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156.歓楽の街~えぐる言の刃

 本文も含めて下ネタ・暴行の話です。気分を害する方は読まないでください。




 『ムジナ』という妖怪をご存じでしょうか。私は『タヌキ』と混同していましたが。検索してみると『アナグマ』だとのこと。


 しかし検索からは『ムジナ』を知るうえで、重要なことが末梢されていました。それはヒトを化かす『妖術』を使うときのこと。妖怪辞典、80年代のコウモリネズミの弟ムジナは、〇〇袋を部屋ほども広げて『妖術』を使ったとか。


 狐狸と同じように『葉っぱ』『普通の毛皮』や『尻尾』を使えばいいものを、“わいせつ物”を媒体に妖術を使う。いくら大昔?の日本が性に開放的だったとはいえ、限度というものがあるでしょう。『貉』のソレは完全に限度を逸脱しています。

迷宮探索を奨励することで、冒険者たちから利益を上げることを優先させる冒険者ギルド。

 そこに訪れたマリーデは頭の悪い世間知らずを装い、難癖に等しい言の葉をふるう。さらに大金を見せて欲望をあおることで、思考する力を乱し。


 「そこまでだ!その依頼、俺が引き受ける!」


 冒険者に化けたサヘル(シャドウ)様を迎え入れる。マリーデの想い人であり、高級娼館の主を兼ねる旦那様。

 だが今この時はマリーデの共犯者だ。


 「勇者様!私たちの村の危機を救ってくださるのですか?」


 「〈サイード〉と呼んでくれ。微力ながら、全力をもって危機に立ち向かおう」


 「ありがとうございます。私は〈リアーデ〉と申します。

  これは些少ですが前金・・になります。必要経費、成功報酬に関しては、別なところでお話いたしましょう」


 そう告げながら、マリーデはいつもの癖でサヘルに腕をからめようとして・・・


 「待ってください!勝手に依頼を受けては…ギルドを通さず依頼をされては困ります!」


 受付嬢に割り込まれ、制止される。


 「何が困ると言うのかしら?」


 「それはっ…ギルドには依頼を精査する責任があって・・・」


 「その責任というのは、依頼の手数料をとることかしら。それとも依頼()を取るの(だけ)が巧みな冒険者に依頼を流すこと?


  私が求めるのは実力があり、速さ(ニーズ)に応えてくれる勇者様よ。ギルドの都合など知ったことではないわ」


 おそらく初めてたたきつけられたであろう、“暴言”に受付嬢は目を白黒させる。平民ならば、誰もが冒険者ギルドに頼り、依存して、泣きつくことも珍しくない。そんな中で遠慮の欠片もなく、暴言を吐くマリーデは得体の知れない存在だろう。


 今後もギルドに依頼を出す者がとっていい態度ではなく。冒険者ギルドのブラックリストがあれば、〈載る〉こと確定だ。

 とはいえ受付で“暴言”“暴露”を続けられては、迷惑なことこの上ない。そんな受付嬢を助けるように巨漢の冒険者が声を上げる。


 「おいおい、嬢ちゃんよ。それはあんまりってものじゃねえか?俺らだってガンバッテいるんだ。仲良くしようぜ」


 そうしてマリーデをなめ回すように見ながら、近づいてくる。大金が入った袋にも意識が向いている冒険者ゴロツキが馴れ馴れしく話しかけてくる。その顔からは〔金の独り占めは許さない〕という本音が駄々もれであり。


 「オレ様の名はガンツ。このギルド一の戦士だ。オラ、どきやがれ小僧っ!」


 「この依頼を受けたのは、俺が先だ。割り込みはやめて、もらおう」


 「っ!?、ガッ・・・」


 サヘル様を背後から殴ろうとしたオトコの身体が、一瞬で投げ飛ばされる。


 正確には後頭部を殴ろうと、不用意に突き出された手を首をかしげてサヘル様がかわし。その腕を両手で握りとらえ。あらかじめ準備セットしていた『光球』を身体にぶつけ重心をくずす。

 そんなオトコなどサヘル様の敵ではない。床に叩きつけられるだけで済ませた、サヘル様の慈悲に感謝すべきだろう。


 「てめえっ!!」「表に出やがれっ!」「その必要はねぇ。この場でぶっ殺す!」


 「やめてください!ギルド内での争いは禁じられています!」


 しかしギルド側の人間で、現状を理解している者はおらず。特に受付オンナになどは、火の粉を払ったサヘル様に怨みがましい視線を向けてくる有様。

 だからマリーデは言のをふるう。


 「やむを得ませんね。私の依頼はギルドで一番お強い、勇者にお願いするとしましょう」


 「なっ!?ちょ・・・」


 「「「「「・・・・・!!」」」」」


 マリーデの言葉に男共は目の色を変える。かくして酒場兼の建物で乱闘が始まった。






 数分後


 「貴女はっ、アナタはいったい何を考えているのですかっ!」


 荒事担当の冒険者ゴロツキたちが倒れ伏す、冒険者ギルドの建物に受付嬢の怒声が響く。その惨状は依頼書の取り合いを行う、朝の比ではなく。何故、依頼書の取り合いをギルドが黙認しているか、わかりやすく示していた。


 「私は〔一番お強い勇者様にお願いする〕と申し上げただけです。

  “この場で殴り合って勝った人にお願いする”などと一言も言った覚えはありませんわ」


 「このっ・・・」


 〔勝手に勘違いした荒くれ者の事など知らない〕と暗に告げるマリーデの前で、受付嬢は唇をかみしめる。マリーデの言葉は詐欺師が“そそのかす気など無かった”と言ってるに等しく。組織の一員として制裁を課したいだろう。


 だがそれでは『勝負事の結果』という、最低限の秩序を壊すことになり。チンピラ集団にルールをもたらすソレを、冒険者ギルドで破るわけにはいかないと言ったところか。


 もっともマリーデはそんな冒険者ギルドの都合に配慮してやる気など一切なく。

 命令と自らの意思に従い、傷口に塩をぬりこんだ。


 「とはいえ冒険者ギルド及び、困難に直面した【依頼者】の方たちに迷惑をかけたのは明らか。


  些少さしょうですが弁償代・治療費に見舞金を払わせていただきます」


 そう告げてマリーデは大粒の宝石を取り出し、受付嬢に手渡す。それを彼女は受け取ってしまい。


 「ところで他人ひとの落ち度を責めるのですから。当然、ギルドも責められる覚悟はできているのでしょうね?」


 「ハァッ!?貴女、いったい何を言って・・・」


 「冒険者の皆様が、自由に依頼を受ける。それによって暴行亜人(ゴブリン・オーク)を食べる天敵・・モンスターが狩られてしまい。


  その結果、凶猛な亜人が軍勢を作り、町や村を滅ぼす。その責任は当然(命で)とっていただけるのですか?」


 「・・・・・アナタが何を言っているのか理解できませんね。難癖をつけるのはやめてくださるかしら」


 そう告げる受付嬢の対応は大した物だった。動揺を押し殺し、瞳はマリーデを見すえ平静を保つ。

 その原動力は自分を守るためか、組織への忠誠ゆえなのか。意思の力で固められた表情筋には、冷や汗一つ浮かびそうもない。


 「申し訳ありません。遠回しな表現では理解できませんよね。わかりやすく言わせてもらいます」


 「・・・・・」


 マリーデの言葉に、彼女は身構える。きっと〔コレを耐えれば、乗り切れる〕とでも考えているのだろうが。



 「ゴブリン・オークの類を増やして、おぞましい“異常性癖・・・・”を満たすのはやめてください」


 「「「「「・・・・・ッ」」」」」


 冒険者ギルドの空気が凍りついた。






 人間には欲求がある。『色欲』もその一つであり。命の危機にさらされる者はその欲がとりわけ強くなる。そして歓楽街はその欲望を満たすことで糧を得ているわけだが。


 「〔他者から賞賛されたい〕〔英雄になりたい〕と夢を見るのはけっこうですが。

  そのために“暴行亜人”を増やして、冒険者への依頼数を増やす。そういう非道なことはやめていただきたいのです」


 「なっ・・・な、ナニを言って」


 「「「「「・・・!?・・・??」」」」」


 マリーデの投じた言葉の暴力(いじょうせいへき)は、いたいけな冒険者たちの心をえぐる。日々の生活に必死な彼らに、広域からモンスターの生態を〔考えろ〕などと言うのは無理があり。

 “最低の異常者”扱いされるいわれなど無い。本当はそれをマリーデも理解している。


 しかし世の中には『合法行為』だろうと、【間接的に、確実・・にヒトを地獄におとす】“凶行”というものが存在するのだ。

 例えば〔冒険者たちの目の前で大金をちらつかせ、争いをあおる〕ことは、別に禁じられていない。だがそのトラブルで冒険者の戦力が低下すれば、人食いモンスターが確実・・に増えて“エサ”を求める。

 確実に人的被害が増大するだろう。

 

 〔依頼されたことを、に右から左へと冒険者に仲介する〕

 〔武力を持ち、周囲に影響力を持つ冒険者を野放しにする〕


 これらは合法行為だが、高確率でトラブルを発生させて人死にを出す。そして最悪なことに“盗賊ギルド”が影響力を持つ、世界において。自由な冒険などというものは、確実・・に奴等に干渉され、利用される。まっとうな人々に災厄をもたらす。


 しかしこの場で、それを詳しく説いたとしても。彼らを心から説得し、行動につなげなければ、“狂った中傷”で終わってしまう。詳細な説明は後ほど、ギルドマスターに行うとして。


 今は“異常者”扱いされた、あわれな冒険者たちの心にくさびを打ち込むことが大事だろう。その布石が後の『流れ』につながる。


 「;、;。貴女たち。もう入って来てもいいわよ」


 「ようやくですかリアーデ(・・・・)姉様」

 「もう待ちくたびれました」

 「お話は終わりましたか?」


 「「「「「・・・・・??」」」」」


 マリーデの合図でギルドの建物に入って来た者たち。彼ら・彼女たちは歓楽街の住人で有り。

 その中でも容貌に優れた、人気の高い者たちだ。きっと冒険者の男女両方にも人気があるだろう。


 「この人たちはいったい・・・」


 受付嬢の疑問を無視して、再び言葉の暴力がふるわれる。


 「それで姉様。農家だった私たちに〔モンスター探しと『適切な時期』に依頼すればいい〕と言っている学者サマは何処ですか?」


 「私が先です!増えたオークを誘導トレインして村の防備を壊滅させた。その賊たちに復讐するためなら、この身がどうなってもかまいません!!」


 「私は長くなるから最後でいいですよ。


  飢えに苦しむ村人が、狩りに野草の採取で何とか生きながらえようという時に。中途半端に傷つけられた“手負いのモンスター”を誰が逃が(トレイン)したのか。

  ゆっくりと、この魔術道具アイテムで調べさせてもらいます」


 それぞれの用件を告げる、男娼・娼婦(やくしゃ)たち。その無機質な表情に、受付嬢の誰何すいかする声は沈黙する。そうしてサヘル様とマリーデ以外の誰もが後ずさり、顔を隠そうと無駄な努力をする。



 そんな中でマリーデはようやく『塩』を傷口に塗り込んだ。


 「依頼を出すなら順番に落ち着いてしなさい。そこの受付嬢が担当してくれるわよ」


 「ッ!!・・・;*:!?」


 「私は命がけの冒険に見合った報酬について、そこの陰で“観覧”している財政担当ギルマスと話あいをしてくる。それまで〈サイード〉様は臆病モノが逃げ出さないよう、見張っていてください」


 「「「「「「「「「「・・・・・ッ!」」」」」」」」」」


 「承知した」


 「もっとも万が一にも逃げ出したら。


  そうですね・・・〔オンナにモテたいと口では言いつつ。実際は“暴行亜人”の被害で苦界に沈む女と遊びたい。そういう他人の不幸で性欲を満たすゴロツキがいる〕


  そんなオハナシを歓楽街まちじゅうに広めましょう(当然、冒険者全員の連帯責任で)」


 『言い過ぎだマリーデ!もう冒険者たちの心は折れている!』


 〈表裏の社会から抹殺する〉という宣告に、サヘル様から『秘匿会話フォトンワード』で制止が入る。

 そこでマリーデはようやく支部長ギルドマスターとオハナシ合いをするために、部屋へと向かった。

 『ムジナ』の妖術媒体は下品極まりなく、今なら放送禁止になること間違いなし。ですが問題はそんな妖術を〔誰が、思いついたか?〕…ということです。


 推測するに『ムジナ』の原型となったモノが相当、嫌われていた。被害者が恨みをこめて『ムジナ』を“汚らわしい”存在におとしめたためと妄想します。

 『ぬらりひょん』なら悪のカリスマ、バ〇キンマン的な地位を得ていますが。『ムジナ』にそれはあり得ません。“不潔”“変態”のわいせつ物を被り、煙草で“急所”を火傷やけどさせられた無様の極みです。


 略奪暴行が当たり前だった、戦国時代の悪習が色濃く残っている。軍団ぐるみで“人身売買”をやらかしていたことから推測すると。『ムジナ』の原型は口に出すのもはばかられる、色欲・暴行関連の“外道ケダモノ”だと愚考します。


 願わくば、私の妄言が見当違いであることを望み。昭和以後のひょうきん『ムジナ』と“コレ”は全くの別物だと断言します。

そう考えると検索で“わいせつ物”が末梢されたのは、適切な処置と言えるでしょう。

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