2-6.妄想癖
謝っても、胸ぐらを掴む手を離さないでいると、「ヴァン」と一声、エミユが発した。
穏やかなようでいて芯の通った声音に、ヴァンはパッと手を離した。
謝ってきてくれたのは、エミユだった。
「ごめんね、あかねちゃん。ヴァンは口も悪いけど、手も悪いんだ。後で、僕がきつ〜くお仕置きしておくから、許してね♪」
お仕置き?
超絶イケメンの青年が、二人きりでお仕置きタイムとなると……まさか、あんなことやこんなことや?!
いや、それは未だ手を出したことのないゲームのジャンルなんで、私には刺激が強いですっ!!
「私なら、大丈夫ですので……っ!どうか、お手柔らかに!」
「ん?あかねちゃん、どんなお仕置き想像したの?」
顔を真っ赤にしているであろう私を見て、エミユは楽しそうに笑った。
……どんな想像したか、この人にはばれているような気がする。
この人はあれだ、恋愛ゲームでいう"温厚そうに見えて実は腹黒タイプ"な人だ。
攻略が難しい感じの。て、いや、攻略しようとしてどうする!
私は友達もできたことなければ、男子ともうまく話せないし、彼氏なんていたこともないし!
まぁ、恋愛ゲームはたくさんプレイしてクリアしてきたけど、あれはあくまでゲームの世界であって…………
でも、私は今、現実に異世界に召喚されてここに存在しているわけで……。
いやいや、一体私は何をしに来たんだ。来たんじゃなくて、呼ばれたんだけど。
「……っで!私はなんでこの世界に召喚されたんですか?!」
エミユの視線から逃れるように、無理やり話を本題に戻し、勢いよくルイのほうに顔を向けた。
ルイは少し驚きながらも、話を進めてくれた。
「あ、はい。あかねを召喚した理由なのですが、私たちが消えてしまわないように、知恵をお貸しいただき、協力してもらいたいのです」
「その知恵って、どんな?」
「それをこれから、あなたに考えてもらいたいのですが」
「……協力って?」
「それもあなたがだした知恵の元に、なにかしら協力していただきたいのです」
「…………」
まさかの具体的課題なしっ!!!