小者の雷~逆襲の焔
かぐや姫が求婚者の一人に〔蓬莱の玉の枝が欲しい〕と告げ。それに対し、贋作の『玉の枝』を作らせた求婚者は、惜しいところまでかぐや姫を追い詰めるものの。
身分の高い貴族が、求婚という一大外交をしている場に職人たちが押し掛ける。職人たちが偽物『玉の枝』作りに加担したという罪が露見することもいとわず、リスク度外視で賃金の取り立てを行う。
平安時代どころか、他の昔話にもまずあり得ない。そんな異常事態によって、求婚者のたくらみは潰えました・・・・・オトナの視点だと陰謀論をふりかざしたくなる案件だと愚考します。
さてこうなるとかぐや姫が求めた、残りの一品『火鼠の皮衣』も地雷案件だと考えるべきであり。
〔これだけは例外で、まともな宿題だった〕、などという可能性はゼロだと愚考します。
下級シャドウのライゾウは、『雷鈴鐘』をふるい『合成鹿獣』を打ち倒す。『三つ頭を持つ合成獣』はライゾウにとって、格上の魔獣だったが。
『聴覚』をメインに、複数の感覚器へ電磁波による『障害』をかける、『雷鈴鐘』にとって。『感覚器』を防御する概念すらない『三つ頭の鹿合成獣』は、ライゾウの『雷鈴鐘』にとって、複数の急所をさらしているも同然であり。
「やった、・やった、やったぞ!!」「「ふぅ・`・」「ライゾウさん・・」
ライゾウはどうにか冒険者パーティーを守りつつ、『キマイラエルク』を討伐した。
しかし彼には勝利の余韻にひたっている時間などなく。
「大急ぎで解体を行うぞ!報酬は山分けにするから、手伝ってくれ!」
「「ええっ・・!?」」「少しぐらい、休んde・・・何でも無いです」
「いいんですか?山分けでなんて・・・」
「かまわん!その間、オレにはやることがある」
そう言い捨てて、ライゾウは駆け出し。
『雷鈴鐘×4』
四方に『雷鈴鐘』を展開し、『結界』を構築していく。その『結界』は円を描きながら広がり、球状の天蓋を生成していき。
『旋風閃』
「っ!?」
そうして瞬時に身も蓋もなく、監視・観察を行っていたシーフを捕捉する。基本、生物は『雷鈴鐘』の索敵から逃れることはできない。『雷鈴鐘』の音だけでも、たいていの隠行を破ることは可能だが。
『雷鈴鐘』に含まれる電磁波は、水分・魔力を含んだ『生命体』に浸透して、瞬時に『走査』を行う。そうして植物・動物と魔法生物かを判別しつつ、大まかな形状・【生死】を特定するのだ。
そこまでわかれば『隠行』を破りつつ、索敵を行う情報は充分に得られ。
「ちぃっ・・:退K*+`!ッ*」
「シッ!」
『隠行』で冷え固まった身体が動きだす前に、つぶすことも可能だ。
「「・-:っ!?」」「ま`-」「!:!`-*」
「うるせぇぞ、ダ・マ・レ」
「「「`*-~*ッ;^!!」」」
実力者の幹部シャドウなら〔捕獲して情報を吐かせる〕、という選択肢もあるのだろうが。あいにくライゾウは“今回の連中”を逃がすのはもちろん、その口を開閉させるわけにはいかない。
ライゾウは先程、討ち取った『キマイラエルク』よりも迅速かつ容赦なく、シーフ連中にとどめを刺していき。
「・:ッ-!?」
地面が震動し、『雷鈴鐘』の電磁波に乱れが生じる。
そうして次の瞬間『爆火』の魔術が周囲、全てを焼き尽くした。
世の中には『有名税』というものが存在する。有名人は衆目を集め。有名な貴族ならば、さらに見目麗しい『装い』を求められ。王族ならば貴族以上の『装い』・立ち居振る舞いや、責務を果たすことを求められる。
それは『盗賊ギルド』に逆らう“シャドウ一族”も同様であり。四六時中つけ狙われ、実力のある『暗殺者』をさし向けられ。高額な『魔術道具』を使い捨てにしてでも、その命を奪う『作戦』が遂行される。
「悪く思うな。貴様等の犠牲は、けっして無駄にはしない」
『獣使い』ゾルバンのつぶやきは、熱気をおびた風と共に消えていく。その視線の先には火柱が立ち上っており。それは優秀な『偵察盗賊』たちが、犠牲になったことを示していた。
しかし〔『盗賊ギルド』の権威・面子を保つためには必要な犠牲だった〕、とゾルバンは胸をはって断言できる。
“使者役のC.V.に手を出し、返り討ちにあった。少人数のシャドウ一族によって、都市ウァーテルを陥落させられた”
当初、誰もがこの出来事に半信半疑だった。〔わざと都市ウァーテルを支配させて、C.V.勢力を罠に嵌める計画が進められている〕、というまことしやかな情報をゾルバンも信じていたが。
周辺都市に魔の手を伸ばすシャドウ一族によって、その説は完全に否定されてしまう。
〔何で一人のシャドウも始末できないんだ!;!〕〔山賊団が毎日のように潰されていくだと!、!?〕
〔暗殺者ギルドが・~・賞金稼ぎギルドとの連絡がとれん・?*`・・・*〕
報復に失敗し、手駒が次々と討ち取られるのも問題だが。『盗賊ギルド』の幹部たちを、最も戦慄させたのは『連絡手段』の破壊だった。
魔女勢力と敵対した時点で、『魔道具による通信』が妨害されることは予想がついており。それでも『遠話・念話』を使った“愚か者たち”は速やかに粛清したものの。
〔『伝書鳥』が帰ってこない・・-・・〕〔『使い魔』がいなくなった・:-・・〕
〔伝令が着いていないだと!?バカな、・・『囮』をあれだけ走らせたのだぞ!・!?〕
都市間の連絡を寸断された『盗賊ギルド』は、縄張りに閉じこもる“ネズミ”も同然であり。
“奴等はC.V.勢力の軍門にくだった。あの連中は裏切って情報を流している”、という流言まで広がった。
ゾルバンもその情報を『抹消』するため、ずいぶん働かされ。
〔こうなれば手段を選んでいる場合ではない!何としてもシャドウのメンバーを始末する。その死体をさらし、『盗賊ギルド』の力を示すのだ!!〕
都市ウァーテルを支配していた『盗賊ギルド』ではあり得ない。ゴロツキの“山賊稼業”も同然の仕事を命じられたゾルバンは、この山中に赴き。
「『キマイラエルク』の群れよ。我が声に応え、蹂躙の蹄をもって疾く駆けよ!!」
『鹿』の群れを魔術で捕らえ。『魔薬』によって改造した『合成鹿獣』という、数の力も持つ『魔獣』の軍勢を率いることになる。
「こいつらで、まずはシャドウ一族とつながる村落をつぶす。そうして・・・」
『雷鈴電鐘!!』
『[「`*・~^+-っ!*!」]』×3
「・・なっ!?」
ゾルバンにとっての悪夢が幕を開けた。
〔『火鼠の皮衣』:かぐや姫に求婚する貴族が、大枚をはたいて購入した一品であり。本物か確かめるため、火にくべるとあっさり燃え上がった〕、とのこと。
子供のころは、〔大金を払ったのに、偽物の『火鼠の皮衣』をつかまされた〕、と考えたものですが。『蓬莱の玉の枝』の件を考えると、別の可能性もいくつかあり得ます。
そもそも〔『火鼠の皮衣』:火中で生きる獣の皮で作った衣。火にくべても燃えない〕、という宝物ですが。かぐや姫にお披露目する前に〔購入した求婚者が火にくべて真贋をチェックしなかった〕、というのは間抜けな話でしょう。
もちろん詐欺商人の心理誘導で、その確認を怠ったのでしょうけど。“高僧が『火鼠の皮衣』を持ってきた・・・”、という殺生駄目な坊さんが『皮衣』をあつかうとか、穴だらけすぎる話であり。
『平安京』という魔都で生きぬく、権力の亡者が簡単な確認を怠ってしまった。それはけっこう不可解な話です。
加えて『火鼠』は大陸の幻獣なうえに、日本では情報が少なく。『通常の火?」には耐えられたとしても。高温の炎・怪火や魔術の火炎にも耐えられるのか?錬金術で『耐火能力』を失わせたり、『皮衣』の耐火能力には回数制限があるのではないか?
そういう『火鼠の皮衣』に関して、詳細な伝承は聞いたことがなく。『皮衣』を買った貴族は、火にくべるチェックをすべきだったと愚考します。