重騎士たちの術式
〔神々によってフェンリルは拘束・封印されていた〕と、いう北欧神話がある『天狼・氷狼?』の場合。北欧の神々がいない幻想世界なら、自由に活動する『上位の幻魔獣』が出現しても問題ない。
それに対し『ケルベロス』の場合、『冥界の番犬』という役割が一長一短になっていると愚考します。
『冥界の番犬』という役割は、ネームバリューをかなり高め。ギリシャ神話どころか、世界中のモンスターの中でもかなり有名になったと愚考します。
今でこそ『北欧神話』が知れ渡り。『フェンリル』が最上位の狼モンスターの地位を確立していますが。私の子供のころは犬科モンスターと言えば『ケルベロス』ぐらいであり。
あとは凶暴化した狼・野犬が一般人を襲う。ファンタジーというよりおとぎ話にでてくる“悪い狼”“卑しい山犬”が大勢を占めていたと愚考します。
パーティー会場で聖賢閣下の護衛に、ゴルンたち重騎士はついていたが。主君の強行な命により、屋敷の外で倒れた侍女シャドウ殿の保護に向かう。
聖賢閣下の護衛から外されたことに、ゴルンたちは納得いかないものの。“盗賊ギルド”の刺客が襲撃してきたことによって、不満を言っている場合ではなく。
少し“真実”を知っているゴルンは、『救援信号』の術式を打ち上げ。
「鉄壁、死守っ!何としても救援が来るまで、持ちこたえるぞ!!」
「ですが、ゴルン隊長っ・・」
「うろたえるなぁーー!」
「「「--`:・-・」」」
動揺する部下たちに、ゴルンは威圧まじりの檄を飛ばす。
重騎士たちは、自由な冒険者ではなく、イセリナ団長の配下だ。その役目は手頃な依頼を受けることではない。イセリナ団長の盾となって、理不尽と戦うことであり。
この世には理不尽な『魔術』を放つ、怪物・聖女やヴァルキリー様がいらっしゃる。
そのため『護衛』を務めるにしても〔要人にはりついていれば任務成功〕と、いうわけにはいかず。それどころか鍛え上げた騎士たちの全てを、一瞬で灰燼に帰す『魔術』がいつ放たれるかわからない。
よって『魔術』に疎い重騎士たちは、聖賢閣下に命じられたとおりに動くしかない局面が多く。それが陸戦師団の役目であり、(シャドウ一族に勝る)重騎士の強みと言える。
もちろん万が一の時は、ゴルンの首であがなう必要があるが。
「聖賢閣下の御力・先見を信じろ!今まで、閣下が失敗をしたことがあるかっ?」
「・ーー・ー:ー・ー・~:・」
「・・・:+;・ー;~・・:」
「確かにっ!戦場では、負け知らずです・・」
「ならば我々は、命じられたことを実行するのみだ。行くぞっ!!」
〔今回の任務を生き抜いたら、こいつらをシめよう〕
そう決意してから、ゴルンは部下たちに敵を迎撃する指示を出した。
『グランドバルク‼』×3
“盗賊ギルド”に与する元騎士たちが、強化した怪力で大型武器をふるう。斧がうなり、鎚が地面を震わせ。大ぶりの魔剣が、縦横無尽にふるわれる。
『怪力の身体強化』と相まって、その破壊力は絶大であり。パーティーに出席するための礼装など、かすめただけで粉砕されるだろう。
『ランドランダー!』
それに対しゴルンはたった一人で接近戦を仕掛けた。部下たち三人は、動けない羽矢弥殿を囲むように守らせ。堕ちた騎士たちを囮にしている、本命の刺客を警戒させる。
「愚かなっ‥」「なめるなぁっ!!」「死ねぇい--:・」
一人で間合いに入ってきたゴルンに、大剣の刃がせまる。同時に鎚が起こす震動が、足萎えの『呪縛』と化し。斧を持つ者は、不測の事態に備えて構えをとった。
それは巧みな連携と言えるだろう。
ただしゴルンたち重騎士にとっては、訓練で何度も繰り返した連携の一つにすぎず。斧持ちの奴は、遊んでいるに等しい減点対象だ。
『鎧光・兜』×7
『やっちまえ、隊長!』『そこです、隊長!』『・・:・・・ーー:・』
その証拠にゴルンは余裕をもって『光術式の兜』を具現化させ。部下たち三人も、それぞれの『光術式』を発動させ小細工を弄する。
「なっ‥!?」「妖術かっ!」「おのれ、姑息な手をっ!!」
〔悪かったな、姑息で・・〕
胸中でぼやきつつも、ゴルンは『アーマーライト・メット』を一つかぶり。両の手でそれぞれ二つ持ち。残る4つを堕ちた騎士たちのもとへ、転がしはじく。
「「「・・+・-・・」」」
『コォ;・*ハァ~*-』
「っ!!」「うわぁぁぁ!?」「ひぃいっ!!・!」
そうして生首のように転がった兜から、『怪光』を放出させる。鈍色の七色がおぞましい輝きを発し。『兜』の中に“ナニ”かがいるように錯覚させ。
「うろたえるなっ!!こんなものは、くだらんM*`*-+」
一番、最初に正気に戻った奴に、ゴルンは全力の剛拳をたたきこむ。威力が大きい代わりに、隙も大きい。多対一では、とても使えない大振りの攻撃を放ち。
「---ッ!ミルドさんっ!!」「貴様らっ・・殺す`:・!?」
残り二人の動揺を観察しつつ、ゴルンは余裕をもって体勢を整える。
怒るのはともかく、大声をあげるのはいただけない。『鬨の声』をあげながら出来ることは限られており。駆け足・弱兵を切り捨てる単純動作で、この状況を打開することは不可能だ。
『ランドランダー』
『グランD`*ー*;」「このっ‥何で`;+*‥」
『ヘビーライト』によって大型武器の重心を狂わされた。鍛冶を知らない戦士が軽視する、鍔・柄に『ヘビーライト』をかけられた状態で、先ほどの連携を行うのは極めて困難であり。
逆にゴルンたちからすれば、その隙を突くのは極めてたやすい。
こうして重騎士たちは敵の第一波を撃破した。
「「「「・*・;`・--*・」」」」
「こいつ等は、・・まずいっ‥!」
その後 断末魔の痙攣をする“賊”たちに気付き、心の底から戦慄した。
しかし『冥界の番犬』という『ケルベロス』の地位は、今やデメリットになったと愚考します。
現世に『ケルベロス』が出現すると“冥界の番犬という大役を放棄した野良キマイラ”と、いうイメージがつきまとい。『魔獣』としての格が、一気に下がってしまいます。
かといって『冥界の番犬』として、『ケルベロス』が忠実に働けば。現世と冥界の『境界』でしか、活動できず。行動・出現場所に制限がかかってしまう。
『ダンテの神曲』に登場するような〔亡者たちを蹂躙する『怪物獄吏』〕を認めている人は問題ないのでしょうけど。
〔現世と冥界の『境界』を守る『ケルベロス』は、広大すぎる『冥界』の中に入れない〕
そういうギリシャ神話の『ケルベロス』をイメージすると、そんな『制限』を連想してしまい。そうすると〔冥界の入り口を守ることを優先して、機動力に欠ける〕〔闘犬のような重量級の犬は、全く知らないに等しく。西洋画の『ケルベロス』を見ても、『犬』に見えない〕
こういう悪循環な連想をしてしまい。『ケルベロス』はとてもあつかいにくいと愚考します。
現世に出てくれば偽物・劣化キメラあつかいされ。ギリシャ神話の『ケルベロス』は冥界の入り口にしか登場させられない。強力な魔獣なのに、ボスとして最深部にいると違和感をすごく感じる。
他にモンスターがいない。他のモンスターに関する『資料』がない、昔ならともかく。情報化社会で様々なモンスターが知られている現代で、厄介な『ケルベロス』を登場させる必要性は低いと愚考します。