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17.最上級のシャドウ 『フォトンワード』

 ニンジャマスターとはどういう意味でしょう?


 ニンジャの首領、忍術を極めた者、最強のニンジャ。色々な定義はあると思いますが。「忍術を極めた者」というのは最も困難でしょう。

 そもそも何種類の忍術があるか不明であり。妖術と忍術の区別をどこでつけるか?。さらにどの程度使えれば極めたと言えるのか。


 議論が始まる以前に、議論をしようという人がいないでしょう。とはいえニンジャマスターが自称だけというのもさびしいです。

 悪徳都市ウァーテル。無数の犯罪ギルド・邪悪な組織が集い、周辺諸国に災いをばらまく。かつては自由都市だった魔都だ。

 

 そんな魔窟に等しい都市では現在、戦端が開かれていた。


 正門ではカオスヴァルキリー・イリスを名乗る。武装した戦姫がダガー一振りと火力無き『光術』をふるい。それに対し門番の部隊どころか、腕利きの戦士・邪術士までもが翻弄されている。


 それとタイミングを合わせるかのように。都市の各所で、追いはぎたちが商人の護衛に返り討ちにあい続ける(・・・)。そんな見世物が開幕していた。

 護衛たちは一様に『セイトウボウエイ』なる古代語を唱えつつ。住民たちにシーフの蹂躙される光景を見せつける。


 無論、偶然でそんなことが起こるはずがない。




正門前


 「このアマがっ!」「囲めっ、囲んで殺せっ!」


 ウァーテルの玄関口であり、大勢の人々が通る。大都市の顔と言える正門は、防衛上の重要施設だ。そこには当然、門番たちの詰め所があり部隊が常駐している。

 加えて万が一にもトラブルが発生しないよう。門番全員よりも高い戦闘力を誇る腕利きが、待機している。


 何故ならこの正門で騒ぎが起こることは、都市の支配者たちのメンツをつぶすから。


 『他所の都市の正門は秩序があるのに悪徳都市はダメ』

 『闇の組織などとは言っても。実際は弱いから、侮られて騒ぎを起こす奴が出てくる』


 そんな醜聞が流れたら、どんな組織も顔に泥を塗られた痛恨事となる。メンツで食っている裏組織ならなおさらであり。それだけに正門には予算・人員を割いて防衛しなければならない。


 「もしも~し。ボクは開戦の使者で~す。戦う気はないので通してくださ~い。

  通してくれたなら、お互いにもう傷つけずにすむと思うんだけど」


 そんな正門で聖賢の御方様・シャドウ一族の絶対なるマスターが無双していた。


 振るう武器はダガー1本であり。防具は金属製の局部鎧をまとっているものの。門番連中の攻撃がかすりもしない、この状況では重しに等しい。あげく使う『術式』は非殺傷の、『発光・灯火』の術式をアレンジしたものだけ。


 そんなカオスヴァルキリー、イリス・レーベロア様に大の男たちが翻弄されている。〔攻撃魔術だ。魔剣の武術だ〕と束になって襲いかかり。息を切らせ、あらげているというのは滑稽な見世物だった。


 どうせ魔力持ちの害獣としか戦っていない、“冒険者”くずれなのだろう。巨獣、触手持ちのモンスター群を討伐するマスターにとって敵ではない。

 しかしイリス様、第一の忠臣として扇奈は言わなければならない。シャドウの長としてマスターに意見するなど出過ぎた真似だが、言わなくてはならないことがある。


 『この程度の連中、イリス様が御手を煩わせる相手ではございません。私にお命じくだされば、すぐにでも皆殺しにいたしますが』


 『そうは言ってもね。ご指名はボクだし、安易に全滅なんてしたら駄目だよ』


 内容は物騒だが気の抜けた会話が交わされる。だがその会話に割り込むものはおろか、反応するものは周囲にいない。


 『作戦の効果ならもう十分でございましょう。明らかに装備の劣る戦姫に、ケダモノたちが勝てない。これで彼奴等の面子は丸つぶれです』


 『まあねえ。みんなも順調に勝っているようだし』


 悪徳都市ウァーテル。それを支配する闇の組織は強大だ。その力は多岐にわたり人心掌握の術にも長けている。


 〔腕の立つ戦士、魔術師がシーフ一人を殺せば家族ごと暗殺される〕

 〔軍勢でウァーテルが攻め滅ぼされてもいづれは復讐に戻ってくる〕

 

 これらのイメージを内外に与え、恐怖で縛るのも“盗賊ギルド”の手札の一つであり。

 実際、“盗賊ギルド”はそれらを実行してきた。ここ数十年、ウァーテル征伐・侵略の遠征軍が興されるより。軍人・貴族の不審死のほうが、世間をにぎわせているほどだ。


 『ですがそれも今この時より終わりでございます。商人の護衛一人に手を出して返り討ちにあう非力な強盗ども。その護衛から逃げることもできない鈍亀のシーフ。そして何よりも・・・』


 『あ~ハイハイ、わかったから。とりあえず盗賊ギルドの切り札であるアサシンを討ち取ったから、しばらくはおとなしくなるかな』


 乱戦の最中とはいえ。誰が耳にしても聞き捨てのならない情報が、イリス様と扇奈の間でとびかう。だがその内容に耳をそばだてる者はいない。何故なら今までの意思疎通は、声や念話術式によってやり取りされてたものではないからだ。


 『フォトンワード』


 人間の目は『全ての光』を視認できるわけではない。水気によって虹がかかり、『七色の光』を視認でき。その他、火・薄膜の触媒をとおし。『光』に様々な色があることを、錬金術師の一部が知るのみだ。


 そんな不可視の光を用い信号・隠語をつづるのが『フォトンワード』の術式である。これにより灯火の術式と同程度の魔力で、念話以上の通信が可能だ。安めの魔道具と同レベルの通信なら、下級シャドウでも習得している。


 熟練者になると一定の角度から見なければ、魔力の燐が漂っているようにしか見えない。あるいはこれ見よがしに使って、敵の心理を乱すという使いかたも可能だ。


 とりあえずイリスと扇奈を囲む、武装した雑魚には関係のない話だろう。ようやく真に隔絶した力量差というものを認識し始めた。憐れな“用心棒”に、広い視野を持つ余裕はない。


 『いえ、この愚か者どもにそんな知性は期待できま・/』


 「このアバズレどもがっ‼盗賊ギルドの力をなめるなよ・・

  貴様ら二人とも薬漬けにしてから最底辺の奴隷にして売り飛ばしてやる!」



 知性は劣っても口撃はできるようだ。これが『攻撃術式』や『暗殺技』なら、扇奈は瞬時に対応できただろう。先ほどから使っている風の異能に加速重視な『身体強化』の二つ。どちらを使うか迷った後でも、カウンターを仕掛けられる自信が扇奈にはある。


 しかし予想してない悪意にまでは反撃できない。そもそも無礼討ちの修行・経験など扇奈にはない。劣勢というのも馬鹿らしい戦況で暴言を吐くなど、いったい何を考えているのだろう。もしかしてこれで動揺した隙を狙っているのだろうか?



 そんな怒りで陽炎のように歪む街並みを認識しながらも、扇奈はイリスの配下であることを忘れなかった。


『旋天・小飛竜』


 己の刃である『魔導能力』を発動する。


 それは『隠行術』によって〔気付かれずに接近している〕・・・と誤認している。そんなアサシン集団の息の根と、門番集団ゴロツキのよく回る舌を一瞬にして封じる。


 そんな理不尽チカラの咆吼だった。

 

 

 

 

 


やはり実力者の上忍・里長のニンジャたちを5人以上は相手にできる戦闘力を持つくらいでないと。

 ニンジャマスターは名乗れないと思います。


 きっぱりニンジャマスターを名乗った好漢は好きなのですが。機動力のある野武士だと感じました。

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