200.表裏の冷熱
閲覧注意!楽しくない妄想話です。
日本にはたくさんの妖怪伝承があり。上は空から、下は海に地下まで。様々な妖怪の『絵』『物語』があります。
そんな中で、『鉱山』に出現する妖怪がどれほどいるでしょう?〔尾から剣が出てきた『八岐大蛇』〕『百足』などの神霊クラス・神の眷属を妖怪あつかいしても。妖怪事典に記載される程度に、有名な名前を持つ。そんな鉱山妖怪は片手で数えられるほどしかいない。
それは不自然に少なすぎると愚考します。
霧葉と桐恵。シャドウ姉妹は“穢土”の邪法に関わった密偵集団を惨殺した。
その任務の帰還の際、騎馬隊に襲われている陸戦師団の重騎士たちを察知する。
イセリナ様と聖賢の御方様たちC.V.お二人に『魔導能力』を付与された、重騎士たちは邪法の触媒を除去する作業を行っており。それらの負荷で疲労しているところを襲われ、劣勢は明らかであり。
彼らの危機を霧葉は『アラクネソーイング』によって救出した。
そして撤収作業を行ってから、数時間後・・・
「全員、整列!!」
「「「「「「「「「「ハハッ!」」」」」」」」」」
「導師殿。このたびは危ないところを救援いただき、ありがとうございます。
この恩は生涯、忘れません。
総員、勇猛なシャドウの導師殿に敬礼!!」
「「「「「「「「「「ーっ!!」」」」」」」」」」
ツァイス率いる重騎士たちから、霧葉は感謝の念を捧げられていた。
女シャドウの立場では色々と突っ込みたい。
〔ウァーテルの顔である重騎士が、汚れ仕事を行う霧葉に頭を下げるのはいかがなものか〕
〔これは大きな貸しよぉ。後でしっかり返してもらうわぁ〕
こんな考えばかり思い浮かぶ自分が、どうしようもない小者だと感じる。とはいえ霧葉たちの生きる日陰の世界で、弱みを見せるわけにはいかない。
だから霧葉は精一杯、高飛車なセリフを述べる。
「貴官たちを救援したわけではない。
仮にも私の『詠唱術』を教えた。『三相詠唱』を教えた重騎士が敗れれば、私の恥となる。
それと万が一にも敵に『詠唱術』がもれないよう、対処しただけよぉ」
霧葉の薄情なセリフに、重騎士たちが固まった。
まあ悪い連中ではないが、お互いに適切な距離感というものがある。霧葉は『蜘蛛』のシャドウらしく、表情を消した視線を送り。
「お説ごもっともでございます。アイヴァン!」
「ハハッ」
「外交のため、預けられた軍資金があっただろう。ここに出せ」
「・・よろしいのですか?」
「かまわん!責任はオレが取る」
そんなやり取りの後で、金貨のつまった大きめの袋が出てくる。
「これは些少ですが、救援の対価でございます。後ほど師団長から正式にお礼が出されますが。
どうぞお納めください」
そしてツァイス隊長は、霧葉にその袋を渡してきた。
「・・・どういうつもりかしらぁ?」
「導師殿の仰る通り。こたびの任務は失敗の許されない。いかな理由があろうと(主君の魔導を賜り)敗走が許されない、大事な任務でございます。
いずれイセリナ団長より正式なお礼が出されますが。手付としてお納めください」
普通なら援軍の部隊・勇者に『大金』を渡すなどということはありえない。助けられた者は感謝の念を伝え、後日に宴を催す。あとは上層部が援軍の功績を、恩賞に反映させる。
普通ならば、援軍への功はそういう風に報いるべきだが。
『【プリズム】です』
「・・っ!承知したわぁ。今回は特別ということで、預かりましょう」
『アルゴスプリズム』を示す【プリズム】の『光術信号』が表示される。
それは重騎士たちが『認識変動』の『魔導能力』を賜っていた。聖賢の御方様から『加護』を授かっていたということであり。
敗走は論外だが。重騎士たちがその『加護』受けている任務中に、欠員・戦死者が出るのも望ましくない。〔勝敗は兵家の常〕とは言うものの。
“盗賊ギルド”の頭数は多く。余所のC.V.勢力が完全な味方ではない現状で、わずかな隙すら見せるわけにはいかない。
〔危なかったわぁ・・・・・^+`〕
ましてくだらない政争で、彼らの救援が遅れるなど言語道断・・・どころか軍法モノだ。
霧葉の予想では重騎士たちは、騎馬集団より強かったと思うが。疲労のため何人かは戦死、もしくは重傷を負った可能性が高い。
そうなれば霧葉と桐恵は、自業自得の処罰を受けるとして。義弟が“穢土”の邪法に気付いた功績まで、台無しになるかもしれない。
霧葉は内心で冷や汗をかいていた。
『そういうわけだから。桐恵も重騎士隊の護衛に入ってくれるかしらぁ』
『承知しました姉上。コレを迅速に処理して、すぐに戻ります』
一頭のドラゴンから採取した素材で作られた通信の『竜魔器』。それによる霧葉との会話を終え、桐恵は観測者の狩りに戻る。
ただし数秒前とは違い、奴等の捕縛は断念し。速やかに殲滅することを優先に、思考を切り替える。
『ドラゴンホーン!ホーンスキップ・:・スキップマンティス!!』
前肢を『鎌の腕』と化し、攻撃力を増したカマキリ。その身体構造にはいくつか欠点がある。
足の機能がほぼ後肢だけという、二足歩行に近くなったこともその一つだ。
前肢の『鎌の腕』を自在に振るえる長所を持つものの。狩りは待ち伏せメインとなり。獲物の追跡どころか、天敵から逃走する脚がない。
カマキリは極めて機動性に欠ける、身体構造をもつことになった。
それを補うため桐恵は『竜角鬼』の脚を人型にしている。とはいえ序盤に討伐される亜怪人と同レベルで、全身の連動はチグハグもいいところ。ステータス頼みの『竜角鬼』が量産されることになる。
そのため様々な工夫を桐恵は試み。『スキップマンティス』はその成果の一つだ。
「ーーッ・:、・;っ!」「ーー^~~」「ここまで来ればっッ*」
森の中に逃げ込んだ密偵たちに、桐恵は跳んで追いつく。その『脚』は着地と飛び蹴りを同時に行い。貧弱な身体を刺し穿ち、えぐって半壊させた。
「ヒッ!」「・・--^~」「まっ*」
口を開きかけた密偵たちに、横薙ぎの蹴りを放つ。同時に『脚』を伸ばし『鎌刃』を開き。
口を半開きにした首が複数、転がった。
「バ、化けモノっ・;^*」
「その通り。ワタシは貴様たち密偵を殺戮する、カマキリの怪物よ」
「「「っ!?」」」
「死になさい・:・『スキップマンティス』」
本来、カマキリの機動力は低い。それは前肢の『鎌腕』に、身体能力の大半を集中させたため。
〔だったらその『鎌腕』で機動力も得ればいい〕
そう考えて編み出されたのが『スキップマンティス』だ。『竜角鬼』の身体全てを一対の『脚』へと変換したモノ。それは長靴と義『脚』であり、『跳躍靴』を兼ねる。片『脚』を軸として姿勢制御を行えば、もう片『脚』は凶器と化す。
さらに枝や木の幹に『爪脚・鎌脚』としてはり付き、ぶら下がることも可能であり。
カマキリの前肢・鎌腕を異形の『脚』と化して、桐恵が履いたものだ。
「っ!?」「ヒュっ^」「ーー・^~」
桐恵は樹上で『サル』よりトリッキーな高速機動を行う。そうして必死に索敵を行う密偵たちを襲い。
「やめろっ、やめてくれぇっ!俺たちは戦いを観察するよう、命じられた。単なる偵察兵だ!
戦う訓練なんてロクに受けていない。だから見逃しっ;+*!*ーー/」
「ええ、知っているわ。『観測者』でしょう?」
『観測者』という密偵がいる。比較的、安全な場所から戦場の観察を行う。未知の兵器・軍勢や異能力の戦闘データを集め。それらへの対抗策を練るため、必要な情報を参謀・軍師に持ち帰る『偵察兵』であり。
【家族】の手札をつまびらかにする。桐恵にとっては“害虫”以下な兵種の一つだ。
これは聖賢の御方様も同意見であり。
〔『ウォッチャー』には一切容赦をしなくていい。必ず対価を払わせて〕・・と仰っている。
「たいした報酬もなく、地道に観測し情報を蓄える。参謀の耳目となり、軍師の身体の一部と言っても過言ではない。
そう。“穢土”の邪法を仕掛けた“頭脳”に連なるモノということね」
「ア、ア、ヒィぃーー!*」
カマキリを模した亜怪人・拳法で、前肢の『鎌腕』を正確に模倣する人間は少ない。『鎌』型ならマシで、『蛮刀』や角もどきの両腕を持つ亜怪人。『双鳥』のクチバシ拳を『カマキリ拳』と言う者は多い。
「ギッ;--ガァーーー・!?・*`^ッ、>・~~」
しかしそれは正常な人間の感性だ。まともな神経を持つ者なら、刺し穿つ武具があれば充分と考える。
『ノコギリ刃』で切り削り、『鎌腕』で挟み圧して、両腕でホールドした肉塊をねじる。過剰な残虐行為を行うための、カマキリ前肢・『鎌腕』を再現する者などいるはずがない。
数分後・・・数体の『竜角鬼』が地中深くに遺体を埋めた。
〔死と隣り合わせの危険な鉱山作業。そこに『妖怪』までいたら怖くてやってられない〕
〔『鬼』も鉱山に関する妖怪だ。だから鉱山に出現する妖怪はたくさんいる〕
そういう意見もあると推測しますが。怖い妖怪の存在は人々の戒めとなるわけで。神霊・神の眷属を妖怪あつかいしないでも、三つぐらいは有名な妖怪伝承があっていいと愚考します。
それなのに鉱山妖怪が少ない理由。
それは『妖怪』より鉱山利権に群がる人間のほうが、凶悪なためだと愚考します。
捕虜・罪人や奴隷を酷使しての鉱山労働。それが過酷なのは周知のことですが。私たちが想像する“過酷”とは桁違いの地獄だった。
普通、過去の歴史情報なら、後世に研究され判明するもの。悪者だった『明智光秀』『平清盛』たちも、近年は〔別の見方がある〕という説があり。逆に有名な武将のスキャンダルが露わになっています。
それなのに鉱山からは『妖怪の伝承』すらろくに出てこない。明治以降の鉱山・炭鉱の『町』ができた後はともかく。江戸時代より昔の鉱山は、“死人に口なし”のロクでもない情報封鎖がされていたと妄想します。




