表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
214/423

青色の酒場~迷走のテーブル

 私が『資料』を疑うようになった。作者の意向・信教によって『情報』がアレンジされる。そう考えたのはある『ギリシャ神話』のシリーズを読んでからです。

 星鎧の『戦女神アテナ』を“愚かな女神”あつかいするのをはじめ。ギリシャ神話の神々を殺戮を行う、“愚劣な神”と記していました。


 かなり〔イラッ〕ときましたが。そんな本でもマイナーな神話を紹介しており。『星座』にからまないギリシャ神話を知るのに、大いに役立ったと認めるしかありません。

 まあ〔時代背景を考えろ〕〔どっかの神のほうが、ひどい戦争を引き起こした〕とは思いますが。


 その中でも〔『サイクロプス』の神話は貴重だ〕と愚考しました。

 スラムの住民・子供たちを雇い。水属性C.V.のアンは『干し魚』の生産に取りかかる。


 それは海水に漬けた『塩漬け魚』とは、似て異なる。美味しく成る『干し魚』であり。

 『塩』『燃料』が高価なスラムにおいて、促成で作られる。さらにアンの魔術が無ければ完成しない。

 

 戦争種族C.V.らしい“詐術”を織り交ぜた、製造工程で作られた『干し魚』だった。


 




 「まずは皆さんの協力ハタラキで『干し魚』ができたことに感謝の言葉を。ありがとうございます」


 「「「・・・・・」」」


 「それでは、お約束の給金を払わせていただきます。こちらをどうぞ」


 「「「「「・・^:^ーー・・・」」」」」 


アンの『謝辞』より、労働への報酬が嬉しい。そんな人々の心情に、苦笑を浮かべつつも。

 C.V.アンは彼ら・彼女たちが望み、喜び、求めるものを配っていく。


 「わっ・・・」「おおっ!?」「・・-^+^・・・」


 喜ぶ従業員たち。だが戦争種族C.V.として、アンは厳しいことを言わなければならない。


 「喜んでくれているところ、すみません。ですが二つほど言っておくことがあります」


 「えっ・・?」「「「「「・・・・・ッ」」」」」


 「一つは〔帰り道には、気をつけてください〕ということ。C.V.(ワタシ)たちは“シーフ”と仲が悪く、従業員であるあなた達も狙われかねません。


 戸締まりはしっかりと。お酒の飲み過ぎ、夜道の一人歩きは気をつけてください」


 「「「「「「「「‘--`・・・・・」」」」」」」」


 冷や水を浴びせる、アンの言葉によって従業員たちから笑顔が消えていく。だが懐具合が温かい者を狙うのは、“シーフ”の常道であり。犯罪をこの世から消滅させるなど、不可能というもの。


 〔冷や水を浴びせ〕従業員の安全を確保できるなら、アンは容赦なく言の刃をふるう。

 そしてアンはさらに追撃を行った。


 「さらに『干し魚』の売却先は(シャドウ一族と)決まっており。当面の利益を確保できるでしょう。とはいえ類似品の『干し魚』を作られれば、取引先を奪われるリスクが常につきまといます。


  そこで皆さんには『干し魚』の味を覚えてもらう。『干し魚』の品質維持・向上のため、スキルを会得してもらいます」


 「「「「「「「「「・・・ーーーーっ!!」」」」」」」」


 アンの浴びせた冷や水により、寒くなった心が回復する間もなく。『スキル会得』の労働・試練が課される。そんな容赦ない雇い主アンの言葉に、誰もが表情を引きつらせていき。




 「それじゃあ、いただきましょう。恵みに感謝を!」


 「「「「「「:・/`・・」」」」」」


 「食べないのですか?美味しいですよ」


 作業に使われている大きなテーブルに、二つの皿が並べられ。そこには『干し魚』を使った料理が三種類出されていた。


 シチュー皿には、ちぎった『干し魚』ときざみ野菜の入ったスープ。

 そしてもう一つの平皿には『パン』と『小魚の焼き串』が一つずつのせられていた。


 「姐さん、これは?」


 「皆さんに造ってもらった『干し魚』で三種類の料理をつくってみました。


  スープは戻した水ごと野菜を煮て作りました。『パン』にのせているのは、細切れにした『干し魚』にキノコ・野草を練り込んだ『ジャム?』のようなもの。

 『小魚の焼き串』は甘味がつくよう、『水飴』をぬった自信作です」


 「ハア・・・」「「「「「恵みに感謝を・:?」」」」」「「いただきます・・」」


 アンの説明を聞いてから、みんなが食事をはじめる。


 スープをおっかなびっくりすすり。『お魚ジャム?』の苦みに、子供たちが顔をしかめたり。逆に甘味の『小魚の焼き串』に、年輩の男性が首をかしげていた。


 みんな黙って食事を行い。美味いかまずいかの反応はない。そんな彼らに、水入りのコップを置いてから、アンは語りかける。


 「いかかでしょう。私なりに『干し魚』を使って、料理をしてみました。

  お味はいかがでしょう?」


 「「「・・・・・」」」「「「美味しかった・・」」」

 「けっこうしょっぱい・:・」「おいっ!」「甘いのがよかった・・・」


 「そうですか。まだまだ、改良すべき点は多いですね」


 オイルや油脂の多い実(オリーブ)を併用して、塩味を和らげるか。あるいは『干し魚』の料理が重なり続いたため、塩気が強くなった。この際、予算・調理道具に制限をかけず『ミルク・卵』や『香辛料』をもっと使うべきだったか。あるいは『干し魚』を仕上げる時のように、料理にも魔術を使うべきか。


 そんな思案をしていたアンに、年輩の従業員が質問してくる。


 「店長さん。いったいどういうつもりで、この料理を出したんだい?」


 「先程、言ったでしょう。『干し魚』の品質維持・向上のためスキルを覚えてもらうと。

  そのために皆さんには私の調理した『干し魚』を食べてもらいました。


  そうしてどんな料理にすれば『干し魚』が美味しくなるか。他のどの料理と合うのか。

  どんな職の人々が食べ、どんな状況で好まれ。何より『干し魚』の塩味に、追加する味付けはどれが適しているのか。


  皆さんには料理の技法スキルを修めて、私に教えていただきたいのです」


 「「「「「「「「「・・・--・・・」」」」」」」」


 妙な沈黙が落ちた。


 「あの~、皆さん?」


 「まぎらわしい・・」「ホッ・・」「そりゃあなっ!」

 「もちろん、姐さんを信じていたさっ!」「ウソをつくな」

 「そんなこったろうと思ったよ・・」


 「・・・・・?」


 みんなの言葉にアンは首をかしげる。そんな彼女の瞳に『魔術の光(フォトンワード)』が映った。




 『アン様。この者たちは〔スキルを覚えないと、せっかくの職を失う〕と考えたのではないでしょうか』


 『・・・ハアッ!?そんな“蛮行”をするはずないでしょう!』


 『ですが[災厄]が来襲すれば、彼らを置いてきぼりになさるのでは?』


 『当然でしょう。[災厄]の討伐・対処こそ私達C.V.の存在意義です。

  そもそも私が戦わなければ、皆さん()殺されてしまう』


 人肉の味を覚えた、強大なモンスター。人の痛苦こそ、最大の娯楽とする魔人。

 あるいは魔力を帯び、未知の理不尽と化した怪魔精霊など。


 これらの跳梁を許せば、世界はともかく都市・国家の滅亡は確実であり。それはC.V.たちにとっても、滅びの遠因になる。


 『そこは(シャドウを除いた)民草と言って欲しいです。


  とはいえアン様がお隠れになることに、従業員たちは不安を抱いています。

  どうか言動には十分にご注意ください』


 

 

 『光』と『水』の術式をそれぞれ使って、素早く秘かに会話を行う。

 アンとしては自分が戦場に行った後のことも考え、手を打っているつもりだが。


 それらで従業員のみんなは安心できないのだろう。アンはこっそりため息をつき。


 「料理のスキルが苦手なら、別のことで『干し魚』に貢献してください。


  催しお祭りの情報。焼肉などの他のりょうりについて。燃料事情や『人魚姫の歌』を考えるのもいいでしょう。

  皆さんの力に期待します!・・・とはいえ今日はめでたい初給金の日。

  夕方は各自、自由にすごしてください」


 「「「「「「「「ハイ、アン姐さん!」」」」」」」」


 とりあえず問題の先送り。時間稼ぎのセリフを、それらしく言ってのけた

 『サイクロプス』某RPGゲームの怪力モンスターで初めて知った。

 その時は〔一つ目入道(巨大妖怪)の西洋版かな~〕というイメージを抱いたモンスターです。


 それが『大地母神ガイア』直径の子供であり。監禁・虐待されたり。鍛冶に関わり、八つ当たりで殺されたりと。かなり理不尽な境遇の『巨人神格』だと思いました。


 なお八つ当たりで『サイクロプス』『ヘカトンケイル』を殺したのは、多芸の『アポロン神』とのことですが。これを“偉そうに”非難できる、神様・人々がどれほどいるでしょう。


 『鍛冶を司る神格』を“醜い神”としてあつかう。ろくに報酬を払ず、踏み倒そうとしたり。鍛冶を行う存在カミを、妖精ドワーフどころか“性悪小人”に凋落させる。極めつけは『金属文明』で国力を左右しかねない、鍛冶師を“いないモノ”としていいようにこき使う。


 あまり『アポロン神』を偉そうに非難できない。そういう文明は多いと愚考します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ