表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
283/425

小者の雷~暴走二つ

 暗いヒゲもじゃ『策謀の神』は、日本で貴公子の『冥界神ハデス』へと変わりました。そもそもギリシャの『冥界』は罪人を罰するだけの地獄ではなく。亡くなったオルフェウス夫妻など、多数の死者が安寧を得る『異界』であり。そんな『冥界』を束ねる神格が小者では困るというもの。

 ギリシャ神話を伝えてくださった先達に感謝しつつも。『冥界神ハデス』は現状の貴公子な神格を、私は推します。


 ところが『冥界神ハデス』の隆盛は、残念ながら『ケルベロス』にほとんど影響していません。『ゼウス、ポセイドン』の兄神にふさわしい格を『ハデス』は得ましたが。『ケルベロス』は昔と同じ、『亡者を喰らう冥府の番犬』のままであり。

 

 〔ハデスと一緒にケルベロスも進化・良い方向に変わった〕と、いう作品は極めて稀少でしょう。(私の知るかぎりでは、一作品だけ)何故、こんな風に『ケルベロス』は放置されたのでしょうか。

 [小者の雷~アジト襲撃]からの続きです 



この世界において、『魔術』は物理法則を無視できない。だから物理的に不可能な『死者蘇生』を、行える『魔術』は存在しないし。『物理軽減』はできても、『物理無効』などという『魔術』を構築することもできない。


 それは『盗み聞き』を完全に防ぐ、『念話・魔術通信』などというものは〔あり得ない〕と、いうことであり。

 侍女シャドウの羽矢弥はやみが対価を払って発動させた『八鷹輪舞:終局』による。ロゴニアの町を覆う『風術結界』の崩壊を利用して、『信号・情報』を送る手段も完璧では無く。次回からは“盗聴”されるリスクが高まるということだ。



 〔だからライゾウは今回の『終局』で最大限の手柄を立てて〕


 〔手柄って・・・町に潜り込んだシーフの工作員たちを始末すればいいのか?〕


 〔ええ、“賊”が狙うのは聖賢の御方(イリス)様の御首級みしるしでしょうけど。それが困難なのを、そろそろ理解してるでしょう〕


 〔それは、まあ・・・そうだろうな〕


 〔だから二段目の策として、聖賢の御方様に“汚名”を被せる。ご来訪なさった町に放火・破壊を行い。流言を放ち、領主と裏取引を行って“汚名”を被せる。


  そのための人員がロゴニアの町へ、既に潜り込んでいるわ〕


 〔オレはそいつらを始末すればいい、というわけか〕


 〔ええ、奴等の潜伏場所は、もう調べている。あとは『八鷹輪舞:終局』で、当日の位置を精査すれば、私への『負荷』も少なくて済むわ〕



 ロゴニアの町を訪れる前に、ライゾウと羽矢弥はこんなやり取りを交わし。ライゾウは〔何か大事なことが脱けている(・・・・・)〕と、思ったが。

 それが何なのかわからず、〔“盗賊ギルド”が策を断念したら、余計な血を流さないですむのになぁ〕などと、益体やくたいも無いことを考え。




 下級シャドウであるライゾウは“盗賊ギルド”の拠点である屋敷を強襲し、そこにいる戦力を壊滅させ。〔さて聖賢の御方様のもとに行くとするか〕と、考えたところで『ソレ』が響いた。


 『疾風の爪にして刃の狩人  空陸水の場で狩猟を行う、自在の空舞い


  八の葉より出で来て廻り  槍より速く、悪鬼を射抜く(・・・・・・)飛矢を追い抜け!・:・・鷹舞八輪』


 「ッ`!?こいつは・・・」


 侍女シャドウ(幼馴染み)である羽矢弥の『魔術能力(八鷹輪舞)』を発動させる『詠唱』とは、似て異なる『響き』がライゾウの脳裏を埋め尽くす。だがそれが響いたのはわずかな時間にすぎず。

 ライゾウのもとに、ロゴニアの町に関する新しい情報が『念話』で送られ。あげくに『八鷹輪舞:終局』の使用権限がられ。


 〔どういうことだ`;っ!ふざけんなぁ・+-羽矢弥ーー~;-!〕



 その内容は、自制心の足りないライゾウを激怒させるモノだった。


 『八鷹輪舞:終局(風術結界)』が崩壊する際に送られた『風術信号』は、読み取った者(ライゾウ)に『念話』の導線パスを送りつなぐ。

 この日、ロゴニアの町(この場)で、ライゾウと羽矢弥の二人の間でのみ限定という『条件』をつけ。『盗聴』が極めて困難な『念話テレパス・魔術通信』の契約が結ばれ。

 以下の『内容』が、ライゾウへ一方的に送られてきた。



 1)『催眠』をかけられた者が、猛毒をばらまく仕掛け道具(ガジェット)を持たされ。ロゴニアの町で、破壊活動をしようとしている。


 2)その凶行によって住民が殺害された場合、羽矢弥の『生命力』も削られていく。


 3)その誓約により。ライゾウと羽矢弥(実質一人だけ)は住人の『魔力』をある程度、利用できる。


 4)それによりライゾウは『八鷹輪舞:第二段階』の情報支援を受けられ。羽矢弥は侍女頭(アヤメ様)から預けられた(・・・・・)『式鬼』で身を守ることができる。



 これらの『念話?・情報』を羽矢弥から後出しで送りつけられ。ライゾウとしては〔ふざけるな!〕と、言いたい。

 当初の予定では聖賢の御方(イリス)様を護衛しつつ、“盗賊ギルド”のろうする策を食い破る。パーティー会場で『外交』を行っているお館(イリス)様に代わり、反撃を行うことでライゾウたちは手柄を立てる予定だった。その過程で、ロゴニアの町に住まう民を守る事になるのはかまわない。


 しかしそれはあくまで【羽矢弥】の安全が確保されているのが、最低条件であり。お館様に関しては、論じるまでもないだろう。


 〔『八鷹輪舞:終局』を発動させたなら、もうロゴニアの住民(赤の他人)を守っている場合ではない〕と、いうのがライゾウの考えであり。当然、羽矢弥も同意見だと、ライゾウは思っていたのだが。


 『雷臨電翔・・っ!』


 大気中の『魔力』が迅速かつ精錬されて、ライゾウの身体に流れ込んでくる。それはライゾウの『身体強化(雷臨電翔)』を飛躍的に増幅させ。さらにロゴニアの『最新地図(情報)』を、ライゾウの脳裏に浮かび上がらせた。


 完全に自分の実力を超過した、『魔術能力スペック』にライゾウの頬がひきつる。いっそのことパーティー会場におられるお館様に泣きついて、羽矢弥の暴挙を止めてもらいたいが。


 〔あのアマ、後できっちり説明させてやる〕


 そうつぶやいてライゾウは『更新された地図』に記された、“標的シーフ”を狩るべく跳躍した。


 



 「どけや、オラァー~(雷臨電翔)^ー!!」


 「な、なっ!?」「んぁっ?」「--;・ひぃ」


 住民がライゾウの姿を視界におさめ、理解を放棄する。

 想像できる“山賊・略奪兵”を超える、凶相の“バケモノ”が宙を駆け。誰もが〔ソイツに関わりたくない〕と、心の底から思い。生き延びるための『逃走』を開始する。


 ライゾウもかろうじて残った理性で、まっとうな住民と()距離をとるよう心がけ。


 「「「bッ*+*`-」」」


 まっとうではない“シーフ”たちに強襲をかける。

 『合成鹿獣キマイラエルク』の『障壁』・防御力より、はるかにもろい拠点アジトの壁を『双短棍』で破壊し。その向こうにいた“シーフ”を、もろともにたたき伏せる


 「Gォオ*:・;」


 何か言の葉を発しかけた“シーフ”との間合いを、ライゾウは瞬時に詰める。怒鳴ることで部下の動揺を鎮めたかったのか、知らないが。肺腑に『肘』をたたき込み、リーダーらしき“賊”のセリフを永久に封じ。


 「「「「「*/*;\~」」」」」


 戦う・逃げる、あるいは命乞いをするつもりだったのか。残りの奴等(シーフたち)が口元を痙攣けいれんさせている間に、ライゾウは『双短棍』の乱打を放つ。その拠点にあった家具・調度品をまきこんで破壊する、人型の暴風が吹き荒れ。


 『雷鈴鐘-ー!!』


 「「「「「「「「「;+-^*~:・・」」」」」」」」」


 『魔薬』での復活を封じる『雷鳴+電磁波(雷鈴鐘)?』が、広くもない室内に荒れ狂った。近所迷惑もいいところだが〔『怪魔人・合成獣』の類が出現するよりマシ〕と、考えてもらうしかない。


 「次だっ!次の標的は、どこだぁー^~!!!」


 ロゴニアの町にライゾウの咆吼ほうこうが放たれる。その怒声を聞き、あわてふためく連中を狩るべく、ライゾウは再び移動を開始した。

 理由は『ケルベロス』が番犬で、『冥界神ハデス』が玉座にいるから。王城どころか『冥界』のはしと、中央の玉座ぐらい距離があり。さらに〔『ハデス』から『ケルベロス』に何か命じた〕と、いう類の神話もなく。(冥界の番犬を命じた神話ぐらい?)

 加えてギリシャ神話の『神々』は騎乗しないため。〔『ハデス』が『ケルベロス』に乗って移動・戦場に立つ〕と、いうお話すら創れない。


 一応、『戦車チャリオット』に乗る『神々』のギリシャ神話はありますが。戦車を引くのは『馬』のイメージであり。番犬の『ケルベロス』が、そこに割り込むのは不可能というもの。

 もっと身も蓋もないことを言えば。『チャリオット』を苦労して登場させても、人気につながらない。征服大王の『チャリオット』はともかく、戦車は現代人にとって持て余す古代兵器であり。(無敵英雄のチャリオットはちょっと・・・“遺体を引き回し辱める”の伝説とかないわ~)


 実際、『太陽神ヘリオス・軍神アレス・海神ポセイドン』はチャリオットに乗っていますが。その戦車チャリオットが敵軍・怪物を倒す神話はなく。移動を行っている、幌無し(オープン)馬車のようであり。

 

 そんな馬車・チャリオットを引っ張っても、『ケルベロス』は人気が出る神獣に変われなかったと愚考します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ