観覧料金:ナイトバイザー
あくまで私の知る限りですが。幕末以前の日本国内における『戦場=陸地』だった。海戦・船戦は避けたと愚考します。
その理由はいくつかあり。
〔鎧を着た身分の高い武将が、舟から落ちて溺れ死ぬリスクが高いから〕
〔軽装の海賊に、ご立派な鎧武者が敗北するリスクを無視できない〕
〔勝利に必須だろうと、身分の高い武将が海賊と同じ軽装になるのを恥と考えた〕
〔命知らずの猛将も、迷信で『溺死体』になるの恐れ。周りもそれに右ならえした〕
そしてこういうことが何百年も積み重なり。海戦の技能・戦術がますます“下手くそ”になってしまい。高貴で優秀なはずの武将ともあろう者が〔海戦・船戦は弱いです〕などと認められるはずもなく。
〔戦は陸地で行う〕〔〔〔異議なし〕〕〕・・・という不文律ができた。そんな妄想をしたくなるほど、日本国内の戦において海戦・船戦の件数が少ないと思います。
「「「「「gyギャ、^;ーーーー」」」」」「っ:コ、かhぁ!」「殺せ、コrお+*」
カヤノ殿を襲った。正確には殿のシャドウ一人に襲いかかり、返り討ちにあった。身の程知らずな、刺客たちの断末魔が響く。
一方でそれを観察するイセリナの側女は顔を青くしていた。
「どうだ?ラケル。これでシャドウ一族の実力を貴女も理解したか?」
「あん`なの全然;、たいしたことない!」
C.V.マイアの言葉に、半泣きで強がりを返す。その強がりは大したものだが、いかんせん足の震えを抑えられず。
〔これ以上は、劇薬が過ぎるか。退き時だな・・〕
そう考えたマイアは、ラケルにパーティーリーダーの元へ戻るよう言いかけて・・・
「っ!!『戦輪専用の念動手』」
「:・・//っ!」
「な、何っ!?」
わずかな気配を察知し、観覧から戦闘状態に心身を切り替える。だが状況を理解してない、マスコットをかばいながら戦うのは困難であり。
マイアは『戦輪』の結界をはるか、迎撃を優先するべきか。刹那の間、迷ってしまう。
『~』
「チィ:・『チャクラムよ』!」
突風が吹きすさび、円輪剣を起点・中心に、盾代わりの『魔術円』を空中に展開する。同時に指輪サイズの暗器を放出し、迎撃の用意を整えて・・?:・
「アヤメっ・・どういうつもりだ!」
「それは、こっちのセリフよ。
広焔の戦闘を“のぞき見”するなんて、どういうつもりかしら?」
共同作戦の際にマイアと組むことが多い、侍女頭のアヤメが問いかけてくる。それに対し、マイアは用意していた弁明を返した。
「無論、カヤノ殿に万が一がないよう。危機に陥ったなら、すぐに救援に入れるよう。様子をうかがっていた」
「・・^・^・」
「まあラケルにも、そろそろ実戦の一つを観察させてやろう。そういう思惑があったのは否定しない」
C.V.にとって『有意義な会話』ができた人物は、立派な客人であり。イリス様に仕える者として、シャドウの外交担当であるカヤノ殿は、無事に帰還してもらわねばならない。だから遠くから見守っていた。
〔だったらカヤノの護衛につきなさい。その弱小C.V.のラケルが同行しているのは、何故?〕
そんなアヤメの問いかけに、マイアは〔ほぼ真実〕を答える。実際はラケルがカヤノたちを“侮って”いたのを戒めるため。カヤノ殿が率いる者の実力を、わかりやすく見せたのだが。
お互いの安寧のため、そこまでは言わぬが花だろう。
「それにカヤノ殿の護衛が広焔一人ということはないはず。
何より貴女がこちらに来ている時点で、カヤノ殿の安全は確保されている」
「何の事かしら。〔私は川のせせらぎを聞き〕に、やって来ただけよ」
「「‥:・:・」」
マイアも他者のことは言えないが。アヤメの外交モドキが、予想以上にひどい。
彼女の名誉のため、他に優先事項があるから気もそぞろになっている。仮にも同盟者で相方のマイアだから、追及がゆるい・・・と考えておこう。
とはいえその隙をつく、エセ外交を行う気などマイアにはない。それにイセリナが【有意義な会話】をかわし。広焔の『狐焔鍾』をのぞき見していたのは事実だ。
ならばマイアが行うべき『外交』は、それらの貸しを清算することであり。
「ところでアヤメ。私の『魔術能力』に『ナイトバイザー』という感知能力があるのを覚えているか?」
「『ナイトバイザー』・・確か、‥『夜間のみ限定で、遠見・透視の術を使う』という感知系の『魔術能力』だったわね」
「はっきり言ってかまわない。〔まるで『夜魔』“アンデット”のように、夜に“のぞき見”を行う異能力ね〕:‥と」
「…:+『・・ー!』」
マイアの言の葉を耳にして、ラケルが目をつぶり耳をふさぐ。そうして『海妖の魔竜鬼』を呼び出し、その中に入って自らを外界と遮断した。
〔マイアが勝手にしゃべり始めたから、私の知ったことではない〕
その主張が許されるのは、身を守る力があるC.V.・同盟者だけであり。ラケルはその実力に達していない。『見ざる聞かざる〕はマスコットであるラケルのマナーであり、生きのびるために必要なことだ。
そしてマイアは『海妖』の口が閉じてから、アヤメとの話し合いを再開する。
「そういう風に、私は聞いていたわね」
「シャドウや貴女との付き合いが浅い時点では、そういう説明しかできない。
それに私の『魔術能力』は『チャクラムアーム』だと言っても、不都合は発生しないでしょう」
「確かにね・・・」
『チャクラムアーム』:マイアが『戦輪』と認識した物を、『念動の手』で操る。『念動の手』は伸縮自在で、複数を同時に操作可能であり。
そして『戦輪』の認識はチャクラムだけにとどまらず。『円輪剣・指輪の暗器』から『魔術円』まで多岐にわたり。中~遠距離戦を得意とする。
そして様々な『チャクラム』を複数同時に操作する、『チャクラムアーム』は変幻自在な『魔術能力』と言ってよく。それと連携するのは、一定以上の技量と時間が必要だ。
そのためマイアと組むなら『チャクラムアーム』の情報開示を適切に行い、理解するのが優先であり。『ナイトバイザー』を知り、連携するのは後回しになる。
「だけど『感覚・感知』による戦闘を行える貴女なら。私の『ナイトバイザー』の正体を知る資格がある。そしてその【情報】をもって、今回の【観覧料金】としたい。
可能ならばシャドウ一族で有効活用しても、かまわない」
「…承知したわ。アヤメ・姫沙薙の名にかけて、その提案を受け入れましょう」
“契約書だ、法律知識だ”という現世の雑音を拒む。互いの誇り・意気をかけた『契約』が、結ばれる準備ができる。
マイアが魔術能力による【情報】で、アヤメの充足感を引き出せれば。アヤメは不満・遺恨を捨てる。【情報】による充足感、一族が得る利益に見合ったモノを、誠意をもって返す必要がある。
それらは契約書に記せるモノではなく。過去の判例・記録など重要ではない。
ただ身勝手に二人の都合と誇りが優先されるのみだ。
ネタバレ説明:ナイトバイザーについて
密偵狩りを行う6級C.V.のマイア・セレスターが所有する『感知系の魔術能力』。
正式名称は『反転する半眼』と言う。
その能力は一定以上の『感知能力』を逆探知する。『視線の魔力』はもとより、聴覚・嗅覚に触覚すらも。一定以上の『感知能力』が発動すると、その魔力を『色彩』としてマイアは認識・感知してしまい。
当然、魔力による“のぞき見”などまるわかり。そして密偵が探りをいれるのも、看破してしまう。
つまりシャドウ一族がC.V.に対し、探りを入れたりしていれば。相応の報いを受けさせていた・・ということもあり得ます。
誓約として夜間・日中のどちらかにしか使えない。夜間に発動すれば、日中は視覚が封印され。日中に発動すれば、夜は目くらになってしまう。『ナイトバイザー』の偽装はこの誓約によるものです。
加えて『味覚』の逆探知もできない。マイアの意識で〔味覚の逆探知は必要ない。キャパオーバーと考えている〕ため、『味覚』だけは逆探知していない。
なお〔昼夜がかわり、マイアの目が見えなくなった〕・・などと考えて仕掛けると。彼女の聴覚・嗅覚に触覚で感知される。魔術円の『増設感覚』で捕捉されるのであしからず。
一応、一日過ぎれば視覚も復活します。その必要性があるかは疑問ですけど。
実際の所、織田信長の『鉄甲船』以外にも軍船はいくつかあり。海戦・船戦もあったはずですが。
海賊よろしく、丸腰の船を襲った。奇襲のためわずかな兵を舟で運んだ。陸地の戦が決着した情勢で、敵国の港を制圧した。
こういう小競り合いに近いものが大半であり。戦国大名の趨勢を決する水上戦は、織田家vs毛利家の『木津川の戦い』×2くらいだと愚考します。
その理由は、〔船戦のリスク・被害が大きい〕・・・以前の問題で、そもそも軍船がなかった。造船技術がない。船を造る予算もない。船を造るより、城砦を築くことを優先した。
そして何より、〔船長・船員がいなかった〕と愚考します。下剋上で、豪族どころか武将まで裏切り、家族で骨肉の争いをしかねない時代であり。新たに大きな船を造っても、【信用できる】船員が集められない。
材木泥棒ならマシで、『舟』を盗んで逐電してしまう。
そのため織田信長のように、強大な権力をもっている。あるいはキリシタン大名のように、“宗教屋”としてまとまっている。
そういう〔船員集め〕という条件をクリアしないと、船戦以前に船員が集まらない。海賊を雇って行える、小競り合いを行うのがやっとだと愚考します。