2-2.やっぱり供物か?
その影は、私をおじさんの手から守るようにして、身体を抱き締めていた。
頭の上から、男の人の声がする。
「こいつは、俺らが召喚した」
「……風の神!」
辺りに、私が現れたときとはまた違うざわつきが生まれる。
風の神、そう呼ばれたこの人の影響だろうか?
恐る恐る顔を上げてみると、間近にものすごいイケメンの青年の顔があった。
なんて綺麗な、若草色の髪。
アシンメトリーになったサイドの髪が風に揺れる。
現実ではあり得ない髪色だけど、そこいらにいる人たちより圧倒的に美青年のこの人、はたまた神ならあり得る。
この髪色も、かっこよさも。
風の神……そう呼ばれていた。てことは、本当にここは異世界なの?
質問したいのに、あまりのかっこよさにドキドキして言葉がでない。
「あなたがた神が召喚したということは、やっぱりそいつは供物じゃないんですかい?」
おじさんはさっきまでとは違い、声に緊張感を持たせて問う。
すると、風の神は切れ長の瞳を細め、眉間にシワを寄せて言った。
「違うっつってんだろ、バカ。こいつはな、俺たち七ノ神が召喚した召し使いだ!」
「……え、召し使い?」
私は目を丸くして、未だ抱かれた腕の中で、思わず聞き返してしまった。
「それ、供物と変わんなくね?」というおじさんの意見もごもっともである。
さぞこれが正解であるとでも言うように、風の神の表情は決まっていた。
その傍らから、スッと別の男性が現れる。
「ヴァン、せっかく召喚して来ていただいた女性に向かって、召し使いだなんて失礼だよ」
現れた男性は、これまた超がつくほどの美青年で、透き通った海のような髪色をしている。
私のほうを見て、その人が少し頭を左に傾げながら優しく微笑むと、肩につくかつかないかで揃えられた髪が、綺麗にサラッと流れた。
「怖い思いさせてごめんね。ちゃんと説明するから、僕たちに着いてきてくれるかな?」
その微笑みに、私は「はい」と言うしかなかった。