表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
185/429

185.今昔:怪火と冒険者ギルド

 『アフロディーテ』と『エロース』の二大神格が連結した『双魚座うおざ』。

 子供の頃と違い、〔『ヴィーナス』は愛()を司る女神〕というイメージになり。〔それがつながっているのだから昼ドラな星座?〕などとも考えましたが。


 普通に『ザイルパートナー』を命綱で結んだ星座でしょう。『リボン』を使うので、昼ドラな妄想をしましたが。古代ギリシャでは男性もリボンをテーピングのように使用したとのこと。


 そういうことなら『リボン』を命綱に転用するのも有りだと愚考します。

 〔“借金棒引き(徳政令)”の布告を出されたくなければ、少額借金の契約書を持って出頭せよ〕


 脅迫に等しいエレイラの命令により、モラッドの商人が集められる。そうしてエレイラのルール的にまともな『金貸し』を行っていると判定した。まっとうな借用書で商売をしている者たちに対しては、エレイラが借金の肩代わりを行い。


 一方、冒険者パーティーに金を貸し、『契約書』に細工している連中は真っ青になっていた。

 『賄賂わいろ』を拒絶され。『契約書』の細工を、金を貸した冒険者の眼前で暴かれたのだ。

 

 「ここまでか・・・」「バカな・・命令ではこれデ・・」「チクショウ-^~~」


 “アコギな金貸し”と言えるようなモノではない。借金した者を破産、ないしそれに近いことを行ってきた賊商人たちは、これから余罪を追求され罰せられる。モラッドの街で権力を握る、エレイラに裁かれると思っているのだろう。


 〔だけど安直に制裁できるなら、こんな手間をかけたりはしません〕



 間違いなく“殺し”を行っている盗賊ギルドのメンバーのメンバーと異なり。“貸しはがし”に近いことを行っている賊商人は、一応『法律』に違反していない。

 少なくとも逃げ出した前領主の法治下では合法であり。エレイラが代官になったからと言って“前の法律など知らない。高利貸しは死刑にする”・・などといきなり強行するわけにはいかない。

 

 世間ではそういうのを“独裁者の悪政”と言う。


 そんなことをすれば、恐怖した商人たちは逃げ出し。〔C.V.はやっぱり邪悪な魔女だ〕とウワサが広まる。それではまっとうな産業など起こせるはずもない。


 だから今はこれで妥協する



 「「「・・・・・」」」「ッ!!・*・・」「こいつ等・・・・・」


 「冒険者の皆さんには、『宝探し競技』のルール変更で御迷惑をかけしました。そこでこの“不当な借用書”についてお知らせする。

  そのことをもって、私にチャンスをいただけないでしょうか?」


 「チャンス・・ですか?エレイラ様の力で、この不当な借金を帳消しにするのではなく。

  どのようなチャンスを求めるのでしょう」


 「確かに私の権力で〔小細工がされた契約書は無効だ〕〔借金も棒引きにする〕と強制するのは容易でしょう。


  しかしその程度・・で皆さんの労力への対価になるでしょうか?」


 「それはもチっ・:!?」


 「それはモチロン足りないわねぇ」


 本来ならあり得ない、借用書の不正を指摘したこと。それで満足の意を示そうとした冒険者が沈黙させられ、がめつそうな武闘家が返事をしてくる。おおかた違約金の類を要求しようというのだろうが。


 「その通りです。私の権力が通用するのは、あくまでこのモラッドの街だけ。


  それに対し借金で冒険者を奴隷に貶め。その後いいようにこき使う。もしくは亡くなった冒険者のご家族に、故人の証文をつきつけ生き血をすする。

  そういう外道たちがこの連中だけとは思えません。皆さんがモラッドの外に行けば。余所に行けば合法・非合法を問わず、理不尽な報復を企てるでしょう」


 「なっ!?」「ちょっ・・・」「そんなっ!」「「「・・・・・??」」」


 「それに代官ワタシの権力は絶対ではありません。もし前領主のような人物が司法を握れば。

  再び不当な借金を課せられるでしょう」


 実際のところその確率は3割ぐらいか。こんなヘマをした連中は〔トカゲの尻尾〕として切られるだろう。そして暗殺組織はナニモノか(C.V.マイア)に狩られ、壊滅状態であり。間違っても賊商人の依頼を受けられる状態ではない。前領主については論外だ。


 もっともどんなクズのチンピラ以下でもヒトを雇い、“呪物”で惨事を引き起こせる。油断すれば足もとをすくわれるだろう。だからここできっちり引導を渡す。


 それもC.V.の評判を落とさない正当な手段を行使してだ。


 「そこでもう少しだけ、皆さんのお時間をいただきたいのです。“賊商人カネカシ”たちを連行して、私についてきてください」


 エレイラの告げた事実上の命令に対し、逆らえる者などいるはずもなく。


 こうして冒険者たちは『傍観者』から、『脇役』へと役割を変えさせられた。






 「『依頼』を一つお願いします!」


 「「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」」


 大きな建物の中にエレイラの言の刃が響き渡る。だがそれに応える声はなく。建物の中にいた者は、誰もが呆然としていた。


 「返事がありませんね。こういう時は〔どのような内容の依頼ですか?〕と尋ねるべきでしょう」


 「っ!?」「・・・ッ`:+;」「・・・、ッ!・・・・・」


 エレイラの言葉に受付嬢たちが硬直する。モラッドの街を引っかき回すC.V.エレイラが、大勢を引き連れて来訪し。そのうちの数人は罪人あつかいで拘束されているというありさま。

 そんな集団を率いるエレイラから依頼が出されるのだ。どう考えても厄介事の受付を、ギルド職員たちは互いに譲り押しつけあっていた。



 そんな『冒険者ギルド』は依頼人からクエストを受けて、冒険者たちに仕事を斡旋あっせんする組織の拠点だ。

 もっともC.V.たちからは・・・



 〔右から左に依頼を取り次ぎ。依頼料を“中抜き”するだけ〕

 〔暴行亜人ゴブリン・オークを放置して、邪な妄想にいそしむ異常性癖ヘンタイの巣窟でしょう〕

 〔冒険者にペナルティーを課す。だけど冒険者の“ヤラカシ”は知らんぷりの二重基準ダブルスタンダードの集団〕


 〔だからと言って潰したら、困ったことになる。厄介な連中だよね~〕



 こんな感じの組織として認識されている。武闘派のC.V.からはバカにされており。

 エレイラのような財務・支援担当のC.V.からは〔もう少しやりようがある〕と視られている。


 そして本日、その〔やりよう〕が示されるのだ。


 「どのような御用でしょう、代官のエレイラ様。よろしければこちらの依頼書に、内容を記載なさってください」


 「あら、よろしいのですか?」


 「・・何がで、ございましょう」


 元商人たちが後ろ手に縛られ、数珠つなぎに連行されている。連中をけっして見ないようにしながら、受付嬢が尋ねてくる。


 「少し大きな依頼になります。そのため最初からギルドマスターに話をしたいのですが」


 「あいにくギルドマスターは多忙でございます。お話はまず私がうかがってから・・・」


 立派な態度の受付嬢だ。礼節を守りながら、毅然とした態度で応対する。冒険者ギルドにも誠実な人物がいるということだろう。きっと普段の業務も真摯に行っているに違いない。


 だからエレイラは少しばかり現実を告げた。


 「そうですか。真面目に商売カネカシにいそしんでいる者の中で不心得者がおり。そういう連中があろうことか、冒険者の・・」


 「少々、お待ちくださいエレイラ様!大至急、ギルマスを連行してまいります!」


 勘のいい受付嬢が瞬時に席を立つ。そうして疾風の速さで責任者ギルマスを引きずり出した。





 「それで依頼とは、どのような内容でございましょう」


 「借金で身を持ち崩した冒険者が、盗賊ギルドの私兵と化している。あるいは詐欺の細工がされた契約書で、家族ごと破滅させられている。


 それを防ぐために冒険者『ギルド(・・・)』にはサポートをお願いしたい」


 冒険者ギルドの最奥、ギルドマスターの部屋でエレイラはギルマスのモンブルと相対していた。


 「〔サポートをお願いしたい〕と言われましても・・・。冒険者は自由な生き物です。

  ギルドでその個人の事情(プライベート)に干渉するのはいかがなものかと」


 「戯れ言はけっこうです。私が知らないとでも思っているのですか?」



 信用などあるはずもない。どこで野垂れ死にして、借金が返済できなくなるか知れたものではない。そんな新米冒険者ゴロツキが借金をできる。その理由は善意・商売人の道義などではない。


 冒険者ギルドが戦力を保有するため。有望な冒険者を借金で縛り、コントロールするためだ。


 〔冒険者は自由にどこにでも行ける〕・・・などと言われているが。“賊”・モンスターの脅威があるこの世界において、そんなことは不可能だ。

 城砦を守る兵が常にいるのと同様に。冒険者ギルドの各支部には、一定の冒険者センリョクがいる必要がある。そうでなければ強い怪物・横暴バカな権力に対抗できない。


 〔儲かる狩り場に行きます〕などと言って、冒険者たちが移動すれば。戦力の無い仲介屋ギルドは他勢力の食い物にされてしまう。

 

 

 「私も『戦()種族C.V.』として作戦を提案します。ある程度なら必要悪として『借金による束縛(コントロール)』もやむを得ないでしょう。


  しかしそれにも限度があります。不要と判断した冒険者を、借金漬けにして切り捨てる。

  “悪徳の都”に事実上の奴隷として、売り飛ばしていた疑いがあります」


 「何を言う!しょ・:」


 「〔証拠があるのか?〕などと言わないでください。私は元“悪徳の都”を一夜で陥落させたイリス様にお仕える者。

  証拠に加えて証人も取り寄せる(・・・・・)ことができます。余計な手間をかけさせないでください」 


 「・・・・・ッ」


 エレイラの高圧的なもの言いに、モンブルの表情が歪む。だが盗賊ギルドに屈し、冒険者を売り渡していた。冒険者ギルド(・・・)を存続させるためとはいえ。冒険者を裏切っていたギルマスを信用するほど、エレイラはおめでたくない。


 「やはり無理だっ!(冒険者)ギルドの通常業務だけでも必死にこなしているのに。

  冒険者たちの借金について、相談を受けるなんて。どう考えてもギルド職員たちの手に余る!」


 「そうでしょうか?冒険者の生き血をすすり、後ろから刺していた。

  冒険者たちの個人情報を盗賊ギルドに売り。散々、甘い汁を吸ってきたギルド職員なら、もっとガンバレルはずでしょう」


 「ふざけるなっ!ギルドの職員にそんな不届き者はいない!」


 確かにいるギルド職員たちに不届き者はいない。

 しかしは盗賊ギルドに情報を流していたギルドスタッフがおり。貴族や大手クランとグルになって、自由に冒険していた者を罠にはめていた。


 都市ウァーテルがイリス様に占領された際に、連中は姿を消したが。

 〔彼らは他所に異動しました。私たちは知りません〕などという寝言で納得できるはずがない。



 〔『怪火の硬貨(フォービィーコイン)』/ツブそうか〕


 「ッ⁉」


 エレイラは『幻影コイン』を造りつつ、並列して殺気のほむらを放つ。


 〔罠にはめられた冒険(フォービィーコイン)者の無念。帰らない冒険者を待ち続(フォービィーコイン)ける家族の悲哀。そし(フォービィーコイン)て賊の飼い犬と化した元(フォービィーコイン)冒険者に、殺された同胞C.V.の憎しみ(フォービィーコイン)


 「‥!^:*;、!+⁉!!!」


 ただし『幻影コイン』を投影するのは、会談を行っているこの部屋ではない。

 元冒険者であるモンブル(ギルマス)が察知できるギリギリの範囲をなでるように。調度品の影・窓枠の端を『怪火の硬貨』が走り、廊下で魔力の欠片(フォービィーコイン)が擦過音を奏でる。


 そうやってモンブルの神経・感覚の先端を逆なでするよう『フォービィーコイン』を展開しつつ。

 エレイラは妖気をギルマスの眼前で放つ。『不審な気配(フォービィーコイン)』を警戒するため、モンブルが五感を酷使するよう誘導しつつ。


 その心臓をえぐり焼くイメージで、怨念混じりの邪気を放った。


 〔このギルド支部を理不尽に焼けば、ギルド本部も理不尽を理解する。哀れなギルド職員をあぶがし、焼き殺せば・・・〕


 「ヒィッ・・⁉待て、待ってくれ‼本当に今のスタッフは知らないんだ。信じてくれっ!」


 『威圧』とは異なる手段で、心身に過負荷をかけられ。小者モンブルがそれに抗えるはずもなかった。

 


 「仕方ないですね。ギルドによる『借金相談』は、必要な技能・ノウハウをスタッフが修得してから(将来、必ず)行ってもらいましょう」


 「・・・・・・・・・・・ッ」


 「当座は冒険者が借金をしないようサポートに徹してもらう。

  ふところの寂しい冒険者に、食事・消耗品を格安で提供する。その他各種、サービスを行う程度で、今日のところは我慢しましょう」


 「承知いたしました。それでは早速・・・」


 この場を逃げるように、モンブルはサポートに必要な準備にとりかかろうとする。

 そんな小物にエレイラは穏やかに告げた。


 「それと現在、私は『宝探し競技』を開催しています。ルール変更に伴い、雑務が増えました。

  

  冒険者ギルド(・・・)にはその支援も、協力をお願いするでしょう」


 「・・・・・・・・・・ヨロコンデ、手伝わせていただきます」


 無論、屈したギルマスに拒否権などあるはずがなかった。

 二大神格の化身が連結した『双魚座』。そんな星座の力を使うキャラがいたら、他の『黄道十三星座』との実力バランスが崩壊するでしょう。


 ギリシャ神話のとおり『テュポーン』から逃げるため、二柱の神は力を封印して魚に化身した。だから『ピスケス』の星鎧は植物・怪亜人は水の拳をふるう。とても深いお考えだと思います。


 とはいえせっかく『双魚座ピスケス』の『リボン』が気になったので、少しだけ想像してみました。

 多神教でも異なる神々は争うもの。〔ゼウスに下剋上を挑んだアポロン〕〔女王神ヘラの姫君メガミたちへの嫉妬〕〔アテナvsポセイドン/アレス〕他にも神々の争いをあげたらきりがないでしょう。

それなのに『リボン』で互いの身体を結ぶのは、深いつながりがある。不埒な邪推ではなく。〔迫害・災害(テュポーン)に耐えるため協力した〕という絆イコール『ピスケスのリボン』と考えると。


 世界でも稀な『神具』のリボンであり。『黄道十三星座』の中でも、かなり重要な位置を占める。“目立たない星座”というイメージを、ひっくり返すポテンシャルがあると愚考します。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ