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28.イリスの職業 1

 古代の世界。それは人の命が軽い残酷な世界です。どれくらい軽いかというと、非人道な“奴隷制度”が命をつなぐシステムになっていることです。


 もしも奴隷制度がなかったなら?捕虜を取ることなく、〔殺された遺体が、農地の肥料になっていく〕・・・・・などという某世紀末のその後ではすみません。

 遺体を喰らい、人肉の味を覚えた“人食い野獣”が増える。あるいは死病の菌・毒虫が、遺体に群がって大増殖したあげく。敗者勝者の区別なく“疫病”にかかり、死体の山ができる。その後に始まるのは他国の侵略、内乱に敗者の復讐か。


 どちらにしろ地獄の連鎖が続くでしょう。

 『カオス(C.)ヴァルキリー(V.)という種族がいる。彼女たちは混沌カオスの名が示すとおり異文化種族の連合であり。ヴァルキリーの名が示すとおり、魔術戦士が大勢いる種族だ。

 そのため魔人には劣るが、中級モンスターよりは魔術耐性が高い。そして大魔導士には及ばないものの、ほとんどの者は人族の魔術師より『術式』に馴れ親しんでいる。


 つまりどういうことかというと。


 〔実戦で敵対者の魔術に干渉できる能力〕というのは、チートどころか秘術ですらない。『アルゴスゴールド』と似たような能力は、イリス以外のカオスヴァリキリーも使えるということだ。


 今までウァーテルで敗れ、散ったカオスヴァルキリーも含めて。他人の魔術を操作できるくらいで、無敵の戦乙女にはなれないということだ。



 「『アビスドライブ』発動!」


 邪術師たちを束ねる、ハイソーサラーの号令を受けてその『儀式魔術』は放たれた。

 複数の『魔術』を融合させて、魔術への高い耐性を誇る『魔人・邪竜』すらをもほふる。

 『アビスドライブ』はまさに秘奥の魔術であり。


 その要諦は『魔術』の連発と、『結界』の破壊だ。複数の魔術師で闇属性の『攻撃魔術』を放ち、敵の感知・魔術分析をかく乱する。その後、魔術の乱発により一種の『異界』と化した空間を、強制的に正常化することで『魔力の暴発』を発生させる。


 これが『アビスドライブ』の仕組みだ。


 本来、遠距離攻撃の『魔術』はカオスヴァルキリーの魔力操作・術式干渉に弱い。

 そこで数の力により『魔術』の分析を失敗させる。闇属性の『魔術』による隠蔽や、不規則な軌道を描く不規則トリッキー魔術により。C.V.の『解析・処理』能力を飽和させ、限界を迎えさせるのだろう。

 さらに魔力の暴発は『魔術』ではない。術式の一部を書き換えようにも『魔術式』がない。小規模とはいえ天災のようなものだ。術者の安全を確保するのですら、使い捨ての肉壁が必須という『禁忌魔導』である。


 「思い知るがいい、傲慢のヴァルキリー!これが人間様の力。

  悪徳都市ウァーテルを支配する闇の神秘だ!!」




 〔これがヒトの複合魔術か。色々と工夫しているんだね〕


 そう胸中でつぶやきつつ、イリスは『アルゴスゴールド』による魔術干渉を断念した。もともとこの『魔術能力』は多人数を相手にするのに向いていない。レアな魔眼持ちの異能者・首領格一人の初見殺しを凌ぐことが目的だ。

 そもそもイリスの物理と魔術の比率は7:3である。〔攻撃魔術を禁じる〕という制約によって、『強制力』をかなりの底上げはしているものの。『魔力操作』は本職ではない。


 ならばどうするか。


 〔やっぱり本業の技を使うしかないか。あれ目立つから嫌なんだけどなあ〕


 正確には自称副官とか、シャドウとか、義妹たちが、狂喜乱舞して『英雄』あつかいしてくる。そのことが面倒だ。

 イリスとしては今の役職を辞して、本業に戻りたい。そもそも彼らとて少し(・・)鍛えれば、同等の『戦果』をあげる勇士になれる。それなのに、彼らはこぞってイリスの名声を高めようとしてくる。


 〔おっと今は目の前の戦いに集中しないと〕


 そんな益体もないことを考える表層意識とは裏腹に、イリスはアルゴスの『魔術能力』を変性させていく。訓練用・派生したに過ぎない小手先の『魔術』から。


 理不尽を打ち砕く狂気と絶望の刃へと『アルゴス』を研ぎ澄まし。


 『アルゴスアイズ』


 人型生物の『身体部位』で、高速活動をする箇所はいくつかある。

 『眼球・まぶた』の運動に、光学情報を処理する『神経系』など。皮膚の緊張、脱力や触覚情報の伝達も、それらの一つだろう。

 それら諸々の『身体部位』を、全身の操作に活かせたらどうなるか。神話の『多眼巨人アルゴス』のように強くなれる。色魔の“大神”が狙う、『牝牛』の番ができるくらい強くなれるかもしれない。


 

 〔冗談じゃない〕


 『アルゴス』は伝令神ヘルメスに討ち取られた。それも任務中に笛の音を聞いて、居眠りをするという醜態をさらし。結局のところ『牝牛』は奪われてしまい、主である『女王神』の期待に応えられなかった。いづれ敗れる日が訪れるにしても、栄光は地に堕ちたと言える。


 〔だったらどうするの?〕


 アルゴスの不覚を中傷し、嘲笑い続けるなど不毛の極みだ。

 彼の功績を認め、その力を探し、分析してから‥・・・ーーー


 〔ボクが活かす〕

 

 イリスの決意と共に、『瞳』が開く。せわしなく『瞬き』を行い、その振動が全身に広がっていき。


 『アルゴスアイズ×;^?`!!』


 刹那の間、イリスの全身が輝いた。

 

 そんな地獄を止めるために、多大な効果のある力はどのようなものでしょう。英雄、強大な軍に魔術の神秘。どれも争いの火種ですね。


 私は神々の女王が司っていたものこそ、『平和の鍵』だと愚考します。


 ギリシャ神話の『女王神ヘラ』が司っていた、『契約』の力こそ。古代の地獄を、押しとどめた。

 戦争・欲望の暴走をある程度は、抑制したと推測します。

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