青色の酒場~副業の誘い
様々な姿を持つ海魔鳥セイレーン。まずはその種類を整理してみましょう。
1)冠をかぶった女人面の魔鳥。オリジナルの最有力候補。
2)群れで活動する女人面の魔鳥。ほぼ海上のハーピーで、オデュッセイアに登場する。
3)海精霊や人魚と混同されたタイプ。鳥ではなくなり、『歌』の能力が残る。
4)海の『淫魔』という感じで、水辺で女が男を誘うタイプ。西洋絵画に登場する。
大まかにこの4種類が『セイレーン』と呼ばれる魔物でしょうか。
このうち4)『海淫魔』タイプは〔どうぞ“芸術”を楽しんでください〕・・と言いたい。
トロイア戦争の発端となった『パリスの審判』を描いた『西洋画』。それはギリシャの三大女神が全裸・もしくはそれ以下の風体で人間を誘惑するという。“破廉恥”絵画だと愚考します。
「違うというなら、聖母・聖女を題材に同様の絵を描け」・・と言いたい。
『セイレーン』の西洋画も、それと同レベルであり。
〔本物のヌードは描けない。あるいは制限があるから、ファンタジーのヌードを描いた〕・・・とシンじています。
とはいえ『翼』どころか羽根一枚すらなく。『誘惑の歌』どころか、『海』にいるかも不明な西洋画。
やはり『セイレーン』の名を借りた?流用した。“水中淫魔”だと推測します。
シャドウの汐斗様と結ばれるため、C.V.アンは都市ウァーテルを訪れ。多少のトラブルはあったものの、上級シャドウのアヤメ様に話を通し。
今度こそ汐斗様への想いを遂げる、段取りをつけた。
まあ善良な兵士の皆さんには、大変なご迷惑をかけしてしまい。彼らには何等かの迷惑料を払う必要がある。
とはいえ都市ウァーテルはイリス様が戦闘力で侵略した、元悪徳の都でもあるわけで。
今後、イリス様が行ったように、都市の支配権を簒奪しようとするC.V.は、必ず襲来する。
〔私は正義のために悪徳都市を攻めました。だけど他のC.V.は力に訴えては駄目です〕
こんな理屈が通るはずが無い。
よってその時のことを考えれば。アンのような戦力だろうと、都市ウァーテルの上層部は受け入れざるえない。
『海魔の警鐘』には、それだけの力がある。
「そういうわけで、これからよろしくお願いします」
「「「「「「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」」」」」」
都市ウァーテルの練兵場。かつては血生臭い“見世物”が行われていた闘技場で、アンは下級シャドウたちの指導を行っていた。
〔この者たちはいかように扱ってくださっても、かまいません〕
そう告げてアヤメ様が連れてきた下級シャドウの皆さん。彼らは〔食糧事情を調べなさい〕という命令を果たすため、歓楽街で景気よく金を使い。娼婦たちから『情報』を買おうと試みた。
しかし海千山千の歓楽街の住民に対し、密偵としては素人のシャドウがかなうはずもなく。
彼らはまさに夢のような一夜をすごし。
年若い娼婦を身請けする羽目になる。もちろん情報収集のために渡された軍資金・彼らの全財産をかき集めた所で足りるはずもなく。
〔このまま制裁を受けるか。試練をくぐり抜けて、生まれ変わるか。好きな方を選びなさい〕
こうして彼らはアンの訓練を受ける・・・という名目で『ブルーサイレン』の練習台及び、『ブルーサイレン』の情報を集める役を仰せつかった。
「蒸気・液体に氷という『水の三態』を、同時に組み合わせて使う。それが私の『魔導能力』です。
とはいえ言葉で説明するより、実際に体験してもらったほうがわかるでしょう。
私は『ブルーサイレン』を使うので、皆さんはそれを突破して私に一撃を与えてください」
「っ!承知しました。私から行ギばぁ・:!?」
一歩を踏み出そうとしたシャドウの足下が崩れ、派手に転倒する。
あらかじめ地中の水分を凍らせて『霜柱』を作り。その『霜柱』の一部を液化して崩す。
それにより『霜柱』で持ち上がっていた闘技場の地面を陥没させ。即席の落とし穴に訓練中のシャドウを落としたのだ。
「くっ、まだだっ!『旋風・・」
『ブルーサイレン』
「・閃』`・:!?」「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」
身体強化で加速しようとした。それをのんきに見物していたシャドウたちに、アンは『ブルーサイレン』を披露する。
それにより彼らの足場が崩れ。さらに崩れた『霜柱』を『水流』が押し流し、『霧』が闘技場の空間に展開する。それらは加速寸前だったシャドウの聴覚をくすぐり、視界をふさぎ。
見物するつもりだったシャドウ全員に、訓練の開始を告げた。
「くっ。足場がメチャクチャだっ!」「跳べっ!まずは跳んで/^!?」
「「「ウオオォーー!!」」」
『霧』で覆われた闘技場に、シャドウたちの怒号が響く。
地面に水流が走り、空中に無数の水玉が舞い踊る。それらをシャドウたちは『旋風閃』でかいくぐろうとするも。『霧』で覆われていく闘技場で、加速するのは互いに激突するリスクを伴い。
「五名、脱落です。『ブルーサイレン』」
「くぐっ!?」「冷たっ!」「身体が‥凍る+`*」
水流・水玉に当たってもダメージはほとんどない。だが濡れた服は『ブルーサイレン』の冷気で氷結し、『加重付与』の障害がかかる。
当然、加速状態を維持できるはずもなく。動きが止まった者たちに、水流・水玉の追撃が行われ。そこから『氷結』により完全に動きを封じられていった。
そうして『ブルーサイレン』の紹介をすませてから。
濃霧・氷上での移動訓練を行い、アンは初日の教官役を終わらせた。
午前中の訓練を終わらせ。『ブルーサイレン』によって水びたしになった、闘技場の整地をシャドウたちに命じてから。
アンは誰も住んでいないハズの川岸を訪れる。そして優しい声で『唄い』始めた。
『可愛く愚かな人魚の姫 嵐の海に泳ぐ人魚姫
暗雲の下で王子を見つけ 綺麗な王子に一目惚れ・・・』
『人魚姫』の物語をアレンジにして、魔術を見出す。『人魚姫』を柱にして、様々な可能性を想像する。
そんな『人魚姫』の詩は、C.V.アンの最も得意な歌唱であり。ただ唄うだけで、周囲の魔力に干渉する。
『優しく鈍い王子様 人魚の姫に気付かない 勇んで船乗る王子様 船のお宝、何かしら?
金銀財宝、波間に沈み 海図と契約はお城の部屋に』
そんなアンの『詩』に惹かれ、人々が集まってくる。通りを行く商人が歩みを変え、住民たちが家から顔をのぞかせた。
そして誰も住んでいない事になっている、川岸の草むらから小さな頭がのぞく。その小さな頭は徐々に増えていき、アンの『詩』を聞く観衆となった。
『続く船には御馳走がたくさん 海の地図みて、エールはまわり 沈んだ金銀忘れて消える
かくして人魚の姫は宮殿に 隣国の姫はお后になる』
「皆さん、本日は私の『歌』をお聞きくださり、ありがとうございます」
アンは感謝の念をこめて、言の葉をつむぐ。それに対し普通の身なりの聴衆は、ふところからコインを取り出し。ボロをまとった観衆はバツが悪そうに顔を背ける。
ここに集まった者たちはアンを吟遊詩人の一種と考え。珍しい『歌』に対価を払ってくださるのだろうが。川岸に住まう浮浪児はもちろん、スラムの住民たちが金銭を出せるはずもない。
そんな彼らにC.V.アンはにこやかに告げる。
「さあさあ、小さな子供たち。お駄賃集めに、働いてね」
「「「っ!?」」」
「優しく(お駄賃を)集めてくれた子には、スープをあげる。塩の入った美味しいスープ。
パンをひたして食べられるスープ。
王子様の沈まない船が運んだ、食事と交換しましょう」
「「「・・・っ」」」
アンの言の葉を耳にして、貧富に関係なく聴衆が動く。
そうしてアンの『副業』は、ここからが本番だった。
一方で『オデッセア』に出てくる『海上ハーピー』は、十分『セイレーン』と言えます。
『誘惑の歌』を歌い、海難として舟に襲いかかる。まさに『海魔鳥』そのものでしょう。
正直、群れて知性が低そうな『海上ハーピー』は残念でカッコ悪いですが。海賊に等しい英雄『オデュッセウス』一行からすれば、自分たちを襲う『海神の眷属』など邪悪以外の何者でもなく。醜い『ハーピー』あつかいしたと愚考します。
そんな海賊オデュッセウスの偏見・中傷は置いといて。群れる『セイレーン』にはある可能性があります。
それは海鳥・水鳥モンスターの存在について。鳥型モンスターは、そこそこいますが。水鳥モンスターは少なすぎると愚考します。
そこで『セイレーン』を原点に、水鳥モンスターを創ってはどうでしょう。新しい扉が開くかもしれません。
なお私が創った水鳥モンスターは、“海上カラス・ハゲタカ”の群れでした。とても人様にお見せできるものではなく。もう少しきれいな『水鳥幻獣』を考えたいです。




