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193.トカゲの伝令

 獣とヒトが融合した『獣人』は数あれど。ファンタジーにおいて虫が混じった『亜人』は珍しいようです。『妖精』の背中には『蝶』の羽根がありますが。それを〔『蝶』の混じった亜人〕というのは厳しいでしょう。


 それでも検索の力に依存して、調べると。ギリシャ神話の『蟻人』が『虫の亜人』と言えるでしょうか。『英雄アキレウス』が率いた、『蟻人ミュルミドーン』たち。


 諸説ありますが、『大神ゼウス』が創った・変身させたか、○×▲した末裔の種族とのこと。


 他の昔話だと〔人間が○○で力を失い、『虫』になりました〕という結末が多い中で。〔屈強な『蟻人』の戦士団を登場させるギリシャ神話はすごいな~〕・・・と考えるべきでしょうか。

『旋風閃』という身体強化の術式がある。“盗賊”は単なる『加速能力』と思っているが。

 雷装様のような超魔装甲を持たないシャドウが、下手な『高速機動』をすれば敗北すること必至だろう。


 そのため『旋風閃』は『持久力』を最優先に強化している。『薄い空気しかない高山』を模した結界・『竜圏』の中で、『呼吸法』を鍛え。同時に『高山』では入手不可能な『食材』を食べて、身体を作る。


 そうして『感覚』『思考』や『術式』など。個々の才能を伸ばし、それを高速『運用』する。

 それが『旋風閃』の要諦だ。『高速戦闘』がメインの、『加速兵』とは異なる。




 「そういうわけで、オレの『疾走』では伝令の御役目を果たせない。すまないがウァーテルにオレを乗せて運んでくれ」


 「「「「「・・・・・ッ」」」」」


 ウェアルの呼びかけに、馬たちが応じる。その中で最も体調・状態(コンディション)が良さそうな馬を選び。旅装と最低限の武装を、その背に積んでいく。




 「ウェアルに伝令役を命じます。この『巻物』を聖賢の御方(イリス)様に、届けてください」


 「かしこまりました」


 C.V.エレイラ様から下級シャドウのウェアルは、都市ウァーテルへの伝令を命じられ。


 その時点で急ぎの用事でないことは明白だ。もし緊急の案件ならば、長距離の『疾走』を行える者に『魔石』を持たせ。そうして『旋風閃』の身体強化を増幅して走らせる。

 もしくは緊急時の『通信術式』でとっくに連絡を済ませているだろう。


『小官のペースで、移動してよろしいでしょうか』


 『かまいません』


 『光術信号ナイショバナシ』で確認も取り。ウェアルは素早く。だが急ぎすぎずに伝令の準備を整える。そうして一頭の馬にまたがり、街道を駆けて行き。



 『リザードトゥース!、トゥースラプター・・、ラプターボーン!!』


 街道をから少しそれた、人気のない場所で『術式』を展開する。古の魔術『竜牙兵』を模した、竜鱗欠片トカゲを触媒にした『魔術』であり。

 『竜牙兵』を自在に操る魔女様からすれば、子供だましな魔術(ジュツシキ)だろう。


 だが今回の伝令ニンムには大いに手助けとなる。ウェアルを運んでくれる、を守る『クリーチャー』としては有用だ。

 そんなことを考える術者ウェアルの望みに応じ、二足騎竜ラプターが具現化した。


 「ブルルッ・・」


 「よしよし。今回の旅の相方だ。仲良くしてやってくれ」


 魔力で活動する『二足騎竜クリーチャー』の出現に、馬が警戒のいななきをあげる。それをなだめ、無害であることを馬にアピールしてから。


 一体一頭と一人は、ウァーテルに向かって疾走を開始した。






 『魔術』がとびかう世界において、『騎馬』のあつかいは微妙なものだ。『騎馬』の機動力・突破力に対抗できて、超える魔術が使えるならば。

 ほとんどの『騎馬』はコスト諸々の都合で、戦場に出られない。兵種として『重装騎兵ナイト』が採用されないことも多い。


 そもそも手塩にかけて育てた『軍馬』が魔術能力リフジンに蹂躙される“惨状”を目の当たりにすれば。物心両面から『騎馬』を軍勢に加えようとは考えないだろう。


 〔だからと言って、『騎馬』を全く育てないわけにはいきません。身分の高い戦士が馬車・作業馬に騎乗するわけにはいかないでしょう〕


 〔え~~、ボクは別にかまわ・・〕


 〔・・馬を育成する者の仕事をなくすわけにはいきません!何より戦争種族(C.V.)としてハクを付けるためにも、名馬は必要でございます〕


 〔権力者キゾクみたいでイ・・〕


 〔〔〔・・・〕〕〕


 〔・・と思ったけど!円滑に外交をすすめるには、そういう権威も必要だよね。ウンっ!〕


 〔ゴ理解いただけたようで、何よりでございます。もしお認めくださらなかったら。

 “賊”とその家族・・を馬車馬代わりに、使い潰すさなければいけないところでした〕


 〔アハハッ、みんな冗談がうまいなあ~〕


 〔〔〔・・・〕〕〕


 〔・・・・・ッ〕


 大まかにこのようなやり取りが交わされたという“ウワサ”が流れ。ウェアルは『騎馬』の世話に携わることになる。その重要事項は低コストで、祭典用パレードの馬を維持管理することだ。

 

 もっともウェアルにとって馬の世話・育成は主要任務ではなく。あくまでシャドウとして修行をこなしつつ、『トカゲ術式』の研究を行い。三番目以下の優先度で『馬の世話』を行う。


 〔戦闘狂いでは困るから、何か学びなさい〕


 そう命じられて、ウェアルは『馬の世話』を選択した。よって『旋風閃』を会得するに伴い、得た技能により短時間で世話を行う。ウェアルにとって厩番うまやばんとはその程度の役割にすぎない。






 「よし、今日のところはここまでだな」


 モラッドの街から都市ウァーテルへの道のり。一応、治安は保たれているとはいえ。それは善良な一般人の話だ。

 敵の多いシャドウ一族の末席にいる者(ウェアル)が、単独行動で安らげる場所は少なく。“盗賊ギルド”にモラルや理性など期待できない。


 よってウェアルと馬は野宿するしかない。魔力の節約のため『二足騎竜ラプターボーン』にも食事をとらせ。


 「まずはブラッシングだな。素速く終わらせるぞ」


 そう言いつつウェアルは瞬きの間に、馬のコンディションを精査する。呼吸・発汗に毛並みや肉付き。風属性?のシャドウとして、馬の状態を知る手がかりはいくらでも感知できる。

 それらの脈動にあわせてブラッシングを行い、馬がリラックスするよう誘導していく。


 「どうやら水も得られそうだな」


 『ギギっ』


 水を採取するよう命じた『ラプターボーン』が戻ってくる。大きな泉・わき水など都合良くありはしない。

 だが水たまりや葉っぱの水気をかき集めさせることは可能であり。


 「御力を使わせていただきます『フォトンクリーン』『水球』」


 クリーチャーに集めさせた水を吐き出させ、術式で浄化する。そうして水の球を作り、馬に飲ませた。

 本来なら食事の前に水をとらせるべきなのだろうが。ウェアルは周囲の警戒を行わねばならず。『ラプターボーン』が必要量の水を採取できる保証もない。おけもないので『水球』の術式で水の塊を作らねばならず。


 「手間をかけてすまないな」


 「・・・・・ッ」


 ウェアルの独り言に対し、馬が返答するはずがない。ただ沈黙して休息をとり。

 ウェアルは一晩中、見張りを行った。



 

眠気覚ましの飲み物(コーヒー)を飲んでから、食事をとり。ウェアルは無詠唱で『トカゲの術式』と『風術』を発動しておく。

 山賊など敵ではなく。疾走で突破するのは、もっとたやすい。だが今は伝令の最中であり、万が一に備えなければならない。よって陳腐な小細工ジュツシキろうした。



 そうして待ち伏せに適した、隘路に近づき。ウェアルの耳は風切り音を捉える。



 「射かけろ!どんどん矢を放て。矢がなくなるまで射続けろ!!」


 「「「「「「「「「「・・・:、・・・っ!ーーーーーー!!」」」」」」」」」」


 山なりに矢の雨が射かけられ。街道の一帯に『矢』の草むらが作られ。同時に複数人の足音が聞こえると。ボウガン兵が整然と並び、素速く矢を装填して。


 「構えっ!狙え・・、撃てぇー!!」


 「「「「「・・--:!」」」」」


 指揮官の号令により、直進の軌道を描く矢が放たれる。それらが地面に着弾・・すると、『矢』の草むらが爆散した。

 それは数本の矢が刺さっていた『トカゲの革』も同様であり。サヘルの『術式』が矢の雨・魔術矢の波状攻撃によって破壊されていく。妄執すらこもったその攻撃は欠片の存在すら許さず。

 街道にも大きな傷跡を刻んだ。


 「やった・・やった、ヤッタ、やってやっ/」


                   『旋風閃爪』


                   「/*たっ?」


 だからウェアルはその執念に敬意を表し。何より奴等を一人でも逃しては、危険だと判断し。

 全力での殲滅を決意した。


 『旋風閃爪』通常の『旋風閃』に『竜鱗の欠片(トカゲの術式)』を併用する。ウェアルのいびつな術式が、ナゾの弓兵たちに襲いかかった。

 

 あの『アキレウス』に率いられていた『蟻人ミュルミドーン』が弱いということはないでしょう。


 よく言えば勇猛な激情家。はっきり言って短慮で気位の高い『英雄アキレウス』が、弱兵の存在を認めるはずありません。他にも指揮官として問題行動をやらかしている『アキレウス』から離反していない。

 『ミュルミドーン』は鉄の結束力を持つ兵だと推測します。


 そして同時に〔『蟻人』は、アフリカ大陸の『黒人』なのでは?〕と愚考しました。


 騎馬民族を『ケンタウロス』に。そしてエチオピア(アフリカ)を支配するアンドロメダ姫の一族・国民(コクジン)を『白人』にしてしまったギリシャ神話です。


 黒人の色素の濃い皮膚を、蟻の黒い表皮にして。黒人の高い身体能力を『ミュルミドーン』として扱い。〔『大神ゼウス』が関わるから、強いのは当然だ〕とギリシャ人は自らに言い聞かせ。

 そういう偏見・差別が、『ミュルミドーン』を創作したと愚考します。

 一応、『アンドロメダ姫』のほうは『色素が薄い』『ハーフ』などの理由で、ギリシャ人に似ていた可能性もありますが。『ケンタウロス』の前科ことを考えると。


 『蟻人ミュルミドーン』がファンタジーな亜人という可能性は、かなり低いと愚考します。

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