チャクラムアーム:~アーム
戦国時代の華だった、武者の『鎧』。その重要事項は当然、防御力であり。指揮官や先陣を切る荒武者の身を守る。そのために作られたのが『鎧』です。
しかし源平時代の派手な鎧と異なり。戦国時代の鎧には、もう一つ求められる性能があった。防御力に加え、『軽量』であることも重視されたと愚考します。
その理由として『移動力』が重要だから。他の時代と比べ、圧倒的に山岳での戦闘が多く。道なき道を『移動』できるよう、鎧は『軽量』であることが求められた。
極論すれば、現存する戦国時代の鎧で『重厚』なものは『お飾り』に等しい。『贈り物』『家宝』や『美術品』の要素が強く。あるいは〔総大将が粗末な鎧では、沽券にかかわる〕といった理由で作られた。
戦国大名の意地・面子や武将の趣味が高じた物が、『重厚な鎧』だと愚考します。
シーフブレイバーたちの『影』を起点として、マイアは『幻影チャクラム』を発生させることで。
『幻影チャクラム』を産み出す『下位アンデット』へと、数人のシーフを変成させたように誤認させる。
それにより戦闘部門の盗賊たちは、凄惨な同士討ちを始めてしまい。
濃い血の臭いが漂うその場に、マイアは悠々と侵入する。
『戦輪専用の念動手』
「「・/・:/ッ!」」「「「ギ/;*・」」」「敵襲っ、敵sU/*」
伸縮自在の多腕により投じられた。複数の『戦輪』が拠点の通路を舞い踊り、死をばらまく。
床を這い進み、機動力を奪い。空中をこれ見よがしに飛びかい、注意をひきつけ。
「恐れるなっ!敵は一人d`//**/」
天井に張り付かせ、簡易トラップと化した『チャクラム』を急降下させ。
「隊長;っ!/**」「「「ウワァー~*/、+`/」」」
そうして既に心身を疲労させた。返り血をあびている盗賊兵たちに、マイアは『チャクラム』を投じていく。
刃の無い『チャクラム』で衝撃を与え。体勢が崩れたところを、鋭利な『チャクラム』で急所を切り裂きとどめを刺していく。
「「「「「・;・^:ーーー」」」」」
血の海に沈んでいくシーフブレイバーたちの表情は、無念よりあきらめの色がこく。さすがのマイアもわずかばかり同情の念を抱いた。
『幻影チャクラム』におびえ、必死に考え、仮にも仲間を殺し。それらが魔女の手慰みな“まやかし”だと知った時、連中は〔力こそ正義〕という戯れ言を捨てられただろうか。
そんな戦闘以外のことを考えていたためか。単独行動ではあるまじき雑念を抱いてしまい。
[コろすゥ-`~^-、ごロシてやるゾォ~^--]
細長い通路の空気をふるわせ、人間をやめた咆吼が響きわたる。その音量・声質から、咆吼の主はオーガ以上の力を持つとマイアは察し。
「くっ!?」
『チャクラム』の回転が、空気の振動によって乱されたことに気付く。
巨人に等しい咆吼は、細い通路を『楽器の管』と化し。制御が乱れた『チャクラム』から魔術をはぎ取る暴風となった。あげくに魔力を安定させるハズの回転が、『チャクラムアーム』を振り払うように暴れ出した。
[おオオぉ-^!ッー~-ー!!!]
その刹那にケモノが獲物をしとめるべく突進してくる。前傾姿勢で駆ける速さは、猛獣のソレであり。
コントロールの乱れた『チャクラム』で迎撃を行うのは不可能だった。
『チャクラムアーム‥ー>』
それでもマイアが使う武具・武術は『チャクラム』しかなく。『念動手』を伸ばし、引き寄せ。
[無ダぁDダぁー~^ーー!!!]
わずかに膨れた鋼の肉体が、マイアへと飛びかかり。
『<ー‥チャクラムドライブ』
彼女の足下をかすめていった。本来なら足場・エアボードとして利用する『チャクラム』に、右手の『念動手』を引っ掛け。マイアの身体を引き上げる。跳躍とは異なる機動で、彼女は突進をかろうじてかわし。
[オノレぇッーー!!]
激高する獣爪の持ち主に対し、マイアは『チャクラム』を定点に振り子の動きを見せ。
「‥^・ー・・」
[ガぁウ:!:・-]
左手の『念動手』をたぐり、横移動を行う。手長のような動きはサルのようであり。狭い通路で動き続けるのは無理がある。
[逃げるカ:・-!`!]
「誰がっ!」
だが敵の攻撃を数回、しのげば立て直す時間が得られ。マイアは素速く『チャクラム』の制御を取り戻す。
そうして『チャクラムドライブ』の名の通り、脚から伸ばした『念動』で『チャクラム』に乗り。
マイアはよりアクロバティックな機動で加速する。
[Nぁアあ/ーァアアぁ!?]
その機動にオーガもどきは対応できない。あるいは対応策を思考できないのか?
“魔薬”で変成させた身体は、どこかに歪みがある。『無意識下』で身体を制御している、『神経系』が急激な身体の変化を理解できない。『筋力・血流』を“魔薬”の持つ魔力で制御しても。感覚につながる神経は、違和感を『無意識下』で観測してしまう。
「『誓約』でそれらの問題を抑えた…いえ、私の非道を許せない。意思の力が奇跡を起こした?」
やはり『魔女狩り』に等しい、『(チャクラムを発生させる)使い魔狩り』はひどすぎる。
いつもどおり『チャクラムの群れ』で、賊をすり潰せばよかっただろうに。
〔それ虐殺する魔蟲みたいだから、使用禁止〕
〔魔蟲?これは円盤怪物と言って・・・〕
〔そう言えば大勢を溶解させた、“暴食妖獣”がいたね~-~〕
〔・・・・ー〕
〔流用されたら、アバドン対策どころじゃなくなるかな。『チャクラムレギオン』は絶対に禁止〕
〔‥承知しました〕
こういうやり取りを経て、マイアは『幻影チャクラム』を編み出したが。どうやら早晩、使用禁止になりそうだ。『愛用武具』を“魔女狩りモドキ”の火種にするなどありえない。
〔ゴぉオオーー~!:!+オォ~ーーッ!;!?〕
『戦輪回転』
そんなことを考えつつも、マイアは冷静にオーガもどきに対処する。咆吼の音波も、チャクラムを回転させて放つ、『突風・魔力流』によって相殺され。
その声音からは、疲労の色が見え隠れしていた。
〔何で、何デっ、ナンで:・Naん※*dェェーーー〕
それどころか“魔薬”の刻限が訪れており。ろれつの回らない表情からは、知性まで失われつつある。不様な姿だが、それを寸評する趣味はマイアには無い。
「私の“非道”に怒り、覚悟を決め。わずかな間とはいえ、6級C.V.を危機に陥らせた。
この事実を胸に刻み、しっかり報告しよう。
だけど戦いはここまでだ‥・『チャクラムポイント!!』」
「/、/!/・・\!*/*/\!*」
歩法を使い。距離を詰めたマイアの拳が、シーフブレイバーの胸板を貫き。同時に拳から放出された複数の『念動手』が、周囲の『チャクラム』一点へとたぐり寄せる。
そうして胸板に潜った凶手をめざし、『チャクラム』が障害物である鋼の肉を切り裂く音が響きわたった。
ネタバレ説明:~アームについて
C.V.の多くが使う、『念動手』で特定の『武具』を操る魔術能力。そしてマイアが『チャクラム?』を操る魔術能力です。
〔修行・経験を積んだ、職人や兵士の『手』は独特なものと成る〕・・と聞いたC.V.がおり。
〔だったらその手を『念動手』で再現しよう〕、という考えで編み出された魔術能力が『~アーム』です。
かなり人気のある魔術能力であり。〔魔術能力のキャパシティに悩んだら、アームを選べ〕とまで言われています。
『身体強化』のような副作用もなく。安定した戦闘力を得られる。そして会得する際に、その道具・武具のプロから学ぶため、年長C.V.にすすめられます。
本来は女系種族で非力な者もいるC.V.が、『パワーアシスト』を行うための『念動手』を修得し。
その後、改良を加えられ様々な『動作アシスト』を行う『念動手』になりました。
魔術師よりのC.V.が、武術の腕をフォローするため。職人・文官C.V.が護身術のため会得することも多い。
C.V.の中でもユーザーが多く、研究されている魔術能力です。
なお特徴として、『念動手』は設定した『道具・武器』以外を触れることはできず。他系統の魔術による干渉も受けません。
イリスの『術式干渉』でも、本人の同意がないと『念動手』には干渉できず。魔術結界などによるバフ・デバフもうけつけない。
そのため〔下位C.V.が下剋上を挑む時に必須の魔術能力〕などとも言われていますが。攻撃魔術を防ぐ『盾・装甲』としてはほぼ使えません。
それほど長く・広い『念動手』は稀であり。しかも設定した道具・武具を操るのに、特化するため。防壁のアレンジをしても隙間だらけになってしまう。
あくまで特定の装備を操ることに、特化した『念動手』の魔術能力であり。ユーザーの両手を延長したものが主流です。
そのためマイアのように『伸縮自在の多腕』などというのは、〔すごいと言うより、頭がおかしい〕と言われています。『チャクラム?』に関しては言わずもがなです。
日本の戦国時代。それは山城・砦が乱立した時代であり。戦が始まれば、山間の道なき道を『移動』する必要があります。
山城に居住施設が無ければ、住居から山城へとはせ参じ。山城が住居を兼ねていたなら。日々の生活に必要な、食料・燃料などの物資を運び続ける必要がある。
攻守どちらの軍勢も、道なき山道を行き来しなければなりません。
しかも現代の道路どころか、江戸時代の街道すらなく。〔『甲斐の虎』が川中島への棒道を工事した。『越後軍団』が山小屋?を準備して、冬に進軍した〕、という話は稀少です。つまり防衛のため悪路を放置するのが、戦国武将の常識であり。戦とは悪路を走破することから始まります。
加えて『弓矢』の脅威に加え、『鉄砲』まで伝来し。それら飛び道具から逃れるため、遮蔽物へ速く移動しなければならない。兵卒足軽の仕事はまさに走ることであり。
先陣を切り、大将首を狙うなら。そんな足軽たちより、さらに迅速に走る必要があるわけで。(戦国時代の馬に関しては、ここでは書きません)
ノロマの武将は、陰口をたたかれた。“手柄首を部下から奪って得た”などと、侮蔑の対象になりかねない。以上のことから、『重厚な鎧』は戦国時代に出番はなかったと愚考します。




