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青色の酒場~色々なギャップ

 昔の作者先生はすごいです。ネット検索どころか、正しい資料も無い。そんな中で描かれた歴史コミックは、まさに『知識の巨人』であり。何割か間違いがあっても、スルーして知見をもらったほうが得だ。〔お宝を捨てるのはもったいない〕と思うのです。


 武田家が金山開発をするにあたって。家来は三人の人材を連れてきたとか。一人は『金鉱石』から『金』を製錬する技術者。もう一人は鉱山に『坑道』を掘る技術者。


 そしてもう一人は『山に入り、鉱脈・鉱物の埋蔵量を調べる者』です。俗に『山師』と言われるのは、この人材でしょうが。明治時代まで、この『山師』が鉱山詐欺を行うのは不可能に近い。


 何故なら『山師』は戦国乱世だろうと、日本中の山に入り鉱脈の調査を行える。その特権を持ちますが、自分で鉱山開発はできません。


 〔調べた『鉱脈』の情報を朝廷に伝える(・・・)〕のが『山師』の役割であり。朝廷はその情報をもとに、『国司』に鉱山採掘を命じていたそうです。

 もちろん弱体化した朝廷にそんな力はないため。『山師』は戦国時代なら、鉱山を領有する戦国大名に情報を伝え。江戸時代なら幕府に伝えたでしょう。


 大先生が描いたこのエピソード。私はとても価値があると思います。

街道の浄化という任務を成し遂げ。それに関わった下級シャドウたちは姫長の扇奈様から褒賞を与えられる。それは小袋に入った、数枚の金貨であり。危険の少ない任務の褒賞としては、破格と言ってよく。


 さらに都市ウァーテルに住む者たちの、食糧事情を調べる任務チャンスであった。〔失敗してもかまわない〕と姫長が言われ。予算は、褒賞で与えられた金貨の金額・範囲となる。もちろん使った金貨は、経費として任務の後に補填されるのだ。


 極論だが、最低でも小袋の金貨を使って豪遊できる。ウェアルのように、上の御方たちが重要な情報と判断すればさらに褒賞を得られる。あるいは中級シャドウへの出世もあるかもしれない。

 下級シャドウの誰もが、勇んで町に繰り出すのは当然のことだろう。




 「・・・で?そんな話をお前は信じているのか?」


 「モチロンデス(まさか)。姫長様の意向は、俺たち下っ端が及ぶところではない。

  余計なことを考えずに、任務を全うするのみ(ここは守りの一手)デス」


 そう言いながら下級シャドウの汐斗せきとは、酒場の厨房で料理の下ごしらえをしていた。

 『旋風閃』を使いこなす、鍛えられた身体は調理の動線を軽快になぞり。鋭敏な感覚は食材の状態を把握し、調理に最適な瞬間を捉える。


 その表情に豪遊の二文字はなく。汐斗は調理することに集中していた。

 そんな調理作業が一段落してから店主は尋ねる。


 「〔都市の食糧事情を調べる〕・・・か。金を払って情報を買う。もしくは市場で食糧の『相場ネダン』を調べればいいのではないか?」


 〔伝手つてを使って、酒場ここの厨房に潜り込む必要はないだろうが〕


 そんな店主の質問に、汐斗は許される範囲で答える。


 「まず我々、下級シャドウが下手に『情報収集』をすると。余計な勘ぐりをする者が現れかねません。

  〔食糧の相場で儲ける〕〔兵糧しょくりょうを買って戦争を仕掛ける〕〔食料の魔術を開発する〕


  そんな妄想をするのは勝手ですが、誤解した連中が周囲に被害をまき散らすのは大問題です。そこで従来の情報収集は行わず。酒場・食堂で働くかせてもらい、ウァーテルの住人が好む味付けを知る。


  それをもって『食()事情』を知る(・・)ことにしました」


 地域にはそれぞれ求められる味・食材がある。例えば密林川のある某国では牛肉の『価格』が、政権の命運を左右するという話があり。住民を飢えさせない、食料生産を行うのはできて当然のことにすぎず。

 住民が本当に好きな食事(ソウルフード)を調理できる。そんな環境を維持できなければ、為政者として失格に近い。好物を食べられない、住民たちの不満は高まりやすく。スキャンダルなど他の失策と結びつけば、連鎖的に不満は増大するだろう。


 「まあ、確かにお前さんはヒドかったからな」


 「お恥ずかしいかぎりです」



 戦争種族C.V.様とその配下であるシャドウ一族。汐斗たち下級シャドウはその常識を知らず、色々とヤラカした。


 〔素材の味を活かした料理こそ至高だ〕〔早食いで味がわかるわけない〕

 〔『術式』の調理が“気味が悪い”など偏見にもほどがある〕


 そんなシャドウの主張をふりかざし、『下町料理』を素人調理と侮ったが。


 〔汗をかく人々は、濃い味付け(塩分)を好む〕〔食事を横取りされないよう必死に食べている〕

 〔シャドウは鋭敏な感覚(チート)で調理工程が見透かせる。『魔術・・』による調理が平気なのはそのためだ〕


 〔そもそも下級・・シャドウたちも、美食を楽しめるのは聖賢の御方様(アルゴスプリズム)が慈悲をくださったため。

  先進(C.V.)文明の力に溺れ。その日の食事にも(食事をさせたら)困る者たちに(正体がバレル)食通ぶるなど(そんなシャドウ)言語道断である(は密偵になれない)


 こうして色々と得難い経験を得て。汐斗たちはすっぱり『密偵』として働くことを断念する。

 

 同時に汐斗は考える。それらの情報を得た、恩は返さなければならない。露骨な恩返しは迷惑だから。迅速かつ丁寧に、借りを返す必要がある。



 『錬金冷術アルケミックコールド


 お酒(エール)を注ぐ『さかずき』に低温の術式(アルケミックコールド)を付与していく。冷菜を盛る『大皿』『酒樽』にもアルケミックコールドをかけたいところだが。今はまだ(・・)経験データが足りない。お客をムダに驚かせないよう、食器への『冷気付与』は『杯』にのみ行う。


 低温の地下食料庫で温度を調節を行い。それを保つ結界部屋アルケミックコールドを維持する魔力を補充する。

 さらに包丁に冷気の付与(アルケミックコールド)を行い。肉・魚(ショクザイ)の傷みやすい、もろい部位を軽く凍結させてから切り分けていく。


 「いつ見ても大したものだな・・・」


 「所詮、上の御方からサルマネした技能チートに過ぎません。中級シャドウの一員サヘルには、こんこんと水がわく泉のように応用術アルケミックが浮かぶ者もいます」


 「だったら貴様も中級シャドウサマに出世するのか?」


 「ハハッ・・・まさか~。オレ程度では『予測演算』の力が甘いです。

  『お皿』を冷やしすぎて、割ったことを忘れましたか?」


 「・・・・・:^`」


 〔皿を割ったのは受け取ったオレのせいだろう。そもそも皿一枚を割ったぐらいで・・・〕


 店主のブラムス殿は視線でそう語るものの、汐斗がそれに甘えるわけにはいかない。

 汐斗がバイトもどき(不定期)の調理ができるのは、店主ブラムス殿の慈悲によるもの。


 汐斗はシャドウの一員として“盗賊ギルド”と敵対している身だ。何時巻き込むか、知れたものではない。それを承知でバイトもどきをさせてくれる。


 『錬金冷術アルケミックコールド』を使用する情報をくれる。普通の食()文化を教えてくれる導師であり。世間慣れしてない若僧シャドウに、社会常識を教えてくださる大先生だ。


 汐斗としてはブラムス【師匠】と敬意を込めて、秘かに呼んでいる。


 「そんなことより、侍女ジョウキュウシャドウのお一人がお会いしたいとのこと。

  酒場の休日はいつ頃でしょう?」


 「・・:^;ーー・:最近、ここらへんは急速に変化している。そんな状態で安易に休めると思っているのか?」


 「失礼しました。【師匠ブラムス】殿の酒場経営こそが最優先です。

  ただ『アルケミックコールド』は酒場・食堂を中心に広める。安直に金儲けに走る商会連中ヨクフカ共には、制限付きのうえ高く売却する予定ですので。


  時間が空いた時はすぐにお知らせください」


 「・・・・・/・:ーー-^~よく承知している」


 こうして酒場の開店準備はすすんでいった。

 『山師』=“詐欺師”これが成立するのは、どんなに早くても明治時代を過ぎてからの話でしょう。それまでの『山師』は鉱山・鉱脈の情報を伝えて、給料をもらう。朝廷・大名や幕府に仕える役人だからです。


 出資金を集めて、山師は鉱山開発をできません。そんなことをすれば、武力を持つ領主に鉱山を没収されて終わりです。

 明治時代になった後なら、地主に『炭鉱』『投資』の話をもちかけ。成功したり、失敗して詐欺師あつかいされることもあるでしょうが。


 江戸時代に至るまで、数百年もの期間。『山師』は詐欺などやっておらず。“鉱山開発に失敗した権力者”たちに失策の責任を押し付けられた。


 有力な戦国大名たちは人材・資金をやり繰りして、鉱山開発を成功させましたが。バカ殿は『山師』のもたらした鉱山の情報を活かせず。鉱山採掘で採算がとれず赤字になり。


 〔山師に詐欺師の濡れ衣を着せていたのでは?〕と推測します。

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