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絡みつく火蛇

 日本の怪異である『鬼火』には、様々なものがあり。数・形状・熱や動きなど多岐にわたります。それらは〔燐が燃えました〕などという。画一的な説明で片づけられるものではないでしょう。


 『不知火』などのように、何らかの自然現象で『灯明』が映った・発生したものから。

 『忍び提灯・龕灯』のように、人間の持つ灯りに工夫を施したもの。野外の『火葬』に様々な要素が加わり、『怪火』となった可能性もあります。


 ですが『鬼火』の名称に反し、日本の『鬼』はあまり火を使いません。昨今のゲームに登場する『赤色の鬼(モンスター)』はともかく。〔人間と妖術合戦をする鬼〕の伝承を除くと、昔話の鬼はめったに『火炎攻撃』などしておらず。


 その理由が『鬼=死者』だから、『鬼火=死者の怪火』であり。角のある『鬼』は一切、『鬼火』に関係ない・・・という理由ならよいと愚考します。


 もう一つ。『鬼火』は人でなしな“鬼の火”という意味合いがある。戦国の残酷物語を知ると、そんな妄想をしてしまいます。

 『呪術』とは何か?


 〔怨みによって、穢れ歪んだ『魔力』を使い他者を呪う。おぞましい禁術の類だ〕


 一般人がイメージする『呪術』はこんなところだろう。あるいは表裏双方から他人を不幸にしている神官共は、こういう建前をふりかざし『呪術』を邪悪あつかいする。


 しかし扇奈様の『魔除け』であり、『呪術対策』を担うカヤノにとって。こういう穴だらけの理論を信じるわけにはいかない。聖賢イリス様が『光学情報』を分析するように、カヤノも『呪術』の摂理を冷静に学ぶ必要がある。


 〔私にとっての『呪術』と言えば、まず『呪いの人形』ですわね〕


 多大なリスクを伴うが、素人儀式でも他人を呪える。魔術師でも困難な、『長射程』『持続性』をもつ呪いを発動可能だ。そして呪いの『儀式』だけで、そんなことができるなら。

 魔力を持つ術者が同様の『儀式』を行えば。理論上、より強力な呪いをかけられるはず。


 しかし実際のところ『魔術師=呪術師』であることは稀であり。そもそも大多数の『攻撃魔術』は、呪術に分類されない。兵士・冒険者に属する魔術師たちが戦う際に、『儀式』によって『長射程』『持続性』を得ようとする者を、カヤノは寡聞にして聞いたことが無い。


 ならば『呪術』とは何か?カヤノが『魔除け』の役目を果たすのに、何が必要なのか?

 それを知ることは『魔除け』の役目を果たすだけにとどまらず。


 イセリナ・ルベイリー様の『魔導王の黄金(ソロモンゴールド)』を解く鍵となるでしょう。




 


 シャドウ一族を待ち受けるように、建てられていた山砦を陥落させたものの。そこにあった財宝は、全てイセリナと配下の陸戦師団たちによって持ち去られる。宝物庫の中にあった物に加え、捕虜や貴重な『魔術装置』に至るまで全てだ。


 それは聖賢の御方(イリス)様が定めた『軍規』によるもの。


 〔“略奪・暴行”は厳に禁じる。戦利品はイセリナに全て預け。財政担当イセリナが戦利品を換金してから、手柄に応じて分配する〕・・・と定められているためだ。


 それにより“略奪”で財を成すのは、聖賢イリス様ですら不可能であり。配下のシャドウ一族に至っては論外だろう。


 〔いくら何でも横暴すぎる!〕〔換金の詳細を、明らかにすべき〕

 〔血を流していない。財宝を輸送しただけな陸戦師団の報酬は、どのくらいなのだ!〕


 しかし今回の山砦攻略で得られた戦利品の財宝は多すぎた。しかもウァーテル攻略と異なり、完全にシャドウ一族だけの戦力で山砦を落したこともあり。イセリナ様の『換金術?』への不審が、くすぶり始める。



 もちろん幹部シャドウは、戦利品がどのように換金されるか知っており。


 〔集めた財宝は正当な持ち主のもとに返却する・・・・ことにより借りを作り。知名度を高め。

  絶対に儲かる取り引き(この世界で()合法なインサイダー取引)を行うことにより。資産を倍増させてから、恩賞を出している。〕


 さらに侍女シャドウとして外交の真似事もするカヤノは、〔『魔術能力ソロモンゴールド』による情報の収集・解析を行ってから、イセリナ様は『情報操作』を行い。相場をいじって荒稼ぎしている〕ことを察しており。

 イセリナ様と財政・経済面で争うことは、シャドウ一族にとって破滅行為だと確信している。



 そのため〔イセリナ様が戦利品の管理・換金を、一手に行うのはやむを得ない〕と、シャドウの幹部はよく理解しているものの。

 経済・商取引についてうとく、事情も知らない下級シャドウたちは〔戦利品を横取りされている〕という印象をいだき。不満をため込んでいた。


 しかしカヤノでなくとも〔今の下級シャドウたちに真実を教えるのはリスクが大きい〕という意見で一致する。最低限度な世の中の仕組みを察する『知見』がないと、危なくて『イセリナ様による戦利品の利用方法』は教えられない。


 〔経済に疎い者が“略奪品”を持ち込んでも、商人(故買屋)に買いたたかれるだけ。

  相場を読み取り、商売と外交(貸しを作る)を並列して行う。それを可能とするイセリナ様にお任せするのが、結局はシャドウ一族の利益になる〕


 侍女シャドウがこんな正論を述べても、納得する者は少ない。むしろ不満をため込んで、後日に禍根を残す。


 だからカヤノはわかりやすい『戦果』をあげる必要があった。シャドウたちの不満を吹き飛ばす。 

 〔“政争コウショウ”を仕掛け、イセリナ様をやり込めた〕という。わかりやすい『戦果』をあげつつ()、内密にイセリナ様に利益を提示する。そうやってシャドウと重騎士たちが、対立関係にならないよう。


 子飼いの部下たちに“犠牲”を強いてでも、イセリナ様と『外交』を成し遂げる必要があった。






 「貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございます。イセリナ様」


 「「「「「・・:-`」」」」」


 「気にすることはないわ、カヤノ。情報交換はC.V.として望むところよ」


 「「・・・・・」」


 簡易的な防御陣地が作られた、野営地中央の本陣テントにおいて。カヤノはイセリナ様との会談を成し遂げていた。

 山砦に進軍してきたイセリナ様をお迎えし。〔時間稼ぎを企てているのかしら?〕という言葉尻を捉えてから。『交渉』によってカヤノはこの会談をとりつける。


 同時にカヤノの部下たちは面従腹背で平伏しており。それをマイア殿、ラケルたち側近C.V.二人が冷ややかな視線を向けている。

 その理由は〔山砦で重要アイテムを発見したので、財宝の輸送に同行させてください〕という申し入れから、カヤノがイセリナ様との面会を求めたためだ。

 本来なら財宝回収の時点で、真っ先に陸戦師団に渡すべきモノだが。その特殊性ゆえに、軍規違反に近いカヤノたちの同行(及び重要アイテムの後出し)は認められていた。


 「『フォトンスキャナー』・・これが賊共の作った『自爆機構』か。見事に『凍って』いるわね」


 「ほう・・」「フンっ!」


 「ですが永久に溶けない『氷』など無く。術者の経験不足は否めません。ぜひC.V.様の御力で、適切な処分をお願いしたく」


 山砦に仕掛けられた『自爆機構』は、下級シャドウ(汐斗)の『一凍刃』によって凍り封じられたものの。

 それに全幅の信頼をおいて、扇奈様を危険にさらす。『自爆機構マジックアイテム』が再起動して、爆発するリスクは無視できない・・とカヤノは考えている。そのためイセリナ様のお慈悲にすがって、“厄介物(ジバクキコウ)”の処分をお願いしに来たのだ。


 いざとなれば扇奈様の『風術』によって、『自爆機構』を然るべき場所(・・・・・・)に吹き飛ばす。四凶刃のうち二人は、『自爆機構』を処理する『手札』もあるが。


 C.V.勢力との外交に備え、その『手札』は隠しておきたい。


 「処分ですって・・まさか無償で行えと言うの!」


 「ちょっ・:ラケルっ!?」


 「無論、そのような厚かましいことを言う気などございません。そうですね・・今回の山砦攻略で得た財宝・・の全てを進呈いたします。〔シャドウ一族の取り分は無し〕、ということでいかがでしょう」


 「「っ!?」」


 カヤノをにらみつけている。内心を隠せていない侍女C.V.(ラケル)の口出しに、カヤノは容赦なく逆撃カウンターをあわせる。ラケルとしてはリーダーのイセリナ様が〔『自爆機構ヤッカイモノ』の処理を押しつけられる〕と案じたのだろうが。


 外交担当カヤノとしては、その隙を逃してやる理由などない。カヤノはもう一つの莫大な財宝(ヤッカイモノ)を処理すべく。


 『山砦で得た戦利品(報酬)』を投げ売りして見せた。

 昔読んだ忍者漫画で〔かがり火の配置には、兵法の流派によって様々だ(明智流のかがり火!?)〕という感じのセリフがありました。実際のところ、どうかは知りませんが。


 夜襲・忍者を警戒するため、かがり火の配置は重要であり。地形・城砦の構造にあわせて、その配置を換える必要があった。加えて貴重な燃料を節約できる『兵法書マニュアル』があれば、確かに有用でしょう。

 そんな感じで、『松明の火』は夜間の矛であり盾でもあった。


 さらに戦国時代の村は武装しており、一筋縄ではいかなかった。(地域差はあるものの、か弱い農民ばかりではない)


 以上のことから、下克上による謀反・権力争いは戦国武将だけではなく。『地侍』や村長一族も行っていたと、愚考します。

 加えて地域おこしの時代ドラマでは、まずやれないでしょうが。戦場で略奪・首狩りをした者には、“力こそ正義”みたいな感じになった者もいるでしょう。


 その結果、『怪火』による不審火がおこったり。松明の合図で、山賊・殺し屋が村に入ってきたり。国境くにざかいの争いで、村に略奪放火が行われ。“何故”か村の要人が逃げ遅れ、殺されるなど。


 夜の闇の中で、『火』を利用して色々と後ろ暗いことが行われた。

 角のある『鬼』も真っ青な残酷物語が、『松明・龕灯』を使って行われ。それが物騒な内容の『鬼火』伝承になったと妄想します。


 ぜひハズレてほしい妄想ですが。『築城の名手』と言われる戦国大名の話を聞くと。


 〔地侍・足軽が、松明()使い方(トリック)を思いつくのも可能なのでは?〕・・・などと連想してしまいます。

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