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C.V.契約と貴族

 『万年竹』、という妖怪がいます。その名のとおり、『万年生きた竹が、変化した妖怪』とのことですが。


 〔百年経てば器物の怪になり、千年を生きれば龍・天狐てんこになる。万年を生きないと、妖怪になれない『竹』っていったい・・・〕、などと浅はかな素人考えを抱いたものです。


 検索してみると、『万年竹』は昭和40年のころ、登場したそうです。そのため『創作』された妖怪なのでしょうが。

 『万年竹』は『創作』される下地があった。『創作』されるのが遅すぎであり、昭和に登場させた妖怪先生は〔高い見識がある〕、と考えます。

 

 『依頼料の分割払い』『壮健の杖』によって、冒険者ギルドは大幅な変化を余儀なくされた。

 だがそれはC.V.様に与えられたモノを享受する。極論すれば〔乞食が金持ちから、お恵みをもらう〕、ようなものであり。


 その状況を改善すべく。冒険者ギルドは連続して災禍み見舞われた『村』を訪れ。少し脅して〔冒険者ギルドは甘ちゃんのお人好しじゃない!〕、というアピールを行い。その後、『副業』『記録をつける』という契約を結び。連続して災禍に見舞われる、不運な『村』に対し救済措置を取った。


 もっとも救済措置をとったのはあくまで『まっとうな(・・・・)村』に対してであり。誰に対しても冒険者ギルドが優しいなどということはあり得ない。




 「お初にお目にかかります、サテイル子爵様」


 「そちがポプリスか。ギルドの受付嬢ごときがワシに何用だ?」


 「今日の私は冒険者ギルドの職員ではございません。上位・・C.V.シャルミナ様の『使者(眷属)』として、男爵様に面会を申し込みました」


 「・・:+・・・っ」


 ポプリスの返答にサテイル子爵の目元がわずかにひきつる。

 彼女の言っていることは、〔邪竜・魔物の軍勢より強い(・・)、上位C.V.シャルミナ様のお言葉を伝える。弱小サテイル子爵に拒否する権利はない〕、と言っているに等しい。


 サテイル子爵にとっては武力による“恫喝”の始まりであり。不愉快極まりないが、その感情を露わにするわけにはいかない『外交』の始まりであった。


 「それでシャルミナ殿はいったい何の用だ?」


 「我がマスターはサテイル子爵様とよしみを結びたいと考えておられます。そのためいくつか『契約』を結びたいのですが・・・子爵様の立場的に、シャルミナ様との約定は表沙汰にするのはよろしくないでしょう」


 「話の早いC.V.殿で助かる・・」



 戦闘力の高いC.V.様との『契約』を、権力者・貴族が結ぶのは一長一短だ。

 

 下位の8級(中の下)C.V.でも人間の一個小隊ほどの戦闘力があると言われ。相性・運用方法によって、それ以上の戦果をあげるのは珍しくない。そして人間同士の権力争いに、C.V.の戦力は使えない事になっているが。

 人間あつかいされない魔物や理不尽・・・に対抗することは許されている。C.V.も契約相手が殺害されるのは本意ではなく。防衛目的ならかなりの融通がきく『契約』を結べるのは、貴族にとってメリットが大きい。


 〔だけど上位C.V.との契約はデメリットも大きいでしょうね〕


 戦闘力の高すぎる上位C.V.は『牛刀』に等しく。『魔神との契約』にも等しい。

 国王陛下が上位C.V.と契約を結べば、近隣諸国とのパワーバランスすら変えかねず。上位貴族たちが〔積み重ねてきた陰謀・軍備が、全て無為になる〕と言われている。

 下位の貴族(子爵)ごときがシャルミナ様(上位C.V.)との契約を望むなど〔謀反をたくらんでいる〕、と言われかねず。


 〔『契約(戦力)』が切れた(失われた)瞬間に、全ての貴族から袋叩きにされて滅亡する〕、などということもあり得るでしょう。

 まともな貴族なら、上位C.V.との契約は〔リスクのほうが高い〕と言ってよく。


 同時にその『契約』を拒絶することは不可能に近い。



 『芳香の幻影庭園(ペットガーデン)


 「っ!?貴様ァ・・・」


 「落ち着いてください、サテイル子爵様。C.V.ポプリスの名にかけて、『魔術能力ペットガーデン』で他者を害する気はございません。もっとも“たまにお会いに(盗賊ギルド)なる客(の連中)”のように“毒を盛ったり”“裏工作”がお好きでしたら。


  私も『無詠唱(無音)』で、『ペットガーデン』を発動いたします」


 「続けろっ:~・・」


 苦虫をかみつぶしたサテイル子爵の表情は、しばらくすると『魔術の芳香(ペットガーデン)』によって穏やかになり。それから貴族の頭首として思案顔に変化していった。


 「これが貴様の『能力』か・・・」


 「私だけの『固有能力』ではありません。たくさんの人々(・高貴な御方たち(アヤメ様たち))によって形成させた『神秘では無い魔術(術式)』でございます」


 「ほう・・・」



 〔『神秘とは言えない術式』だから、模倣してもかまわない。劣化コピーしてサテイル子爵が利益を得てもかまいません〕


 そんなポプリスの誘いに、サテイル子爵は思案顔になる。正確には思案顔を装ってはいるものの、本人の中では結論は既に出ており。今は派閥やしがらみとの損得勘定かねあいを考えているのでしょう。


 間抜けな領主でなければ、『冒険者ギルド』の変化について情報は得ており。その一端にポプリスの『芳香療法』がからんでいることも知っているだろう。無論、ポプリスの後ろにはシャルミナ様が控えており、〔下手な手出し=破滅〕と同義なわけだが。


 〔シャルミナ様と契約すれば、ポプリスの『術式』も付いてくる〕、というのは大きい。

 単純に『芳香療法』の利権が得られるのに加え。パワーバランスをひっくり返すリスクが大きい、上位C.V.シャルミナ様との間に、ポプリスを置いて距離を空けられる。


 それは余計な野望をいだいてない。現状維持を望むサテイル子爵にとって、ギリギリ許容できる『C.V.契約』なのでしょう。



 〔ここが落としどころだな〕


 こうしてシャルミナ様とサテイル子爵の契約準備(・・)が進められることになり。



 

 子爵領の山賊殲滅(・・)も確定した。 

 

 古来、日本において『竹林』は、宝の山・宝物の源泉と言うべき場所でした。


 今でも『タケノコ』は美味しいですが。昔の人にとって、食べる量の多いたけのこは、別格の山菜?だったでしょう。

 さらに竹槍は武器に、竹束は鉄砲への盾に、竹の柵はコスパの良い防衛設備となり。

 竹かご・釣り竿などの様々な細工物の材料となる竹は、人々の生活を支え。柄杓ひしゃく・水筒という『水』をあつかう道具を、高品質で大量生産を可能にした。


 そんな素材である『竹』は、チート植物だったと愚考します。


 そのため竹製品は現代より、はるかに重宝され。想いのこもった竹製品・竹林にまつわる、『怪異』はもっとたくさん登場してもいいのでしょうが。

 『キノコモンスター』・“忠臣蔵”と同様に、風評被害を受けるほうはたまったものではありません。そのため竹の妖怪(風評被害)は長年、登場しませんでした。


 しかし昭和になって竹細工の需要が減り。ホラーな竹妖怪が創られかねない時代になりました。


 そこで登場したのが『万年竹』です。怪異的に『万年経たないと、妖怪になれない竹』は、100年そこらの竹妖怪の出現を抑制し。私のようなエセインテリだと“万年竹なんておかしい。100年経てば器物も化け・:~ー”、という感じに訳知り顔で語り。

 

 その結果、『妖怪万年竹(唯一の竹妖怪)』は〇太郎でしか、登場しなくなった。竹職人・竹林の持ち主・近所も、風評被害を被ることはなくなったと愚考し。


 私は勝手にそう思い込んで、独りよがりな畏敬の念を抱いています。

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