表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/429

186.今昔:怪火とシャドウ

 アニメ化もされた『古田織部』が主人公のパラレルな日本史。それを思い出して、連想したことが一つあります。


 それは〔『服部半蔵』の名字は、何故『服部』となのでしょう?〕・・ということ。


 『織部焼』の創始者ある『古田織部』の名前。それは朝廷の官位を得たときにつけたとか。

 官位の『織部』は『衣服を織る』『服に関わる』役職とのことですが。茶人武将の『古田織部』が朝廷で衣服に関わることなどあるはずもなく。

 『へうげ○の』を読んだ時は、〔芸術家の感性はよくわからないなあ〕で終わってしまいました。せいぜい〔飛躍の時かな?〕ぐらいの感想です。


 それに対し忍者?武将の『服部家』は何故、そんな名字なのでしょう?

『宝探し競技』の急なルール変更が行われ。エレイラは参加者の冒険者・彼らを雇っていた商人たち両方に迷惑をかけてしまう。


 その償いとして、まともな商人たちにエレイラは借金を返すことにした。


 〔債権・借用書を買えるなら逆も有りでしょう。借金を返す権利をC.V.エレイラが買い取ります〕


 そう告げて〔(実際に)少額の借金をしていた者〕に代わって、〔エレイラが借金を行った者〕になり。彼女が借金を返すことにより。商人たちは取り立ての手間をかけず、借金の利子()得る。

 それをもって冒険者のスポンサーになっていた商人たちへのびとして。事実上の借金棒引きにより、負債のなくなった市民から支持も得る。



 一方の冒険者たちは、悪辣あくらつな金貸しの所業をつまびらかにした。冒険者の借金証文に施された“小細工ペテン”を暴き。当然、借金は無効とする。

 加えて冒険者ギルドに交渉アツリョクを仕掛け。数字に弱く、商人にだまされやすい冒険者を、将来的に冒険者ギルド(・・・)がサポートする。法律・商売常識にうとい冒険者が、詐欺な契約書にサインしないように。彼らの後ろ盾になるよう、エレイラは依頼・脅迫を行い。


 それが可能になるまで冒険者ギルド(・・・)が冒険者の食事・消耗品を格安で販売するよう。エレイラはギルマスのモンブルに強制した。




 「あとはこの冒険者の待遇改善は、〔『宝探し競技』に参加した冒険者パーティーの功績によるもの〕と宣伝する。その名声をもって彼らへのお詫びとしましょう」


 「・・・どうかお待ちください、エレイラ様」


 「何でしょう、サヘル殿」


 中級シャドウであり、ウァーテルの歓楽街を取り仕切る。ある任務のためウァーテルとモラッドを行き来している逸材サヘルが、エレイラをいさめてきた。


 「冒険者がたちの悪い借金をしないですむよう。C.V.エレイラ様が〔食糧・備品を格安で販売〕されるよう計画したのはわかります。


  しかしこの計画は失敗するリスクが高く。中止を進言します」


 「・・それは『宝探し競技』のルール変更に続けて、私に失態を重ねろということですか?」


 サヘル殿に対し、エレイラはあえて不快な口調で応じる。それに対しサヘルは怒りを覚悟で諫言かんげんしてきた。


 「無理を申し上げているのは、承知しています。

  しかし“盗賊ギルド”の爪痕つめあとは深く。一見、平穏なモラッドの街にも、飢えに苦しむ者が少なくありません。


  彼らが格安品を求めて、安易な冒険者登録を行えば。不良冒険者が増える。あるいはエレイラ様の失脚を狙う、“賊”の手駒となる可能性があります」


 聖賢の御方(イリス)様を敬愛しつつも、戦争種族(C.V.)の怖さを骨身にしみている。不誠実・裏切り者がどういう目にあうか。実践も含めて教えられているシャドウ一族・陸戦師団のようなモラル??を他者に求めるのは無理がある。

 むしろ生きるため。欲望を満たすためにルールの隙間をつき。“オレは頭がいい”と自賛する賊が必ず現れるだろう。


 「そういうことなら・・・冒険者を評価する『等級を上げるポイント』。その基準を変えて、『食事・消耗品を購入するポイント』にするのはどうでしょう。

  

  モンスター狩りで評価を高める、トップランカーの冒険者は依頼人・・・から報酬を得て。日々の小さな依頼をこなす下級の冒険者たちは、格安で買い物をできる評価ポイントをギルド(・・・)からもらう」


 「興味深い、仕組みですが・・おそらくうまくいかない。

  というか、長期的には破綻の可能性が・・・その・・」


 先程までとは打って変わって、サヘル殿の歯切れが悪い。おおかた潔癖性のアマゾネスが不快になる内容なのだろうが。


 心配せずともエレイラのパーティーポジションで潔癖でいることは不可能だ。非合法な利権の処理を行ったこともあるし。リーダー・イセリナの縁結び・お膳立てを行うのも、エレイラの役割だ。


 〔だから血の気の多い冒険者の男女が色街でナニをやっていても、私は気にしません。

  ええ、一切わずかたりとも気にしませんとも〕


 「・・ッ!!」


 エレイラの意思がこめられた視線に、サヘル殿がわずかに硬直する。


 それと同時に、教導の足りてない配下がここぞとばかりに大声を出した。



 「ここは我等にお任せください!エレイラ様」

 「然り。色男の弁舌などで、問題は解決しない!」

 「己の意を通したいなら、中級シャドウにふさわしい力を示してみろ!」


 「・・・・・」


 「貴方たち・・・」


 ケンザたち下級シャドウたちは文官C.V.(エレイラ)を何だと思っているのだろう。“戦闘蛮族”でもあるまいし。エレイラがサヘル殿と建設的な議論を楽しんでいるのを、わかっていない。

 そもそも〔過ちを犯したら、その後に何を行うかが重要だ〕とセンゴクな覇王も仰っている。


 ならばエレイラの失態に乗じようとする連中の動きを予測し、カウンターの罠で嵌め殺す。

 『怪火の猟犬(フォービィーハウンド)』で惑わし、焼いて、エレイラの糧とすれば。うるさい“騒音ガイヤ”も沈黙させられる。

 “戦闘蛮族”のように“騒音”でストレスを感じる神経など、エレイラはとっくの昔に失ったのだ。


 それをケンザたちに伝えようとエレイラは口を開きかけ。



 「いいだろう、相手をしてやる。エレイラ様の下でどれほど、腕をみがいたか見てやろう」


 「その大口、すぐに開けなくしてやる!」


 「だが時間が惜しい。キサマ等三人で一気にかかって来い」


 「オレたちをなめるなっ!この女衒のヒモがっ・・・」


 頭の痛くなる会話が交わされる。それを聞きながら、エレイラはこっそり吐息をはいた。




領主の館にある中庭。建物の壁に囲まれた空間で、サヘル殿一人と三名の下級シャドウケンザ・キマリ・トウヤが相対していた。


 「それではこれより模擬戦を始めます。双方、構えて・・始めっ!」


 『『『旋風閃!』』』


 エレイラの合図と同時に、ケンザたちが『身体強化』を発動する。そうして加速状態に入り、サヘル殿を包囲すべく散開した。


 『・・・ッ』


 一方の中級シャドウは落ち着いて『術式』を発動する。身体の様子から『旋風閃光(身体強化)』の可能性は低い。そうなるとお得意の『錬金光術アルケミックライト』か他の『光術』でカウンター狙いだろう。


 「無駄だっ!」「せやっ」「・・・・・ッ」


 それに対しシャドウ三人は、迅速に感知の連携を行う。トウヤが『突風』の術式で中庭の空気を入れ換え乱し。キマリが『妖糸』を操り、見えない『光術ワナ』を探りからめとろうと試みる。

 そしてケンザが二人の護衛を行うという、フォーメーションを組み。


 『旋風閃光』


 「「「っ!?」」」


 その眼前でサヘル殿が余裕をもって『身体強化』を発動し。『感知の連携』が空振りに終わった、ケンザたちがわかりやすく動揺する。 


 「どうした?動揺している暇などないぞ」


 「なめるなっ!」


 背後を中庭を囲む壁でふさぐべく、サヘル殿が移動を始める。それが誘いだと理解しつつも、ケンザたちは仕掛けるしかなく。

 『妖糸』『手裏剣』がそれぞれ左右から挟撃し、正面からケンザが飛び蹴りを放つ。回避が困難な『鍵鎌』による、広域を削る攻撃がサヘル殿に襲いかかり。


 「ぐふぁッ・・」


 「っ!?」「なっ・・」「・・?、!?」


 ケンザの蹴り足がサヘルの額に直撃クリーンヒットする。いい音が響き、サヘルの身体が地面に叩きつけられ。鈍い音が出た。


 予想だにしない決着に、呆然となるも。ケンザたちは正気を取り戻し、素早くサヘルに近づいて。




 「『火打閃光(フリントスパーク』」


 「「「っ!!*?」」」


 サヘル殿の身体に設置された、光術トラップにより一番接近していたケンザが耳目を灼かれ。


 「このっ!」


 『アルケミックライト』


 次に『妖糸』でケンザの身体を引き寄せ、退避させようとした。キマリの『妖糸』が『加重付与アルケミックライト』でコントロールを狂わされる。それは彼女の両手も封じられたのと同義であり。


 「残りはオマエだけだな」


 『旋風閃!』


 そして一人残ったトウヤが格上サヘルに挑むも。

 そこから決着がつくまでの時間は、わずかだった。

『織部』と同様に衣服に関する名字の『服部』。


 『古田織部』のように官位をたまわったわけでもなく。それなのに初代『服部半蔵』は何故、『服部』を名乗ったのでしょうか?


 戦国武将の名字。それは出身地域や先祖にまつわるもの。『木下』のように名字を許されたものの、身分が上の者に気を使った『名字』もあれば。僭称せんしょうしたものや、主君に与えられた『山形』のような名字まで。


 その由来は様々ですが。初代半蔵は何故、名字を『服部』に決めたのでしょう。


 『服部』の意味が『渡来人で服の技術者』・『朝廷の服に関する役職』どちらを指すか知りませんが。どちらもデメリットがあると推測します。


 『服部』の名字が大陸から海を渡って来た『渡来人』を意味するなら。〔余所者です〕と言っているに等しく。技術者を保護する、確固な権力パトロンがいない戦国時代では危険ですらあります。

 『朝廷の服に関する役職』の場合、無位の主君のほうが身分が低いと見られる。『服部家』より有力な武将から、〔生意気な奴〕と見られかねない。


 『初代半蔵』のころは戦国乱世であり。上記のようにデメリットが多い『服部』の名字に決めた、『初代半蔵』は何を考えていたのか。私は首をかしげるばかりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ