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圧倒的盾社会

 俺はギャンブラーなんだが残念なことに今日は闘技場で九連敗してた。

 仕方ないから来週の飯代全部を最終試合の大穴に賭けるとそいつは飛び込みの参加みたいで1つの闘技場に居着かずにあちこちで賞金を稼ごうとするフリーのグラディエーターらしかった。


「お前そんなやつに賭けんの? 相手は氷結大剣カルスだぜ?」

「うるさい黙れ。俺が思うにこっちのソウルとかいうやつの勝ちは絶対的だなソウルは片手剣だから素早いしカルスは魔法剣士のハンパモノだからその実は動きがにぶい格下狩りばかりで大したことない」


 俺の賭け札を見たギャンブラー仲間がからかってきたけど即座に反論した。


 カルスは両手剣を使いながら氷のつぶてを出す魔法で大剣特有のスキを補う攻守において活躍のある魔法剣士。

 過去戦績見ると今日までに十連勝してる。

 どこぞの貴族の三男が自分の名前を挙げるために闘技場に登録契約したこの街のエースグラディエーターだから安定した人気があるししかも金髪のイケメンだから女子からも人気があるしとカルスが勝ってほしいの思いがある者どもが多いからかオッズが悪い。

 しかしこのソウルとかいうやつは見た感じ筋肉隆々でフリーのグラディエーターというのは伊達ではないと感じるし片手剣と盾装備なのに野生のオオカミみたいな風貌してかなり強者の風格があったから初参戦でこの街最強と噂に名高いカルスとマッチさせることにした運営が感じただろう戦士の迫力とかは容易に想像できるしオッズは高いことになってる。

 ここは闘技場資金運用学的に考えてソウル買うべきなのは当然しょ?


 そうやって仲間を理論的な正論で黙らせるとそのうち試合が始まった。


 ソウルは開始直後にすばやく切り込みカルス得意の氷魔法を使う余裕をなくすべくガンガン攻める動きをカルスがあやうげなくガードする、というカルス戦でよく見る展開から始まったんだがソウルは連続した剣の打ち込みのさなか突如地に伏せるかの如き足払いを仕掛けた。突然の体術に反応がでなかったのかカルスは体勢を崩されるんだがしかし連続バックステップして距離を取り氷の魔法弾をいくつも浮かべると牽制で追撃防いでペースを自分のターンとろうとしてるみたいった。

 さあここからどうなる、と俺は注意深く見てるとそこで驚くべきことが起こった。


 なんとソウルは直撃の軌道の氷を盾で防ぎながら突撃したのである。


 これは氷の衝撃に耐える強靭な腕力と脚力それから盾への信頼がなければ不可能な行動だったから俺をはじめ観客は盛り上がった。氷を盾ガードしたやつらを今までも見たことあるけど実は何回か防ぐと氷の衝撃で体制が崩れる。そのスキをカルス本体にやられてきたからしかしソウルは体制を崩すどころがものともせず走りこむのは本当にすごいパワーであった。

 体制整わぬまま魔法唱えたせいか足が止まっているカルスを前ダッシュの勢いで盾タックルし蹴りいれるとさらに懐に入りこんで体術を決めるとカルスは倒された。

 ソウルの片手剣は動けば斬るといわんばかりに腰だめに構えたままだ。

 一目見てソウル側の勝ちは疑いようがないのだが更にそこで驚くべき展開となる。なんとソウルは仕切り直しに距離をとりカルスが起き上がるのを待ったのである!


「どうした! テメェの実力はこんなもんじゃねーだろ! かかってこいよ!」


 と叫ぶソウルの言葉に俺は気づいた不意打ちとか奇襲とかでたまたま運よく勝っただけと言い訳させないよう誰が見ても圧倒的実力差があることを証明するためしょぼい勝ちを捨てて圧勝をとりにいったのだ。

 大金を賭けている俺はそんなことせずに勝っといてくれと思わずにはいられないがしかし同時に今まで見たことがない真の戦士の戦いっぷりが見れるのかもしれないと興奮するのは当然のことだった。


「……余裕の、つもりか……後悔させてやる!」


 カルスはふらつきながらも起き上がり両手剣を構え叫んだ。

 ソウルは今度はカルスの攻めが始まるまで待つ気みたいだったカルスは呼吸を整え氷の塊をあちこちに浮かせてから攻めかかる。ソウルは盾で両手剣攻撃をいなしつつ奇襲してくる氷は剣で撃退、そして時には剣と盾の役割が逆転している防御力の高さに騒がしかった観客席はソウルの動きを目に焼き付けたいのか少しずつ静かになっていった。

 いろんな攻撃方法でカルスは攻めるがソウルの盾を崩すことはできなかった戦いの素人目からみても実力差は明らかだしギャンブラーの感性でもソウルの勝利に確信があるのだがそれよりも印象に残るのは盾とはこれほどまでに強かったのかということだった。


 俺は自分で戦わない観戦者側の意見だけど剣闘というと剣と剣をガンガンぶつけてバランス崩したほうが最悪の場合死ぬような目に合うものと思ってたけど今までみてきた剣闘はなんだったのかというぐらいソウルの盾技術は両手剣相手でも安定感あるしこれはそう『受けの美学』と呼ぶべきだろう俺がいま名づけた名付け親なんだが一方的に打ち倒したり攻め勝つのでなく受けて勝つ素晴らしさを感じたよ。

 長い打ち込みの末、やがてカルスは両手剣を手放しいっそすがすがしい声で観客席中に聞こえるようこういった。


「御見それしました。私の負けです」


 その降参に観客は今日最高の盛り上がりを見せた。剣闘士の降参というのは相手に殺されても文句言えない単純な負けより屈辱的行為なのだが素晴らしい手数の攻めを見せたカルスとそのすべてを防ぎ切ったソウルの試合に文句をつける無粋はいなかった。

 しかし当のソウルはなんかつまらなそうに降参を受け入れると賭けは俺の勝ちなんだが遠目で見た感じ暴れたりない闘牛のように筋肉がいきり立っていた。


 俺はにこやかな笑顔で相当な倍率になってた賭け札を換金し仲間を引き連れて俺のおごりでみんなで飲みに行った。しばらくこの話題で盛り上がれそうだけどソウルは流れものらしいからあまりこの街では満足なさそうだし実力的にこの街には留まらぬだろう再びの活躍は見れないかもしれないかと思うと残念だった。

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