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微風/雷鳴

 “忠臣蔵”を正当化するにあたって。“ケンカ両成敗”に加え、“庭で浅野内匠頭様を切腹させるなど、無礼だ!”“公平な裁定ではない!”と、主張する方がいるようです。

 それに対し〔ぜひとも公平な『お裁き』とやらを、やっていただきたい〕と、私は言いたい。


 赤穂藩士の脳内では、江戸城内に主君・仇敵の二人だけ(・・)しかいない『異次元空間』を妄想しているようですが。将軍綱吉をはじめ、幕臣・勅使にその家来など、大勢の武士が江戸城内にいたわけで。正当で公平な『お裁き』とやらで、ぜひ大勢の武士に大迷惑をかけた『浅野()の罪状』を明らかにして欲しいものです。


 特に刃物をふるうバカ殿を取り抑えた、武士は命がけであり。『武家の心得』とやらをふりかざすなら、“刃物をふるう狼藉者”を背後から斬り捨ててもいいでしょう。

 他にも勅使が〔刃傷沙汰のあった松の廊下を通ることに、固執した〕と、いう『もしも』があれば。迷惑・損害は倍増したわけで。


 江戸時代の見せしめを目的とした刑罰的に、類似犯が起きないよう徹底的に罰するのが『公平な裁き』であり。〔即日、切腹を命じられた〕と、いうのは減刑に等しいでしょう。


 『江戸城内で刃物を抜いた。将軍綱吉の面子をつぶした。幕臣たちの面子をつぶした。勅使に無礼を働いた。勅使を迎える儀式に参加した、全国の大名に迷惑をかけたetc.・・・・』

 

 これら“赤穂藩士”が勝手になかったことにしている〔数多ある『罪状』の裁定を受けられるなら、受けてみろ〕と、言いたいです。家老・側近まで切腹を命じられ、親族まで肩身の狭いおもいをしかねない。


 それらの罪状を考えもせず“ケンカ両成敗”などと言える。独善的で身勝手としか、言いようがなく。“公平な裁き=浅野家をヒイキした裁き”だと愚考します。

 ロゴニアの町に潜り込んだ“盗賊ギルド”の戦力を、ほとんど壊滅させ。それからご迷惑をかけた重騎士たちに謝罪を行い。


 ようやく倒れ伏した羽矢弥はやみのもとにたどり着いた、ライゾウを出迎えたのは凶暴な『式神』だった。


 「よし、ちょっと待とうか‥`」


 『ギ、g・・Syaァーーっ』


 魔力を視認するのが困難な男性シャドウにとって、唸り声をあげる『式神』の実体を捉えるのは、本来なら難しいことだ。

 しかしライゾウは例外的に、その『式神』の実体を感知することが可能であり。そのため楽して、『式神』を突破できると考え。ライゾウは友好的に『式神』へと語りかけた。


 「オレが羽矢弥に不届きなことをするはずがない。だから、そこを通してくれ『開門・雷蛇』!」


 『・・ー:、シャGla~・ー!!』


 「うおっぉ・:おかしいな・・『鎮まれ雷t~*・」


 『ギギっ‥-Syaジャla・ー・・G^a--:!!』


 〔ライゾウの『合言葉』など聞く気がない〕と、ばかりに『雷蛇の式神』が猛り吠える。




 ちなみにコレは後ほどオシえられることだが。中級シャドウの侍女に与えられた『式神』は、非常時の『護衛』と『自決・介錯役かいしゃくやく』を兼ねており。当然、その『操作権コントロール』は安直に移行できない。


 そのため『操作権』をライゾウに移行するために必要な、『合言葉・条件・・』は定期的に変えられ。


 『会議・交流(デート)』をすっぽかした“不届き者”は、追加された『条件・・』を知らされていないこともある。

 羽矢弥たち女性シャドウたちも、こんな物騒な『式神』など使う気はなかった。戦場に出ている以上、敗北したら死ぬ覚悟のため。一応、『護衛』()してくれる『雷蛇の式神』に頼る予定などなかったのだが。


 ある事情により、羽矢弥は『貴重な式神』をつけられ。

 ライゾウは自業自得の制裁(第一段)を受けることになった。




 「こいつ・・何故、鎮まらないっ!」


 『電沼牙』


 ライゾウを敵と認識した『雷蛇』が、地面をつたう『電流』を放つ。それは『派手な光(エフェクト)』を放つことなく、地面を流れ。


 『-\○~:~○/ー』


 かま首をもたげた蛇体が、頭上から襲いかかってくる。上下からの挟撃は『作った時』には傑作だと自慢したものだが。この状況では後悔しかなく。


 『雷鈴電鐘!!』


 機動性を重視した『身体強化(雷臨電翔)』を、剛力と術式を併用する『雷鈴電鐘』へと切り替える。そうして左手の『短棍』を地面に打ちつけ、『疑似電流』の魔力を防ぎ。


 『Glァーー~-アアーーー!』


 「ちっ・・」


 右手の『短棍』で、襲いかかる『雷蛇』の牙を迎撃する。一瞬だけ打ち合ってから、衝撃をいなすように『短棍』をまわし。


 『shッ:ー`』


 「逃すかっ・・」


 ライゾウの動作を警戒して、『雷蛇』が頭を引き。それを追撃するように見せかけ、ライゾウは『蛇の頭』を支えている接地面へ、『電磁波デバフ』を放つ。


 『-\○・:-!』


 「そらよっ!」


 蛇体の『軸』を攻撃されるのを防ぐべく、『雷蛇』の頭部が下がり。ライゾウはその頭部を蹴り上げ。


 それから間もなく、不毛な『式神退治』は決着した。











 ロゴニア子爵家が治める町の外周。そこでは装束をまとった者たちが争い、戦っていた。


 『双竜爪』


 『旋風閃!』×4


 「くぐっ!?」「おのれぇ-・-!」「・;+*」「//・?・ひぃ、ヒ」「来るな、来るn/*:~」


 無数の『小風刃』が地面にそって乱舞する、『足斬り風刃(双竜爪)』が敵の機動力を奪い。そうして足が止まった獲物を、『加速の身体強化(旋風閃)』を発動させた侍女シャドウが二対一で襲う。


 足の速い『女豹シャドウ』が、動きも攻防の実力も劣る“盗賊ギルド(ケダモノ)”を狩る。

 侍女シャドウたちの奇襲から始まり。終始、彼女たちが圧倒するソレを『戦い』と言えるか疑問だが。各方面の名誉のために、コレは『戦い』に分類すべきだろう。


 そんな益体もないことを考えていた侍女頭シャドウのアヤメに、戦闘終了が伝えられた。


 「アヤメ様!“賊”の邪法使いたちは、この通り捕縛いたしました」


 「ご苦労さま。この者たちは『証人』として外交に使うから・・・」


 周囲の警戒を行いながら、侍女シャドウの部下に指示を出す。久々に侍女頭らしい任務を行っていたアヤメの意識に、『秘術の風霊』が届き。


 『-\○・:-!』


 〔これはっ・・・!?〕


 それは『契約』をかわし、『特別任務』を与えていた。侍女シャドウの羽矢弥につけていた『式神雷蛇』からの『知らせ』であり。姫長の扇奈、お館様(イリス様)たちにも内緒で進めていた、案件の『知らせ』だった。




 『カオスヴァルキリー(C.V.)』のイリス様は、シャドウ一族の主君だ。それもすこぶる有能で強く優しい、本来なら渇望しても得られない。『聖賢の御方様』という至上の主君と言える。


 しかしイリス様は『C.V.』という異種族であり。行動理念で人間と異なる部分が、必ず現れる。

 と言うか、既に『その件』を伝えられており。


 〔C.V.を存続させるため。次代のC.V.を育むために、ハーレムを作る!〕と、上級シャドウたちに伝えられている。

 そして女系種族のC.V.様が〔ハーレムを作る〕と、仰るのを意訳すると。


 〔男性シャドウを(性的に)いただく〕と、いうのはマシなほうであり。

 〔シャドウの誇り(プライド)ないがしろにして、男たちをC.V.ハーレムにもらう〕と、いう状況に備えねばならない。


 無論、全員が『幼馴染み』のシャドウに、想いを募らせているわけではない。

 ただアヤメが『術式・適性』から判断して、侍女シャドウの人員を募った際・・・


 〔侍女頭ワタシの配下になれば。姫長様の侍女になる、出世の道はあきらめてもらうわよ〕


 〔〔〔〔〔かしこまりました!!〕〕〕〕〕


 彼女たちの眼力・呼気に重心の一つとして揺らぐことは無く。侍女頭アヤメとしては〔C.V.ハーレムの情報が、既に漏れているのでは?〕と、懸念をいだいたものの。


 既に複数の役職を兼任し。多数の任務を同時に処理しているアヤメには、容量を超えた(キャパオーバー)問題であり。


 〔まずは羽矢弥に密命を与える〕


 〔かしこまりました、お義姉(アヤメ)様!〕


 このセリフの追求を怠り、アヤメは色々と〔頭が痛くなる〕事態に陥るが。

 それはまた別の『お話』であり。




 「よくやったわ、羽矢弥・・」


 「・・っ!!」「侍女頭アヤメ様・・」「それでは^-・・」「次は私にっ・:・!」


 アヤメのつぶやきを耳にして、侍女シャドウ(アヤメの配下)たちに喜色が広がる。それを微笑ましく見つめつつ、彼女は無粋な『魔術造物クリーチャー』の群れを感知していた。


 「^・:^・・」


 そんな彼女たちが喜ぶ姿を、虜囚の一人が口元を歪めて見やり。


 「「「・・:・-・・・(オメデトウゴザイマス)」」」「「:-・~・・:(オイワイをシナケレバ)」」


 まず半分の女シャドウたちが一瞬、ソレに冷ややかな視線を投げかけてから。

 偽りの言葉を発し続け。


 〔次の人員は決まったわね〕


 迅速に決定をしつつ、アヤメはそれ以上の速さで『術式』を構築していき。

 

 

 『奏竜焦爪そうりゅうしょうそう


 殺戮の旋風を吹き荒れさせた。 

 

 〔そんな横暴を、誇り高い武士・赤穂藩士がするはずがない〕と、言われるなら。『法律・判例』に則って、“浅野内匠頭による刃傷沙汰の事件”を裁いてみましょう。


 〔将軍綱吉は諸大名の改易を狙っており。跡継ぎの子供が産まれないor病死した諸大名を、次々と改易していきました〕


 全国各地で行われたこの“判例”から裁定を下すと。

 “跡継ぎが成人できないなどの、健康問題で改易された。当時の医療レベルではどうしようもなかった問題により、お家が取り潰された大名がたくさんある。そんなご時世に、江戸城内で行われた大事な儀式の最中に、自らの意思(・・・・・)で浅野内匠頭は凶行に及んだ”


 判例に基づいて『公平な裁き』とやらを執行するなら。赤穂藩への仕置きは、健康問題で改易された諸大名より重罪としてあつかうべきであり。『財産没収』・“重役たちも切腹”を追加するのが打倒だと愚考します。

 少なくとも『単なる改易・藩主のみ即日切腹』で済ませたのは、優遇もいいところでしょう。


 そして『浅野家の再興』などというのは、他の理不尽な理由で改易された大名家をバカにしているに等しく。赤穂藩は“地方の権力者だから、それが全国に通じると主君・家臣まで勘違いしている”と、いう特権意識を持つ“迷惑貴族”そのものではないでしょうか。

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