どうすればいい…。
無理矢理襲撃者に連行されながらも、私は考える事を止めない。
不利な状況でも、思考を止めなければなんとかなるものだ。
再び布団を被り、眠る為にはどうすれば良いか。
ただ一つの事を考えていれば、解決策は必ず見つかる…筈だ。
「また下らない事を考えてますね?」
…エスパーか?
思念を読み取るなど、一般人に出来る事ではない。
もしや『組織』からの刺客!?
「下らない事を考えている時の顔をしてるので、すぐに分かりますよ?」
デスヨネー。
そう、襲撃者と私は結構付き合いが長い。
付き合いと言っても恋人ではない。
なにしろ、親と子供以上に年が離れているからな。
「保護者は私の方ですがね?放っておくと、いつまでも寝てるんですから…」
生物にとって、睡眠とは生きるために欠かせない物。
そう、私は誰よりも生きる為の活動に努めていると言っても過言ではない。
「だったら、せめて一日に一度は食事をとってください。そのうち死にますよ?」
大丈夫、憎まれっ子世にはばかると言う。
「その言葉の、何処が大丈夫という根拠になるのですか?」
つまり、誰かに迷惑をかけて嫌われている限りは死なないという事だろう?
「その言葉は、そういう意味ではなくてですね…そもそも、嫌ってませんし(ボソッ」
主人公特有の突発性難聴が。
もう一度言ってもらえないだろうか?
「はあ…こんな主人公がいてたまりますか」
ジト目でこちらを見る襲撃者。
この目を向けられると、何故かこちらが悪いような気がしてくる。
寝床から引きずり出された被害者は私だというのに…不思議だ。
「ほら、そろそろ着きますから立ち上がって下さい」
そう、掛け合いをしながらも私は変わらずドナドナされていたのだ。
私がシーツの代わりにくるまったバスタオルごと引きずられる形でな。
「着きましたよ、いい加減立ってください」
遂に襲撃者達のアジトに着いてしまったらしい。
禍々しいオーラと、複数の強い気配が扉越しにも感じられる。
私は恐ろしさのあまり、情報収集の為に出していた頭をバスタオルのなかに埋める。
「この後に及んで寝ようとしないでください!」
失礼な、恐ろしさ故に頭へ何かを被せたくなっただけの事。
その証拠に目を守るため目蓋も重く…。
そのまま、意識が闇に呑まれていく。
これは襲撃者による精神攻撃に違いない。
起きろと言った直後に睡眠魔法とは…鬼畜な奴め。
立ち上がれと言いながら膝を押さえつけるようなものだ。
これは抗いようがない。
おやすみなさい。
「今日は長く起きていた方ですね…まあ、仕方ありません。会議はいつも通り私達だけでやりましょう」