2-5.問題
女子生徒のみならず、男子生徒ともうまく話せずおどおどしっぱなしの私だって、男性が嫌いなわけじゃない。ちょっと恐いと思うけど。
ゲームのような恋愛に憧れていた。
故に今私は、イケメンな神様たちに囲まれて、不安や恐怖という感情より、ドキドキやワクワクとした感情のほうが勝っている。
これは、高校デビューより、すごいデビューをしたのではないか!
となると、これからどんな課題を言い渡されるのかが問題だ。
『魔王を一緒に倒そう!』なんてのは無理だけど。
「私たちの世界、この"ディユマ"は、人間と神が共存する世界です。人間は私たち神に日々感謝して過ごし、神もまたそんな人間を愛し、感謝しています。……ですが最近、我々米の七ノ神は、危機に陥っています」
「……危機?」
聞き返すと、ルイの栗のように丸くて愛らしい瞳が、哀しみに揺れた。
「……先程話した、米の言い伝えに話は戻るのですが、いつしか人々はそれを語り継ぐことなく、米をあまり食さなくすらなってしまったのです」
「私も七ノ神の話は聞いたことないけど、米は日本では主食だし、毎日食べてるけどな……」
そう言うと、少しばかりルイの表情に笑みが戻る。
見た目とは違い、とても大人びた口調の子だけど、やはりその愛らしい小さな身体には、笑顔がよく似合う。
「そうですか、あかねは毎日米を食してくれているのですね。ありがとうございます。やはり、あかねを召喚してよかったです。ねぇ、ヴァン?」
そう言って、ルイが笑顔をヴァンに向けると、彼は「……フンッ」と小さく鼻を鳴らした。
バカではないと、わかってくれたと思っていいのだろうか?
それ以上なにも口にしないヴァンから視線を戻し、ルイが「フフッ♪」と笑ったので、そう思うことにしよう。
「私たち神は、人間から感謝されなくなったり、存在を忘れられたりしてしまうと、とても弱い存在になるか、存在すら消えてしまいます。ディユマでは、米の消費量が減って米の恵みに感謝しない人々が増えたことで、私たち七ノ神は危機感を抱いているのです」
「……このままだと、俺たちは消えてなくなってしまう」
ポツリと、フラムが言った。
「そんな……っ、神様が消えてなくなるだなんてっ」
「起こり得ることなのです」
「…………」
こういう相手が悲しい状況のときに、なんて言ったらいいのかわからない。
沈黙が流れる。
それを最初に破ったのは、フラムだった。
「それを回避するために、あかねを召喚したんだろ、ルイ」
「あぁ、そうですね。すみません、なかなか本題に入らなくて」
「いえ、ゲームの導入部分が長くて眠くなるのは結構あるので」
「ゲーム?どう、にゅう?」
ルイは、きょとんとした顔で小首をかしげた。
しまった!
私は慌てて訂正しようと、両手を要らなく胸元でわちゃわちゃさせる。
「あ、いやっ!えと、ちがくてっ、きゃっ……!」
いつの間にか側まで来ていたヴァンが、慌てる私の胸ぐらをぐっと掴んで引き寄せた。
「おい、てめぇ、寝てんじゃねえぞ」
「ねねね、寝てないですっ!ごめんなさいぃ〜……っ!」
かっこいい顔面が鼻が擦れるんじゃないかというほど、近くにある。
だけど、かっこいいと思う余裕はない。ヴァンは苛立ち露に、眉間にシワを深く刻んでいた。
(恐い〜っ!)