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23.セイバーフォトン 1

 サブタイトルの『セイバーフォトン』は誤字ではありません。フォトン・セイバーやビーム・サー〇ルのような、エネルギーの『刃』をふるう魔術剣ではなく。


 そのためタイトルは『セイバーフォトン』で間違いありません。

 悪徳都市ウァーテルには様々な闇が集まり、混在している。そのため情報の価値は極めて高く。〔情報の有無によって勝敗が決まる〕と言っても過言ではない。

 成功or破滅の未来を左右する。たとえそれらに直結しなくとも。『知識』としての情報を蓄えれば、成長の糧となりはくが付く。何より『先行き』を照らす光明を得るのは、配下に安心をもたらす。一種のカリスマを持つに等しい。


 よってイリスたちの戦闘を物見高く観るものたちを、“野次馬”などと嘲ってはいけない。彼らは『情報』という『宝』を得ようとする冒険者なのだ。



 そして同時にモンスターの餌食になる冒険者でもある。


 『『剣燐』』


 ウルカとサキラ。女シャドウ二人の双剣が閃き。燐光を発しながら、共に舞い踊る。

 それは可憐な蝶のように優美であり。同時にシーフたちの視覚・攻撃を拒絶する、死の旋風でもある。

 一人で双剣をふるっても、複数のシーフを圧倒できる。そんな実力を持つシャドウが連携し、互いに『剣燐』の怪光で幻惑を行っている。それにより盗賊たちは、近づく者から切る捨てられ。


 「目がっ!目がぁ!」「卑怯者めっ;・:目つぶしを使うとは何事だっ!」


 遠巻きに観察・チャンスをうかがっていた賊が、ウルカたちを糾弾する。


 〔『発光』の魔術を眼球に付与していけない〕そんなルールが実戦に存在するはずないのだが。敗北の確定したシーフが、サキラたちを悪者扱いして


 「うるさいわよ」


 そう告げてウルカは自分たちを卑怯者あつかいする、賊の手を蹴り上げる。その手からはナニカ(目つぶし)に使う土がこぼれ落ち。

 それを指摘することなく、ウルカは蹴り足を地面に振り下ろす。その一撃は二枚舌な男の足を踏み砕く戦槌のようだった。


 「!!っと」


 しかしウルカの足は空しく石畳に振り下ろされる。彼女の踏み込みがたりなかったのか、技が未熟だったのか。いづれにしろそれは実戦において、致命的な隙だった。


 「死ぃねぇ!!」


 『剣燐』


 チンピラの視界が『白光』につつまれる。ウルカの隙を突けると、勘違いした盗賊へ『光術』によるカウンターが放たれ。それは男の視覚を奪い、思考を保身に走らせた。

 目を覆うか、距離をとるべく後退するか。判断を迷った盗賊は、攻撃を停止して死に体となる。


 「フッ!」


 そんなシーフに容赦する理由など、ウルカにはない。振り下ろした足で地面を蹴り、その力を拳に伝動させて放つ。その一撃はまた一人盗賊ギルドのメンバーを減らす。


 しかしその戦果に喜ぶ者は皆無だった。


 「油断したの姉さ:」


 「散開!!」


 サキラのセリフを打ち消し、イリスが叫ぶ。その指示で姉妹シャドウが跳躍するのと、同時にそれは飛んできた。


 「ギャァッ!」「な、何で・・」「「「--;+!!ッ?」」」


 先ほど前衛のゴロツキシーフに督戦を行っていた者たちが、『魔の投槍』によって肉片と化す。

 それは言葉による〔死ぬ気で戦え〕というセリフが愛のムチだった・・・そう錯覚させる、無慈悲な暴虐だった。


 「チンピラども!小娘を捕まえて死んでも離すんじゃねえぞ!」


 逃亡など論外であり。駒として有用でなければ後ろから刺す。言外にそう宣告する“男”の手には魔性の投槍が握られ、顔には虚勢がはりつけられていた。


 「「「「「。・`;ーー*~*」」」」」


 『二人とも下がって。ここからはボクが戦う』


 『『承知』』


 『魔の槍』を握っている男による味方殺し。そして最低の突撃命令が発せられた瞬間に、イリスは『加速思考』と迅速な対応を併用する。 

 まずは『光術信号フォトンワード』によってウルカ、サキラを退避させ。続けて右手で『長剣』をかまえつつ、左手から大剣の数倍にもなる『光芒』を放出させた。


 「なぎはらえっ『セイバーフォトン』」


 そうしてイリスは巨人の剣とでもいうべき『光の束』をふるう。広範囲を『剣閃光術セイバーフォトン』がぎはらい、周囲を一瞬で蹂躙する。


 『聖剣・魔剣』の類による殲滅の一閃は、普通の住民にとって恐怖の的だ。邪術士が闊歩し、魔戦士・狂戦士の用心棒も『金』さえあれば雇える。そんな悪徳都市において、『殲滅魔術』を連想し怯える者は多く。ましてここは都市の中心部を守る、兵隊がかき集められた戦場なのだ。


 『魔の投槍』によって脅されたものたちが、『灼熱の剣閃』を思い浮かべるのは当然だろう。


 「“まやかし”の光にひるむんじゃねえ!とっとと突撃しろ!」


 もっとも『セイバーフォトン』の正体は、少し遠くから観察すれば一目瞭然であり。『聖剣』を模した攻撃力ゼロの『光線術式』が、『セイバーフォトン』の実態だ。

 そもそも『魔術』『魔力を帯びた武器』による戦闘経験がある者たちにとって、『セイバーフォトン』の気配は軽く優しくすらある。。『魔術』に疎くとも、勘のいい者ならば圧力を感じない。


 ならばその『虚ろな一閃』が通り過ぎれば、暴力の世界で生きる“賊”の対応は一つしかなく。


 「ふざけるな;`・このクソアマがっ!」「本命の魔術が来る前にやっちまうぞ!」


 弱者を襲い、そこから糧を得て、盗賊集団(自分たち)の優越感を満たす。そのため幾度も繰り返し、これからも続ける報復を行うべく。兵士兼強盗の集団が、イリスに殺到する。

 それなりに武装しているとはいえ、〔小娘一人の“まやかし”に右往左往した〕などと、プライド最優先の裏社会ではとうてい認められない。まして政庁を防衛する者たちは多勢であり、イリスたちは女が三人なのだ。


 連中がその恥を抹消するため、イリスの首を求めるのは当然の流れであり。

 そんな“盗賊兵”たちを、ウルカとサキラのシャドウ姉妹は侮蔑の視線を向ける。


 「愚か者っ」「クスクス・・」


 『セイバーフォトン』の光が再び辺りを照らし、『セイバーフォトン』()振り下ろし大上段の構えをとる。

 それに対し臆病者はとっさに回避行動を取ろうと左右に散り、一部の者は防御をしようと身構え。


 さらにごく少数の者は大振りの一撃が来る前に、速攻を仕掛けようと足を速める。その中にはナイフを取り出し、狙いを定める者もいた。


 「ハァッ!」


 そんなバラバラの行動をとる集団に対し、イリスは右手の長剣で突きを放つ。たちまち先頭の数人が急所を貫かれ絶命し。そこに振り下ろされた『セイバーフォトン』の光が奔流となって、盗賊兵の集団を分断した。さらに投擲の動きを見せた、シーフの視界も塞ぐ。


 「なっ!?」


 単純に『光術』で視界を塞がれただけなら、『後退バックステップ』で仕切り直しもできたかもしれない。

 しかしイリスの『長剣』によって突き殺された者がおり。仮にも戦士な“盗賊兵”たちは、『長剣』に警戒せねばばらず。そして『セイバーフォトン』の光が周囲を飲み込むという。想定外の『視覚情報』が乱舞、及び遮断されてしまい。


 少なくない人数が状況を把握すべく、情報収集に意識をさく。無防備に足を止め、無駄に『目』をこらしたとも言う。


 当然それを見逃すイリスではない。


 「ギ*ャァ!」


 まずは右の集団に襲いかかる。左手の『セイバーフォトン』がイリスの意向によって、袈裟懸けに振るわれ。そこに注意をひかれた者に対し、右側から『長剣』の斬撃が襲いかかる。

 仕組みとしては手品の『視線誘導ディレクション』と同様のフェイントにすぎず。左手で注意をひきつけ、右側で要の仕掛けを行う。先人が繰り返した『技法』を、イリスは真似したに過ぎない。


 しかしそれだけ(・・)のことに、盗賊兵の前衛は切り崩されていった。

 要は前の章『剣燐』のオリジナルが『セイバー・フォトン』というわけです。


 メタル衛士やカノンゴーレムではなく。そのためエナジーソードのエネルギーは、リスクも含めて高コストです。


 そこでこういう『幻惑の剣』を考えてみました。最下級の『魔術』とすら認識されない、『ライト・発光』をアレンジする。それにより魔力の消費を抑えようというわけです。

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