青色の酒場~汐斗の水属性:渦流閃
時代によって作品も変化する。昔は使えていた『クライマックス』が、現在では見なくなることがあります。
私が連想するそれは〔強運の『落雷』・『雷』の誘導によって、主人公が格上の敵を倒す〕です。
主人公の『勇者』『ボス』が、必殺の固有魔術で『雷』を放っていた。雷神系の『神格』のみが、『雷』を操っていた時代は〔今では昔の物語〕に近く。
中ボス・世界中の『英雄』『魔術師』たちが、様々な『雷』を放出する現代において。『落雷』が逆転の一手となる『イメージ』につながらない。〔格上の敵を倒す〕のは、より困難になってしまった。
最近はそんな『傾向』があると愚考します。
『勇者』という職業がある。『英雄』になり得る実力を持つものの、今だ功績をあげていない。『英雄』の有力候補であり。『武術・魔術』の双方を平均以上のレベルで行使できる。
人類の実力者・・・ということになっている。
そんな『勇者』の正体は、カオスヴァルキリー様の『加護』を受けた勇士にすぎない。
才能に優れている人間勇者は確かに存在する。だが魔術どころか、武術もロクに継承できない。そんな人々の中で『才能に優れている』と言っても、たかが知れており。
それを思い知った汐斗は、『勇者』の能力を秘匿する。『英雄』ではなく、一シャドウとして生きると決心した。
「それじゃあ、護送を頼む」
「承知しました、汐斗さん」「お預かりします」
「「「「「「「「「「・・`--^~」」」」」」」」」」
山砦の最深部にある司令所。扇奈様の『旋天弓陣』により沈黙させられた、その扉の前で汐斗は捕虜の護送を仲間のシャドウに頼む。
本来、シャドウたちは“盗賊ギルド”の構成員を捕虜にしない。脱獄・囚人の管理などにコストがかかり。金・時間だけならともかく、牢番・司法の役人が“裏工作・暗殺”されるリスクを考えると。“盗賊”たちは永久的な“追放刑”を課すのが、適切な処理という意見で一致している。
ただし何事にも例外はあり。
「こいつらは外交のカードになる。あつかいは慎重にしてくれ」
「心得ております」「「「それでは失礼します」」」
そう告げて、シャドウたちは捕虜を運搬していく。『旋天弓陣』によって窒息させられ。意識を失ったあげく、汐斗に(条件付きの)蘇生をされたばかりな連中が立てるはずなく。
『『『Gi、gya^~』』』
ミイラよろしく梱包され、『竜爪獣』に運ばれていく。その姿は荷物そのものだった。
そしてこれから荷物以下の、あつかいを受けることになる。
〔死ねっ〕〔・:--+っ!〕〔殺ったぞ〕
そんな幻聴と共に、空気が動く。それに反応してシャドウたちはとっさに回避行動を取り。
同時に梱包された『荷物』が切り裂かれた。術式の『飛刃』が舞い、ナイフが投じられ。
「とどめっーー」
空中からにじみ出るように、姿を現した刺客が『蛮刀』をふるう。異形の大鉈が『荷物』を抱えたシャドウごと、両断すべくせまり。
『水甲装』
汐斗のかざした『水の盾』によって防がれる。円盾型で半透明の『水塊』が、汐斗の『術式』であり。“卑怯卑劣”の『仕掛け盾』だ。
「まだだっ、ここでたたみかけっ・`!?」「・:!っ^!」「おのれぇーー!!」
『蛮刀』によって刻まれた、『水甲鎧』のキズから『霧』が吹き出し。『水甲鎧』にふれた蛮刀の『刃』が、不穏な『水泡』に覆われていく。
「ちっ、だが目的は達した」「長居は無用っ!」「退くぞっ!」「「「・・--ーー」」」
業物の蛮刀が捨てられ、刺客の姿が再び消えていく。同時に山砦の通路に『声』が反響し、足音と気配が遠ざかって。
『迷い路の霧よ、疾くその姿を現せ・::』
汐斗の『言霊』によって、『魔術の霧』が現れる。それによって通路が『霧』に覆い隠され。
「「ぐくっ!:?」」「べっーー;・`」「「「*+//^;ーー!」」」
『透明化』する『魔術』の弱点をさらけ出す。あちこちで足音が乱れ、ナニかが転倒しぶつかる音が響いた。
「汐斗様っ!」
「おまえたちは、そのまま『捕虜』を運搬しろ。ここはオレが引き受けた」
「「承知しました」」
そうして汐斗は運搬役のシャドウたちを見送った。
『透明化』する魔術・水術には欠点がある。
それは根が善良な『亜種エルフ』のように、『攻撃の瞬間に、術への集中が乱れて姿を現す』などという。ほぼ真人間のメンタルに関してでは無い。その程度の欠点なら、いくらでも解決策はあり。
それ以前に“人殺しにストレスを感じない”“人を殺していると認識してない”者は、『隠行術』が解けることなく。その凶器をふるい続ける。
『姿隠し』の魔術における欠点とは、『視覚』の低下だ。『視覚』とは眼球に『光学情報』を映し、それを視神経で読み取る『感覚』だ。
そのため『透明化』の魔術を使えば、眼球を『光学情報』が透過してしまい。『視覚』が低下する。最悪、失明しかねない。
〔だから『視覚』を維持・保護するため。『透明化』の術式には手間をかける必要があるというわけ〕
〔『透明化』ではなく、『保護色』で『姿隠し』をしてはどうでしょう?〕
〔『保護色』の場合も、眼球を『魔術の色』で染めないといけない。そうするとやっぱり『視覚』を維持・保護する手間が、必要なのは変わらないよ〕
〔なるほど・・・でしたらこういう『術式』はいかがでしょう?〕
〔へえ、面白いね〕
その後、聖賢の御方様から汐斗は薫陶をいただき。
〔『怪霧鐘』〕
汐斗は『霧の術式(怪霧鐘)』を得る。それは『魔力の霧』で感知を行うだけの術式にすぎない。汐斗の魔力で放出した『霧』を、周囲に付着させ。付いた『霧』の微妙な変化を、視て読み取り『感知』を行う。
ただそれだけの『術式』にすぎない。
「・-っ!?」「目がっ、目がぁ*!!」「おのれっ、このヒ/`*l」
ただし『姿隠し』の魔術を行使して、相応の『手間・対価』を払っていない。そういう二流術者の『目』に『怪霧鐘』がついた場合、ひどいことになり。
『渦流閃』
「「「ギャガ`;*!」」」
『怪霧鐘』と併用する『身体強化』の攻撃を、無防備に受けることになる。
もちろん汐斗の魔力・技量で、魔術の同時発動などできるはずも無い。
捕虜を護送する時点で、『護符』を使い『怪霧鐘』を秘かに発動し。その後、刺客の接近を察知した。『通常視覚』では不可視状態の『怪霧鐘』に、『隠行術』が引っかかった。
そこで『水甲装』で防御を行い。その術式を切ってから、『渦流閃』で迎撃を行う。汐斗の行ったのは、この程度のことであり。
「こうなれば・・せめてその首をもらい受けるっ!」「「「「「・・;--!!」」」」」
「・・:・来い!」
『怪霧鐘』により『目』に強い負荷をかけられた、刺客たちが殺気を放つ。逃走を断念した者たちの殺気は、油断していいものではなく。
そう思ったとたんに、汐斗の魔力を行使する『感覚』が圧迫された。
「『魔術封じ』か・・・」
「『無詠唱』は貴様等の専用スキルでは無い!」
命を捨てた刺客たちだが、『目』は回復していない。それでは生ける『投槍』と化して、飛びかかっても汐斗にはとどかないだろう。
そんな甘い考えの汐斗に、『魔術封じ』の呪縛がからみつく。おそらく部下の魔力を束ねて『呪力』に代え、『呪縛』の強制力を高めたというところか。
『水甲装』と『怪霧鐘』を行使する、汐斗の『認識』が完全に封じられていき。
「コレは・・・『魔術』は使えそうにないな」
「「「・・`-:~」」」「「っ・:`!!」」「その命・・もらったぞ!!」
「・・・ーーッ」
刺客の頭目らしき者が、疾走してくる。それを目の当たりにして、汐斗は全身の弾性を活かして跳躍し。
「なっ!?」「「「「「ーー^:・・!!?」」」」」
天井まで飛び上がり、そこを足場にして蹴る。山砦の床を蹴った時と同様の力をかけ、天井を破壊するギリギリの衝撃を蹴り足にかけ。加速機動を行った、急降下する身体が冷たい床に叩きつけられる。
「「*・;-・ッ」」「「あ、アァ・:*/;」」「なっ、バ/**」「・・・ー~これはっ・・」
魔力を『呪縛』の強制力を高めるためにささげ。ほぼ無力化したであろう刺客たちを巻き込んで、汐斗は硬い床に衝撃を与える。
普通なら内臓を損傷するダメージを、汐斗も負っているはずだろうが。『渦流閃』は全身の水分を『魔力』で強化する魔術であり。
達人は『脳』への衝撃も無効化できるとか。汐斗の技量では内臓の弾性を高め、『衝撃』のダメージに耐性をつけるぐらいであり。落下の衝撃を弾性の高い身体で乗り切っただけのことだ。
「バカなっ・・身体強化すら封じる『呪縛』だぞ!!なのに何で、そんな動きが・;・」
「?、?・・身体強化を使っているんだ。通常の身体を鍛えているのは当然だろう?」
例えば加速・機動性に秀でた『旋風閃』を使うシャドウならば、『動体視力・平衡感覚』の向上は必須事項であり。それができなければ激突・転倒からの自爆や破滅が確定する。
同様に『渦流閃』も身体の内部に魔力を流すわけで。内臓機能を【認識】して、最低限の鍛錬を行い。注入した魔力で内臓機能を阻害しないよう、努力し続けなければならない。
「もっとも(水那嬢と連携する)お嬢の強化と比べ、オレのは単純に頑丈さを優先しているからな」
「ーー-;-^`!っ\**」
移動しつつ棒立ちの刺客を、汐斗は弾き飛ばす。その身体は受け身もとれず、壁に激突してから床を汚した。
「真に巧みな動き、自在の歩法などできはしない。せいぜい全身のバネを利用して、今のように飛び跳ねるだけだ」
付け加えるなら。脚の力を腕に伝導して、『拳』を放つのとは逆に。腕を引き、胴体の弾性を脚に伝える加速も研究している。現状は壁に体当たりをして、その反動を柔らかい胴体から脚力に変換するのが関の山だが。
「・・:*`!ー~;--」
「どうやら『呪縛』は消えたか。だが『怪霧鐘』はまだ使えないな」
だが『渦流閃』なら使用可能だ。汐斗は改めて身体中に、魔力で『強化』をほどこし。
瞳から光が消えた、刺客の急所を肘で砕いた。
ネタバレ説明:シャドウの『渦流閃』について
ユリネや汐斗の使う、水属性の『渦流閃』の定義は二つ。
1)全身の水分に『魔力』を流し、内臓から強化を行う。細胞レベルから強化することを目指す。
2)自身に『身体強化』をかけつつ、敵の身体には『障害』をかけることがセットになっている。
この二つを満たせば『渦流閃』として扱われますが。その実態は使用者によって、ほとんど別の『魔術能力』と言える。『旋風閃歩』や『旋風閃光』を比べる以上に、差異が大きいです。
ユリネの場合
『身体強化』は柔軟性や水中活動を重視しており。
『デバフ』は内臓へのダメージを増大させたり。『酷冷泉』の低体温症が悪化するよう、血流を阻害し『麻痺』させることがメインとなります。
この戦法で相性が悪い敵には、『霊糸』を使ったり。『水那(魔竜鬼)』に頼ることを、前提とした『渦流閃』です。
汐斗の場合
『身体強化』は頑強さを重視しており。身体の弾性に優れているのは、頑強さの一つ。
本来はC.V.から提供される、魔術武装を運用するための『身体強化』だったのだが。普通に素手の武術をふるって強いです。
『デバフ』はそれほど重視しておらず。『怪霧鐘』の効果を増大させる。『眼球』の水分に干渉して、視力を低下させたり。『怪霧鐘』をアレンジするための、『触媒』を付けています。
作中で蛮刀から『不穏な水泡』を発生させていますが。あれもその一つで有り。『溶解液』でも何でも無い、小細工の『泡』を発生させただけ。それを知らない敵が、警戒して蛮刀を捨てれば儲けものという。
汐斗の考えでは“卑怯卑劣”な、仕掛けです。
以上がそれぞれの『渦流閃』ですが。下手に内臓を強化して、身体のバランスを崩すと自滅まっしぐらとなる。リスクを考えれば、『旋風閃』のほうが有用な『身体強化』です。
今のところは、ですが。
だからと言って、〔『落雷』が勝敗の鍵となった作品〕を批判する気は、断じて無く。『忍者』のファンとしては、むしろ『落雷』を見直すべきだと考えます。
『城砦』を調べる任務を受けた。『密偵』として情報収集を行う忍者には、様々な『知識』が必要であり。それは『大工仕事』だけにとどまらない。
『天候』に関する知識も、極めて重要だと考えます。むしろ『天気予報』をできる者がいれば、『教祖や軍師』として尊敬されたでしょう。
もっとも昔の知識で、的中率の高い『天気予報』など不可能であり。外れて味方に被害が出れば。
バカ殿・脳筋武将の機嫌を損ねれば、降格ですまない。詐欺師あつかいされ、文字通りのクビにされると愚考します。
そんな忍者たちが、〔せめて『落雷』への対策をしよう〕。〔雇い主が『落雷』で死亡しないよう。『雷』を調べ、対策を講じよう〕と考えるのは、不自然なことでしょうか?
例えば〔遠征・上京などで、戦国武将が他国に行き。大木の下で雨宿りをしたために、『落雷』で死亡した〕などという事態が起これば。
警護・物見を担当した忍者は、おそらく処刑された。普通にクビにされた可能性が高いわけで。
雨はともかく、『雷』の知識は『忍者』にとって必須だった。
その名残が〔落雷で敵を倒す〕かもしれない・・・などと妄想しています。




