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1.プロローグ~ウァーテルの門

 こちらがカオス・ヴァルキリーの舞台となります。タワーディフェンスならぬシティーディフェンス。チートはありますが甘い話はありません。

 彼女たちは人間ではありませんが、魔族とも異なります。そのためいきなり[人間の都市を支配]しているというのは無理がある・・・ということで[人間の都市を侵略]から始めました。

 ウァーテルという都市がある。大陸の玄関口であり、島国と言うには強大すぎる海洋帝国との最前線。あるいは海洋帝国が大陸に侵攻するための橋頭保というべきか。さらには北のヴァイキングと南の奴隷船団が狩場と見定めている大商業都市。それがウァーテルという呪われた都市だ。


 かつては貿易港として栄華を極めた都市も、今では昔の話であり。

 国家も含めた各勢力の“侵略”“暗闘”によって、都市は血で血を洗う地獄と化した。あげくに超巨大モンスター怪霧ダスターの出現により航路は寸断され、海魔までもが侵略の機をうかがう。〔力こそが正義〕という論理がまかりとおる。それがウァーテルという悪徳都市だ。

 

 「へえ、ここがウァーテルか。ずいぶん澱んだ空気の町だね」


 「海上に居座る巨大な怪霧のせいでしょう・・・と、言いたいところですが。性懲りもなく不毛な殺し合いを続ける、クズどもの吐く息が澱んでいるためでございます」


 そんな悪徳都市の正門に二人の女性が訪れた。旅用のフードで一応、顔は隠しているものの。

 その言動に緊張感はなく本気で性別を偽る気はない。それは犯罪都市の二つ名すら生ぬるいウァーテルの町において自殺行為に等しかった。

 そんな愚か者二人の暴言を門番たちが聞き逃すはずもなく。


 「オイ、貴様等・・・」


 「こんにちは。門番さん。私はイリスと申します。すみませんが町を治める太守様にお目通りを願いたいのですが。太守館にはどう行けばよいのでしょう?」


 「・・・・・・・・・・・ハイ!?」


 しかし次に発されたセリフによって誰何すいかの声がけは断ち切られる。

 太守の親族、もしくは使者。いづれにしても要人なら先触れを出し、権力者のところへ御案内しなければならない。

 そう考えた門番の思考を甲高い声が遮った。


 「マスター!ウァーテルの太守にお会いなさるのですか!?予定では・・・」


 そう告げた女は黒髪の美女だった。主にならって下げたフードから現れた肌は白磁のそれで目鼻立ちは高級娼婦すら遠く及ばない。そんな美女が憂いを帯びた視線を向けてくるのは眼福であり。


 「いいじゃない、扇奈。ボクたちは魔族ではないし、ましてや山賊の類でもないんだよ。まずは話あ、コホンまっとうで平和的な外交をしないと」


 そう告げるマスターとやらは可愛い女性だった。短く切りそろえた金髪は男装のつもりなのだろうか。〔ボク〕というセリフは背伸びしているようで、子供っぽく聞こえる。身長からして成人したかどうかは微妙なところ。だが大人の世界のことがわかっていない世間知らずであることは確定だ。


 「マスターがそう仰るのなら従います。門番!名は何と言う?」


 「バルムだが」


 「ではバルムよ。速やかにマスターを太守のもとに案内せよ。このようなところでマスターに時間を浪費させるな。急げっ!!」


 そう告げる黒髪の女にバルムは思わず従いそうになる。だが自分の職務を思い出して、かろうじて踏みとどまった。


 「嬢ちゃんたちよ。太守様にお会いしたいなら紹介状はあるのか?なければそれを持って後日来な」


 そしてできれば『二度と来るな』とバルムは念じる。ここは悪夢の略奪都市ウァーテル。多少武装して戦いを経験していても、小娘二人が来ていい場所ではない。餓えたケダモノ以下の住人たちに容赦、情けの類は期待できないからだ。


 そんなバルムの心情を知らぬげに、イリスという娘は攻撃魔法に等しいものを放つ。


 「バルムさん。紹介状はないけど書状はあるよ。ほら、これ。これを渡しに行きたいんだけど」


 【宣戦布告】


 そう書かれた書状の文字をバルムはかろうじて読めた。没落して門番などを務めているものの、かつてはそれなりの教育を受けていた身分であり。宣戦布告ソレが冗談や知恵遅れを理由に出して、許されるものではないことを知っていた。


 「ほう、それじゃあ嬢ちゃんたちはこの町を燃やしにきたのか」


 「そんなことするわけないじゃない。ヒトの山賊集団じゃあるまいし。ボクはただ無駄に浪費されている富を循環させたい。“力こそ正義”なんて言う弱虫からこの町を奪イッ」


 「それが町を破壊して燃やすことなんだよっ‼」


 そう告げてバルムは持っていたハルバートを振り回す。だが長柄武器は空をきるばかりで、生意気な小娘イリスにかすりもしない。


 「あ~。ごめんごめん。ヒトの戦争、都市攻略だと略奪放火がセットになるのか。だけどボクは戦闘民族のカオスウァルキリー。山賊と同レベルのことなんて、土下座で頼まれてもしないよ」


 「信じられるかっ‼」


 そう言いつつもバルムが判断を下せる時間は終わろうとしていた。理由の半分はハルバートを振り回す腕がそろそろ重くなってきたため。そしてもう半分は同僚とゲスな上司たちが騒ぎを聞きつけてやって来たため。


 “奴隷狩り”という本業・・を行うために、犠牲者エモノを補足したためだ。


 

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