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「ツノツナが52匹で1千万ゴルになります。
キロ単価1万ゴルで計算させていただきました。」
ジト目職員さんが査定の結果を教えてくれる。
亜空倉庫の中にはまだ200匹残っている。
亜空倉庫は時間の流れも制御できるみたいだから生鮮品だけは時間経過無しに設定しておいてある。
ワインなんかを仕入れて加速して寝かすのも良いかもしれない。
とりあえず金銭感覚が一切ないのでお試しで端数を売ることにしたのだ。
たしか船の上で「卸値が1kgで1万ゴル」と言っていたが本当のようだった。
「それで結構です。
そういえばこの街の物価ってどんなもんなんでしょう?
ごくこく普通の人の衣服一式に食事一食と普通の宿一泊素泊まりの金額、それに日雇い労働者の一日の平均賃金なんかを教えていただけますか?」
収入はあったし後は物価がどんなものかによってどれだけ暮らせるかわかるだろう。
でも何を基準にするかによって変わってくるから油断はできない。
日本で「物価の優等生」と言われていた卵みたいな何十年も値段がほぼ変わらないものと土地や美術品とでは比べる意味がないだろう。
基本である衣食住で比べるのが正解だろう。
他所から初めて来た商人がその町の物価、経済状況なんかを知りたがるのは普通のはずだ。
怪しまれたりもしないだろう。
「そうですね。 服が今私が着ている上下で1万ゴル、ギルド近くの食堂のランチで5百ゴル、同じくギルド近くの宿屋の一泊が4千ゴルと言ったところでしょうか?
賃金は確か、冒険者ギルドの常時依頼で街の防御壁の作業員で一日7千ゴル位だったと思いますよ。」
ふんふん、この基準だと1ゴル1円ってところかな?
女ものの服の値段なんてわかんないけど、シャツ2千円+上着5千円+ズボン3千円なら日本でもありそうだし、ランチ5百円、素泊まり4千円ならまあよくあるんじゃないかな?
肉体労働の7千円はちょっと安い気がしないでもないけど、労働力が余っているなら安くなるんだろうし。
「なるほど。
では、この街の特産品と逆に売れそうな不足していそうなものってありますか?」
「特産品は海に面していることから魚介類と塩ですね。
魚介類は種類によって値段はまちまちですが、塩は安定してキロ単価二千ゴルといったところで売られています。
売れ筋というか他所から輸入しているのはいっぱいありますよ。
食品関係で言えば、塩以外の調味料全般。特に砂糖は高値でキロ単価2百万ゴル位でしょうか。
『同じ重さの大金貨を詰め』なんて言われてます。
生活用品で言えば、魔力石にドワーフが作った鍛冶製品。
嗜好品で言えば、お酒。特にポランド産の炎酒やゲルマ産の麦酒が良く売れているようです。
あとは奴隷ですかね?当たりの奴隷なら一人で何千万ゴルも利益がでますから。」
うん。引っかかる単語がいくつか出てきたぞ?
ポランド産の炎酒。
これってポーランド産のウオッカ?
ゲルマ産の麦酒。
これはドイツ(ジャーマン=ゲルマン≒ゲルマ)のビール?
そこまでは良い。
問題は、魔力石と奴隷だ。
「魔力石と奴隷についてもう少し詳しく教えていただけますか?」
「魔力石はご存知の通り魔道具の燃料として消耗されますので値崩れしません。魔力石の出本であるダンジョンも近くにはありませんので、比較的高値で安定して取引されています。
種類的には使い勝手の良い火と水の魔力石の方が風や土の魔力石の倍ほどの価格で流通しています。
無はその中間位でしょうか。
そのほかの希少種については、物が出ればその時に決まりますが、前回当ギルドで扱った光の魔力石は小指の爪程の小さなものでしたが5千万ゴルで販売されました。」
ふんふん。
いわゆるテンプレのモンスタードロップ品なのね。
火は料理や暖を取るため、水は船乗りとかが水を出すためってところか。
風は空調や帆船とかに使えそうだけど気づいてないのかな?
土は耕作や建築に使えないのかな?
無は・・・・何に使えるんだろう?謎だ。
光は、照明・・・ではないだろうな。それならそんなに高額になるはずがない。
おそらく回復系の何かに使うんだろう。
「奴隷については、当たりはずれが激しいですが、一芸に秀でた奴隷や見目麗しい奴隷は高値で取引されています。」
まず奴隷制があるのは解った。
使える人材の値段(給料)が高いのも道理だ。
「この街の奴隷商館でもやはり愛玩奴隷は高値ですし、戦闘奴隷も需要はありますのでそこそこの値は付きます。
種族や性別によっても値段が違いますし、売れる時期や売り先によっても求める条件が違うので、よっぽど資金力があるとかコネがあるとか才能が有るとかでないと商売にするのは難しいようです。」
そうじゃなくて。
別に奴隷商人になりたいわけではないのですよ。
「未熟者で奴隷について詳しくないのですけれども、今後護衛や従業員を増やす際に検討するためにも制度自体から教えていただけますか?」
ラノベで読んだ奴隷ハーレムの作り方について知りたいのですよ。
「この国では、自分を売るか犯罪を犯した者が罰として奴隷になります。
魔道具による契約で行動を縛りますので主人に逆らうことはできません。
奴隷の証として首輪がつけられます。隠すと重罪です。
モノとして見られますので、税金は購入時だけ必要となります。
宿などでも道具扱いですので料金はかかりません。
こんなところでしょうか?
詳しくは奴隷商館で聞かれた方が確実ですけど、ライバル参入と疑われるかもしれませんね。」
対応してくれた若い女性職員さんが普通に話してくれるのだから、この街(世界)では奴隷制度は普通のことなんだろう。
地球だって確か2、3百年前までは普通にあったって聞いたことあるし、ラノベでもテンプレだ。
「ちなみにこの街には初めて来たのですが、この街の法とかルールとか、できれば暗黙の了解的なものがあれば教えていただけますか?」
「基本的には『殺すな盗むな犯すな』ですが、状況次第ですね。
襲われたら相手を殺しても罪ではありません。
けれども先に武器を向けると難しいって感じですね。
あとは暗黙の了解については、それぞれの団体で違うので一概には言えませんね。
商業ギルドで言えば、
『契約は命より重い』とか、
『金がないのは首が無いのと同じだ』とか、
『先達者を敬え』とか、
『いつもニコニコ現金払い』とか、
『隣に同系統の店を出さない』とかですかね。」
などと話していると奥から中学生くらいの若い女の子が五センチ角位のカードを持ってきた。
「ギルド所属証明カードができました。
本拠地のギルドに年10万ゴルの納付が必要です。税金と加入金になりますね。
別な国に行くとそちらでも登録が必要になりますが越境の際の身分証明にはなります。」
カードを受け取り外に出ると、ジト目さんが両手を腰に当ててプンスカしながら待っていた。
「助けてくれなかったんですね?」
ご立腹のようだ。
「助けを呼びましたよ?」
一応無駄だとは思うが反論する。
女子って正論理論理屈で言っても通じないんだよな。
「あんなに強いのに助けてくれないんですね。」
ほら来た。
まず助けなきゃならない理由(義務)がないだろう。
逃げたわけじゃなくて助けも呼んだんだよ?
「強いからですよ。」
「なぜですか? 強いなら助けてくれてもいいじゃないですか」
あぁ解ってない。
世間ってそんな単純な物じゃないんだよ。
「実力は海で見たでしょ?
ただ手加減できるほど器用じゃないんで、街の一区画が無くなりますよ?
もちろんあなたも込みで。」
何しろ異世界に来たばかりで自分にどんな力があるのか、物理、魔法の両面でまだよくわかっていないのだ。
海の上では相手が魔物や海賊だったから全力で良かったけど、街で同じことやったらどうなるか誰にもわからない。
「・・・・助けを呼んでくれてありがとうございます。」




