第61話
「もっとも全財産と言っても、今身につけているものとギルドに預けているものだけだがな。
さすがにどこの宿に泊まっているかまで調べての差し押さえまではできかねる。」
ごもっともなお話しで。
「衛兵は既に詰め所に連絡をしてあるからもうすぐに来るだろう。
まあ多分だが街からの追放・以後立ち入り禁止くらいの措置になる。
まあ前科モンなわけだから、以後襲われて返り討ちにしても法的には君が絶対有利だ。」
うーん。
強盗で江戸処払いってとこか。
市中引きまわしや遠島や獄門になるには殺人くらいは犯さないといけないのか、それとも単なる厄介払いで簡単に済ませるのか。
「まあほぼ俺の要求は満たしていますね。」
「コヤツのギルド預金は、50万ゴルほどあったから既に君の口座を作って、そちらに移しておいた。
装備品とかはどうするのだ?」
いつの間にかネコ耳ギルド職員さん(おっさん)がギャン氏をひん剥いていた。
パンツまで。
容赦ないな。
つか微妙にうれしそうにしているのが怖い。
まさかそっちの世界の住人がこの異世界にもいるのだろうか。
深く考えたらいけない気がするので無理やりに意識をコッチ側に持ってくる。
「人の装備なんて俺にはフィットしないだろうから下取りしてくれるとうれしいんですけど。」
一点ものや高価なものならともかく、出来合いの装備品なんて中古を使う意味はないと思う。
金がないならともかく、多少は持っている。
「では、ギルドで訓練用にでもするか。」
支部長が上着の内ポケットから金貨を10枚出して俺の前に置く。
手に取るとほのかに暖かい。
「鍛冶屋や武具店に出せばもう少しするかもしれんが、こんなもんでどうであろう?」
ぬくもりはプライスレスなんですね?
「はい。面倒なことは嫌いなんでオッケーです。」
用件は全部済んだし、いいかげんに予定していたことをしてしまいたい。
「じゃあ俺たちはこれから常時討伐依頼のでてるのを狩りに行くんで、もういいですかね。」
「うむ。時間をとらせてすまなかったな。
コヤツはきっちり引き渡しておくから安心していってらっしゃい。」
こうしてようやく俺たちは『おはなし』をするために街を出ることができた。
南門から街をでて、てくてくと近くの森へ向けて歩く。
北の森は、この間ヒャッハーしちゃったから獲物が少ないと思ったので反対側にしてみた。
歩きながらルールについて話し合う。
すでに決めてある
物理的に俺に怪我をさせない
俺の物理的財産を奪わない
それ以外は奴隷になる前と同じ
俺から逃げない
欲しい物、してほしい事、またその逆は正直に言う
の他に、
俺が秘密にしてと言ったことは他の人に知られないようにする
俺の命よりの自分の命を守ることを優先
を加えたところで、今日初の魔物の気配を捉えた。
「真南500メートルに3匹。たぶんオーク。
南東500メートルに2匹。たぶんモノコーンラビット。
どっちにする?」
とりあえず奴隷娘の実力を見たいのと、俺の実力を見てもらいたいので今日も狩りをするのだ。
奴隷娘の防具代金も稼がんといかんし、まあぶっちゃけ貧乏は嫌なんだ。
ヒャッハーする所存である。
少し怪訝そうな表情を浮かべながら、
「久しぶりの戦闘ですので、モノコーンラビットでお願いします。」
との答えが返ってくる。
うん、慎重派だね。
「わかった。やばくなるまでは俺は手を出さないから、とりあえず実力がどんなもんか見せてね。」
奴隷娘は、少し緊張したように買ったばかりの革鎧と短剣、それに俺が魔改造してあった短弓をチェックしながら頷く。
「そういえば、なんて呼べばいい?」
ずっと奴隷娘と(心の中で)呼んでいたが、声をかけようとして少し困っていたのだ。
「ミカエラと及びください。」
うーんまだ反応が硬いなあ。
「じゃあ、『ミカ』『ミラ』『カエラ』『シューマッハ』『天使ちゃん』から選んでみようか?」
あれ? なんでジト目?
こっちは女の子と話すのなんか慣れてないんだから、硬い反応をされると緊張してこっちも離せなくなっちゃうじゃない。
軽いギャグというか、突っ込み待ちのボケですよ。
「ではミカでお願いします。天使ちゃんだけは断固拒否します。」
「オッケー、マイスイートエンジェル」
あれでしょ?
『押すなよ。絶対に押すなよ』ってやつ。
違うの?
あれ?俺間違った?
「コホン。
おふざけはこれくらいにしてと。
では、狩猟開始~。」




