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11.亜種バーサーカー

「なんだとっ!その話が本当なら」


「うん。最初から偽のバーサーカーだってわかってたよ。ボクはカオスなヴァルキリーだからね。

エインヘリヤルの部隊や猛将と戦ったことも一度や二度じゃない。身体強化か他の術式による増強なのか。その区別ぐらいつくよ」


人間にとってバーサーカーは珍しい戦士の怪物だ。狂人がまっとうな人間たちの間で暮らせるはずがないし、暴走の危険がつきまとう暴力モノなど闇の組織でも持て余してしまう。ベルセルクは強力な呪縛でもなければ人が使役出来ない獣なのだ。


「だからバーサーカーに化けるというのは面白いアイデアだと思うよ。威圧に便利だし。

  良からぬ研究や呪法の使い手がいるかもしれないと警戒する人も少なくないかな?


  だけど相性が悪かったね。変装タイプのまやかしはボクには通じないよ」


「ずっとアンタたちの手の平の上だったってことかよ」


 無力感に苛まれるバルム。それに対してイリスはフォローの言葉を絞り出す。


「そんなことないよ。ボクの知らないタイプの狂戦士っていう可能性はゼロじゃないし。

  自爆同然に精神汚染の咆哮を叫ぶ。あるいは必殺の型を放つ時だけリミッターを外す亜種バーサーカーじゃないかって警戒していたよ」


「ソウナンデスカ」


 そんな危険極まりない怪物と戦ってきた戦姫にとって、バルムたちの攻撃など児戯にも等しかっただろう。ドラゴンスレイヤーに挑むトカゲ3匹。イリスたちにとって今までの戦いはその程度の認識であるかもあやしい。


 だが隔絶した実力差があっても、バルムは己の任務をまっとうする必要があった。この悪徳の都ウァーテルで仮初めでも平穏を得る。そのためにはリスク・代償がつきまとい。

 敵前逃亡など論外だった。


 悪徳の都ウァーテル。闇の組織と各国の欲望が渦巻く、この巨大都市を偽善者どもは無法都市などとののしる。

 しかしそれは誤りだ。暴力と謀をふるえるのは強者の特権であり。弱者はもちろん中層階級の者たちは強者の定めたルールに従って生きていく。


 1)ボスに利益を納める

 2)ボスと幹部の仕事を妨げない

 3)ボスと幹部と強者の機嫌を損ねない


 これら3つの絶対的なルールを弱者は厳守しなければならない。よってバルムたちとカオスヴァルキリーの戦いの形勢が決まったところで、数名の見物人は本業に戻っていく。


 ある者は現状の報告に。ある者は戦いの監視を継続して。

 そしてあるモノは人質であるバルムの家族を制裁するため、駆け出した。バルムのようなまともな戦士たちは、気位が高く金での契約を反故にすることが珍しくない。そんな偽善者たちはクスリで操るか恐怖で縛るのが、この町の流儀だ。


 よって敗色の濃い駒の家族は迅速に処分する。それが悪徳都市ウァーテルの流儀だった。

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