戦輪の魔術:チャクラムバイト
ロクでもない推測ですので、閲覧にはご注意ください。
歴史物に出てくる脇役の一言で、〔ギョッとなった。心胆寒からしめる〕ことはあるでしょうか?
私は古代王国の巨漢が〔俺たちは首狩りなぞする必要はねぇ。ちゃんと監査役?が手柄を記録している〕・・という内容のセリフを読んで震え上がりました。
おそらくたいていの人々が〔日本は中世・戦国時代になっても、野蛮な“首切り”をしている。それに比べ古代王国は文化的で素晴らしい〕・・と考えたでしょう。
しかし私の解釈は、全くの真逆であり。〔道徳もろくに無い世界で、手柄を『数値化』したら。殺戮に歯止めがきかなくなるのでは?〕〔古代に“ソレ”が始まったのなら、後世になれば?〕・・というロクでもない感想でした。
個人に『個性』があるように。職業・生活によって、『認識能力』は異なって来る。
狩人は獲物と、それに関連する痕跡・気配を捕捉し。職人は己の作品に関する知識・鑑定能力に優れる。そして武闘家なら敵の動作を察知し、己の勝利する未来を見出す。
それは術者も同様であり。『魔眼』の探知に秀でた御方もいれば。『速さ』に関すること全般を学習して、急成長する侍女シャドウもいる。
そしてマイアの場合、『チャクラム』と『魔力を含んだ毒』の二つしか認識できない。
〔・・ー・~:・・ーまあ、そういうことにしておいてあげる〕
〔・:・`^・ーせめてあれらを『チャクラム』で一括りにするのはやめたら?〕
〔無駄よ・・ダレかの『疾風』が刺激になったのか、以前より『戦輪』の種類が増えているし〕
色々な意見はあるものの。マイアにとって『認識能力』は極めて重要であり。
『飛び交う戦輪よ 大地に刻み、進撃する戦車の片輪たちよ!
一時、その刃を休め眠り 鞘なき蔵で、その輪を次なる戦に備え待て
されど静寂と安息の夜は彼方に 円環は独り楽しく、逢魔の刻に狂宴を開かん
廻れ、私のチャクラム! ダークタービュランスッ!!』
飛翔と地を走る『チャクラム』を封印することを代償に、マイアは『魔力を含んだ毒』への『認識』を強化する。普段は禁じられている術式を『魔術円』に展開し、『遠見・透視』による広域観測を行った。
〔いつも通り、奥歯に自決用の『呪毒』を仕込んでいれば、苦労しないが〕
“命がけで死兵となって戦う者は尊い”・・・そんな理屈で活動する連中を、マイアは数えきれないほど始末してきた。しかも『自決用の毒』に魔力で干渉し、自滅を強いた。大勢を何もさせないまま皆殺しにしている。
そしてイセリナやアヤメたちが、それぞれの理由により“皆殺し”にいい顔をしない。密偵の覚悟を踏みにじる、マイアの行為を止めたがっていることも承知している。
〔だけど死兵は勇士・聖人などではない。軽い自分の命より、儚い生命を探して殺す機会をうかがっている。私からすれば“血に飢えたバケモノ”と変わらない〕
そして“盗賊ギルド”はヒトをバケモノに変成する『魔薬』を使ってきた。魔術文明を持つC.V.にとって、〔『魔薬』などくだらない小道具にすぎない〕と侮っていたが。
山砦の『戦闘データ』を閲覧して、マイアたちは考えを改める。
“蟲人兵”:補給を最小限に抑え、『蟲』の能力を持つ。シャドウ一族だから、対応できたが。重騎士隊はともかく、相性・運用の仕方によってはC.V.に対して〔窮鼠猫を嚙む〕ことも十分にあり得る。
そのため表の『魔薬』取り締まりは、イセリナが行い。裏で『魔薬』を運用するたくらみは、マイアが狩り立てる。
今回のシーフブレイバーたちへの攻撃は、その一環なのだが。
〔結局、シーフブレイバーたちは『魔薬』を使わなかった。隠密行動をしているなら、『魔力』を視れるC.V.に対し、『魔薬(魔力の凝縮)』をもっていないのもわかるが・・・〕
シーフブレイバーたちは各地の拠点を守っており。魔女C.V.を迎撃するため、数人ぐらいは『魔薬』を持って然るべきだが。
今回のシーフブレイバーたちは『魔薬』を使うどころか、所持すらしてない。
この状況にマイアの勘は警鐘を鳴らし続けた。
『盗賊ギルド』:その名称だけを聞けば、『盗賊の組織・大盗賊団』と訳す者は多く。ギルドもその解釈を基本的に否定しない。
しかしその実態は、交通の要衝ウァーテルを中心とした『各国の闇』が連合したもの。『裏世界の統一帝国(領主の代わりに支部組織が半独立している)』とでも言うべき存在であり。『犯罪組織』にとどまらず、『密偵・邪教・邪術師の結社』など様々な組織が所属している。
そのため悪徳の都ウァーテルが落されたぐらいで、『組織連合』がゆらぐことはなく。表裏双方から“C.V.勢力”に逆襲をしかけ、袋叩きにするはずだったが・・・
「何としても、“戦輪使い”を殺す!!
そのためにシーフブレイバーたちは死の覚悟を見せた。その怨念が消えることは無い!」
“C.V.勢力”によって『組織連合』は危機に陥っており。早急に何としてもC.V.勢力を打倒しなければならなかった。
“禁忌と金輝の魔女”によって、資金と組織メンバーの情報を抜き取られ。シャドウ一族によって、山賊団が次々と襲われてしまい。『邪法・禁術』にいたっては“魔女C.V.”に易々と看破されてしまう。
〔早急に都市ウァーテルを奪還せねば、U>n&:"}ha滅びてしまう〕
あげくこんな神託が『邪神殿』にくだり。『組織連合』に属する全ての組織は、一致団結することになる。
とはいえ『盗賊』では十対一でも下級シャドウ一人にかなわず。その上の“C.V.・上級シャドウ”に至っては推して知るべし。
「兵数で押しては、こちらの損耗が大きすぎる。何としても奴等の要人を暗殺せねばならん」
「その通り。暗殺こそ、我らが力を発揮する戦場だ。そのことを思い知らせてやる」
そんなやり取りを交わした『暗殺組織』が、複数・たった数日で壊滅させられ。“密偵狩り”を始末せねば、要人暗殺は不可能という結論にいたり。
「資金と人員は惜しまん。やってくれるな」
「承知した」
「だが万が一にも、失敗はゆるされん。『保険』をかけさせてもらう」
「・・^・・」
「“捨て駒”にされることを案じているのだろうが。あいにく『自爆魔術』が通じる相手ではない」
「だったら・・・」
「だから自決用の『毒・魔術』は一切もたなくていい。ただし頭目の貴様が討ち取られたら・・・」
『魔薬』によって怪物になってもらう。盗賊の知恵をもった『モンスターもどき』などではなく。
人間の限界を飛びこえた、『死鬼』となってC.V.勢力に復讐してもらう。
「いいだろう。だが相応の報酬はもらうし、特級の『魔術契約』で縛るのが必須条件だ」
「かまわん。高い報酬を払って、あの“魔女”を始末できたなら。
あとで少々、荒稼ぎをすれば、すむことだ」
こうして契約は結ばれ。
「・・・残念だ。しかしヴァープスの、シーフブレイバーたちの無念は、必ず果たされるだろう」
こうして『魔術契約』は、滞りなく執行されていった。
イリス様に仕えるC.V.勢力には〔『遠見・透視の術式』を原則、禁じる〕という軍紀があり。
その理由は〔他者のプライバシーを安易に“のぞき見”すると、自他の心が穢れる。透視能力者は『神の目』を持つと考え増長し、“のぞき見”される他者を蟻・籠の鳥と同じモノとして見下してしまう〕、というのが最大の理由だが。
もっと単純に『天眼通』を発動すると、『通常視覚』が見えなくなってしまう。『遠見』を行えば、足元がおろそかになり。『透視』で内部を見れば、表層の変化に気付けない。
忍者大戦の英雄ならともかく。C.V.やシャドウが生兵法で『視覚の増幅』を行うのは、メリットよりリスクが大きすぎるためだ。
「グッ‘'+ゥ!」
「オオッ・:--ー‼!」
そしてマイアはそのリスクを実感していた。シーフブレイバーの本拠地でメンバーを討ち取り。速やかに『魔術戦闘』に移行すべく、彼女は『ダークタービュランス』を発動させ。
そうして“賊”が迎撃を行う際に、『魔薬』を使用しない。それどころか全く見つからないことに不審を抱いたマイアは、『透視術式』によって『魔薬』の捜索を行い。
「ヤッて、`やったゾ:!:6級C.V.に一撃をくれてやった。コの俺leガァー―ー!」
「…・・~・・」
復活したシーフブレイバーの頭目から攻撃を受けていた。
同時に『魔薬』がどこに隠されていたか、ようやく知る。
「まさか『刺青』として、既に体内に仕込んでいたとはっ・・」
マイアの『透視術式』が“付け焼き刃”であるのに加え。何らかの『(未熟な)魔術紋』だろうと、思考を放棄してしまい。
その結果、マイアは『魔薬』のありかに気付けず。『魔薬』による心身の変成を許し。あげくシーフブレイバーたちの逆襲を受けていた。
「「「Olロォ~~ーー!!」」」「「ガァルLァーー!」」「「「・・ポ、Po,:プゥ」」」
殺したシーフブレイバーたちが次々と蘇ってくる。生者として蘇生したわけではない。
だが『不死者』をベースに、『怪物のパーツ』をはりつけた。そんな異形の発する気配は、明らかに既知の『魔薬モンスター』とは一線を画しており。
〔まずいな・・『ダークタービュランス』の代償に『飛翔・転輪』は使えない〕
それはマイアの主武装を封じているに等しく。さらに物理的な破壊をもたらす『攻撃魔術』を、彼女はほとんど使えない。
マイアにとって『攻撃魔術』とは〔敵の魔術を妨害する。破綻させること〕であり。火力はゼロに等しい。
この状況を打開する手札は極めて少なかった。
初見で、修練を怠り、師匠が甘い御方だったなら・:・という注釈がつくが。
『サンダーWストームmmッ』『フロストvブレスu』『サンド+トルネェ~Dオ!!』
先刻、放たれたものと同じ『攻撃魔術』が連携して放たれる。異形と化して『魔力量』が増えたのに加え。何らかの『感応処理』を施された魔術は、連携も申し分なくマイアに襲いかかる。
『回転せよ、私の旋盤‥ー』
それに対抗すべく、マイアは地面で『魔術円』を一回転させ。
『¡:+チャクラムバイト』
『小型戦輪』を『魔術円』の中央に投じ。それを起点に『魔術円』を『旋盤・丸ノコ』を型どるように励起させる。
鳴り響き、地を削る『魔術円』は、『戦輪旋盤』と化して『攻撃魔術』を散々に切り裂き。
「仕留めるっ!」
「⁑-*/:!!シュ!?」「ヒィっ__”/!?」「PッQq:**/**!」
攻撃魔術の残骸・魔力の残滓がマイアの影を増やす。それは『分身』と言うには拙い“まやかし”にすぎず。
『円輪剣』の乱舞を覆い隠すのがせいぜいだった。
「+:っ!」
「調子に乗るな・・魔女C.V.ガぁ!!」
そして『円輪剣』はマイアの盾・身代わりとなり砕かれた。
ネタバレ説明:チャクラムバイト
『チャクラム』ではなく、完全に『魔術円』を丸ノコ・旋盤に転用している。『戦輪専用の念動手』という名称を、見た目・効果の両面から否定している『魔術能力』です。
『魔術円』は外と内側を隔絶する効果があり。その『隔絶・拒絶』する魔術効果を、切れ味に流用しよう。装甲を切り裂く、攻撃力に欠ける『チャクラム』の弱点を補おうと編み出された能力です。
もっともギミックな『回転ノコギリ』のように移動せず。マイアのセンスでは『戦輪旋盤』で、素速く動く敵をとらえきれない。そのため技師のC.V.に加工機具の『術式』として売られ。その使用料でマイアはけっこうなお金持ちになっています。
無論、本当にセンスが無いなら、〔『攻撃魔術』を防ぎ散々に切り裂く〕などという使い方もできません。
実際は『チャクラムバイト』で肉を切り裂き、神経を飛び散らせ、骨を切断する。
そのスプラッターな光景をマイアが嫌ったため、攻撃に使われていない・・・というのが実態です。
『国際法・道徳』が一応あり、それを監視・行使する『機関』がまがりなりにも機能している。そんな現代世界ならともかく。
生き残るため、飢えから逃れるため。そして成り上がる野望を達成するため。歴史上の『将兵』は、『現代の軍』とは比べものにならないほど凶猛だったでしょう。
そんな『将兵』が“首切り”の手間をかけず、戦闘に集中できる。“首切りの血脂”によって、『刀剣』の切れ味が落ちず。重さのある“首”を運んで、動きが鈍ることもない。
そして何より〔“生首”に呪われる〕という恐怖・迷信?に、さいなまれることがなくなれば。
昔の『将兵』たちの『継戦能力』が上がり。元気な将兵たちは“略奪・暴行に殺戮”を、容赦なく継続して行ったと愚考します。
そのため“略奪暴行”を『将兵』が行うのは当たり前だった時代・地域において。“首級をあげる”のは攻撃をわずかに止める、残酷なストッパーになっており。『監査役?・軍監』が手柄を数値化・記録するのは、そのストッパーを取り払ってしまう。
凄惨な“殺戮劇”の幕開けになったと妄想します。