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微風は廻る:無名の風術

 戦場で敵の“首を切り”手柄とする。それは間違いなく野蛮で凶悪な行為ですが。戦国の世にはある種のストッパーになった。血脂で刃を鈍らせ、かかえた『首の重さ』で凶行を妨げる。

 そして『生首』を目の当たりにして、いくさを嫌悪する者もいたでしょう。


 無論、“首切り”には戦を増大させる危険リスクもあり。“殺人鬼”よろしく“血の快楽”に目覚める。凶暴性が増した者もいたと愚考します。


 とはいえ私の推測では、“首切り・生首”は恐怖をもたらした。どちらかと言えば、〔戦は恐ろしい〕というイメージをばらまく『抑止』になったと愚考します。


 その一応の根拠として、『生首妖怪・人面()の鬼火』が日本には多く。それらは人々の嫌悪・恐怖の現れだと愚考します。

 C.V.勢力には『魔術能力』というものがある。『魔術』のように知識を蓄え、研究・改良を行い。『異能』のように個性を活かす。

 〔『魔術・異能力』のいいとこ取りをしよう〕というのが『魔術能力』だ。そのため原則、『模倣コピー』が難しい。いくつか条件を満たして『模倣』しないと、〔術者オリジナルから操作を奪われる〕、などの制裁が科される。


 当然、聖賢イリス様が使う『認識変動アルゴスプリズム』の魔術能力も例外ではなく。“盗賊”ごときに術理を盗まれるなどということは、本来あり得ない・・・のだが。


 


 「どうsIたっ!6級C.V.とYアラぉ力はその程度Gaaa!:!」


 「調子に乗るなっ・・」


 そのセリフとは裏腹に、C.V.マイアは“魔薬ユーザー(ヴァープス)”の攻撃に押され。手傷はともかく、複数の『愛用武器チャクラム』まで破壊されていた。

 

 『飛べっ、チャクラムよ!』


 「おっ^・:無ダDぁあ!」


 『ダークタービュランス』の発動条件を満たすため。『戦輪専用の念動手(チャクラムアーム)』よる『戦輪』の投擲・操作を、マイアは封印しており。『術式付与エンチャント』で『チャクラム』を増強し、マイアはそれらを両の手だけで投擲するしかない。


 今まではそれだけで、ほとんどの敵を始末してきたが。


 「~-^~\!:・`//:--ッ!」


 身体をそらして首筋を狙った『チャクラム』をかわし。右腕の『触手』を伸ばして、足首を狙う本命の『チャクラム』を絡め取る。

 その動作には余裕があり。たとえ『チャクラムアーム』で投げる『戦輪』を増やしても、防御を抜けそうになかった。



 〔私の『戦輪チャクラム』が、捕捉されて、軌道が読まれている。この感じ・:`『特効キラー』か:・・〕


 騎士や『ドラゴン』など、特定の職種・生物に大ダメージを与える『特効武器キラー』があるとか。その術理は武器に〔特定の存在にのみ(・・)大ダメージを与える『魔力』を付与する〕というパターンが一つ。


 そしてもう一つが〔特定の敵に対する『認識(解析)能力』を高める〕というものだ。別に珍しい術理ではなく。

 武術試合で勝者が対戦相手への『認識能力(集中力)』を高め圧倒したり。格下の武術家が、格上の技を『認識(見切り)』して逆転勝利を成し遂げる。


 それと同じことを異形と化した頭目が、マイアに対し成し遂げているわけだが。



 「『魔薬』に頼り、部下を使い潰し、人間の身を捨てる・・そうまでして勝ちたいのか?」


 「ああ、Kkァちたい(フロストブレス)、勝ちたい、勝ちTぁIぞ(サンドトルネード)!!」


 「くっ!」


 ろれつの回らない言の葉と共に、『攻撃魔術』が放たれる。それらはマイアの魔術抵抗レジストを貫く威力こそないものの、『チャクラム』を迎撃する魔力は充分にあり。

 投擲できず『円輪剣』として振るわれる『チャクラム』が、『魔薬』によって魔獣の爪と化したヴァープスの連撃によって砕かれていき。


 「ハハッ、ははhあッハァー~^-!!」


 「『大規模魔導術ダークタービュランス』だけはっ!」


 マイアは命を捨てて任務を成功させるべく、『呪力』を練った。






 「それはダメよ」


 「なっ・:!?」


 「-^~ッ!?」



 そして侍女頭シャドウのアヤメは、危ういところに間に合った。


 ちなみに〔幸運・山勘によって、危険を察しかけつけた〕、という物語の一幕ではなく。


 『ダークタービュランス』が発動した魔力を感知した時点で、(マイアの索敵可能な範囲外から)『旋風閃(強化)』をからめた疾走を行い。マイアの護衛サポートにつく。


 そう聖賢の御方(イリス)様に命じられた、任務をアヤメはこなしているにすぎず。イリス様はマイアが危機に陥る事態を予測していた。アヤメの推測では、イリス様の作為をわずかに感じる。



 「何;者Dぁあ!Nぁな//*」


 「・・+:・・」


 誰何すいかの叫びに、アヤメは小刀の一閃で応じ。無言でマイアに『ダークタービュランス』に集中して完成するよううながす。


 「任せた・:・」


 一瞬、アヤメに対する不審の色が、マイアの瞳にゆらぐも。『魔薬』で変成したバケモノに対し劣勢で、役目を果たせなかった可能性をかんがみ。

 彼女マイアは自らの私情より、任務達成を優先して動きだす。


 「逃がSぅKああーー~」


 『双竜爪』


 「ギッ;・/⁉:`」


 『旋風閃影』


 「"^":"*ッ~ーー⁉」


 床を這うように走る『風刃群』の『双竜爪』で、ヴァープスの足首を狩り。そうして長身がぐらついたところを、『視覚以外の感覚を惑わす閃影』を伴った『旋風閃』で突く。


 「ケッ:‥そんNァもの:Dぇやられう;+・・⁉」


 「キサマの技量は把握した。『魔薬』で集中力・・・を増強するのは面白いけど。

  私の敵ではないわね」


 「『集中力』だTォ⁉

  神の御業みわざで『認識能力アルゴスプリズム』を奪われたことへの、負け惜しみKあァー^ー^!!~」


 「-"・・・」


 ろれつの回らないだみ声を垂れ流す“ケダモノ”に、アヤメは冷めた視線を向ける。


 元シーフの人間だった奴は勘違いをしているが。一分野の『認識』を強化した場合、代償として他分野の『認識』は下がってしまう。もちろん『魔薬』で変成した心身からは、様々な大事なものが欠落しているが。


 アヤメが先程、ひとでした感触だと。ヴァープスは、ほとんどの『感覚器』が増強された“人魔獣ケダモノ”であり。アヤメの介入を普通に迎撃していた。


 6級C.V.マイアに対して『特効』を得るほどの、『認識変動』を本当にしていたなら。アヤメの奇襲に対する認識が遅れ、今ごろ決着がついていたはず。

 

 それが〔まだ生存している〕、ということは種も仕掛けもあるのだろう。



 〔まあ、それに付き合う気は欠片もないけれど〕


 『Yぁアーー、Ruウ~^ーー、か、カぁァァーー+;`!!!』


 ヴァープスの分析をしていたアヤメに、いきなり『解答』が叩きつけられる。どうやら巻き舌、けものの声真似だと思っていたモノは“呪詛”らしい。他人の不幸から『呪力』を吸い上げ、術者は低リスクで『呪術』を行使する。


 忌まわしき外法の『呪詛』を、勘違いした“ケダモノ”がアヤメに向けて叫び。


 『---(障害)+++(強化)


 アヤメの身体能力が下降し、ヴァープスのそれは上昇する。


 「密偵狩りを始末する前に、まずはキサマだ:・死ねっ!」


 その勢いのまま“ケダモノ”はアヤメに突進を仕掛けてきた。強化された脚力が地響きを立てて、床を踏み砕き。その衝撃を瞬発力に変換して、巨体が『矢』のようにアヤメへと迫り。


 「殺っt・」


 『散々』


 「ッ⁉」


 「反転して『+++(疾風)---(減衰)』」


 「ギャぅグッ、**/*!;ッ`ッ」


 突然の『障害・身体強化』の順逆反転により、アヤメの閃手カウンターがヴァープスに突き刺さった。


 「ガ*げボッ⁉」


 「---(軽量化)+++(重量増)


 

 初歩の『術式付与』が発動する。アヤメの身体が持ち上げられ。ヴァープスの『内臓』が閃手を通した魔力で重く沈められ。


 「GGG、Gーーーggg*;*ッ」


 「はい『散々』」


 「ベ`*;+Iiッ⁉」


互いの重量が戻る。ただしヴァープスの動揺は大きく、アヤメは場を支配しており。

 軽量のアヤメが、“人魔獣”の巨体を床へと叩きつけた。


 「!¿?+;?⁉な、なっ?」


 「〔『投げ技』を受けたのは久しぶり〕、というところかしら。

  だけどもうしばらく踊り、驚き、廻りなさい」


 「ヤ、やめっ;・・」


 「そう命乞いされて、キサマたちは助命したことがあるのかしら?」


 「:-:~;・・」


 「さあ踊り廻れっ!」


 右足を『強化』して、左足に『障害デバフ』をかける。指先を『重く』してひねり、手首を軽く『劣化モロク』させる。ヴァープスの心身は上下左右と前後に、次々とバフ:デバフが流転する『術式』をかけられ。そのバランスが崩れた身体に、次々とアヤメは死蔵していた(使わない)技を仕掛けていき。




 「・--_・・」


 「運が悪かったわね」


 全身をまんべんなく破壊されたヴァープスがヒトだった姿に戻り。床に横たわり、不穏な痙攣けいれんを繰り返す。


 「『魔薬』による身体を変成させた人魔は、充分にお館様の治める世の脅威となる。

  だから『活動』しているうちに、痛覚・五感について解析する必要があるわ」



 C.V.勢力も、イリス様に仕えるシャドウ一族も『正義の味方』などではない。しばらくは行う必要はないものの、“汚れ仕事”を永久に拒否することは不可能だ。


 そしていづれ手を汚すことになるなら。何時、何を、どのようにするかはアヤメが決めたい。状況に流され、“卑劣に走る”のだけは避けたい。


 〔それに6級C.V.ということになっている(・・・・・)マイアが、魔薬ユーザーに追い詰められた・・・などという醜聞が流れては困るのよ〕


 正確に困るのはC.V.リーダーのイセリナ様だが。“対立派閥の失点は、こちらの得点”などという戯言は通用しない。それほど今回の件はリスクを秘めている。


 

 「すぐに同類も“カミ”とやらも、同じ地獄に送ってあげる。先に行って、待ってなさい」


 「・・・・・」


 そんなアヤメのつぶやきに応える者はなく。


 やがて『ダークタービュランス』の波動が広がっていった。






  ネタバレ説明:無名の風術


 敵に『身体強化』をかけて、脅威を増大させる『リスク』を代償に、敵の動作を『誘導』する。

 他者の『魔術』を増幅する代わり、効果範囲・術の対象を少しだけ『操作』する。


 侍女頭シャドウのアヤメが使う術式ですが、二つの理由により『正式名称』をつけていません。



 一つは物騒で、その対策ができていないから。


 以前、『この術』で敵の〔『跳躍』を強化することで、空中戦に引きずり込み仕留めた〕ことがありますが。

 少し考えると、〔犠牲者の脚力・片脚だけを『強化』して、バランスを崩させ高所から転落させる〕、という。“事故死”に見せかけた暗殺に流用できることに気付き。

 

 その対策ができないと(ほぼ不可能)、〔世に出すわけにはいかない〕となりました。



 二つ目の理由として、アヤメの意向によって。彼女としては〔少し動作を誘導する。わずかばかり魔術に干渉する〕、この術式を会得して、配下のシャドウたちに満足してほしくない。

 使い方によっては、格上な敵の攻撃を崩し仕留めることも可能ですが。『この風術』に依存して、基礎を疎かにしたり。各シャドウの個性を伸ばすことを怠る、悪影響を与えかねない。


 そのためアヤメは名前をつけず、『この風術』を隠匿しています。






 〔ア・ヤ・メ!!どういう思惑で、こんな術を編み出したのかしらぁ?〕


 〔〔ヒッ!?〕〕〔ッ・!・!〕


 〔落ち着きなさい!礼法に携わる侍女シャドウが、そんな顔をしたら・・〕


 〔・‘^、・・(ニコ)ッ〕


 〔〔〔・・ーー*!っ;(イヤーーーーー)〕〕〕


 〔まさかとは思うけど、弱い敵を強化して、戦闘を楽しもう・・などとは考えていませんわよね〕


 〔当然よ。そんな戦闘狂と一緒にしないでくれるかしら〕


 〔そう、よかったですわ。先日、自然発生(高難易度)の『迷宮』にコソコソと入っていたようですけど。

  『この風術』で無双したとか、単独攻略をしたとか、侍女頭にあるまじき挑戦をしたとか・・・・・・・

  

  そういう浅慮は一切ございませんわね?〕


 〔・^・^・・〕


 〔ちょっと、来なさい〕


 〔いや、そのね・・?私にも予定や言い分というものが・・〕


 〔い・い・か・ら、来なさい〕






 その後、お宝・戦利品が燃やされたり。『廻天閃』などという名称は消滅しますが。

 その理由は、あくまで【二つ】だけしかありません。 

 首をとれば手柄になる。腹が立てば、人を切り殺せる『凶器』がある。


 その事実は、一部の大河でしかやらない。『観光資源』にマイナスイメージを与えるのでやれませんが。戦国時代~江戸時代は刃傷沙汰の多い、極めて物騒な時代であり。“辻斬り・攘夷打ち”の類は、私たちが想像するよりはるかに多かったと愚考します。


 そのため不本意ながら、“さらし首”は一定の犯罪抑止になった。


 ただし冤罪・利権争いに私怨他。ひどい事件が起こり、さらに司法が“アレ”だと〔死者に鞭をうつ〕“さらし首”があり。

 あるいは武士は悪どいことをしても、最悪は切腹ですんでしまう。それに対し、平民の犯罪は公開処刑のうえにさらし首にされてしまう。明らかな不公平があった。


 これらの不満・怨みがつのり。『恐ろしい生首妖怪』が各地で産まれたと愚考します。



 ただし『さらし首=生首妖怪』になるなら。『平将門』と同様に、敗死した武将・山賊の『首塚・生首妖怪』が全国にあふれているでしょう。

 

 そうなっていないということは。人々に考え判断する力があった。“ひどいさらし首”を選んで、『生首妖怪』にする。ある程度、迷信に抵抗する、学力・見識があったと期待します。

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