20回目 蜂の領域
近未来地球上に重篤な環境汚染が起き、
人類の生きる場所が成層圏を浮遊する大気内コロニーだけになった世界。
地上では人間は環境汚染により人外に姿が変わってしまう。
上の世界でも時折台風などで舞い込む地上の塵を吸って、
ミュータント化していってしまう人々が問題となっていた。
そんな人々と通常の人々を区別するため、
ミュータント値が高い人物は地上へ放逐されるようになってしまった。
兄が地上へ放逐された少女は病弱な彼を心配し、
自分も地上に向かい彼の置き忘れた薬を届けに行く決心をする。
彼女が地上に降りであった人外は動物のようになって理性を失っていたが、
それはごく一部で彼女を野生化した人外から救い出したのも人外の青年だった。
少女は彼のことを自分の兄だと思いこみ、
青年はそれを否定するが少女は認めてくれない。
ワクチンによって彼女のミュータント値が上昇していないことを確認すると、
青年は少女をなんとかして元の街に帰そうとする。
しかし少女は帰ろうとしなかった、
自分の姿が変わってしまっても青年と一緒にいたいという。
青年は自分は兄じゃないと少女に怒鳴る。
自分だって家族と引き離されてひとりぼっちになった、
だけどなんとかやってきた、やらざる得なかった。
辛いかも知れないけどお前だって一人でやるんだ、
まだ人でいられるうちに帰れと、彼は心を鬼にして言う。
少女は本当は彼が兄じゃないということはすでに知っていた。
兄の亡骸を彼と共に生活している間に見つけて、
その形見ももっていた。
それでも帰りたくない理由、
それは上の世界はもう人間がいないからだと彼女は言った。
言っている事が理解できなかった青年はつてなども使って
少女と一緒に空のコロニーへ侵入する。
そこで見た物は人の姿をした機械の群れがコンピュータで管理される箱庭だった。
コロニーの内部では生命という概念自体が失われていて、
人の種としての遺伝子的な数値と形だけを残すために、
他の全てを捨てた社会があった。
そんな中に紛れ込んだ青年とミュータント値がコロニーに戻る直前から
上がり始めていた少女は抹殺対象になった。
命からがらコロニーから帰還した少女の体には獣のような尻尾と耳が生えており、
前よりも身体能力も向上している様子だった。
青年は少女の手をとり自分達の世界へ招き入れる決意をした。
青年と仲間達は彼女を歓迎し、少女の顔には笑顔があった。
あり方を変えても地上には生命が溢れる世界があった。




