62回目 ランブルハイネスの転生者
アニメ「ランブルハイネス」で推しキャラのヒロイン「リィタ」の活躍を見るのだけが生きがいだったサラリーマン佐藤富士夫は、リィタが途中で死に、
それでも最終回までには生き返ると信じて視聴し続けた結果結局死にっぱなし、
制作者もSNSでリィタの復活は今後の展開でもあり得ないと断言し、失意のままコンビニに買い物に向かいトラックに跳ねられて死亡してしまう。
声なき声が彼に問う、君が生まれ変わるならどういう自分になりたいか。
富士夫は言う「大切な人を守れる人になりたい」
気が付くと彼は異世界で赤ん坊として人生をやり直すことになっていた。
富士夫は自分の記憶とその世界の状況が符合することに気づき、
その世界がランブルハイネスの中の世界であること、そして本編の舞台になる過去の時系列であり、
自分は登場人物の一人「ラウド」であり、リィタの死亡フラグに深くかかわる存在である事から、
自分がなんとかすればリィタを死の運命から救えるかもしれない事に気づく。
ラウドはリィタに会うためにアニメの設定と大きく変わらないように注意しながら成長し、ついに物語本編開始の時を迎えた。
リィタの死亡フラグを少しでも減らすために暗躍するラウドに釘をさす少女がいた。
彼女はアニメでラウドの恋仲になる少女「ケイ」
実は彼女も富士夫と同じく転生してきた人間でありランブルハイネスのハードコアファンであった。
彼女もケイを演じていたが演技に穴のあるラウドを疑い、
ラウドの本来のロールにはない死ぬ予定のリィタを救うためのフラグ立てを行う様子を目撃されて転生者であると見抜かれる。
ケイはラウドのファンであり、彼と恋仲になれるケイに転生できたことを心から喜んで生きてきた、中身が転生者の富士夫であることを知るまでは。
ケイはあまりにもラウドとかけ離れた人間性の富士夫に心から失望しながらも、
富士夫にラウドらしいキャラになって貰うため、彼からの協力の申し出をしぶしぶ引き受けることに。
ランブルハイネスの硬派ファンのケイの助けを借りながらラウドは自分のキャラらしさを高めて、
再現力によるキャラクタースキルも発現させる事に成功する。
その世界において設定と合致する行動や結果を成立させることで、世界からそのキャラクターとして認められ、
ランブルハイネス上でそのキャラクターが使用していた能力の発現が可能になっていくのだ。
卑屈な富士夫はケイに褒められて自分は不審者だしコミュ障だしと自虐するが、
「自分がラウドだって忘れないで、あんたがリィタの事心から好きなようにラウドが好きな人だっているの!自分のことそんな風に言わないでよ!」と言われて
彼女の好意は自分じゃなくてキャラに向けたもので彼女が自分のキャラに特に詳しかった理由も理解して富士夫の心が折れる。
彼は自分と一緒に頑張ってくれた彼女に好意を抱き始め彼女に喜んでもらうのが嬉しくなり始めていたのだ。
ラウドはやさぐれてフラグ立てに伴う二人で決めたルールも破り推しキャラを助けようとし始める。
ロールも完璧にこなしキャラスキルで完全に成功できるはずだった。
しかしキャラスキルが突如消失する。
理由もわからず死にかけたラウドをケイが助け出す。
こんな事だと思った!というケイ、
実はアニメ化されていない裏設定で同人会場で作者が発売したドラマCDの設定で彼はその時そこにいるはずがなかったのだ。
ラウドはリィタの死にまつわるキーマンだ。彼はリィタを死なせた後悔からこの後大きなブレイクスルーを起こし、ケイはラウドその心の機微に惹かれたのだという。
ラウドの設定上リィタの死が近づけば近づくほど、ラウドの行動はリィタの死に通じる行動でなければ設定上破綻をきたして彼から能力は失われてしまう。
そのことに気づき絶望するラウドの顔に一瞬葛藤してから大きなため息を一つ、ケイが仕方ないわねと微笑む。
「この状況を打破できる可能性があるキャラクターはいなくはないの、私がフラグを立てる」
「君が?あんなに筋が変わるの嫌がってたじゃないか、いいのか?」
「言ったでしょ、私あんたのファンなの。あんたのそんな顔見たくないのよ」
ケイは黙っていたが実はランブルハイネス上のケイの策略でラウドがリィタを死に追いやる羽目になってしまう。
つまりケイもリィタを死に追いやるロールを演じなければ能力を喪失していく立場だった。
ケイは能力を一つまた一つと失いながらも自力でなんとか危機を脱し続けていたが、
やがて彼女の身を守っていた切り札のスキルまで消失し、ラウドはそれを知らないままでいた。
ようやくリィタの死の運命を回避することができたと喜んだのもつかの間、スキルを失ったケイが敵に捕らわれてしまう。
決死の覚悟だったケイの残したメッセージからラウドはケイが本当は自分に好意を寄せていた事、
あの笑顔はキャラクターとしてのラウドじゃなく自分に向けられていたことを知り、単身敵に捕らえられた彼女を救い出しに向かう。
リィタが死地に向かおうとするラウドに死んでほしくないと引き止める。
自分を救ってくれたラウドの事が好きなのだと彼女は告白する。
ラウドがケイを想うのならラウドとケイのために命を投げ出してもいいと彼女は言う。
ランブルハイネスの世界はリィタが死の間際に残した力を物語の主人公であるアレックスが目覚めさせて世界を救う、
君の力を失うと世界が滅びるそれに自分なんかよりずっと君を想ってきた人がいる、彼の願いが叶わないのは親友として悲しいんだとリィタを諭すラウド。
リィタと結ばれる主人公アレックス、彼には嫉妬することもあり喧嘩することもあった、
しかし友情で結ばれたのは設定だけではなく富士夫の本心からの気持ちもあった。
「俺はずっと誰かに助けられ続けてきた、今度は俺が願いを叶える存在になる」
そう決意して決戦の場に飛び込むラウド。
本来のロールとはかけ離れた行動ゆえに彼からスキルは失われ、
それを見越して用意した道具や手段を使って敵の砦を攻略しケイの元へ急ぐラウド。
ケイの処刑の瞬間、それを止めて敵の群れの中に入れば自らの命はないのも覚悟で飛び込む彼を見たケイの眼には
たしかにランブルハイネスのラウドそのものである彼の姿が映っていた。
「死ぬ前にほんの少しだけでも会えてうれしかった」と言うラウドに、
「きっと今の私達ならできるよ」そういってスキルの発動準備を促すケイ。
手をつないだ二人を中心にランブルハイネス最終局面で絶体絶命の危機から脱したラウドとケイの捨て身のスキルが発動する。
ラウドがケイを助け出している間にアレックスはリィタと世界を救っていた。
アレックスの戴冠式の帰り道、ケイが何かを数えているのに気づくラウド。
「もうすぐ物語が終わる時間、ラストシーンはどうする?」そう言って悪戯な顔でラウドを見るケイ。
ラウドはケイの肩をそっと抱いてキスをする。
「アニメで描かれていた時間はこれで終わり、もしかしたらこの世界も消えちゃうんじゃないかって覚悟してたけど取り越し苦労だったみたいね」
そう言って照れ臭そうに笑うケイ。
「これからは俺たちの好きに生きていこう」
「うん私達二人で自由気ままに、悪くないかもね」
そして二人はまだ知らない世界に踏み出していくのだった。




