小者の雷~雷臨電翔::
『犬と猫』をモチーフにした日本の妖怪は、どちらが多いのか?私はネコに軍配が上がると思います。
『ヤマイヌ』はどう猛で野卑な人物で、『送り狼』はスケベ野郎というイメージがあり。『犬の妖怪』を連想する人は現代では少ないでしょう。
あとは“動物虐待”な『犬神』や、猿神退治に登場する『しっぺいたろう』なども一種の妖怪犬だと愚考しますが。それらは『呪物』や『神の眷属』という面もあり。『妖怪犬』といえるかは、かなり微妙だと考えます。
それに対し、『化け猫』のほうは様々なメディア展開をしており。怪談の『化け猫』は佐賀以外にも全国に有り、現在も創られている。『○太郎』にも○娘・○仙人などの猫妖怪が登場し。コミックもあわせれば、その種類はさらに増えるでしょう。マスコットアニマルも猫のほうが、犬より多いと愚考します。
『魔術能力』というものがある。『魔術』と『個人の異能力』をかけあわせた。研鑽し蓄積された『術理の知識』と、感情を爆発させる『固有能力』のいいとこ取りを行う。
上位C.V.である聖賢の御方様が、シャドウ一族にもたらした【力】であり。シャドウ一族の総力を結集して、発展させ守るべき『術式』だ。
その力は“盗賊ギルドに奪われる”などという事は、けっしてあってはならず。
ロゴニアの町の中心部で魔力が増大する。それは魔力の突風となって、町中へと広がり。瞬時に町全体を覆う『乱雲』と化した。
「あれはっ!?」「もしや・・『ストームクラウド』の魔術なのか⁇」「バカなぁ・・・!!」
羽矢弥の『最後の切り札』を目の当たりにした連中が、騒音をまき散らしている。
ロゴニアの町を囲む城壁から、数百メートル離れた場所で『観測』を行っている者たち。彼らが神秘の探究者か、国のために働く密偵なのか。はたまた金で雇われ、危険な偵察任務を請け負った傭兵なのか?
戦闘特化の下級シャドウにすぎない、ライゾウが判別するのは困難であり。
「これでは、ロゴニアにいるC.V.を『遠見』で見ることができん」「秘蔵の『使い魔』を飛ばせば…」
「この『風属性の魔術』も探りを入れたいが・:・ー・」「『嵐の迷宮』だったら、どうするっ!」
「‥ー^:`‐ー―ッ」
羽矢弥の『決死の術式』を“暗幕”あつかいする連中など、ライゾウにとっては等しく殲滅すべき敵兵にすぎない。『八鷹輪舞の第三段階』を発動させた羽矢弥が、『術式』の負荷に苦しんでいることをライゾウはよく知っており。
羽矢弥の苦痛を取り除くべく。“観測者”を殴り倒せれば、さぞかし爽快なのだろうが。
『雷鈴鐘-・-』
音量を抑えた『雷鳴の幻術+障害』が、ライゾウの周囲に拡散する。極小の『雷鳴』が生命体の肌をなでつつ、かきむしり。『障害』が体内電流を持つ者に倦怠感をもたらせば。
「「ッ!?」」「ー-―・!!」「しまっ・:-」
「砕けろっ!」
『透明化』『保護色』の術式に『気配隠し』の技。『隠行術』は数あれど、その要諦は〔血流を最小限にすることで、呼吸・体温・体臭や体内電流を抑え隠れる〕と、いう術理だ。
そんな『隠行術』を使っている者たちが、『雷鈴鐘』によって身体をかきむしられ。
あるいは〔他人の人生を左右する『重要情報』をタダで得ようと、『感覚』を鋭敏にしている〕ところに、本来の『雷鈴鐘』をあびれば。
「「「「「Gg;/**・`gy-―・aaaァ*!-!!」」」」」
人間の口から出るはずのない、断末魔の絶叫が吐き出される。
『痛覚・脳』に流れた『雷鈴鐘の魔力』は微量ではあるものの。『鋭敏な感覚』から侵入したソレは、神経系に直接的な衝撃を与え。
『走踏×5』
「ッ*:・」×5
ライゾウは彼らへ速やかにとどめをさす。重要機密を奪う『観測者・密偵』は見つけ次第、あの世に逝ってもらうことになっているが。連中に恨みは(今のところ)ないし、まして苦しめる趣味などない。
「なっ・・」「キサマはっ!?」「シャドウだとっ!?ただの旅人である我々を襲う気かっ!」
だから騒々しくロゴニアの町に『遠見』を行っていた、二流の“観測者”たちは降伏を認めてもいい。『隠行術』を使っていた連中に、生きた『遠見筒』として利用されていた。
〔魔術師くずれの命は助けてやってもいい〕と、ライゾウは一瞬思ったが。
「-・-・!?」
「オオッ!」「『結界』が・・崩れっ!?」「『ストームクラウド』の魔術ではN+;~・・」
羽矢弥の展開した『八鷹輪舞の結界』が、ライゾウの眼前で崩壊していく。
乱雲の表面で『闇爪』が広がり、その中で『幻羽』が最期のきらめきを放つ。同時に『風翼』が鳴り響き。
羽矢弥の『使い魔鷹』がかき集めた情報を、『風術信号』でライゾウへと伝えてきた。
一瞬、ライゾウの脳裏に昏いものがよぎり。次の瞬間、全身に激情の『魔力』が流れる。
それはライゾウの神経系を炙りつつ、『身体強化』を行い。
『*・・*++』
「「「・:^>ッ」」」
囮の捨て駒ウォッチャーどもを気絶させる。本来ならウォッチャーは等しく、口封じを行うのだが。連中には状況の変化に伴う、利用価値が発生しており。3日は意識が戻らない、ダメージを与えてうち捨て。
「オレが行くまで、持ちこたえろよ・・ハヤミ」
そうつぶやいて、ライゾウは本気の『雷鈴電鐘』を発動させた。
ライゾウのふるう『雷鈴電鐘』は、単騎で無双を行うのには向いてない『魔術能力』だ。
『雷の魔術』をふるう魔力量が足りない。『魔石・魔術装備』でそれを補うのに、ライゾウは失敗しており。
『身体強化+雷鳴の幻術+電磁波の障害=雷鈴電鐘』という『魔術能力』をふるうのがやっと。そんなライゾウが敵の大軍に飛び込み。『双短棍』や拳撃をふるったところで、魔力切れになるのは明らかであり。
〔だったら敵将を穿つ『雷槍』になってみせます!〕
〔力を集束して、一点突破を狙うのかな?それは帰り道の無い、“特攻”だよ〕
力を集束するのはいい。だがその力を大将首に当てるために〔敵を観測し、照準をつけ、集めた『力』を操作する〕と、いうのは容易ではなく。
〔特に『照準』をつけるのは難しいよ。
標的に逆探知されたり。地形・天候の情報を完全に集められず。無風の訓練場・屋内や『古都迷宮』にいる時の感覚で、『照準』をつけてしまえば。
狙撃・突撃を外して敵のカウンターを受けたら、目も当てられない〕
〔・・・そうでございますね~〕
そう言って微笑む聖賢の御方様は、断崖絶壁付きで頂上が見えない理不尽そのものだった。
『雷臨電翔っ!!!』
『加速重視の身体強化』により、高機動力を得たライゾウの身体がロゴニアの町を爆走する。疾走の一歩が地面を踏み砕き。跳び上がった建物の屋根が、崩壊寸前の悲鳴をあげつつも持ちこたえる。
だがその騒音も『雷鈴鐘』が放つ、『雷鳴』で覆い隠しつつ併用すれば。
「なっ!?」「「「「「-・-`:-ッ!」」」」」「ウワァー^~!!」
「砕けろ!」
ライゾウの突撃がアジトの壁を破壊する。同時に『雷鳴の幻術』が部屋の中を荒れ狂い、武装したシーフ連中の『鼓膜』を撃ちぬき。
「ひるむなっ、敵はたった一人d`A*-~」
指揮官の命令が、部下に届くのを妨げる。『聴覚』を通じて脳を『電磁波の障害』がかきむしり。
「げッ`*」「「「「ギャ~ー*」」」」「指示をっ、早く命令を;+っ*」「「-・・:*+」」
連中が脳震盪に苦しむ前に、ライゾウは両手の『双短棍』を乱打した。
その手に『キマイラエルク』の時とは比べものにならない、軽い手ごたえを感じ。
「これで勝った-、>*」
『雷鈴電鐘!!』
「「「「「「「「「「「B、+*gイ;~:*」」」」」」」」」」」
“魔薬”で怪物化するリスクを消滅させるべく、ライゾウは徹底的にとどめをさす。双短棍で打った痛覚神経を通じて『電磁波の術式』を走らせつつ。激痛にのたうつ身体の急所を、完全に破砕した。
正直、“クスリ”で急造された人魔獣に負けるとは思わないが。今のライゾウにとって、羽矢弥の元へ駆けつける時間こそ最重要であり。“悪徳”を原動力にする“シーフ”どもに、手加減などやっている場合ではなかった。
「次だ!」
d・k・e・0 t・0・tー 3・+・h・`・--:
羽矢弥の『旋風結界』が崩壊した際、『幻羽』の光はロゴニアの地図を投影し。崩壊の『鳴動』と『風翼』は標的の位置を示していた。
「あとはオレが強襲をかければいい」
ろくに『照準』もつけず、羽矢弥が伝えた情報を頼りに『雷臨電翔』の突撃をしかけるなど。正気の沙汰ではないが、今は非常事態である。
「聖賢の御方様を襲う“賊”を打つためにはしょうがない。初撃が外れたら、『雷鈴鐘』で鼓膜を破ればいい・・・」
そうつぶやきながら。ライゾウは『合成鹿獣』の頭蓋を砕いた、対魔獣用の『剛撃』を容赦なくふるい続けた。
ネタバレ説明:雷臨電翔について
『雷鈴鐘+旋風閃=雷鈴電鐘』:『術式』と『身体強化』を併用する『雷鈴電鐘』で、『身体強化』に比重を傾けたアレンジ魔術能力が『雷臨電翔』です。
身体強化を重視しているだけあって、『雷鈴電鐘』より『雷臨電翔』は機動性において圧倒的に秀でており。さらに『電磁波の障害』も行使することが可能で、一見すると『雷臨電翔』のほうが有用なようですが。
〔行動がパターン化されているよ。速さで誤魔化しているけど、対応力に問題有りかな〕
〔動作の『起こり(前兆)』もわかりやすいわね。体力の問題は、走り込みで補うとして・・・〕
〔ライゾウ一人で突撃するなんて、自殺行為よ。もっと連携を考えて!〕
〔シクシク・;・`・〕
〔あー~、まあ普通に強力なアレンジなんだから、少し改善をすれば・・・〕
「「「・・・・-・」」」
「さあ、ライゾウ!まずは走り込みから行けっ!!」
「・・・+・;・」
以上のようなやり取りの後。特例を除いて、『雷臨電翔』の使用は許可制となっております。
なお『雷臨電翔』の燃費が悪かったり。併用する『雷鈴鐘』の射程が短いという欠点は事実ですが。『雷鳴の幻術』は建物にかければ、近くの三部屋ぐらいに『雷鳴?』は伝播するようであり。機動性もあるため〔射程の問題は後回しで良い〕と、女傑三人に言われております。
猫のほうが、犬より妖怪モチーフとして多いのは何故か?理由はいくつか、考えられますが。
『犬』の習性として、人間に従い身近にいる。番犬・猟犬としてわかりやすい『戦力』になるため〔妖怪になってまつろうのは困る〕、という意識により。年を経ても、犬は『妖怪』あつかいされないのだと愚考します。
一方の『猫』はというと。体毛・瞳などが、わかりやすく変化する。時々、姿を消す(出産?)などマイペースで、『飼い猫』でも主人の思い通りにはいかない。他にも『迷信』を刺激する動作に事欠かず、『猫』のほうが妖怪あつかいされたと愚考します。
そしてもう一つ重要なのが『新種・渡来種』の存在でしょう。『犬』が船の乗せられて、海を渡ることはめったになく。加えて『番犬・猟犬』の能力を維持するため、地方ごとの血統が守られ。雑種で変わった姿の『犬』は、『妖怪オオカミ』とされた。
一方、ネズミをとる『猫』は船に乗せられ、日本に『新種』がやって来る可能性があり。人々にとって奇行ととれる行動をしても〔ネズミさえ取れば良い〕と、いう扱いのため。血統の管理もされず、多様な姿・行動をとる『猫』がさらに産まれ。
『犬』より『猫』のほうが、化けて『妖怪化』したと愚考します。




