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「今日はどちらに宿を取られますの?」
お嬢さんが聞いてくる。
宿をとることは前提なんだ?
確かに今はお昼頃、となれば今からわざわざ街の外に出て野宿をするような奴は居ないんだろう。
「まだ街に着いたばかりでなにも決まっていませんけど。」
うん。
とりあえず先立つもの(お金)ができただけで、短期的長期的によらずまだ何にも決まっていない。
「よろしければ当商会御用達の宿を取られてはいかがでしょうか?
私どもの紹介があれば割引されますし、他の宿よりも良い食事ができるはずですよ。」
ありがたいお誘いではある。
うーん。
街の有力商会の紹介があればボッタクられるようなことはないだろうし少しは安心かな。
この街を散策するにしても宿を決めてからの方がなにかと安心かもしれない。
置くほどの荷物は無い。というか全部亜空倉庫に入っているから持っているもの自体が無い。
でも、日本でさえもド田舎では、夜6時を過ぎると人っ子一人歩いてないとか店が開いてないとかあったし。
お昼に宿にチェックインして散策。
そうした方が良い気がする。
「それじゃあ、紹介してもらえますか。」
そう言うとお嬢さんは嬉しそうに一軒の宿屋に俺の手を取って歩き出す。
「この方はババンガ商会の大事なお客様です。
よ・ろ・し・く・お願いしますね」
とある一軒の宿屋とおぼしき建物に入ると、受付らしきおばちゃんに俺のチェックインが伝えられる。
まだ俺はここで良いとか言ってないんだけど、決定されたようだ。
「夕食付で一泊3千5百ゴル。
夕無し、朝食付きで3千ゴル。
夕・朝食付きなら4千ゴルになりますが、よろしいですか?」
おそらく1ゴル1円というさっきの情報によるとお得な感じがする。
朝食が5百ゴル、夕食が千ゴル、宿泊料が2千5百ゴルってことか。
まあどんな食事が出てくるかはわからないけれど、一泊数万ゴルや逆に数百ゴルでは不安だ。
高価なら高価なりに、ぼられてる感が。
低価なら低価で、治安的に。
普通が一番安心な気がする。
「素泊まりなら2千5百ってことですか?
それならまず朝夕の食事付きで。
明日は他での食事もしてみたいんで素泊まりの合計2泊お願いします。
あと延泊ってできるんですよね?」
一度家族で行った地方の温泉旅行。
そこで出てきた食事には心底幻滅した。
これでウン千円分?
それなら他所で食べたほうがよっぽどいいわ。
そんな記憶があった。
すぐに追い出されないように延泊もほのめかしておく。
「はい。食事は1階の食堂で朝食なら前日の夜まで。
夕食なら夕方までに申し込んでもらったら朝食5百ゴル、夕食千ゴルで提供します。
冒険者の方などへの昼弁当は5百ゴルで受け付けてます。
注文は前日夜までになりますけどね。」
「ちなみに紹介がなかったらどうなります?」
「宿泊料が5千ゴルになりますね」
2千5百ゴルも上がるらしい。
つか倍か。
ババンガ商会って侮れないな。
よっぽどこの宿屋に貢献してるか裏でなんかやり取りがあるのか。
いろいろ落ち着いて考えたいこともある。
今後の行動方針も決めなきゃいけない。
何をするにしても物資の調達も必要だろう。
とりあえず今日は散策。
で一泊して、明日は物資調達やら準備。
で一泊して、明後日から何らかの行動開始。
先立つものはある程度、どころか結構あるからそれでいいんじゃないかな。
とりあえず手持ちの金貨1枚(1万ゴル)を払い、おつりに銀貨3枚、銅貨5枚を貰い、案内されて2階の部屋に入る。
おつりは3千5百ゴルになるはずだから、
金貨 10000ゴル
銀貨 1000ゴル
銅貨 100ゴル
ってことだな。
「こちらの部屋になります。
外へ行く時には必ず鍵をかけてください。
夜寝るときには閂もありますのでかけることをお勧めします。」
鍵に閂って。
意外と物騒?治安が悪い?
「泥棒とかでるんですか?」
「責任の所在の問題ですね。
たまに盗みに入られたとイチャモンをつけてくるお客様もいますので。」
もっともな話だ。
まあ亜空倉庫がある俺には関係のない話ではあるが。
「わかりました。
今からすぐ外出しますけど鍵はどうすればいいですか?」
「カウンターでお預かりします。
あとはお湯とカンテラはそれぞれ百ゴルになりますのでお声かけください。」
どうやらお風呂は無いようだ。




