微風の強襲:奏竜焦爪 その2
鳥の『梟』に対し、皆さんはどんなことを連想するのでしょう?
『梟喫茶店』にいる、人なつっこいペットとしての『フクロウ』を連想する人もいれば。黒目が大きくて愛らしいうえに、賢い森の長老をイメージする人。あるいは『福ロウ』とかけて、縁起物と考える人もいるでしょう。
しかし特撮・ファンタジーや歴史物の世界において、『フクロウ』の扱いはよろしくないと愚考します。
黄色い『フクロウ』の戦群は一人おり、世界忍者にフクロウ貴族もいますが。圧倒的に『フクロウ怪人』が多く。しかも不気味なのに加え、『性根』から歪んでいる『フクロウ怪人』が少なくない。
ファンタジーの『梟モンスター』も同様であり。味方側につく、主人公に使役される『使い魔梟』はいるものの。歴史物だと『梟雄』の言葉どおり、やはり性根がよくないイメージがつきまといます。
現代のカルチャーだと、『おとぎ話』をベースにした作品に穏健な知恵者の『フクロウ』は登場しており。マスコット的な『フクロウ』が、人間に近しい存在だと愚考します。
侍女頭のアヤメは英雄では無い。全てを断ち切る『聖剣』をふるう実力などなく。百発百中の『魔弾・魔槍』の類を手に取る、資格すらない。
そんな彼女が唯一誇れる技能が『感知能力』に関してだ。特別に鋭敏だとか、『全知の神業』を持つわけではないものの。
ただ『感知能力』をふるうのは『戦』であり。『戦』ならば先人・家族の『技術』を学び、腕を磨くことができる。そうして耳目と鼻の『感覚』を開きっぱなしにしている、無防備な“敵”を圧倒できるというだけだ。
『旋風閃影(×風尾)』
アヤメは自らの『魔術能力』を併用することで、その効果を倍増させる。
『音・臭い粒子・体内電流』など、気配察知に捉えられる物質に『魔力付与』を行って『影』を造り。それを操りながら『加速の身体強化』を併用する、『旋風閃影』を発動する。
そうして、あらかじめ用意していた『風尾』の跡を逆走した。
『影』の代わりに、『傷痕・警戒網の尾』を魔力付与によって編み。それに触れ・踏んだ敵の情報を抜き取る。触れられ変わり、踏み砕かれた『風尾』の残滓を分析することで、敵を解析してしまう。
そんな『呪いの風尾』を、アヤメは『旋風閃』の機動力でたどっていき。
『ギャw/*ッ!!』「なんd/-/:*」『ギギッ!・!*`*』「ヒィ~//ー-ッ」
“怪物行進”を率いる、中隊長格のボス連中を狩っていく。
『怪物暴走』を仮にも軍勢へと編成する。そんな“怪物行進”は厄介な存在だが、あくまで“急造の軍団モドキ”に過ぎない。その行進は攻撃一辺倒であり、『守備訓練』以前に『防衛』の二文字すらなく。
〔今まで数の暴力・圧力だけで、勝利を得てきたのでしょうけど・・・相性が悪かったわね〕
『機動力・感知』を駆使しての戦闘経験に加え。アヤメはお館様に従って、最低限の『戦術知識』があり。彼女からすれば『怪物行進』など、“壊れたザル”に等しかった。
指令塔・・もしくは大将の指令を中継するだけの、小中ボスを討てば。その配下は大将の命令を優先して行進を続ける。あるいは後続・上位モンスターの“糧食・魔薬”として消費されてしまい。
アヤメは包囲どころか、追撃すら受けること無く。侵入経路を疾走し、小中ボスを次々と仕留めていけた。
〔こんな“狂気の行進”を活かすために、悪食・暴食の“魔術造物”を編成した。モンスターの大軍・種族を組み合わせ、『陣形』を取らせる。そうして“犠牲”を捕食させて、“巨大クリーチャー”を使役するつもりだったのでしょうけど〕
その手の『捕食能力』持ちのモンスターは、口から異臭がする。食べた『エサ』を分解するため、唾液などの『強酸・溶解能力』が口臭に表れてしまい。『汗』にまで『血・酸』が含まれている、『怪魔』などは正体を宣伝しているも同然であり。
そして『可憐なヒロイン』なら大騒ぎする『怪魔』も、侍女シャドウでひるむ者などいない。
そんな雑念をいだく余裕を持ちながら、アヤメは『怪物行進』の奥深くへと侵入し。
〔捉えた・・-仕掛けるっ!〕
総大将らしき『獣使い』を捕捉する。“怪物行進”の中小ボスに指令を送る、『魔力付与』された臭い粒子・咆吼を次々と発し。
ロゴニアの町を破壊しつつ、お館様との対決を避けるための『鶴翼陣(→包囲陣)』を変化させ。アヤメが構築した『奏竜焦爪の結界陣』を突破するための、『鋒矢陣』へと“モンスターマーチ”の隊列を組み替えていく。
〔敵ながら見事なものね〕
それを目の当たりにしたアヤメは素直に賞賛しつつ、背中に冷たいものが流れていた。
『フェロモン・咆吼』に『魔力付与』を行い、モンスターに指示を出す。その技法は光学情報を除く、身体から放出する様々な物質に『魔力付与を行い影を造る』という。アヤメの『旋風閃影』の術理に通ずる物があり。
〔まともに戦っていたら、苦戦したかもしれない〕
少なくとも〔『旋風閃影』のフェイントに引っかかった。無防備な敵を高機動力で圧倒する〕と、いうような流れにはならないでしょう。
もっとも現状“怪物行進”へ、矢継ぎ早に指令を出す総大将はお忙しいようであり。周囲への警戒どころか、魔力放出によって体力を消耗させているという有様だった。
〔悪いけど、容赦しないわ〕
「もう一つの『切り札』をきる。『宝珠』を出せっ`!>/:*」
「・ーー・―ー:―--ー・―^―――~・ー・――『旋風閃影!』」
敵大将の存在をアヤメの感覚が捉え、刹那の間にその鑑定を行い。
だけど疾走疾駆の勢いを止めぬまま、アヤメは敵大将へ強襲を仕掛けた。
「ッ!;・・ガァアアーーー/*ッ!?グwッ*!」
『凶手』が肉体を貫く。血が滴り、内臓を傷つけ。常人なら間違いなく致命傷になる傷を、アヤメは敵大将に刻み込んだ。
「てめぇ・・・無事に帰れると思うなよ」
そして筋肉の収縮という、『枷』をはめられた。アヤメも知識でだけは知っているものの。激痛の中で力をこめ、出血する傷口に負担を強いる。おそらく初めて行うそれは、才能以前に強靱な意志の成せる技であり。
“怪物行進”という“外法”を使っていなければ、尊敬すべき戦士なのかもしれない。“老若男女、皆殺し”を行使している時点で、唾棄すべき暴君なのだが。
『障害+強化』
アヤメは腹部に潜り込んだ『手』を通じて、『術式』をかける。
腰から上に『障害』をかけ、その代償に下半身に『強化』をかけた。それにより力の増した『足』が大地に根をはるように安定し。アヤメの『凶手』を締めあげる、筋肉の収縮がわずかに弱まる。
「だけど『手』は脱けない。たいしたものね」
「逃すkGァア‐―ー!?」
リップサービスに喜ぶ大将には悪いが。中距離・複数人にかける『強化+障害』と、貫き手で一人だけにかける術式では威力・強制力のケタが違う。
そして仮にもヒトの身体は『音』があふれており。血中には『酸素』が、無数にあるわけで。
アヤメが本気ならば、それらを乱すなり。コントロールを奪うだけで、“怪物行進”の元凶?を仕留めることは可能なのだが。
「ハッ‼」
「グゥッ!?・ーっ/`~*・:」
身体に刺さった凶手から『魔力の振動』を発して、傷口を広げる。同時にその手でアヤメの身体を引き寄せ。傷口に響くよう、ひざ蹴りを叩きこんだ。
「ゴハッ!;!Gwッ*、ゲェっ`*」
『双竜爪…』
そうして浮き上がった巨体の足元を、『地擦りの小風刃』で切り裂き。さらに追加で『双竜爪』を展開し、周囲の側近・護衛たちを足元から切り刻んだ。
「「「「「「・・・・-ー―・」」」」」」
「おの`れぇー^ー許さ^んぞっ‼.!」
ロゴニアの町を破壊しつくす“怪物行進”を率いる将軍が、側近たちの死に激高する。
その身勝手さに共感を覚えつつも。アヤメはようやく標的を見出し。素早く貫き手を引き抜いて、間合いをとった。
そんなアヤメの眼前で、身体に空いた穴が急速にふさがり。その『再生』に並行して、『標的』の『自爆魔術?』も大将の巨体の中へと沈んでいく。
〔使える駒だから、最期の瞬間までは“特攻”させない・・・ということかしら〕
そんな雑念を抱いたアヤメの眼前で、巨漢が転がるように逃げ出した。あげく足止めのつもりか、悪あがきの罵声を放ち。
「『クリーチャー』どもよっ!走り、貪って、狂Rぁ/・*」
『‥――・―、風術信号×9‼-ー旋風閃!』
一瞬でも“賊の大将格”に興味をもったことを悔いる。アヤメの『魔術能力』が乱舞し、逃げる背中へ叩きつけられ。
「悪いが力を借りる‥『旋風雷閃!』」
「っ`-ー**/***:*」
アヤメにとっての禁じ手が放たれ。それでようやく彼女の『標的』は消滅した。
ネタバレ説明:『奏竜焦爪』について、その2
一人で『長文詠唱』だけで、『奏竜焦爪の結界』を発動すると。前回のネタバレ説明したとおり、『奏竜焦爪』は渇きをもたらす攻撃的な『旋風結界』になります。
では複数人で『無詠唱・静音詠唱』も掛け合わせて、『奏竜焦爪』を発動した場合どうなるか?
『奏竜焦爪』は、敵方の『広域結界』を破壊する。それが不可能なら敵の『結界』に、強行偵察をしかける『旋風結界』と化します。
冒険者なら『ダンジョン』に潜り。英雄なら『敵性結界』に挑み。術者ならば、互いの技量を競い合うのでしょうけど。
シャドウ一族が、そんなことをしていたら命がいくらあっても足りず。アヤメと姫長の扇奈が主動して、編み出された『魔術能力』が『奏竜焦爪』です。
『風属性』の結界のため、普通に感知能力に優れており。『周囲の魔力を集める』という『結界の呼吸?』から侵入して、『魔術陣』を破壊したり。障壁の弱い『結界』に圧をかけます。
もっとも『結界破壊』が行えるのは、格下相手であり。本命は『対結界の強行偵察』になります。
耳タコでしょうけど、『風属性』の感知能力を活かし。地中には魔力の振動を発し。水中の『泡』を通して探査を仕掛け。
そして『渇き焦がした物体』の変化を解析して、結界の正体を探る。これが本来の『奏竜焦爪』であり。莫大な予算・時間をかけて構築された、『都市・城砦の結界』を無力化する。そのために必要な『情報』を抜き取ってしまう。
C.V.の間では悪名高き『魔導能力』が、『奏竜焦爪』の正体です。
もっとも今回のロゴニアの町外周での戦いでは、それほど猛威をふるわず。
羽矢弥の『八鷹輪舞:終局』の結界を取り込んで、広域・精密の『探査』を行い。“盗賊ギルド”の虎の子である、『自爆魔術の装置』を探し解析していました。
アヤメの『旋風閃影×風尾』は、あくまで敵の将軍を探していただけです。
以上、『奏竜焦爪』のネタバレ説明でした。
他にも『戦女神アテナ』は使い魔として『梟』を従えますが。人間を守護し友好的な『戦女神アテナ』だと、『フクロウ』の出番はなく。好戦的で闇の女王な『アテナ』が『使い魔梟』を従える傾向があると、私は考えており。
いつもの私なら〔色々な文化があって楽しいな~〕で、すますのですが。『フクロウ』のイメージに関しては例外を適用します。〔可能なかぎり生態を知り。フクロウには【プラス】のイメージをもってほしい〕と、お願いしたい。
何故ならたいていの『フクロウ』は、ネズミを獲物として狩る。農作物や樹木をかじって枯らす、ネズミの天敵であり。そんな『フクロウ』と共生できたら万々歳であり。
切実な食費+食欲のため、『梟』とは仲良くしたいのです。




