は『蛇』を『虫』と考えていた人々が、一定数以上いたでしょう。そのため『ムカデ』と『蛇』の伝承を、混同する可能性はあったと愚考します。

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