2-7.立ち上がれ
恋愛ゲームって普通、いつまでに意中の相手と両想いになること、とか。アクションありのものならば、一緒に悪を撃ち取って世界に平和をもたらし、ちゃっかりヒーローと両想い♪
とか、異世界側からなんらかの明確な目標が提示されるか、選択アイコンがでてきて主人公が決定したりするのでは?
もしくは、主人公が勝手にしゃべって目標が定まる。
……まぁ、今はその役目が私なわけだ。
ゲームのようであってゲームの世界ではないこの異世界では、シナリオなんて最初から用意されているはずはなく、すべて自分の意思で決定していかなければいけない。
神様たちを助けたいという気持ちは、すでに私の中に芽生えている。
でも……怖い。
これは、今まで自分の気持ちをはっきり言えず、おどおどしてばかりで、友達と関わってこなかったせいかもしれない。
自分の意見を言うことで、バカにされたり笑われたり、嫌われたりしたらどうしよう。
怖くて、いつもなにも言えなかった。
……そんな自分を変えたいと思って、高校デビューを目指したんだ。
髪はおろして、スカートは短くして。まず教室に入ったら、近くの女子生徒に明るく元気に"おはよう!"と声をかけようと決意していた。
友達ができて、放課後には憧れの寄り道をして。
あぁ〜私服で遊びに行くのもしたかったな。
服を見に行ったり、プリクラ撮ったり、おしゃれなカフェに行ってSNS映えするごはんの写真撮ったり、みんなでシェアして食べて美味しいって言い合ったり。
やりたいこと、頑張りたいことはたくさんあった。
……いや、過去形じゃない。
高校じゃなくて異世界だけど、女の子の友達じゃなくて神様だけど、今私が存在していることは変わらない。
変わるって、決めたんじゃないか。
私は決意を新たに、椅子からスッと立ち上がった。
急に立ち上がった私に、神様たちの不思議そうな視線が集まる。
「決めました、私、異世界デビューします」
「でびゅー?」
「はい、私、ここで"おにぎりカフェ"を開きます!」