金輝のコイン~合法的な争い
海魔鳥の『セイレーン』。そのオリジナルとして推したいのは、やはり冠をかぶった妖女と鳥を融合させた『セイレーン』です。
検索サイトの『セイレーン』だと、綺麗な『海上ハーピー』が主流のようですが。私は妖怪先生の辞典を信じており。先日の展覧会で、〔伝承された妖怪を忠実に伝えるのがモットー〕だとのこと。ファンとしては一安心です。
それに比べ、検索のほうは『凶悪な河童』『アラクネにアテナが敗れた』という物語を紹介してくださり。小生としては『某一神教』のフィルター・アレンジが入っていると愚考します。
もちろんタダで読める資料に、文句をつけるのはお門違いというものであり。不満なら自分で資料を集めて、サイトを開くべきでしょう。
あくまで〔そういう傾向がある〕くらいに考えるよう、お願い申し上げます。
娼館で情報収集を行おうとした下級シャドウたち。彼らは娼館の主によって、娼婦を身請けさせられる。それは少なくない男たちの夢かもしれないが。
マリーデが下級シャドウたちを“罠”にはめて『身請け』をさせる。しかも娼婦たちは全員、『借金奴隷』であり。出身地が全員ばらばらで、各領主の本拠地から連れてこられていた。
それらの情報を得たウァーテル上層部は“盗賊ギルドによる策謀”と判断し、即座に臨戦態勢に入る。
「マスター、マリーデを呼び出して、事実確認をなさいますか?」
「一応、『借金奴隷』の故郷が領主の本拠地(裕福な町)なのは偶然だった。マリーデの部下が勝手に行った可能性も、万に一つぐらいはありますが」
扇奈とイセリナ。2人の腹心の確認に対し、イリスはわかりきった返答を行う。
「それはないよ。遠征している想い人が帰ってきたとき・・・
〔お仲間の男子をハニートラップに嵌めていました、テヘッ‘:^〕・・なんて言えるおバカさんがいたら。歓楽街から追い出されるだけですむはずないからね~」
そもそもマリーデは高級娼館の主であると同時に。C.V.遙和の『魔導能力』によって、人間を辞めた最下級C.V.だ。当然、C.V.の理不尽は身にしみており。愚か者がどうなるか、娼婦の時からよく知っているだろう。
シャドウ一族を束ね、事実上の上位C.V.である扇奈を本気で怒らせる。サヘル君から愛想を尽かされる愚行をするはずがない。
もっともマリーデからすれば激怒して来襲した、シャドウの幹部を押しとどめ。現状の報告をする覚悟もあるのだろうが。
『敵勢力が何らかの魔術水晶・神の託宣を所持してる以上。常道の対策では、足元をすくわれかねません』
『そうだね。悪いけどマリーデには音沙汰がない、不安に苛まれてもらおう』
『光術信号』でイセリナと内緒話をしつつ、イリスは思考加速で『対策』をまとめ。
『光術導線』
扇奈が『会議用の光術信号』を展開していく。
そうして3人は『舌』で侵略の侵略の作戦を転がしつつ。
『借金奴隷』が大量に流入してくる件への、『合法的』な対抗策を練り始めた。
「大変です会長っ!」
「どうした・・何があった!」
ウァーテルの一画。その大通りで店を構える、マネス商会に急報が入る。それは長年、続いた商会をゆるがす一大事なのだろう。
同時に会長のマネスにとっては勝負どころだ。危険なことは百も承知している。だが盗賊ギルドとの『裏取引』を成功させれば、商会は飛躍的な発展を遂げるに違いない。
そのための準備は既に完了している。
「倉庫・金庫の『鍵穴』に“何者かが”薬液が流し込み。扉の鍵が使えなくなる事態が発生しているとのこと。
都市政庁からは〔倉庫・金庫の『鍵』をかけずに、盗難への警戒をせよ〕・・・との通達が出されました」
「・・ハァッ!?」
それは想定外の通達だった。
マネスの計画では〔貴様の商会は『借金奴隷』を大勢、扱っている。その理由を説明せよ〕・・・という。政庁から『詰問』が来るハズであり。
その『詰問』への弁明・言い訳は、準備万端だ。正当な取引きによって『借金奴隷』を扱っており。〔やましいことは一切ない〕と証明するための『契約書』も完璧なものを用意している。
だがそれ以外の事態については、想定しておらず。従業員の報告に、マネスの頭が追いつかない。
「〔被害があった商人は、速やかに報告を行うこと。捜査を行うのと同時に、損害をいくらか補填する〕・・・とのことです」
「・・・・・っ」
「さらに『シャドウ様』たちが、犯人の捜索に当たるとのこと。これで解決したも同然でしょう」
「ソレはっ・・・確かにカイケツしたも同然だな・・・」
「ですが、その間の街道警備は『陸戦師団』が代行するとのこと。
〔街道の安全は保証する。だが万が一に備え、護衛を雇うように〕・・とのことです」
『鍵穴』封じを行う、謎の存在。それに伴う、シャドウと重騎士隊の配置異動。
それらの情報は値千金であり。護衛の人員を都合すれば、一儲けできるだろう。あるいは警戒・防御用の装備関係が、売れるようになるはずだ。
本来ならば。
「商会長?」
「・・・ッ」
〔商売はスピードが大事〕〔先手を取れれば。好き放題に、販路を開拓できる〕
常日頃から、マネスはそんな内容を声高に言っている。だから側近の従業員は、マネスが迅速に指示を出す・・・と期待しているのだろうが。
〔どうすれば・:どうすれば、いいのだっ!〕
しかし今回は下手に動くわけにはいかなかった。マネスは盗賊ギルドと契約して、〔『借金奴隷』を都市ウァーテルに流入させる〕という計画に加担しており。
〔コレは魔女C.V.が仕掛けた罠ではないのか〕・・という警戒心を抱く必要がある。
さらに〔仮に罠でなくとも、『借金奴隷』の流入に不備があれば。盗賊ギルドに制裁される〕というリスク・不安を抱えているわけで。
「大変です会長!」
「今度はなんだっ!」
「広場で不届きな“盗賊”が処刑されるとのこと!さらにその場で、金庫の『鍵』部分を切る剣技を披露されます」
〔『鍵穴』がふさがれた金庫・倉庫から、どうしても重要物品を取り出す必要がある〕
その際は『魔剣』で『鍵』の部分を破壊し、扉をこじ開けてくださる。
基本無料だが、扉を修理するための様々なコストを考えれば。極力、避けたい最終手段だろう。
否、それよりも不届きな盗賊が処刑されるとは、どういうことだろう。C.V.様は処刑を見世物にするのはお嫌いなはずだが。
今回からは宗旨変えなさるのかもしれない。不届きな商会を見せしめにする下準備として、シーフを見せしめにしてから。
本命のマネスから全てを奪い、嬲り、さらし者にしてから、じっくりユックリ・・・・・
「商会長?」「商会長っ!」「マネス様っ!」
「わかっている!まずは関連の情報を集めて・・:」
「お客様です!シャドウの藤次様が、来訪されました!!」
「--ーー’`・:+;!!」
どうして盗賊ギルドと契約しようと思ったのだろう。それよりもまずはこの場を乗り切る・・・じゃなくて。藤次様をお迎えしないと。
確かスラムに関連するシャドウ様だから、喜ぶ贈り物は・/?/^*・・・・ーーーー!?
「マネス会長っ!?」
情報の濁流に流される。巨竜の身じろぎに右往左往し、財宝の山に押しつぶされる。
そんな幻をかいま見ながら、マネスは客間に移動していき。
半月もたたず、一つの商会が消えることになった。
商人が『借金奴隷』を売買するのは自由であり。それは『法』によって定めら、保証されている。
だが同時にC.V.は戦争種族であり、断じて正義の味方などではない。
難癖をつけ、無理難題を押しつけ、法律を歪めていない。魔術・武術でのぞき見もしてないし、暗殺工作の類も行っていない。
ただ合法的に、『情報』を早く多方面から流しただけであり。その情報を確認するのも、対策に手間をかけるのも。マネス商会の勝手だろう。
その結果、取引相手や有能な従業員たちが『不穏』を感じ離れていっても。
『借金奴隷』の不自然な流入対策のため忙しい。そんなC.V.勢力が一商会のため、動く理由などあるはずが無かった。
海魔鳥『セイレーン』。耳栓をすれば雑兵海賊(オデュッセウスの部下)でも、誘惑の歌を防げるとのこと。
他のギリシャ神話に登場する海魔『スキュラ』『カリュブディス』と比べ、格落ちする感じがします。〔犠牲者の髑髏が積み重なった島を作った〕という伝承もあるそうで。それはおぞましく怖いですが。
〔神聖な海に穢らわしい“賊のしゃれこうべ”を積み重ねていいの?〕・・・とその凶行をやらかした『セイレーン』に問いたい。
たとえ人食いの怪物でも、『海魔』は『海神ポセイドン』の眷属であり。まともに『海神』を信仰している船乗りは、『海魔』の棲む海域に近づいたりしないでしょう。
しかし口先だけの海神信仰をしている連中。例えば沿岸都市を襲った“海賊兵団”などは、『海魔』の餌食になったわけで。
筆まめなギリシャ人が、怨み重なる『海神』『海魔』へ誹謗中傷を行った。そうして『セイレーン』による悪趣味な“髑髏の積み重なった島”の伝承をねつ造したと愚考します。