キマイラバスター
『尻尾が小さく、牙の鋭いキツネ』と『小型で尻尾の大きいオオカミ』は似ており。遠目に見れば混同しやすく。『怪異・神様の眷属』となって衣服をまとい、『変化の妖術』をふるい、『異界』に住まえば。
素人の幻想ファンには、ほとんど区別がつきません。
こう言うと〔人を襲うのがオオカミ。化かすのがキツネ〕、と反論される人がいるかもしれませんが。『狼』が絶滅させられた日本で、それを証明・イメージするのは困難です。
そもそも人を襲い、喰う『狼』がいたなら。もっと『人食いオオカミ』の妖怪・伝承があって然るべきだと愚考します。
さらに『ニホンオオカミ』が絶滅させられたのは、『明治時代』のころであり。その時代なら『人食いオオカミ』と誤認される、“容疑獣”がいると妄想します。
『カオスヴァルキリー(C.V.)』という種族がいる。女系の戦争種族である彼女たちは、『魔術』をはじめとする様々な『術理』と『混合文化』を用い。それでいて『大神・謀神』に仕えるどころか反発する。
『混沌』の戦乙女・:・?、とでも言うべき存在であり。彼女はあらゆる分野の『戦場』で、他種族を圧倒してきた。正義の味方では無いが、誠実に契約を守る『魔女』とも呼ばれている。
そんなC.V.の一員であるイセリナ・ルベイリーは、交通の要衝である『都市ウァーテル』を支配しており。そんな彼女の元に、魔王の側室C.V.から外法合成獣に関する『情報』を送られてきて。
「これはいったい、どういうことかしら・^・・・」
「そうだよね~-~」
「「「「「・・:・ー・」」」」」
クララ・レイシアードという厄介な魔女C.V.の脅威にさらされていた。
平時のクララは一応、温厚で知的な『魔導士団長』を務めており。シャドウ一族・陸戦師団のメンバーに、魔術や学問を教えている。その役職は『大魔女C.V.』としては閑職ではあるものの。
古代種族のような少子化問題をC.V.種族が解決するため、極めて重要な意義を持つ行程であり。毎日をそれなりに楽しくすごしていた。
〔『ティアマトの卵』から『水那ちゃん』が誕生したときには、多少びっくりしたけど。そのぐらいならちょっとしたアクシデントだよね〕
『魔竜鬼』である『水那』に討たれた、“シーフ連中”の意見は違うだろうけど。
イリスにとって、『水那』は充分に理性的な存在であり。〔義姉で術者の侍女シャドウと一緒に、これからもシャドウ一族として活躍してほしい〕、と思っている。
そしてできればクララにも『水那ちゃん』を見習って、おとなしくしてほしい。人間が言うところの〔恋に溺れ〕て、もらいたいのだが。
「私のルサーナが解決した、“寄生タイプの邪妖”が再び活動を開始したとか。
彼女のパーティーリーダーとして、黙っているわけにはいかない!」
「「「「「「・・`・-・」」」」」」
さてイリスはどこからクララの“やらかし”を指摘すべきだろう。
1)シャルミナさんの伝令内容を勝手に読んだこと
2)ルサーナちゃんは中級シャドウ君と婚約して、もう貴女のものじゃないこと
3)標的を完全に抹消することに執着するのは、大昔の因習であり。現代ウァーテルで、大魔女C.V.にやってほしくない〔普通に大惨事になるので、絶対やめて〕
4)魔王の側室C.V.さんと海天属性クララが争ったら、都市ウァーテルを占領してからの労力が台無しになる。
人間に限らず、どこの軍法でも伝令内容を勝手に読む時点でアウトなのだけど。クララの『超魔導』が、あらゆる正論を封じてしまう。
〔こうなったらボクが『決闘』を仕掛けて、クララを黙らせる?〕
〔フルフル〕〔・I・Y・A・〕〔・*・+:・・〕〔ガタブル・・〕〔なりませんっ・・〕
全員に反対された。そしてC.V.クララに向けられるより、イリスに向けられる視線がきつい事実にへこんでしまう。ちょっとイセリナと入れ替わって、剣をふるい羽を伸ばしただけなのに。
〔みんなはボクのことを、いったい何だと思っているのか〕
「「「「「・-・:・・・」」」」」
色のない『瞳』を向けられた。
そんな主従のやり取りを見て、クララは少し冷静になったらしい。わざとらしくせき払いをしてから、イリスに要求を述べてくる。
「『エルダーオーク』の討伐でルサーナは少しばかり活躍したわ。
だけど魔薬で“寄生邪妖”と化した者を、裏で操っていた。“邪妖”をエルダーオークの身体に潜り込んでいた黒幕が、ルサーナを襲うかもしれない。
それを防ぐために、|今回の『キマイラエルク』に関する件を、迅速に解決する。もしくはルサーナとその周りの者を護衛できる、『魔術能力』の持ち主をつけるべきよ」
「「‥^:`・」」「「・+・:・」」「・:・-・・」
〔シャドウと重騎士たちには、任せておけない。C.V.を護衛に着けるべきよ〕
〔シャドウと重騎士たちを侮辱している〕、と取れるクララの言葉に、幹部たちが半眼になる。
だが重騎士たちは『感知能力』に劣り、暗殺者との対決には不安要素が多すぎる。そしてシャドウ一族は各地の『冒険者ギルド』に仕掛けを行っており。護衛を行える実力者をルサーナの専属護衛にするのは困難だ。
そのため選べる選択肢は少なく。
「サヘル君はボクの『認識変動』で戦闘力を高める。歓楽街の顔役は休んでもらい、エレイラ、ルサーナ、マリーデたちを護衛することに専念してもらおう」
「それは・・・まあ、仕方ないわね」
イリスの提案にクララは渋々、納得する。大魔女C.V.のクララとしては、護衛にかこつけて中級シャドウに側室C.V.をあてがう思惑もあったのだろうけど。
サヘル君の『発明・応用センス?』を考えれば。〔もう少し戦闘力を高めてもらわないと困る〕、というのが戦争種族C.V.の本音であり。幹部たちの面子も守られ、認められる落としどころだ。
こうして都市ウァーテルを支配するC.V.勢力のトップが、のこのこ移動することになり。
「今日も、いい天気だね~『総員、静聴』」
「「「「「「「「「「・・・・ッ・・」」」」」」」」」」
一定の角度からしか視認できない、『光魔術』の文字が行軍中の陸戦師団に指示を出す。突然、現れた『光術信号』に重騎士たちは硬直するも、一瞬で立て直し行軍を続ける。
「こういう時、鳥の鳴き声とか聞えると楽しいんだけど。ボクの場合、芸術より食事だからな~」
お花畑な言の葉とは裏腹に、『光術信号』は迅速に指令を伝え。重騎士たちは戦場での行動予定をイメージしていく。
それは何万回も訓練で繰り返した行程であり。数千もの勝利をもたらした、必勝パターンでもある。
『ファルlxlー~‼!』×10[マジックバックラー]×10「ポイz・/
「来たぞ‥鉄壁防御!!」 「オォッ!」×29
そしてキマイラエルクによる待ち伏せからの、突撃が行われ。それに対し、重騎士たちは一糸乱れぬ『防御陣形』をとる。その陣形は必ずや『邪法の魔獣』たちを受け止めたのだろうけど。
今回、必勝を旨とするイリスは容赦なく『魔術能力』をふるい。
『術式干渉』
「z^:/?;*・/*!?」
キマイラエルクの獣頭のうち『巨猿』の『毒術式』に干渉を仕掛ける。その結果、『毒術式』は中央の『鹿頭』へとむかい。
『バ、:b`・:ぼっ-オオぉ!?』
大半の『毒術式』がレジストされる。『合成鹿獣』の本体・メインは鹿の身体であり。当然、魔力量もそれに準ずる。『牙亀』『巨猿』の頭部は付属物であり、安易に反逆などできるはずがない。
「「「「「「「「「「オォオオオ‐オ~ーーー‼!」」」」」」」」」」
『『・;*⁉』』
だがそのレジストは『キマイラエルク』どもの突進力を減衰させ。重騎士たちの防御陣を破れず、はね返された投槍のように数体が地面に転がり。
『・:-・++』
邪法の波長を、イリスに補足されてしまう。おおかたひるんだ『キマイラエルク』たちに〔ひるまず戦え〕、とでも命じたのだろうが。魔獣の巨体を、たかが人間サイズの巨漢にはねとばされた動揺は鎮まることなく。
『金は輝きコインは回る されどその輝きは天秤を揺らし コインの表裏は惑わしと偽りに踊り狂う
アルゴスゴールド マギウスショック
コイントレーダー カラミティトリガー rise up』
『「[G、グlォ*;・/‘ーーー]」』
かつてルサーナが発動させた、自らの魔術を束ね合わせた『全力の結集』とは似て異なる。
イリスの『魔導』が捉えた、『キマイラエルク』のふるう術式を巻き込み。
「ひゃ*/;-*!?」
『巨猿』に潜んだ、邪法の“奴隷魔術”を蹂躙する。術者の導線を買いたたき、交換の体裁をとり、心核に衝撃を与え。
「やÝ-~;/*」
『レベリオンアルター』
『キマイラエルク』たちを操っていた術者に報いを受けさせる。〔邪法ではない、必要悪だ、代償を払っている〕、という言い訳はイリスに通用しない。術者かテイマーかは知らない“モノ”が螺旋の『魔導』に永久に囚われ。
「聖賢閣下‥我らにお下知を・!」
「攻勢に出る、かかれっ!!」
「「「「「「「「「「ハハァーー‐!!」」」」」」」」」」
数分後、街道の脇に『哀れな魔獣』を埋める作業が開始された。
『人食いオオカミ』の容疑があり、元凶を兼ねる獣。そのトップは『狂犬病にかかった野犬』でしょう。
『幕末~明治時代』は大きな変化にさらされ、様々なものが流入してきました。その中には『コレラ(コロリ)』などの疫病もあり。外国から持ち込まれた『犬』に『狂犬病』、もしくはそれに変化する『細菌』が潜伏していた。その『犬』が野犬となり、『狼』と争った。そうして『狼』にまで『狂犬病』が広がったと愚考します。
加えて西欧の文化に見られる『オオカミへの迷信』が日本に広がり。“廃仏毀釈”などという罰当たりが行われた時代なら。迷信に陥った人々が“狂的な狼狩り”も行ったのではないでしょうか。
そして『狂犬病にかかったオオカミ』は、人に害を為す『恐ろしい狼』になってしまう。当時の人々が〔『狼狩り』をするのもやむを得なかった〕、と愚考します。
あくまで人間中心の“身勝手な視点”であり。〔自分がその時代にいたら、『狼狩り』をやってしまうだろう〕、と自己分析をしただけですが。
なお前・後書きの評論は〔私の独善的な主張です〕、と断っていますが。今回は特に状況証拠による推論にすぎません。絶滅させられた時期の『ニホンオオカミ』の健康状態について知る術がない以上、妄想の域をでない与太話です。




